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かみのかみ  作者: 八花月
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 闇の波動を感じた。


 いや、本能的にそう思ったのだ。なにか常ならぬもの。


 この世のものならぬ生き物……生き物? かどうかもわからないのだけど、そういうものがこの先にある。


 期待か鬼胎か?


 僕は何かを感じながら一階の倉庫をさまよっていた。


 本、といっても漫画だが、漫画の山の中。外から見た建物の大きさからして敷地面積などそんなにないと思うのだが、なんだかやたら広く感じる。林立する本棚にはみっしりと漫画本が詰まっている。


 奥の方のものは、もうお役御免の漫画たち。古本屋に連れて行かれるものたちだ。


 だ、ものでいくら欲しいものがあっても持って帰るのは許されない。


 古本屋も引き取ってくれなかったものが、ようやく店員の私物にする権利が得られるのだ。


 それも古本屋への持ち込みに関わった者だけの特権である。なかなかに道は険しい。


 ビルの一階が倉庫になっており、二、三階がマンガ喫茶になっている。受付も二階で外側の階段を使って行く。


 そこが即ち僕の勤めている店だ。


 一階はガレージのように大きいシャッターが開閉するようになっており、軽四のトラックを突っ込むことが出来る。新しくマンガを搬入したり持ち出したりするのに大変便利が良い。


 元々倉庫に使っていたがらんどうの建物が、オーナーが変わってマンガ喫茶になったのだ。多少改築したようだが、あまりいじらなくてもそのまま使えたようで、まあそこは運が良かったのだろう。


 僕はあまり会ったことがないのだが、なんでもここのオーナー兼社長は一種病的とも云えるほどのマンガ好きなのだそうだ。半分道楽みたいな商売なのだが、ひっきりなしにお客が入ってきて結構忙しい。


 食べ物・飲み物の持ち込み可。店内で飲食物は販売していないが一応無料サービスのお茶とコーヒーのサーバーはある。でも小さくて『使用不可』になっていることが多い。


 個室(フラット席)無し。シャワー無し。PC席、あるにはあるがスペック的に仕事やオンラインゲームに使用するには少々心もとない。せいぜい簡単な情報取集に利用出来る程度だろう。


 金さえ払えば何時間でも居ていいが(ただし一日以上居座る場合は一度退店処理する必要がある)、居心地は良くない。


 宿泊に使うには、いささかしんどいタイプの漫喫である。


 平たく言えば、今時珍しい純粋にマンガを読みに来る人のための、硬派な漫画喫茶だ。


 ストイックすぎる気もするが、却って他と競合しないのでそこそこ繁盛しているようである。

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