完成品を受け取って船へ・・・乗れませんでした
--ヒナ--
港町で有名らしいおじいさんに調理器具をたくさんと、私が扱う武器(鎖)に取り付けるタイプの武器を依頼しました。
そして、その翌日のお昼前です。
「よう。待ってたぜ。依頼されてたもんは無事に完成したぞ。とりあえず、調理器具からだな。」
言われてたものが一通り、希望通りできてる。
・・・ただ、気になるのは。
「あの・・サイズ別にいろいろ作ってあるのは・・。」
わざわざ1周り小さいタイプから大きいタイプで、それぞれ1種につき3つずつあるのに加え、
四角いタイプのは、ご丁寧に正方形タイプと長方形タイプでそれぞれ作られてるし、
他のもわざわざ深さを調整した分も個別で作られてる有様・・。
・・・すごい大盤振る舞い過ぎない?
日本で使ってたのと同じだ・・しかも、触った感じすごく使い心地が良い。
「実はな。嬢ちゃんが頼んだ調理器具な・・この町の料理人たちが嗅ぎ付けて自分たちも欲しいから作ってくれって言うからな・・それを勝手に嬢ちゃんのアイディアのを作った詫びだ。」
なるほど?
所謂アイディア料なんだ・・私が好き勝手頼んだのはこっちの世界にはなかったらしい。
ちらっとシルさんに視線で聞いたら、見たことがない初めて見たと頷かれた。
「いえ、詫びだなんて・・。むしろ追加でお金私が払った方が良いかな?とか思ってたんですけど。」
「いやいや。もらっちまうとこっちが参っちまう。」
「じゃあ、ありがたく・・ありがとうございます。」
お手入れも割と簡単そうだし。
ちなみに、この後、私のアイディア(故郷のをそのまま作ってもらっただけなんだけど・・)で勝手に作ってもらった料理人さんたちがわざわざそのお詫び?として、食器や、カトラリー、ボウルとかをはじめとした調理小物をたくさんくれました。
あ、食器だけど金属でできたやつから木製まで結構色々サイズも含めていっぱいあったよ。
「で、こっちが本題だ。」
武器として頼んでたやつだ・・。
「予想通りどころか良い意味で裏切ってくれたぜ。」
見せてもらうと、ぱっと見は宝石店とかでよく見かける石をそのまま指輪にしたやつ。
それが2つ。
「そいつは、基本的に嬢ちゃんの両手のそれぞれの指にはめた状態でOKだ。後は、扱うときに嬢ちゃんがイメージした形状に勝手に変化して鎖の先に取り付いてくれる。戻すときもそう願えばいい。」
そっか・・私の鎖は長さが変わるとはいえ、1本。
だから1つだけだと片方しか付けられないから2つなんだ・・。
「効果は、シンプルにひたすら頑丈であることと形状が変わるということだけだ。シンプルにしているからこそ頑丈さは折り紙付きだ。つーか、嬢ちゃんナニモンだ?そいつな・・完成したところで勝手に光って勝手に魔剣もどきになっちまったぞ?」
神様・・・もしかして、お手伝いしてくれました?
何かしました?
しましたよね!?
そんなに私、そこら辺で野垂れ死にそうな貧弱だと思われてます!?
自覚あるけど!
「・・・・」
「正直自分自身で魔剣もどきを作っちまって驚きだ・・ってか、次作れと言われても絶対無理だから内緒にしておいてくれ。」
「わかりました・・とりあえず聞かなかったことにします。」
「だな。俺も気のせい、夢だったってことにしとくぜ。」
おじいさんと揃って遠い目をしてるけど気にしない。
で、その指輪だけど受け取ったら勝手に両手の中指にはまった。
・・・指輪さんは、ミドルリングをお望みだった?
「ほう・・やっぱ、主を選ぶだけあってはめる指も勝手に指輪が決めるんか。だとしても、あまりにも味気ない質素な見た目でわりぃな。俺はデザインセンスがねぇからあえて飾りっ気のない奴しか作らねぇんだ。・・・今度それ系を勉強しようか。」
「私、このシンプルなの好きですよ。豪華な装飾なんてされたらいやじゃないですけど、恐縮しちゃって・・。」
「あぁ・・・なんとなくわかるわ。・・あ、そうだ。あの飯。すげぇ旨かったぞ。」
「それならよかったです。アレ、パン屋さんの近くにある料理店の方にレシピを渡してるので頼めば作ってくれますよ。」
「マジか。食いやすいし、腹持ちもいいからありがてぇわ・・てか、料理人たちが無理強いした詫びだとか言ってやたらと俺に食い物をくれるからようやくわかったが、嬢ちゃんが、最近有名な黒天使様だったんか。」
「えぇっと・・はい。気づいたらそう呼ばれてました。」
「最近教会から鳥肌が止まらねぇほどのヤベェ演奏が聞こえると思ったが嬢ちゃんだったんだな。すごかったぞ。」
良い意味のヤベェなんだと思う。
「ありがとうございます。ピアノはお母さんがプロで、弟子入りしてたような感じだったんです。」
「ほう・・すげぇ両親だな。」
私も同感です。
とりあえず、詳細を見てみた。
ギルドカードには当然載ってた。
装着式神聖利器
神聖石と呼ばれる透明度の高い黒い鉱石で出来た2つセットのミドルリング。
両手の中指にはめることで効果を発揮する。
装着者の心が穢れない限り決して破損せず、心が清らかな間は、軽く魔力を流せば【浄化】魔法を扱うことが可能になる。
魔剣(鎖)専用の装着武器であり、装着者の願いに合わせて自由な形態に変化する。
魔剣と合わせることで、魔剣の能力を底上げする。
ついでに、一定範囲内にいる心の穢れた相手がこれに触れようとすると神様の気分で天罰が下る。
【浄化】
魔力を対象へ流すことで、汚れや呪い、病気を消すことが出来る。
威力は込めた魔力量と、使用者の心の清らかさに比例する。
「うわぁ・・・」
「うわ・・ガチで、魔剣と同じ扱いで良いわねこれ・・。」
「マジか・・下手すれば魔剣より質わりぃぞ。主愛が強すぎる。・・・何つぅか、気を付けてくれ。」
「はい・・。でも、ありがとうございました。」
「あぁ。こっちこそありがとうな。色々と。」
「はい。」
「まぁ・・・色々想定外なことはあったけど、あんたの貧弱さからするとちょうど良いかもね。」
「それを言われると・・そうですね、としか言いようがないんですけど。」
「でも、かなりの調理器具が揃ったわね。ある程度のは見てわかったんだけど、あの上下から挟むような形のは、何なの?あれだけ、わからなかったのよ。いくつか推測してもピンと来なかったし。」
「アレ・・ホットサンドを作る時にすごく便利なんですよ。」
簡単に言うと、鉄板を上下から同時にプレスしながら焼きを入れる奴です。
挟みこんで焼くタイプには、もってこいですね。
「あ、なるほど。言われて分かったわ。確かに便利だわ。まぁ、中身の量はある程度制限しないと大変なことになるっぽいけど。」
「そうですね。でも、すごく便利なんですよ。」
「にしても、よくもまぁあれだけ思いつくわね・・。」
「実は私の故郷だと当たり前にあるモノばかりなんです。」
「そうだったの?・・かなり技術が進んでるのね・・。」
「魔法がない分技術とかが発展した世界なので。」
「なるほどね。」
とりあえず、他の旅支度で欲しいものとか揃えるモノはお薬とか消耗品とか含めて揃ったし、船のチケットもあるし、いざお船!
「船が動かせない?」
船長さんらしいおじさんが頭を抱えて教えてくれた。
「そうなんだよ・・港を船が出る先・・見えるか?」
見ると、すごくおっきな氷山がある。
「ナニアレ・・」
「あれが出来ちまってな・・どうにかしようとしたが、壊れねぇどころかたちまち修復されちまうんだよ。・・粉々にしてもな。」
「うっわ・・めんどくさ・・待てばどうにかなると思う?」
「いや・・原因があの氷山に潜んでるらしくってな・・そいつをどうにかしないとダメらしいんだが・・」
「しないの?」
「この町に対処できるほどの実力者がいねぇんだよ・・。最高でCランクになったばかりのペーペーだ。」
「うっわ・・タイミング悪。」
「だろ?こっちも困ったもんだが、下手につついて死者を出すのも嫌だし、町に被害が出るのも避けたい・・って感じで対処に困ってたんだよ。」
うぅむ・・それは確かに困った・・。
私的には急いでないけど、シルさんはお家に帰れないから困ると思うし・・。
「はぁ・・・仕方がないか・・。私が動くか。」
「姉ちゃんが動くんか?」
「まぁ・・私が動くしかないでしょうしね。」
と言いながらギルドタグを見せるシルさん。
中の情報を出さなければ、タグ自体にはシルさんのフルネームとギルドランクだけ刻印されている。
ランクアップしたりするとステータス上の数値を更新すれば自動的に刻印も書き換わるという謎。
ちなみに、ステータスだと私の目だとカタカナっぽい文字に見えるのに、ギルドタグ自体にはアルファベットっぽいもので書かれてるからシルさんだと
--------
SS
Syl Iris
--------
みたいな感じで筆記体(つなげ文字?)形式で書かれてて、かっこいいよ?
どうやら、自動的に翻訳機能が私についてるらしくその影響らしい。
異世界人特典みたいなものなのかな?(ステータスにはないけど)
「・・・マジか。」
そう言えば、シルさんって上から2番目に高いランクの冒険者で、
そのランクは、世界中の中でもかなり少ないどころか滅多にいないから下手すれば王様よりも重要な、世界中でも、ものすごい実力者さんだったっけ?
・・・私って相当幸運だったんだな・・そんな人に拾われて、気に入られて。
「そんなわけだし、これ持ってギルドの兄ちゃんに代わりに依頼として言っといて。誰が依頼者になるか知らないし、おっさんだけの問題じゃないだろうから。」
そう言って名刺を渡すシルさん。
「わ、わかった。よろしく頼む・・依頼者が俺になったら、出来るだけ報酬は頑張るから。」
「無理はしなくて良いわ。私の都合で解決するだけで依頼だからやるわけじゃないもの。」
ヤバいかっこいい・・・惚れそう。
「とりあえず、あの氷山まで行きますか・・小船かボートを借りたいわね。」
確かに、泳いで行きたくない。
しばらくすると、さっきのおじさんが戻ってきた。
「とりあえず、報酬についてはギルド側で考えてくれるらしい。で、あそこに行くんなら俺の船に乗って行ってくれ。」
「あら、良いの?」
「姉ちゃんたちなら何とかしてくれると信じてんだ。それなら、協力するのが当然の義務だろ?」
「じゃあ、ありがたく頼まれるわね。」
「おう、任せてくれ。」
それから、数分ほど私たちくらいの人数なら余裕のあるくらいの大きさの船に揺られて氷山らしき物体までたどり着いた。
「俺は、ここから先に行っても役に立たねぇだろうし、邪魔になるだろうから離れた場所に船を移動させておくから、何かあれば叫んでくれ。」
「わかったわ。」
そして、氷山というか氷の小世界に足を踏み込む。
寒いけど、シルさんのバッグになぜか入ってた人数分のコートとマフラーをみんなで纏って進む。
しばらく進むと、真っ白な毛並みの青空を彷彿とさせる瞳のおっきな狼がいた。
全長は、ざっくり10メートルくらい?
長毛種で、大変もっふもふそうだ。
「・・・・なるほどね。それなら氷山が出来ても当然だわ。」
「えっと・・あのおっきなわんこは?」
「フェンリルと呼ばれている魔物の一種よ。」
自然災害と同じ扱いされているドラゴンと同レベル扱いされている存在らしい。
氷の魔法を操る狼さんで爪や牙の威力は並大抵の金属では紙切れと同然扱いされ、大抵のけがは時間経過で目に見える速度で治るため、基本的に近づかないほうが吉という扱いなんだとか。
とはいえ、敵対しなければ基本的に攻撃してこない温厚な性格をしているらしい。
「とはいえ、こんなところでくつろがれるといろいろ困るし、相手が相手だから争いたくないし・・どうしようかしらねぇ・・。」
やろうと思えばやれることを匂わせるシルさんはやっぱりとんでもない実力者なんだと思う。
普通なら、ヤバい相手だから無理と判断するのにやろうと思えばできるっぽいこと言ってるし。
とか言ってる間に、私たちのことに気付いてジィっと見つめられる。
・・・あ、これ。
下手に動いたら敵認定される、見定め中ってやつだ・・。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
で、どうして私をこれでもかと見開いて目で見つめるのかな?
シルさん・・またあんたかって顔して私を見ないで?
ノア君とイブちゃんは、撫でたいと言いたげに両手をワキワキさせてるけど、危ないからやめようね?
気持ちはわかるけどやめようね?
私はどうするべき?
下手にリアクションして犬パンチされて犬だけにワンパンされるのは嫌だよ?
絶対全身骨折して死ぬ自信あるよ?
すると、狼さん、私の近くに近づいてきたかと思ったら、のそりと伏せをして前足をポスポスと叩き、しっぽを揺らす。
・・・・・あれ?
そのしぐさ・・見覚えが・・。
え・・でも・・・
「まさか・・・」
「ヒナ?」
ごめんシルさん・・今、ちょっとそれどころじゃない。
・・私の勘が言っている。
ほぼ確信してるけど・・多分そうだ。
・・・確認しなきゃ。
そう考えていると私の目の前でお座りしなおした。
「お手。」
そう言ったら、ポスりと前足を私の差し出した手に乗せる。
そして、当然重さは一切感じない。
「お代わり。」
反対の前足が同じように私の手に乗せられる。
そして、当然重さは一切感じない。
「伏せ」
伏せをした。
・・・ここまでは記憶通り。
じゃあ、ここからが私と、あの子との間だけのオリジナル。
「スタンバイ。」
ザっ!っと、私を背にかばう体勢で、いつでも襲い掛かれるように構えてくれる。
私は、目の前にある氷山を指さし叫ぶ。
「ターゲット、ブレイク!!」
「グァァァァァ!!!」
勢いよく振られた前足で氷山は砕け散った。
・・・・・・そして、どこかどや顔をした狼さんは私の前で伏せをする。
その姿は、どこか忠実な騎士が任務を終えて騎士礼をしてくれている光景を彷彿とさせる。
「・・・やっぱり、アイリスさんなんだね?」
「ウォフ」
当然と優しく私にほおずりしてくれて、ゆっくりとしっぽを振る。
あぁ・・このしぐさ・・やっぱりそうなんだね。
涙をこぼしながら、私はアイリスさんを抱きしめる。
「また会えてよかった・・」
「・・・・で、いい加減教えてもらえる?」
シルさんのジト目は、いろんな意味でゾクゾクするのでやめてください・・性癖がねじ曲がります。
「えっと・・・この子は、昔私がお家で飼ってた元わんこのアイリスさんです。」
「ウォフ」
どうもよろしくと言わんばかり1吠えするアイリスさん。
元々頭のいい子なんです。
「・・・は?」
「お父さんとお母さんが亡くなって、私がこの世界に飛ばされる数か月前に老衰で亡くなった愛犬でした。」
あ、シルさんが頭抱えている。
「・・・つまり、死別したかと思ったら転生してたってこと?」
「どうもそれっぽいです。さっきやり取りしてた、スタンバイから先は、私とアイリスさんだけの特別なやり取りなんです。」
アイリスさん
元、アイリッシュウルフハウンドと呼ばれるすっごくおっきな犬種で、現在見た目、ちょっぴり長毛種のサルーキ風の狼。
狼って、やっぱりわんことは見た目は、何か違うんだね。
説明できないけど見た目はやっぱりわんこと狼は違いがある・・。
とそうだった、アイリスさんだった。
アイリスさんは、近所ではすごく有名な忠犬&保護者犬でした。
犬の姿をした物語の騎士そのものとかアイリスさん以上に忠実で誠実な生き物は存在しないと言われてる有様だったし。
お出かけするときは必ず私のそばに控えて、悪い人から私を守ってくれて、
学校に行くときはお見送りしてくれて、学校が終わると必ず校門までお迎えに来てくれる子でした。
おまけに体力のない私をしょっちゅう背中に乗せてくれて運んでくれる私の運搬役も担っており、大変働き者な子でした。
場合によっては、宅配の方に書類に荷物のサイン代わりにハンコを押すくらいは出来る頭のいい子である。
「という感じのすごく頭のいい子だったんです。」
きっかけは、川で溺れ死ぬ寸前だった捨て犬の子犬だった頃のアイリスさんを私が拾ってそのまま保護して、買うことにしたのがきっかけ。
それからは、お父さんとお母さんと一緒に育てたんだけど、なぜか私に恩を感じているのか老衰で亡くなるまでずっと私のそばにいてくれた。
「あんたね・・どんだけお世話になってるのよ・・思い切りお世話されまくってるじゃないのよ・・」
ものすごいあきれた表情で見られてツッコミを食らってしまった。
けど、アイリスさんはそれが当然の義務ですからと忠実な騎士として誇りをもってどや顔してる。
その表情を見てシルさんが何か察した。
「あぁ・・・なんかわかったわ。その子・・ガチであんたの忠実な守護者だったのね・・今も昔も。」
「です。どんな状況でも私を守ってくれたんです。実際、犯罪者を捕まえて表彰された実績もあるんです。」
警察もびっくりするレベルで、完ぺきな敵の制圧と、被害者たちの保護でした。
「すごいわね・・実績持ちだったとは・・。じゃあ・・わんこ、あんたもついてくる?」
こんなにおっきくて立派な風格なのに、普通にわんこ呼びするシルさんってやっぱりすごい。
「ウォフ」
「そう・・まぁ、でしょうね。」
そして、ノア君とイブちゃんは私の仲間だと認識してからは現在よじよじとアイリスさんの背中をよじ登ってる。
アイリスさんは当然気にしないので、2人を好き放題させて放置してる。
「シルさん、アイリスさんの話してることもわかるんですね。」
なんだかんだ言いつつ、にゃんこたちの言いたいこともわかってるっぽいし。
本人曰く長年の勘らしいけど。
「にゃんこたち以上にわかりやすいわ。・・人間だったら、間違いなく騎士としてスカウトしてるやつが多かったレベルで忠実で誠実ね。」
「あ、それ。故郷でもみんなからそう言われました。昔から、私以外に一切なびかないし、どんな状況からも必ず守ってくれて、護衛してくれてたから。」
「でしょうね。」
で、連れて来てくれた船のおじさんを呼んだ。
「というわけで解決したわ。」
「・・・同行者が増えていることに関しては?」
「原因が、家の子に懐いたわ。」
転生者だとかそのあたりの説明が面倒で、下手すれば混乱の元だからあってるようなあってないような微妙な答えになった。
実際、アイリスさんは私に甘えており、背中にはにゃんこやノア君、イブちゃんが張り付いておりその毛並みを堪能中。(アイリスさんはその辺りは寛容な子なのである)
「・・・そうか。SSランクの同行者がただ守られてるような奴なわけがなかったな・・」
なぜか遠い目をしているおじさん。
「とりあえず、解決はしたんだし細かいことは気にしないことにする・・。」
ちなみにあの氷山については、私のことを嗅ぎつけたアイリスさんがスタンバイしてただけだったらしく、私と合流できたからもう用はないと言わんばかりに氷山の区画は完全に消失してます。
あんな邪魔な場所にいれば確実に通るだろうという意図もあったようです。
誰にも言えないけど、港町の皆さん・・お騒がせしました・・。
「・・・予想外な状況ですが、あのステータスでしたら懐かれるのは当然かもしれませんね。」
私の担当受付のようになってるギルドのお兄さんが苦笑いしてる。
「おそらく、災厄と呼ばれる存在の一角であるフェンリルを従魔として登録したのはヒナさんくらいでしょう。」
「災厄?」
「Sランクより上の魔物のことよ。」
魔物のランクは、主に同ランク冒険者が10人くらいの人数で対処可能なくらいの強さとなってるらしい。
1ランク上になれば1人か数名で対処は出来なくはないくらいらしい。
あくまでも基準らしいので多少のずれはあるらしいけど大雑把にそのくらいと認識して良いらしい。
「まぁ、あのステータスのことを考慮すると最も頼りになる護衛ではないでしょうか?シルさんは大変美しいですし、お子さん方もヒナさんもとてもかわいらしいですので。」
「あら、ありがと。」
実際シルさんは美人だと思う。
同姓でもクラっとするレベル。
「・・と、こちらで手続きは完了となります。念のためギルドカードを確認してください。」
「わかりました。」
名前:ヒナ・ネコ
二つ名:ピアノの黒天使
ランク:E
従魔:アイリス(フェンリル)
性別:♀
年齢:15
種族:異世界人
身分:音楽神の愛し子
職業:料理人、ピアニスト
「はい。きちんと載ってます。」
「それで完了となります。証はいかがいたしますか?」
従魔契約をした証として何か身に着けさせる必要があるらしい。
それにはいくつか種類があり、腕輪、首輪、スカーフ、イヤリング、テールリングなど色々あるらしい。
シンプルなデザインだけど、その代わり色もたくさんあるから結構選び放題。
「アイリスさん、どれがいい?」
一通り並べておく。
すると、前足でスイっと前に差し出したのは、スカーフだった。
色は漆黒。
どうやら、私の髪色で黒を。
そして、わんこだった頃は首輪ではなくスカーフを首輪代わりにしてたので、それを選んでくれたみたい。
アイリスさんは気に入ってくれてたらしい・・よかった。
「スカーフでお願いします。」
「かしこまりました。こちらのスカーフは、破れて証がなくなった・・となると問題のため、破れてもちぎれ落ちる前に修復され、直るように出来ておりますのでご安心ください。とはいえ、扱いは丁寧にお願いしますね・・。」
「わかりました。」
地味にすごく便利な機能だと思う。
後で、シルさんのお家の家紋を刺繡してくれました。
「またお世話になってしまいましたね。ほんとにありがとうございました。」
「私も困るから偶然よ偶然。」
「こちら、報酬になります。」
「無理しなくてもよかったんだけどね。」
「いえ。こちらは、正式にこの町を治める領主からの指名依頼となりますので報酬は渡す必要がありますので。」
「そういうこと。じゃあ、ありがたく受け取っておくわ。」
なんかすごい額のお金をもらった気がするけど心臓に悪いから気付かなかったことにしようそうしよう。
「それと、ヒナさん。」
「はい?」
「領主様より別にプレゼントですよ。」
「なぜに私に?」
「ヒナさんはこの町に多くのレシピや、治安維持活動の大切さを広めてくださいました。」
「結果的にはそうですけどほとんど自己都合による偶然ですよ?」
「結果が全てです。」
「えー」
「で、そのお礼を別に渡したいとのことでしたので、こちらをどうぞ。」
「えっと・・これは?」
見た目は、レンガをドーム状に組み立てたミニドーム。
サイズは大人の人1人がしゃがめばギリギリ入れそうな気がするくらい?
「こちらは、特別製の石窯です。」
「石窯?」
「はい。実はそちらは、重さを軽減させる魔法が付与された石窯なんですよ。マジックバッグをお持ちでしたので、結果として持ち運び可能な石窯なんです。」
「え・・すご。」
「料理がお得意と言いますか、お好きなようでしたので、持ち運びのできる石窯が喜ぶのではないか?と、領主様のご家族一同で会議をした結果、そちらをお渡しすることにしたようです。」
ちなみに私がばらまいたレシピによって、結果として領主さんのお家のご飯も全体的にグレードアップしたので、うれしかったんだとか。
「じゃあありがたく・・お礼を言っておいていただけませんか?」
「えぇ。喜んでいたと伝えておきます。」
私のマジックバッグが、ほとんどお料理系だけでいっぱいになりそうな勢いです。
良いけど、後悔してないし、満足してるし。
その後、軽くやり取りしたり町の人たちにお礼代わりに小麦粉をはじめとしたお料理によく使う粉ものだったり、麦や調味料(塩とか砂糖とか)をたっぷりもらいました。
うん・・・なんか想像よりもものすごい量をもらった・・。
シルさんも軽く遠い目をしてるけど気にしない。
ちなみに、あとで知るんだけど、私はこんなのを覚えたらしく、食材の持ち運びがすごく便利になり、シルさんがますます私が手放せくなったと呟くようになるのは余談。
【食材収納】
調味料から食材まで食べられるものであれば好きなだけ自身専用の謎空間に保管できる。
賞味期限を3割ほど遅延させることが可能。
それから、多くの人にお礼を言われながらお見送りされながら無事に船に乗りました。
「すごくおっきな船ですね。」
なんていうか豪華客船って感じ。
ただ、地球にあったような娯楽施設があるわけではない代わりにフリースペースが多かったり、レストランや武具のメンテナンス専用のお店や訓練施設が目立つくらいだった。
割合的には、訓練施設とフリースペースが圧倒的に多かったかな。
だから、私の場合はシルさんからいろいろ教わりつつ、魔力操作の訓練をメインに行いながらゆっくりと船旅を楽しませてもらう感じになるかな。
今年もお世話になりました。
今年の投稿はこれでラストとなります。
次回の更新は、せっかくなので、年始のゼロ時にしますので、お楽しみに。




