舞踏会へ
エリスとミリスに手紙が来てから、あっという間に2週間が過ぎました。
そして、舞踏会へ向かう時間になります。
エリスの城では、上機嫌のエリスが胸元にバラがついている紫色のドレスを着て、また鏡の前で鼻歌を歌っていました。
ドレスは体のラインが際立つように出来ていて、エリスの美しさを強調していました。
「ふっふっふーん。どうだい、鏡。これなら王子の妻にふさわしいだろう」
「えぇ、とてもおきれいでございます」
「うーん、いつ見ても私は美しいねぇ。じゃぁ、早速行ってくるよ」
「いってらっしゃいませ」
一方、ミリスの城ではミリスとカイが1つの小瓶を見ていました。
「なんとか期日には間に合ったわね」
「本当に持っていかれるんですか?」
「えぇ、依頼だもの。仕方ないわ」
「そうですね……使われなかったら1番いいんですけど……」
「大丈夫よ、カイ。きっと王子様も使わないでいてくれるかもしれないから」
ミリスは俯いているカイの頭を撫でます。
撫でられたカイは、少し照れくさそうに笑います。
「じゃぁ、そろそろ時間だから行くわね」
「はい! いってらっしゃいませ。ミリス様の好きなパンケーキを作って待っていますね」
「ふふっ、ありがとう」
エリスとミリスは城を出て、ほうきに乗り飛びました。
お互い出た時間がほぼ一緒だったため、途中で合流しました。
「おや、ミリスじゃないかい。あんたが外に出るなんて珍しいねぇ」
「そういうエリスこそ、そんなに着飾ってどこに行くのかしら」
「私はこの近くにあるラメス国に用事があるんだよ」
「あら、偶然ね。私もその国に用事があるのよ」
「なんだって? まさか、王子に会うとか言わないだろうねぇ」
「それは言えないわ。私はある方から依頼されたとだけ言っておくわね」
「依頼? あんたなんかに頼むなんて、よっぽど物好きな奴なんだろうねぇ」
「さぁね。私は急いでいるからここで失礼させてもらうわよ」
ミリスはそう言って、ほうきの速度を上げました。
「あ、こらお待ち! 私より先に行くんじゃないよ!」
エリスはムキになり、同じくほうきの速度を上げました。
ラメス国に先に着いたのは、エリスでした。
「まったく……ミリスのせいで髪が乱れてしまったじゃないかい」
エリスは髪を整えながら、門の所にいた兵士に声をかけます。
「すまないが、ここの王子に舞踏会へ招待されたんだが、通してくれないかい?」
エリスは持っていた手紙を兵士に見せます。
すると兵士は慌てだし、エリスを中へ入れました。
少し後にミリスもラメス国に到着しました。
しかし、ミリスは正門ではなく裏へとまわりました。
「あぁ、お待ちしておりました。どうぞ中へお入り下さい」
「ありがとうございます……」
エリスが通されたのは、ラメス国第1王子であるアースの部屋でした。
アース王子は、銀髪で少したれ目の空のように青い瞳が特徴的な男性でした。
「いやぁ、よく来てくれたね。聞いていた通り、美しい女性だ。我が妻にふさわしい」
「ありがとうございます、アース王子」
「では、早速皆にそなたのことを伝えるとしよう!」
そして、アース王子とエリスは会場に向かいました。
ミリスが通されたのは、第2王子であるリース王子の部屋でした。
リース王子は、アース王子と同じ銀髪ですが、切れ長の緑色の瞳をした男性でした。
「よく来てくれました。それで例の品は?」
「はい。ちゃんとお持ちしました」
ミリスは小瓶をリース王子に渡します。
「ふふふ。これがあれば兄上は俺を見てくれるはず……」
不敵な笑みを浮かべているリース王子を、ミリスは無表情のまま見つめていました。
そして、舞踏会が始まる時間になりました。
会場にはたくさんの貴族たちが来ており、談笑や食事をしている者もいます。
ミリスは、目立たないように壁際に立っていました。
そこへ、アース王子がエリスを連れて現れます。
「おぉ、アース王子だ」
「隣の女性は誰だ?」
「見とれてしまうほど美しい!」
貴族たちはそれぞれ感想を言いました。
「この女性はエリス。エリスを我が妻にしようと思う!」
「え?」
ミリスは驚き、小声でしたが声を発してしまいます。
「まさか、あれはエリスに使われるというの?」
ミリスが不安にかられていると、アース王子がまた言葉を発しました。
「このエリスは美しく、気品がある。我が妻にふさわしいと思うが、異論がある者はいるか!」
アース王子の言葉に反論する者はなく、貴族たちは皆拍手をしました。
「皆、ありがとう! 私はとても幸せ者だよ」
会場が拍手で盛り上がっていると、会場のドアが勢いよく開かれました。
「その結婚、ちょっとお待ちなさい!」