隠してないけど意外とばれないわね by保護者
--シル--
今いる町を治める伯爵家の娘っ子の誕生日会に参加することになり、無事に誕生日プレゼントを渡し終えて、さて会場に向かいますか・・とか思ったところで屋敷の門付近で騒ぎが発生。
その騒ぎは、主に双子ちゃんによる鬼ごっこだった。
とりあえず、騒いでる現況を取りさえ・・ようとしたものの双子ちゃんを捕まえようとかなり奮闘していたらしく指1本動かせませんというくらい全員がぜーぜー言いながら地面に転がっており抵抗はしなさそうだったのでとりあえず見張るだけになった。
騒いで他グループのリーダーらしきお嬢ちゃん(私と同い年くらい?)が地面に転がってぜーぜー言ってるのでしゃがみこんで尋ねる。
「で、なんでこんなとこで騒いでたの?」
「ぜーー・・・はぁ・・ちょ、ちょっと待って・・ちょう・・だい・・ぜーーぜーー・・・」
喋る余裕がないらしい。
そのくらい頑張って動いてたようだ・・関心関心。
とりあえず、抵抗しないように注意して、頷いたのを見てから手の空いていたメイドちゃんに飲み物だけでも配ってもらった。
「ふぅ・・ありがとうございます・・。」
「いいえぇ。で?」
私が準備したわけじゃないからお礼言われてもね?
とりあえず、事情を説明して頂戴。
「私たちは、こちらの伯爵家に呼ばれて、こちらに参りました。」
「ほう?どういう立場で?」
「吟遊詩人としてですわ。私たちは、戦闘から演奏まで幅広く嗜むクランなのです。」
「あぁ、なるほど。それで?」
クランは、簡単に言えば少人数のグループがパーティなら、そのパーティの集まりがクランである。
どうやら、戦闘部隊のパーティ複数と演奏や調合など、ジャンルごとにパーティを作りそれらのパーティをまとめたのがこの子らのクランのようだ。
評価としては、平均Bランクと中々。
「で、こちらに来たのですが、そこの野生動物ははっきりと言わせていただきますと私たちと合わないのです。」
「合わないってどういう感じで?」
「われらは、メンバー同士の連携と協調性が重要なのです。ですが、こいつはそれが一番できないし、何度説明しても理解しないのです。貴族様のいる場にこんなやつを連れて行けば確実に迷惑が掛かります。それに、こいつはソロで動いた方が確実に合っている。ですので追い出しました。」
ふむ・・。
一時的な感情で動いたわけではなく、きちんと考えもしっかりしてるし仲間全体のことを考慮したうえでの対処なのね。
「事情は分かったわ。けど、それが何でそんなことに?追い出すならギルドかよそでやればよかったじゃないのよ。」
「うぐっ・・そ、それはそうなのですが・・この屋敷にたどり着く直前でその道中のやり取りで我慢の限界を迎えてついカッッと・・。」
「あぁ・・」
推測だけど、道中寄り道に道草にとなんかいろいろやらかしたんだろうね・・で、我慢の限界を迎えて大激怒で、大声で追い出したと。
「そして、そいつも我らのクランから出ていくことは賛成したところで気づいたらそちらのオチビさんたちが足元にいまして。」
はい、そのタイミングで双子ちゃんが登場。
「いきなり現れたのに加え、無口無表情でこんなオチビさんたちが無言でジィっと見てる状態が続いて・・正直、感情のままに追い出した直後ということもあり、理由や返答をする前にとりあえず捕まえようという気持ちがわき出しまして・・。」
「あぁ・・とりあえず逃げられないようにしてから事情を聞こうとしたのね・・で、感情が不安定の状態でこの子たちが現れたから落ち着いて声をかける余裕もなく捕まえようという気持ちが優先されちゃったと。」
つまりこの子は、考えるよりも体が先に動くタイプなのね。
それが、軽くパニックというか冷静じゃない時だったのに加え、子供に危害を加えるという考えが皆無だったことで捕獲という考えが真っ先に思い浮かんだと。
・・気持ちはわからなくはないけど、双子ちゃんの場合、追いかけるとギリギリの状態をキープして逃げたくなる性質があるから余計に捕まらないわよ。
「はい・・オチビさんたちもいきなりごめんなさいね?」
((フルフル))
お嬢ちゃんの背後で同じく捕まえようとした連中が全員静かに頭を下げた。
全員この子らと同じ気持ちというか状況だったようだ。
「良い子たちですわね・・。で、簡単に捕まると思ったら紙一重で躱されまして・・気のせいかと思い、再度捕まえようとしたら再度紙一重で躱され・・そこで、人数を増やしてもやはり捕まえるどころか擦りもせず・・それを繰り返していくうちに気付けば全員がかりで本気で動いてまして・・さすがに攻撃はしませんでしたよ!?」
証拠としてすべての武具等が端に置かれている。
そういえば全員鎧も武器も何も持たない状態だったわね。
「で、全員がこの子たちを結局捕まえることが出来ずに体力切れになったところで私たちがやってきたと。」
「はい・・。」
「とりあえず、この子たちの保護者としての意見は特にないわ。」
「・・え?」
「え?ってなんで?」
「いえ・・とてもかわいがっているようでしたので報復を覚悟していたのですが。」
「あぁ・・大丈夫よ。まぁ、攻撃を仕掛けてたら速攻で報復してたけど。」
「ほっ・・・全員に武器を捨てろと言った自分ナイス。」
万が一のことを考慮して武器を捨てさせてたのね・・良い判断だわ。
どういう些細なことがきっかけでケガをするかわからないし、そこに加えて防具も外させていたのもより良い。
「後ね、正直に言うとねこの子たち・・あんたらと遊んでるだけだったのよね・・。普段からそれなりの人数と鬼ごっことかくれんぼしてたから。」
「・・・子供に遊ばれた挙句、本気になって大人げないのに加えて惨敗・・・」
地味にショックを受けているが気にしないことにしよう・・・割といつものことだし。
「で、執事のじいさんからはなんかある?」
「いえ。周りに迷惑をかけていたわけでも理不尽な理由だったわけでもないので特にありませんよ。しいて言うなら時と場所に気を付けないと他の貴族宅次第では危険だった可能性がありますのでご自身のためにもご注意ください。」
「ほっ・・ご注意感謝します。」
「で、双子ちゃんは双子ちゃんでなんでみてたの?」
-なんとなく-
「そうかぁ・・・」
この子たちの場合は、本気で珍しいものということでなんとなく見てたんでしょうね・・。
「まぁ、円満で出て行ったんならそれでいいわ。」
「た・・ただ、邪魔だったから追い出しただけよ。」
顔をほんのりと赤く染めてそっぽを向いているところを見る限り、ちょっとしたツンデレらしい。
「はっ・・今までありがとうな。」
「・・気にしないで良いわ。なんだかんだであんたとの日は楽しかったわ。」
なんだかんだ言いつつも仲は良かったのね。
所謂喧嘩しつつもそれはじゃれあいの一種という感じだったのでしょうね。
ある意味ライバル関係のように競い合うことで高めあっていたような感じだったのでしょうね。
・・・良いクランじゃない。
「何つぅか騒がせて悪かったな・・。姉貴」
「姉貴か・・まぁ、とりあえず騒ぎがあったから見に来て喧嘩かと思ったら円満な感じでよかったわ。次回から時と場所には気をつけなさいね。」
「はい・・気を付けます。」
「しっかり反省してるようだからこれあげるから頑張って今後のために生かしなさい。」
「ありがとうございま・・・・!?」
渡したのは、実家で出してるとある1冊。
正しくは、貴族のお嬢ちゃんにプレゼントした教科書は、お金がないとなかなか3巻セットを購入できない。
だから、それほどお金のない人向けにその中に書かれてあるあらゆるジャンルごとに分割して別売りしてるのよ。
そのうちの1つがこれ。
結構冒険者や一般商人等の貴族ではない(正しくはお金があまりない)人が頑張ってお金をためて購入して愛用する類なのよ。
値段も、頑張って貯金すれば購入は可能なくらいにしてるのよ・・そういう連中向けに作ってるから。
我が家の一族は、王族を支える一族ではあるのは確かだけど、政治的な部分以外の仕事としては様々なジャンルの勉強用の本を作成しているのよ。
そして、作成したものをジャンルごとに各商会等に渡して、複製して販売してもらっているのよ。
ものによっては、一部を各国や町の教会、ギルドに寄付して、所謂貸し出し用として無償で読めるようにしてるわ。
きっかけは、我が国の学園を中心に使用されている教科書の作成をメインにしていたけれど、一般の学園に通えない(通ってない)人向けに学べるように別に作っていたのよ。
それを徐々に範囲を広げていったの。
ちなみに、教科書とは言ってるけど一般販売はしているのよ?
ただ、便利だけどそれなりに高価だから使用されているのが目立ってるのが我が国の学園というだけ。
初代国王の弟だった我が家のご先祖様は、宰相としての地位でのサポートとは別に多くの部下となる国王を支えるメンバーの全体的な知識などの底上げをすることを目指した。
それが、もともと教科書をはじめとした学ぶための本を多く生み出したきっかけだったそうよ。
ちなみに、王族メンバーには内緒なのだと初代様の日記に書かれていたので、いまだに今の王族メンバーすらもこの事実を知らなかったりする(我が家でも教えるのはNGと先祖代々言われてるし)
「こ・・これ・・あらゆるジャンルごとの相手に対する礼儀マナー本!?貴族相手から王族相手、さらには商人から教会までなんでもござれなあの噂の!?何故あなたのようなおっぱいの大きな美女が!?」
おっぱいが大きいのは余計だし、本を持ってるのに美貌も関係ない。
「・・見た目と本を持ってるのは関係ないわよ。」
そういうけど、クリーム色のふわふわと緩い癖のある髪に、金の瞳で、あなたもなかなかの美少女だと思うわよ。
胸も、推測Cはありそうだから小さい方ではないと思うけど。
「・・はっ、そうだった。あまりにもおっぱいがすんごくてつい・・」
まぁ、慣れてるけど。
ちなみに、その間貴族のお嬢ちゃんを私の胸に埋めたままで忘れてた結果、幸せそうな表情でぐでんぐでんになってたので慌てたメイドちゃんが回収していったわよ。
ぽつりと、魔性のおっぱいと呟いてるのがいたツンデレ疑惑美少女がいたけど胸に埋めて黙らせておいた。(一種のご褒美)
けど、顔を真っ赤にしながら埋めるなとツッコミながら双子ちゃんを私の胸に埋めてた。
それ以上被害者を生むなということらしいが、その魔性のおっぱいに負けなかったわねこのツンデレ美少女。
まぁ、顔を真っ赤にしてプンスコしてたからお詫びにこっそりと女性としての魅力を上げたりスタイル等を良くする類の本をプレゼントしておいてすごくうれしそうだったからまぁいいか。(これも我が家で出してるのよ)
「はぁ・・まぁいいわ。それ、手元で余ってただけだし、運良く拾ったくらいに思いなさい。」
「そういうことなら・・ありがたく。」
「あ、執事のじいさん。さっき渡した教科書の中にこれも混ざってるから。」
実は他にも色々と数冊ほど仕込んでる特別製の教科書で、芸術の国で使われてるのよりも分厚かったりするのは内緒。
「そうだったのですか・・承知しました。」
「とりあえず、落ち着いたことだし、行くわよ。騒いでた分、主役を楽しませなきゃだめよ?それがあんたらの償いよ。」
「そうね。・・全力で楽しませて見せるわ。・・さっきまでそのおっぱ・・巨乳に埋もれてた子でしょ?」
「そうよ。あまり積極的な性格ではないようだから絡むなら気をつけなさいよね。」
言い直せてないぞーと言いながら抱きしめようと腕を広げてみたら顔を真っ赤にしてすごい勢いで逃げられた。
「・・わかったわ。」
後に誕生日プレゼントとして用意してたらしい、髪留めやピン止めのセットで大変喜んでもらえたようだ。
どうやらあちこちを旅してる関係で多種多様なものが揃ってたようで使うのも見るのもなかなか面白いものだったようよ。
むしろそれらを元にどの国、どの大陸でどういう文化があるかの勉強の教材としても良いという評価だった。
ちなみに、クラン全員でやってきたのは、大半はこの屋敷の雑用や護衛など、その他のヘルプも兼ねているからなんだとか。
「で、商会のじいさんと教会の方からあんたらまで来てたのね。」
「うむ。自称にはなるがこの町で最も大きな商会ゆえに、この町を守るトップと仲を深めておくのはどちらとしても悪いことではないだろう。」
「おぉ!さすが女神様!こちらにいらしたのですね!」
「はぁ・・あんたらはあんた等で相変わらずね・・」
「お前さんは何がどうなってそんな呼び方をされてるのだ・・。」
「こっちが聞きたいわよ・・ガチの神様に仕える奴らが、通りすがりの人間を女神様呼びはいろいろ良くないだろとさんざん言ったわよ・・言ったのにスルーされたのよ。」
「女神さまは女神さまです!いるかどうかわからない神様よりも目に見える女神さまに祈りをささげるのは当然ではありませんか!」
「はぁ・・・」
「なるほど・・苦労しておるな。」
まぁ・・多分、私と双子ちゃんが加護持ちだからこんなことになってるのは知ってるし、それを周囲にばらさない気持ちもうれしいけどだからってこういう扱いはどうなの?
双子ちゃんは相変わらずスルーしてるけど。
おまけに、双子ちゃんを育てるためにあれこれ教えてたはずが通りすがりの野郎どもがついでとばかりに一緒に授業を受けた挙句、そのまますごい人という扱いになるのは良いとして、こいつらが私のことを女神さまと呼ぶからそのままつられるように似たような扱いをする連中が増えるし・・。
「シル様は・・その・・教会の方々に大事にされているのですね?」
執事のじいさんがすごく私に気を使ってくれてるのが心にしみる・・。
「すごく言葉を選んでくれてありがと・・ちょっと縁があったのよ・・ただこいつらが過剰なだけだから半分くらいは無視して・・。」
「まぁ、とりあえず、お嬢ちゃん、誕生日おめでとう。」
さすが商会のじいさん。
怖がらせないような声音で優しく声をかけている。
おかげで怖がらずにお嬢ちゃんも普通に答えている。
「あ、ありがとうございます。」
「面白みのないもので申し訳ないがわしからはこれだ。」
渡されたものを受け取ったお嬢ちゃんはちらっと商会のじいさんに視線を向ける。
「ここで開けても良いよ。」
「は、はい。」
あけられた中にあったのは、かわいらしい靴だった。
「わぁ!」
「長時間動き回っても足が疲れないように、そして負担を極力少なくするように作られたものだ。サイズも靴擦れを起こさないように勝手に調整してくれる。デザインもわしの店に来てくれれば、無料で作り変えるから遠慮しなくてよいぞ。
年を重ねればデザインも今のこれとは違うものを好むこともよくあるからな。」
「へぇ。よく出来てるじゃない。」
デザインは、女の子らしいかわいらしさとはいえれっきとしたブランド物とわかるのに加え、そこらを歩き回る時と、貴族が闊歩してる空間を歩き回ってもどちらでもおかしくないようにしてあるのはさすが。
「ありがとうございます、大事にします。」
「うむ。」
「お嬢さん、お誕生日おめでとうございます。私たちからはこちらになります。」
「ありがとうございます。」
「開けてもいいですよ。」
「はい。」
教会からは、ネックレスみたいね。
デザインは銀の十字架で、すごくシンプルでも気品があり、普段使いしてもおかしくないし、男女のどの年の人が使ってもおかしくないようにできてるわね。
「わぁ!」
「飾り気のないもので申し訳ありません。ですが、何か困ったことがあればそちらを教会で見せていただければ無償で可能な限り力になります。」
教会のいわゆる年間パスの親戚みたいな扱いと言った方がわかりやすいかもね。
「え!?よ、よろしいのですか?」
「はい。悪に染まらない限りわれら教会一同はあなた様の力になりますよ。」
ケガや病気になった時に無償で見てくれるのもいいし、もしも追手に追われて命の危機というときの逃げ場としてそれさえ持っていれば守ってくれる。
貴族としての逃げ場があるのは良いことね。
それを察して貴族のじいさんもうれしそうに頷いている。
「はい。期待に応えて見せます。」
うん。
良い返事ね。
この子は良い人になるわ。
「あ、そうだわ。多分しばらく冒険者の連中が勉強しに教会にやってくると思うから色々教えてやってくれない?」
「かしこまりました。・・そういえば数日ほど前から勉強熱心な方がやってくると思っていたら女神様がきっかけでしたか。」
「双子ちゃんに教えてるときについでにね。近いうちにここを出るからその代わりとして教会を紹介したのよ。」
「左様でしたか。構いませんよ。」
「ほう。やたらと勉強熱心な者たちが多いと思ったらお前さんがきっかけだったか。」
「双子ちゃんのついでだったんだけどね・・。」
「ちなみに、そやつらは今、青空組というクランを立ち上げたのは知っておるか?」
「は?」
「知らんのか?」
「知らないわ・・どういうこと?」
あの連中・・何をしやがった。
「お前さん、青空教室の勉強会を広場でしておっただろう?多くの冒険者向けに。」
「双子ちゃんのために教えていた時に勝手に同席してるから無視しただけだけど。」
「で、その勉強会をきっかけに多くのパーティ同士が仲良くなったらしくてな。たがいに勉強を教えあったりしているうちに1つの組織として結成してこの町を支えることにしたそうだ。それが、青空教室の勉強会を受けていたことがきっかけゆえに、お前さんに感謝の気持ちを忘れないようにと青空組と呼ぶことにしたそうだ。」
・・つまりは、私を看板にした勉強熱心な連中の集団を作り上げたのね。
「全く・・まじめなやつら。」
ホントに・・うれしいじゃないのよ。
苦笑しながらそう呟くとほほえまし気に私を見るじいさん連中・・うっさい見るな//
「と、とりあえず、誕生日会、始めるんでしょ?」
ほら、そこで照れて顔がそれとなく赤くなってると自覚してる私をほほえまし気に眺めてる爺ども、さっさと会場に移動するか案内しやがれ。
「そうですね。会場の準備は整っておりますし、旦那様も奥様もお待ちですのでご案内します。」
「よろしくね。」
「はい。」
「その前に・・ねぇ。」
わんこに声をかけながら、いきなり上段回し蹴りを身体強化込みで本気で首元に叩き込む。
「ん?・・っ!?」
驚きつつも腕をクロスしてガード。
ズドン!!
全員「!?」
「っつぅぅぅ!!いきなり何すんだよ姉貴!?ガードは間に合ったけど・・てか、なんつぅ威力だよ。腕がすげぇびりびりすんだけど!?」
「はぁ!?あんたが腕がしびれるほどの威力って・・シルさん・・あんた本気で何者!?こいつ、ガードの高さっていうか、頑丈さと防御力の高さは私の知る中でトップレベルよ!?そんな奴がガードはしっかり間に合わせているのにしびれるって相当よ!?」
すごい腕をプラプラさせてる。
「ふむ・・まぁ、合格ね。」
「何が!?」
「あれ俺のガード間に合わなかったら間違いなく首の骨折れてたよな!?」
「そうね。複雑骨折を狙うくらいの威力にしておいたし。」
「殺す気か!?」
9割殺しくらいよ。
「何言ってんのよ。今後はソロで行動するんでしょ?だからある程度動けるか試してあげたんじゃないのよ・・雑魚に用はないのよ。」
全員「・・っ!」
軽く殺気を放ちながら伝えると全員が体をゾクゾクさせてる。
「まぁ、使い物にならなかったらその程度だったってだけよ。」
「・・・うす。」
「・・・ガルディがすごく素直・・なんとなく気持ちはわかるけど。」
商会のじいさんも目を見開いてフリーズしてたものの私のセリフで気づいたようだ。
「まぁ、おぬしの言いたいこともわかるがな。とっさのガードもそれなりの威力のを無傷で防ぐくらいしなきゃタダの肉壁だな。」
執事のじいさんは私が合格と呟いたところで気づいたようだ。
「そうですね。あのくらい出来なければ、ソロ活動はおろか、荷物持ちか極潰し確定ですね。シル様のご家庭基準ですとそのくらいは当然かと」
やっぱり、執事のじいさんは気づいてたわね私のこと。
「あぁ・・お嬢さんのあの両親ならあり得るな・・。」
「商会長様は、シル様のことをご存じで?」
「うむ。・・もしや、執事長であるおぬし以外全員気づいていないのか?」
「えぇ。シル様は一切隠していらっしゃらないですがなぜか全員気づいてませんね。儀礼剣も紋章付きで見せていただいてますし、Sランク冒険者だと窺っているのに加え、フルネームで名前も聞いております。さらに、お嬢様の誕生日プレゼントとして頂いた品々の内・・こちらを。」
「・・・あぁ、教科書か。それをタダで渡せるのは本気で中身を100%フル暗記しているか、製造元から複数もらっていて手元に有り余らせているかのどちらか・・だがこれは新品に加え、作者のサイン付き。」
あ、それ父様のサインね。
一部では、父様のサインがあるのはすごく光栄なことらしく、神棚に飾るのもいるくらい崇拝者は割といるわよ。
「えぇ。とりあえず、本人たちが気づくまでは伝えないことにするつもりです。」
「ほう?当主様にもか?」
「えぇ。そのくらい自身で気付くべきですし、隠してはいらっしゃいませんが、教えてもくださいませんでした。これは、出来ればバレたくないということなのでは?」
「その認識であっておるよ。彼女は別に隠す気はないが、バラす気はない・・無駄に目立ってうるさいのが集まるのが面倒ということらしい。」
「なるほど・・あり得ますね。・・・後で、ご実家へ手紙を出すべきですか?」
「そちらのお嬢さんと世間話するくらいに仲良くなりましたと?もしくはお世話になりましたと?」
「簡単に言えばそうですね。」
「それが良いだろうな。・・・下手に隠して周りがうるさいのもあるが、あちら側が嗅ぎつけて良いこと悪いこと片っ端からほっくり返されるぞ?」
うん、やるわね。
やましいことはなかったよね?企んでないよね?お宅**前に**やらかしてるよね?と脅しにやってくるから。
「・・・後で手紙を早急に出すようにします・・アルカンシエル国イーリス公爵家の宰相閣下へ」
物理戦闘や護身術等の肉弾戦の師匠であり先生だったりするわ。
「うむ。その方がよいだろう。ちなみに、奥方は騎士団長だぞ?」
お父様の噂が際立ってるからお母様が騎士団長である事実は意外と知られてないのよね。
知られてることと言えば、いろんなことをやらかしてる父様の類友なので色々やばい程度。
戦闘スタイルは私と割と似ていて、魔法戦の遠距離戦メインで、私の魔法戦の師匠であり先生よ。
「・・そちらは初耳でした。」
ちなみに、知識面は本もそうだけど両親2名と家庭教師とかに教わってるのよ。
そんな会話をじいさんペアがやっており、隣で私の胸に埋まってぐでんぐでんになってたお嬢ちゃんが復活しかけ、そんなお嬢ちゃんを抱っこしてるメイドちゃんがそんなやり取りを聞いてしまって目を白黒させてるのに気づいた執事のじいさん。
「お嬢様。聞こえてたとは思いますが、旦那様と奥様にもご内密に。・・どちらが怖いかわかりますね?」
(コクリコクリ!)
「わ、私も当然喋りません・・。つまり、ただのお胸がすんごくて強いSランクの美女ってことで良いんですよね?」
「えぇ。間違ってません。」
「うむ。事実だな。」
・・まぁいいわ。
ちなみに余談だけど、私のあの蹴りを見た騎士連中が1周りどころか2周り3周りくらい私に対してすごく扱いが丁寧というか恐る恐るになったのは気づかないふりをしてあげる。
それにつられて私が大事にしている双子ちゃんにものすごく気を使ってるからまぁ、都合がいいしまぁいいわね。