いよいよ旅開始・・したかった~野良猫を添えて~
--シル--
双子ちゃんが野良猫ホイホイになったり、壁や天井、水の上を歩いたりするようになったり拝まれたりしてるけど、割と平穏に過ごしてるわ。
・・平穏?
これ平穏?
それはさておき、いよいよ今いる春の大陸の中にあるこの町から私の故郷である秋の大陸にある芸術の国と呼ばれているアルカンシエル国に帰る準備がほぼほぼ整ったわ。
私の国である、アルカンシエル国は前に話したと思うけどあらゆる芸術に関することが世界中で最も有名な国で吟遊詩人や料理人などの一見戦闘と程遠い職業の人たち憧れの大国で、世間一般ではアルカンシエル国というよりも先に芸術の国という単語が先に出てくるようなところよ。
それはさておき、この町で双子ちゃんのリハビリと初歩的な戦闘方法やサバイバル術に様々な知識を教え込んだりしつつ、そのお勉強会にしれっとその他冒険者どもが一緒に参加して授業を受けてたりそいつらと双子ちゃんに模擬戦をさせたりしているうちに気が付いたら双子ちゃんに二つ名が出来た。
二つ名
静寂乃双子
ジェミニって確か、この世界では双子の神様として有名な神様で双子ちゃんが持つ加護の内の、双子神、これがジェミニという名前なのよ。
ちなみに私が持つ炎の神様の名前はイフリートになるわよ。
そんな双子ちゃんだけど、静寂の部分はわかる。
そもそも喋らないのに加えて些細なしぐさも含めてすっっごい物静かだし、そこら辺をウロチョロするけど足音も含めて無音。
そして、本人たちがその気になれば目の前にいてもか~な~り集中しないとどこにいるか存在を忘れそうになるほどの隠密の能力。
それらのすごさは、私の勉強会に参加してる連中合計50名VS双子ちゃんでこの町の中央にある広場内限定でかくれんぼをしてみた際に、全員が本気になっても10回行って双子ちゃんが全戦全勝したほどのやばさ。
ちなみに、そんな双子ちゃんにかくれんぼで全戦全敗した冒険者たちは、しばらく膝から崩れ落ちて落ち込み、その後からやたらと目をギラギラさせて修業しだす連中が増えたとかなんとか。
その関係で、そういう範囲をメインにしている冒険者をはじめとした一同からは、師匠呼ばわりされてるけど、察しの通り双子ちゃんはスルーしてる。
そして、この子たちの戦闘がさすがは双子と言いたくなるほどの息ぴったりの連携と・・・私個人としては認めたくないけど私も含めて教会からは加護持ちであることも関係して神聖な何かだと思われてる。
そのせいで双子ちゃんは基本的に”最低でも”天使、もしくは妖精扱いされてる。(後は野良猫)
で・・私は過去は天使だのなんだのと言われたけど最近はほぼ女神さまで固定されつつある・・教会で一般人を女神様扱いするのはいかがなものかとツッコんだけど笑顔でスルーされた・・OTL。
というわけで、神聖な双子・・そこからジェミニという名前を組み合わせてそういう二つ名になったみたいよ。
ちなみに二つ名が出来るのは冒険者としては一定以上の人数に認められた証のようなもので一部からは憧れのような象徴なんだけど・・・この子たちはきれいにスルーした。(いつものことだけど)
そして、ついてくる宣言をした野良猫10匹は本人(本猫?)たちに宣言した通り丸洗いさせてもらったので大変モフモフで手触りもよくなったので、そこそこの頻度でモフらせてもらってる。
で、寝るときは決まって双子ちゃんを中心にして団子状に固まってる。
そんなときなんて双子ちゃん諸共モフるのは当然として、見た目もプラスして大変幸せな光景です。
まぁ、そんな双子ちゃんを抱き枕よろしく私は毎晩抱きしめてるから確実ににゃんこ団子に巻き込まれて埋もれるからちょっと暑いけどかわいいしモフモフだから気にしない。
・・もともと炎系の属性というのもあって暑さには割と強いのよね。
だから逆に寒さは、ちょっと苦手だったり・・まぁ、自分の炎とかで暖を取るからほとんど気づかれてないけど。
それと言いたいけど、私のことを姉御と呼ぶ野郎どもやお姉さまと呼ぶ女郎どもがやたらと増えたことに一言モノ申したい・・。
そのくせ教会関係の連中からは女神様呼びされるし・・私をどうしたいんだどいつもこいつも。
・・どういっても聞き流されるけど。
とりあえず、にゃんこたち曰く(双子ちゃん翻訳)名前付けは不要で時々ごはんくれれば、基本的に寝床は毎回提供して欲しいという放置推奨という感じの要望?という感じだった。
一応野良猫から外猫にジョブチェンジはするつもりはないらしい。
ご飯も基本的には自力で確保するからとのこと。
とはいえ、本にゃんたちがいらないと拒否らない限りは毎回用意するつもりではあるんだけどね。
で、とりあえずついてくることになったにゃんこはというと、柄はバラバラでサイズもバラバラ。
柄はともかく、サイズは面白いわよ。
一見子猫なのに実は成猫だったり下手な赤ん坊よりもでかいのにでb・・げふん、むちっとしておらずただ骨格そのものがでかいタイプだったり、毛並みも短毛系と長毛系とホントバラバラ。
地味に、三毛の雄という大変レアなのが混ざってたけど気にしないことにする。
・・・とりあえず、寝床に使えそうなクッションや毛布を大量に購入しつつ、ブラッシング用のブラシも何種類か購入しておいた。
しばらくというより、これからはブラッシングは必須スキルになりそうね。
まぁいいけど、猫好きだし・・私の両親も猫派だし。(家に着くころには何匹まで増えてるのやら)
それと、ついてくる子たちか否か区別がつくように首元に私の家の家紋を刺繍したスカーフを首元に巻き付けることにした。
少なくともこれで、私の連れだとわかるようになるから多少のけん制にはなるでしょ。
でも、見てて面白いわよ。
膝の上にすかさず乗ってこようとするのと、撫でさせたりはしても一定の距離を保ってたり、膝に乗ってこないけど足元をぴったりと寄り添うだけだったり、人の上によじ登ろうとしたりとにゃんこによって行動が違うからそのあたりは人の性格が十人十色と言えるのと同じなんだなぁと。
ちなみに、膝にすかさず乗ろうとするのは一番でかくて毛並みが長いタイプだから膝の上がそいつ1匹でいっぱいになるけど。
種類は、異世界人が言うところのノルウェージャンに近いんじゃないかしら。
「ってわけで、そろそろこの町を出るわ。」
「いよいよでしたか。ということは、目的は達成されたということで?」
ある意味一番この町でお世話になったギルドの受付の兄ちゃんに声をかける。
なんだかんだで結構この町について物知りだし、説明上手だからある意味専属受付みたいになってたわ。
「まぁね・・ってか、私が目的があってここに来たの知ってたの?」
「いえ。シルさんの場合ですと目的もなしに立ち寄らないだろうなぁと。消耗品の補充で途中で立ち寄る可能性も低そうですし。」
どうやら、片っ端から説教して教育してを繰り返してたせいなのか、元ギルドの受付をしてた関係なのか私はしっかりしてるから目的地まで立ち寄らずに最短時間で寄り道なしで進む人物だと思われてるようだ。
・・あながち間違ってないけど。
「あぁ。簡単に言えばこの子たちに最低限のあれこれを与えつつ、養生させるためよ。そう考えてたら偶然近くに町があったから立ち寄っただけ。」
「なるほど・・で、申し訳ないのですが1つだけ依頼を受けていただけないでしょうか?」
「あら?珍しいわね。その感じだと私に指名?」
ちなみに、私の足元は相変わらず双子ちゃんの影響で猫でいっぱいである。
ついてくる連中とそうじゃない連中問わず集まってるから周りはものすごくなんだこれって顔で猫の塊を見てるけど受付の兄ちゃんだけは笑顔でスルーである。
周りからなんでこいつ気にならないの?って顔で見られてるけど一切気にせずにテーブルに上ってきた1匹を撫でてる。
「えぇ。確か、シルさんは歌がお得意でしたよね?」
「まぁそうね。」
得意というか、家柄と出身地的な関係で趣味と実益が混ざったようなものだけど。
「その関係で、とあるパーティに参加して欲しいのです。お連れのお二人も一緒に構いません。」
「ほう?詳細を聞かせてもらおうじゃない。」
「こちらで立ち話もアレですので、こちらへ。」
そして、ぞろぞろと猫を連れてテーブルが1つとソファーが2つ並ぶ小部屋に案内してもらう。
前回、使わせてもらったところね。
「実は、この町を治めている伯爵家のご息女が8歳のお誕生日なのです。」
「あら目出度いじゃない。そこで歌えと?」
「簡単に言えばその通りです。」
「でも伯爵なんだからそのくらい自分で呼ぶんじゃないの?」
そのくらい貴族なんだから自分でどうにかするでしょうよ。
「それもそうなのですが・・そこから、シルさんの実力と整った見た目を見込んでたの依頼につながるんです。」
「・・どういうこと?」
かなり真剣な顔だから何か事情があるわね?
「実は、私の知り合い・・と言いますか、色々と情報通な親友がそちらに勤めているんですが、彼から不審なうわさを聞いたため、そのヘルプを頼まれたのです。」
ふむ・・。
その情報通の親友が何者かはどうでもいいけど、普通ならそのくらい伯爵側で対策をするはず・・。
けど、そこで伯爵ではなく友人であるこいつに頼んだってことは・・。
「伯爵家の中に怪しい奴が紛れてる可能性があるのね?」
「話が早くて助かります。彼のそういうときの勘はかなり精度が高いのです。・・実際、やたらとモノがなくなることが多かったり、怪しい連中を伯爵家の近く見かけることも多いため、別方面からのアプローチをしたいようです。」
「そこで、私は護衛としてではなく歌手・・というか吟遊詩人?として侵入しつつ内部を探ってお嬢ちゃんを守ればいいのね?」
「・・あの、話が早くて助かるのですが貴族様のご息女をお嬢ちゃん呼びは・・。」
ん?
「あら?あなた、私のことを誰か知っててこの依頼を頼んだんじゃないの?」
確かに子供とはいえ、貴族相手にそんな呼び方したら不敬罪だのなんだのと言われたりして面倒になるのは確かだけど、格下相手できる私だからこそ頼んできたんじゃないの?
私が、公爵家の次期当主だって知ってたからこそ頼んだんだと思ってたんだけど違ってた?
「はい?Sランク冒険者ですよね?お綺麗で礼儀正しくファミリーネーム持ちでしたので貴族の方だとは察してますが。」
あぁ・・・・そういうことか。
「本気で気づいてなかったのね・・まぁ、大陸が違うんだからそりゃそうか。」
まぁ、祖国が大国とはいえ、よその大陸のことなんて事細かに知ってる奴なんて相当なもの好きか、変態だけよね。
「あの・失礼ですが有名な方で?」
「えぇ。面倒だから周りには言わないで欲しいんだけど、私のお父様・・芸術の国の裏ボスなのよね。」
「・・・・」
私の祖国であるアルカンシエル国は、芸術の国と呼ばれることの方が多い有名な国である。
で
そんな国で、世間一般である意味有名な人物は誰だと言われると主に私とお父様の2人なのである。
私の場合は、色々とやらかしてるのもあるけど、虹の公爵令嬢の二つ名のインパクトと歌い手としての評価が高いことでね。
でもそれはあくまでも歌関係、曲関係の連中と、芸術の国の貴族と何かしらかかわりのある連中が中心の話。
まー他にも冒険者界隈でそこそこ有名な二つ名も持ってるけど、今回はそっちはスルーして頂戴。
で
それよりもかなり広範囲で最も有名なのがお父様なのである。
なぜかって?
先祖代々宰相を務め、祖先(我が家の初代)が芸術の国建国者の兄弟であるという歴史はもっとも有名で、なおかつ、我が国の大半の貴族と王族が全員我が家を崇拝しているからである。
そして、そんな中で親ばかで、ほんのわずかでも私のことを色々と企もうとした段階でそいつの関係者全員を正攻法で消すのが当たり前で、仕事がバリバリできる。(近所の貴族連中からは親ばかじゃなくてモンペだって認識だけど)
その腕前は王様が隠しもせずに何かあれば我が家の父に頼れ!という有様である。
それから、他国が過去に何度か我が国を攻めようとしたらしいんだけど、その時に他国が計画中の段階で何をどうしたのか知らないけど一切戦う前に全てのその連中を始末してるのだ。
当然その国は今は完全に消え去ってる。
ちなみに、鍛えることが趣味なので当然強い(私の師匠でもあるからね)
そんなあれこれが学生時代から現在まで続くお父様の伝説である。
そんな感じで現在も類友扱いされてるお母様とタッグを組んで私が動く範囲の周囲のほんのわずかの悪意も全て消し去ることを淡々と続けてることから芸術の国の裏ボスと呼ばれてるのである。
ちなみに、お母様は芸術の国のラスボスって呼ばれてるわ。
後、ラスボスと裏ボス、どっちが上かという質問は禁句である。
2人揃って、芸術の国の最終兵器。(ガチで呼ばれてる)
なので、大抵の人は私のファミリーネームを聞いたとたんに速攻で逃げるか逃げ損ねて腰が抜けたりへっぴり腰だったりするか、崇拝するかのどちらかになったりすることが大半。
で、ようやく気づいたらしく顔がめっちゃ引きつってる。
「ま・・まさか、シルさ・・・シル様が、あの逆鱗姫でしたか。」
二つ名って不思議よねぇ。
ステータスには逆鱗姫じゃなくて、虹の公爵令嬢の方がチョイスされるんだもの。
そういうのって、私みたいに2つある場合は、呼んでる連中のジャンルが異なってたら複数載ったりするけど、同じ界隈だと最も多くの人に呼ばれているのではなく知られている方を優先されるから2番目になった分は表示されないのよ。
私を例に言うと、ボマーな方は、冒険者側・・つまりは一般人側。
一方、虹の公爵令嬢は、吟遊詩人や貴族の方面。
逆鱗姫も虹の公爵令嬢サイドになるけど、虹の公爵令嬢が優先されたから逆鱗姫はステータスにはならないって感じ。
だから、双子ちゃんに関しては、私以上に広い範囲で色々呼ばれてるから二つ名が私以上の数になる可能性が高かったりするのよねぇ・・どうなることやら。
って、話が反れたわね。
「あんたもあんたでそっちの呼び名を知ってるって珍しいわねぇ。」
ってか、地味にさんから様に変わってるのは気づかないふりをしてあげましょう。
すると、クイクイと裾を引っ張られる。
なんとなく想定してたけど振り向くと双子ちゃんが引っ張ってる。(かわいい)
「あぁ・・・はいはい。それが何か教えろと。」
((コクリ))
「まぁ、私のお父様とお母様については前に軽く教えたわよね?」
((コクリ))
「で、私はその二人の1人娘で2人からすると大事な大事な宝物で下手すれば自分の命より大事って扱いなわけだ。」
((コクリ))
「ドラゴンには逆鱗っていう弱点であるのと同時に触れるだけでもブチ切れる触るな危険なポイントがあるんだけど、そして、私は芸術の国・・まぁ、私の祖国では歌姫と呼ばれてるのよ。」
((ふんふん))
「ドラゴンの逆鱗に触れることは、つまり、自殺しに行くようなものだと言ってるようなものってことなんだけど、そこから、私に何かすると揃って芸術の国の最終兵器が動き出すことから、芸術の国の逆鱗の歌姫を略してそう呼ぶのがいるってだけの話よ。」
ドラゴン退治の際に逆鱗を狙うやつは馬鹿とか、自殺志願者と呼ばれてるのはガチ。
実際討伐するときでも、弱点とはいえ、逆鱗は狙うなって有名なのに狙うんだもの。
「ほんのわずかでも芸術の国にかかわる人間であれば必ず注意するように言われることがあります。」
真剣な表情で兄ちゃんが何か言ってる。
「それは、芸術の国で無事に生きていたいなら逆鱗姫には絶対に触れるな、考えるな・・です。」
つまり、私に関わればすかさず身元情報を洗いざらい探られた挙句、わずかでも私に悪意がある可能性があると判断されれば過去の清算を強制的にさせられ、
それらしき行動をとればそいつの存在自体が消されるとか言われてる。
・・実際何人かいなくなってるらしいけどお父様たちは良い笑顔で気にすんなとしか言わないから詳細は不明なのよねぇ。
一応双子ちゃんは納得したようだ。
-お姉さんのお父さんとお母さんに気に入ってもらえたら安全ってこと?-
「まぁ、しいて言うならそういうことね。まぁ、下心ありと勘づかれたら速攻で地獄を見ることになるけど。」
-なら、お姉さんってボッチ?-
「あぁ・・言いたいことはわかるけど、その分私を慕う人は多いからプラマイゼロよ。・・そういう馬鹿は割と国内に住む連中だとほぼいないのよ。・・先祖代々我が家か似たような扱いされてるから。」
ふんふんと頷いてる双子ちゃんは私の両親がどういう生き物なのか改めて実感したようだ。
「とりあえず、受けるわ。一応、ギルドからの指名依頼って扱いで良いの?報酬は適当でいいけど。」
ぶっちゃけ、お金には困ってないし。
無駄にため込んでた魔石を大量に紹介のじいさん相手に売ったから結構持ってるし、双子ちゃんが無駄に薬草関係で指名依頼を大量に受けてはおまけで色々もらってくるからさらに稼いでるし。
「その認識で大丈夫です。・・よろしくお願いいたします。」
「任せて頂戴。」
服装は・・・双子ちゃんも私も、上からストールを羽織ればいいわね・・めんどいし、この服もシンプルなデザインだけど実は実用性も兼ねてるブランド物でおかしくはないし、服に着られてることもなくきちんと着こなしてるしね!
ちなみに、そのストールは実家からギルド経由で送られてきた私が昔から愛用しているストールで、デザインはシンプルだけどお父様とお母様が一生ものとして使えるようにオーダーメイドで依頼して作ってくれた特別性。
その時に双子ちゃんの分も一緒に作ってくれたらしく一緒に送られてきた。
シンプルなデザインということもあって男女どちらが身に着けていてもおかしくないようにできてるし、色合いも淡い寒色系。
色がおおざっぱだって?
それであってるのよ。
どういう風に編み込んでるのか織ってるのか知らないけど日の当たり方で紺っぽかったり新緑っぽかったり若緑っぽかったりと寒色系等の色にコロコロ違うように見えるのよ。
女性が身に着けるにしては寒色系はおかしいとかいう連中がいたけど全員蹴り飛ばしておいた。(寒色系が好きなのよ)
双子ちゃんも気に入ってるようで戦いの最中とかは仕舞ってるものの夜に大事にしつつ枕にしてる。(手触りが気に入ってるっぽい?)
私たちにその依頼をしてきたギルドの兄ちゃんにも確認したらそれで良いって言ってたし。
私の場合、一応貴族令嬢だからパーティの経験はあるけど、冒険者としてはないのよね。
だから確認したんだけど、問題ないみたい。
むしろ、私たちみたいにきっちりと身だしなみを気にする奴の方が少ないらしく大抵呼ばれるときはどこかのホールを借りて舞台の上以外に立ち入らせないようにしてたり、貴族の庭園の一部だけに連れてきたりと言ったある程度距離を開けるというか、隔離に近いような感じがほとんどらしい。
なので、しれっとパーティの貴族側に潜り込める私たちのような実用性優先でもブランドものを着こなして身だしなみも冒険者?と言えるくらいきれいな人はかなり珍しいようだ。
ギルドの兄ちゃんは、私たちの見た目と服装と、私の歌唱力からパーティに放り込んでも見た目で浮くことはないと判断してたのにまさかの私がガチの貴族令嬢だったことに驚いたというのがあの時の顛末らしいわよ。
そして、双子ちゃんの髪型は私の趣味でツーサイドアップにしておく。
理由はかわいいから!
ポニーもツインテもハーフアップも好きだけど、個人的にはツーサイドアップが一番好み(気分)
というより、私の趣味で毎日いろんな髪型に勝手に変えてるけど。
双子ちゃんがされるがままになってたり私が好き勝手に髪型を変えてもスルーすることをいいことに。
だって、髪長いんだよ?
サラサラストレートなんだよ?
そして双子なんだよ?
それなら、当然やるよね?
で、双子ちゃんからの要望(というより要請?)は、私自身も同じ髪型にすること。
まぁ、私自身髪型はどうでもよかったから双子ちゃんとお揃いという部分で喜ぶことにした。
とりあえず、そのパーティの主役へのプレゼントはいくつか用意出来たし。
そんなこんなで、パーティ当日。
私はその貴族の人の家の門の前で門番の兄さんたちが困惑した顔でチラ見してるのをスルーして双子ちゃんにお願いというか注意事項を言ってた。
「良い?パーティでは壁や天井は歩かない。」
((コクリ))
「緊急事態じゃない限りは、あっち側が言った場所以外は立ち入らない。」
((コクリ))
「食べ物は食べ尽さない。」
-どのくらい残せばいい?-
「そうね・・食堂で野郎どもが頼んでたやつの1皿分くらいで良いわ。貴族のパーティは基本的に食べ物は飾り物としか思わない奴らしかいないからまともに食うやつは極僅かだから。」
((コクリ))
「気色悪い笑顔のやつが近づいてきたらとりあえず私のところに戻ってくること。私が後で始末しておくから」
((コクリ))
「どんなに息の根を止めたくてもとりあえず顔とそいつの家紋だけ覚えておいて手も足も出さずに私のところに戻ってきなさい。私ならだれが相手でも黙らせることが出来るから。」
((コクリ))
「ただ、毒とか武器を持って誰かを狙おうとしてるやつがいたら自分たちが危なくない範囲で仕留めてよし。殺さなければ何をしてもいいわ。」
((コクリ))
とりあえず、言いたいことは言ったし、双子ちゃんはきちんと私が言ったことは守ってくれる良い子たちだからここまでにしておきましょうか。
困惑した表情でこっちを見てる門番にギルドからの依頼書と私のギルドタグを見せる。
「拝見します・・あ、あなたがギルドからの推薦の内偵でしたか。」
内偵・・異世界風に言うと覆面捜査とかまぁ、スパイとかお忍びでこっそりと護衛だったりとかをする人のことね。
私は、表向きは内偵としてひっそりと今回の誕生日会の主役であるお嬢ちゃんを守ることと、
そして、楽しませ、不安な目に合わない&思わせないこと。
まぁ、あながち間違ってないわね。
「まぁね。一応歌えるからそっち方面で招待されたついでに腕が立つ程度の認識で良いわよ。」
私のことをどうやら門番の片方が知っていたらしく私のセリフで即時に気付いた。
「あ、あなたがあのSランク冒険者の方でしたか!」
あのっていうのが、何のことなのか正直気になるけど、藪蛇はしない主義だからスルー。
「私のこと知ってたのね。」
「広場で歌っている姿を偶然。」
実はその歌、作業しながら鼻歌を歌うくらいの感覚で歌ったから超手加減してた状態だけど。
「なるほどね。まぁ、冒険者のランク程度の実力はあるから。」
「頼もしいです。あ、無駄話、失礼いたしました。そのまま中に入ってまっすぐ進んだ先にある大きな扉のある部屋に向かっていただければそちらが会場になります。」
「わかったわ、ありがとう。」
Sランク冒険者が護衛に付くっていうのは、世間一般では一番厳重で安心できる手段って認識よ。
ただ、ランクが上がれば上がるほど依頼料は跳ね上がるから、結果的にはBを中心にAを軽く添える程度に人数を増やす方面にするのが一般的。
実際、Sランクを1人付けたら、Aランクは5人くらい付けられるし、
Bランクだったら倍以上付けられる。
まぁ、私の今回の場合はギリギリAに届かない程度の値段で請け負ってるけど。
趣味みたいなものだから値段はどうでもよかったし、ギルド側で決められた値段の中で護衛を選ぶとなるとSランクを選んだら普通はギルド側が損をするばかりだし。
それもあって、門番が驚いてたり私のことを双子ちゃん連れだとしても喜んでたのはそういう意味もあったりするのよ。
さて、貴族のお嬢ちゃんの誕生日会と言っても、近所のエラそうな連中を集めるだけで各地の貴族とかは集めるつもりはない感じのパーティらしいから気楽に行きましょうかね。
にしても、双子ちゃんが選んだ誕生日プレゼント・・あれで良いのかしら?
かなり珍しいものらしいけど、実用性皆無だし、かなり気の長い人じゃないと気に入る人の方が少ない気がするし、子供のしかも女の子が興味を持つのかしら?
まぁ、そのあたりはいざって時は私が良い感じに興味を持たせるように誘導すればいいわね。