人外度が無自覚に上がり、人を拾ってました
--シル--
無事に誕生日会を終了させた。
で、私開催だった青空教室参加者の連中が勝手に作り出したクラン-青空組-も途中参戦したりしたけど、なかなかダンスや演技がうまかった。
あ、一応あの後お礼は言ったわよ?
ただ、本人たち曰く私をサポートする集団としてふさわしい存在になるためにいろいろ頑張るとかなんかほざいてたけど、気にしないことにした。
・・・なんか、気づいたらあちこちにはびこってたりお父様やお母様が勝手に私の親衛隊扱いしそうな気がするけど気のせいということにする。
「シル様、ホントに今回はありがとうございました。」
改めてギルドに言って、今回の依頼を出したギルマスらしい兄ちゃんに完了報告を出したところよ。
報酬はまぁ、ぼちぼちね。
元々報酬目当てじゃなかったから問題ない。
「良いわよ。色々と面白かったし。」
後、言い方は悪いけど手持ちに無駄に溜まりまくってたものを有効活用するのもかねてお嬢ちゃんにプレゼントしまくったから手元がすっきりしたし、お嬢ちゃんも申し訳なさそうにしつつも有効活用してくれそうだからWinWinってやつよね。
「一応、あの後ですがシル様が対処してくださったことをきっかけにこの町に潜む膿をすべて出すことに成功し、芋づる式にいくつかの違法組織の壊滅もできました。」
「あら。意外と規模が大きかったのね。」
「はい。これに関しては予想外に大規模でこちらも驚きました。おかげで、他の町や国からも感謝の声が上がってますよ。」
「まぁ、大掃除が出来たならそれでよかったわ。」
「で、まず皆さんランクを1つずつ上がっております。」
双子ちゃんがEからDへ。
そして私がSSに。
「あら、双子ちゃんはともかく私も?」
普通、冒険者はAランクから上に上がるたびにいろんな審査とかがあるからいわゆる面談があるのよ。
実力等は依頼の達成数や相手さんの満足度からある程度分かるし、あとは退治した魔物の換金をしたりするからそういうのからの推測になるわね。
ランク問わず。
「はい。今回の活躍や他の者たちへの指示だしの的確さ。そして、シル様の人柄も問題ないと全員が判断しましたので面談は不要となりました。」
元々私をSSランクにしたいという声は多いとか耳にしたから今回のことをきっかけにやっちゃえ♪ってなったんでしょうね。
まぁ、もらえるものはもらっておくわ。
面倒だから無理してあげなくていいやーで放置してただけだし。
ちなみに、私はこんな感じで軽い扱いしてるけど、Sランクだけでも世界中で数十人ほどしか存在せず、
そのさらに上であるSSになると十数人しかいないと言われるほどかなり貴重というか、とんでもないものだったりするんだけどね。
下手すれば、国王よりも貴重な存在という扱いになったりする。
だから、ツンデレちゃんたちは私がSランクと聞いて驚いてたりするのよ?
一応言うと、一人前と呼ばれるのはDランクに入ったくらい。
C~Bがベテランと呼ばれるランクで、ある程度の期間以上に冒険者を務めているとそのくらいで、全体的に言うと最も長い期間とどまるランクとも呼ばれ、
そこからAランク以上を目指すのはかなり向上心があるやつくらいで、大抵の連中はBランクになれば大抵のことは困らないのでそこで満足する奴が多かったりする。
私も後者だったんだけど、敵という敵を片っ端から潰して回ってたらSランクまで上がっちゃったのよね。
しかもその潰した敵の中にかなりヤバい奴がいたり、偶然始末した奴の中に世界中で指名手配されてるような危険なやつがいたりしてそういうのをどうにかしちゃった結果、予想以上に評価が上がっちゃったのよね・・しかも私が無理してランクを上げたいとも思ってなかったから大抵のこと・・報酬とかランクアップの推薦とかは粗方断ってたから余計に評価が上がってね・・気づいたらSランクだったわ。
「そう。」
「そして、別で、こちらが追加報酬です。」
「あら?良いの?というか、さっきのランクアップが追加報酬かと思ってたんだけど。」
「むしろ、それを渡してほしいという声も上がっているのです。こちらをお渡しするのが本命で、ランクアップはついでにランクアップする条件を満たしていたため同時に・・となったようです。」
「ふぅん。ありがたく受け取っておくわ。」
もらったものは、櫛とブラシのセットだった。
いろんな種類とサイズのものが入っており、軽く見ただけでもかなりの高級品だとわかる。
しかもご丁寧に、にゃんこ用と私たち人間用と別々で揃えてある。
「シル様は女性ですし、猫を多く連れているということもあり、実用性重視で櫛やブラシが良いだろうと話し合ったそうですよ。」
確かに櫛とかはブラシは私も双子ちゃんにも、そしてにゃんこたちにもよく使うわね。
「へぇ。かなり気を使ってくれたのね・・すごく良いものじゃない。」
かなり高価なものだと軽く見ただけでもわかる。
使い心地から素材の良さまでとことん追求してるっぽいから相当高かったんじゃないかしら。
「気合を入れたそうです。皆さんには喜んでもらえたことを伝えておきますね。」
「えぇ、よろしく。」
「では、いよいよこちらを出発ですか?」
「そうね。必要なものは揃ったし、色々もらったし、双子ちゃんにもある程度教え込むことが出来たから後は私の家に向かいながらで問題ないくらいね。」
消耗品や必要なものとかは揃ったし、ある程度のお金もためることが出来たし、
最悪、双子ちゃんたちだけでも旅が出来るくらいにいろいろと教え込むこともできた。
まぁ、消耗品とか備品等はいろんな連中がくれるから想定以上に揃ったけど、まぁいいわ。
「シル様がそうおっしゃるというだけでもお子さん方の優秀さが垣間見えますね。」
「ほんとね。そういえば、私の歌、聞けた?」
「えぇ。幸運なことに。」
実はこの兄ちゃん、あの屋敷の友人が心配でひっそりとあの商会の爺さんの連れのメンバーの中に紛れ込んであの中に参加してたのよ。
上手く変装してたからほとんどのメンツは気付いてなかったけど。
「噂以上で、大変驚きましたし、感動しました。」
相当嬉しそうに語るのでお気に召したようで何よりよ。
「それは良かったわ。」
実は歌うのが好きだけど、他人から頼まれるとやる気をなくすという天邪鬼な性格を私がしてただけだったんだけど、気づいたらレア度が高い歌い手という扱いになっただけだけど、感動してくれたんならまぁいいや。
「あ、そうだ。双子ちゃんのファミリーネームの件、なんかわかった?」
双子ちゃんのステータスを知る数少ない人だからついでに調べてもらうように頼んでおいたのよ。
「あの件ですが・・。残念ながら・・。」
「そう・・やっぱり。」
「ですが、もしかするとという情報はありましたよ。正直確信はありませんが。」
「それでもいいわ。」
「可能性の1つですが、お子さん方の本来のファミリーネーム持ちがはるか昔に所属していた国が滅んだことでお子さん方の祖先となる一族はいわゆるどの国にも所属していない未所属の状態となり、そのままだったことで正式な名前も一族も忘れ、そういう表記になったという可能性です。
後は、所謂神に仕える一族であることと、加護持ちであることでお子さん方を神様が守るためにあえて表記をぼかしているという2点ですね。」
「1つ目は、どの国の一族かも忘れるくらい古い昔にすたれた結果、本人たちも自分たちがファミリーネーム持ちだと無自覚でそのまま表記がなくなった・・けど、ファミリーネームを持っているのは確かだから表記があんなことになってそのままになってるということ。
あと1つは、神様とのつながりが強い一族であることと元々神様に愛されてるからこの子たちを守るためにあえてどこの子かわからないように神様がぼかしてるかってことね?」
「大まかに言うとその通りです。ただ、あくまでも推測とそういうおとぎ話のような古い文献を見つけただけです。」
この子たちからすると2つ目の方が確率が高そうだけど。
最初の1つ目の方はちょっと心当たりがあるけど確信がないから頭の端においておくことにしておく。
それもお父様とお母様に相談してからね・・。
「それでも十分よ。それだけ情報があれば後はお父様たちに頼めばどうにかなるわ。そのきっかけ部分がないとお父様たちも調べようがないもの。」
「お力になれてよかった。」
「ほんと助かったわ。」
ちなみに、この兄ちゃん。
双子ちゃんの影響で特定の野良猫が2匹は必ずそばに控えるようになり、その子たちをそのまま飼うことにしたらしいのは余談。
「ほんと世話になったわね。」
「こちらこそ。色々と感謝してます。」
「じゃあ、またね。」
「はい。お気をつけて。」
「女神様!」
と、町から出ようとしたら教会の連中から止められた。
「・・・・何。・・挨拶はさっきしたでしょうに」
「いえ、1つお渡しするものを忘れておりましたので。」
「なんかあった?」
「どちらかというとジェミニ様用の衣装を準備いたしました。」
私は双子ちゃんのことを双子ちゃんと呼ぶけど、教会側の連中はなぜかジェミニ様と呼ぶ。
そして、冒険者連中というか双子ちゃんの二つ名を知る連中は、双子ちゃんの二つ名を略してジェミニと呼んでいるので、基本的に2人揃ってジェミニという名前のバディか何かだと思われてるけど、双子ちゃんは気にしない。
「へぇ。あんたらがそういうってことはそれなりに防具としても優秀ってことなんでしょ?」
「はい!もちろんです!本当は女神様の服も準備をしたかったのですが、女神様の場合はご実家側でより優秀なものを準備しそうでしたので、せめてジェミニ様方だけでもと思いまして。」
「あぁ・・・確かに、私の場合は帰ったら私専用の衣装を準備しておくとか言ってたわね・・双子ちゃんの分はありがたく受け取っておくわ。」
というわけで早速着てもらった。
テーマは妖精。
ぱっと見ドレスのようで、神官服に似せたようなドレスのようでパンツスタイルの不思議な服。
生地はどれも透明で透けているように見えるのに向こう側は透けて見えない。
あちらこちらがふわふわ、ひらひらしているのに飾り気はほとんどないシンプルなものなのに、動きやすそうというホントに説明に困る服装。
たしかチュールとか言ったかしら?そんなやつ。
けど、男の子でも女の子でもどちらが来ていてもおかしくないようにデザインされており、全体が淡い青と緑をグラデーションにしたようなものだった。
「へぇ。すごくかわいいじゃない。」
「テーマは、森の奥深くにある教会に住み着く妖精です!」
すごくしっくりくるテーマね。
「触れられそうで触れられない。見えそうで決して見えない。動きにくそうで動きやすい。親しみやすそうで恐れ多い。シンプルなのに豪華というある意味での矛盾にしてみました。男性用の神官服を妖精を彷彿とさせる衣装に改造してみました。」
別の言い方をすれば幻想的・神秘的・神聖的なものをテーマにした感じかしら?
「双子ちゃん、感想は?」
-ひらひらふわふわしてるのに軽くて動きやすい-
-スケスケなのにスケスケじゃない-
どうやら気に入ってるらしい。
効果としてはこんな感じらしい
双子妖精の衣装一式
淡い青から緑のマーブルな透明感が高いのに決して透けていないという不思議な衣装。
神官服をベースとしているため、長ズボンにシャツという実はとてもシンプルなものだが、付け袖や付紐などを機能性を阻害しないようにうまく装飾されている。
白と淡い水色のマーブルなオーバーニーソックスもセットになっている。
主な効果は、周囲へ同化し、自身の存在を認識しにくくし、匂いも一切周囲に感じさせない。
身体的&精神的疲労が溜まりにくく、あらゆる呪いや状態異常への耐性を状況に合わせて作り出す。
サイズも自動調整され、薄そうに見えて適温を保たれてる。
たとえ破れても簡単に直せる。
様々な神のお気に入りの衣装のため、この衣装をまとった状態で舞うことで自信を中心とした周囲一帯のありとあらゆるものを浄化する。
双子でお揃いで着ることで効果を発揮するため、片方だけが着ていてもただの服である。
ちなみに、商会から購入した”防魔の付け袖”や”飛脚のジャンプブーツ”は、この衣装に合わせて全て色を白を基準とした淡い色に改良されてたりする。
そのどの色もマーブルにグラデーションになっているため、それらが重なり、いくつもの水の波紋が重なるような、神秘的な印象を醸し出しているように感じるから双子ちゃんの神秘的というか幻想的な印象がますます強まっているような気がする。
すごくかわいいけど、これで余計に双子ちゃんが妖精さん扱いされる確率がぐっと上がった気がする。
まぁ、かわいいし似合ってるから良いけど。
効果もすごく良いと思う。
「すごくかわいいし、効果もすごいわね。ありがたく使わせてもらうわ。」
ますます人扱いされる確率が下がった気がするけど、こいつらが言うにはこの衣装を見れば教会関係者が嬉々としてかわいがっていることに気付く奴は気付くらしいので一種のけん制になるんだとか。
それなら、蹴とばす連中の数が減るから楽になるし良いか、かわいいし(そこが一番大事)。
「お気に召していただけたようでよかったです。では、お気をつけて。」
「ありがとうね。」
「いえ。こちらもこの衣装をジェミニ様が身に着けていただいて感激ですので。」
ありきたりの装備の予定が双子ちゃん専用装備が揃ってしまった。
予想外だったけど、双子ちゃんも動きやすいのにふわふわひらひらしているのが気に入ってるらしくちょこちょことあちこちに動き回ったりにゃんこたちもそれらにじゃれついてる姿がほほえましい。
ちなみに、
ツンデレちゃんたちのクラン一同は、私たちの数日後くらいにあの町を旅立つらしいわ。
その後のプランとしては、私や双子ちゃんたちとの出会いをきっかけに、世界各地を巡って恵まれない人たちの手助けをして回ることにしたらしいわ。
私が挙げた教科書をベースに私がしてたような青空教室を各地で行ったり、悪事を働く連中を対処したりとまぁ、人助けやサポートをすることを決めたそうよ。
後、ツンデレちゃんたちの元から離脱してたわんこの獣人については世界各地の絶景を見て回る旅に出かけたわ。
私が軽く世界各地には、あらゆる絶景が存在することと、軽く本に出てるような名所のいくつかを話したところそれを見て回りたいと思ったみたい。
後は、人助けをしたり、いろんな人の話を聞いてどんな人がどういう人生を送ったか聞いてみたりしたいとも言ってたわね。
どうやら広範囲で好奇心が多いらしくそのあたりを自由に堪能することにしたらしい。
で、町を出たんだけど、その時に町民たちから大量の毛布とでかいテントをもらった。
確かツールームテントとか言うやつらしいわよ。
私はよくわかってないけど、使い勝手は良いし、広くて快適そうだし。
主ににゃんこが大量にいたりするからその関係で広く、そして毛布をたくさんということらしい。
ベッド代わりにちょうどいいし、いざとなれば割と使い勝手は良いしね。
それと、双子ちゃんの衣装がこんなことになったことでガチの妖精さんと思ってる連中がものすごく多かったけど、気づかなかったことにしてスルーすることにした。
後、なぜかお嬢ちゃんの家の方からお礼としてフライパンをもらった。
ちなみに、ただのフライパンじゃない。
深めのフライパンなのに加え、焦げ付かず、汚れも魔力を流し込むだけで奇麗になるし、このフライパンで料理をするとえぐさや灰汁などの余計な成分?とかを除去してくれたり、調味料が非常に少なくてもおいしくなるように素材の味を活かしてくれたりと大変すごいフライパンなのよ。
こんなすごい奴もらってもいいのか聞いたら、そのくらいお世話になったんだからもらって欲しいってことだった。
町を出てからは、訓練代わりに走って歩いてを繰り返しながら進んでいる。
逃げて生き延びるにしろ、戦って生き抜くにしろ、どちらにしても体力がないと始まらないからね。
と言っても毎日毎日何度も何度もというわけじゃないわよ?
間に採取だったり、採掘だったり、狩りだったりといろんなことを1日ずつ挟みながらよ?
双子ちゃんたちもそれで楽しそうだし、私も楽しいし。
で、何日か野営をしてる中でふと気付いた。
私に丸洗いされても良いからついてくる宣言したにゃんこたち・・優秀すぎる。
気付くと、数匹ずつで連携してご飯代わりにお肉を確保してたり、
野草や山菜、木の実などの食べられるものや薬草を拾ってきたり、
野営に適してそうな場所を見つけてきたり、
水浴びや、飲み水に困らなさそうな場所を見つけてきたり、
ちょっとした絶景ポイントを見つけたりとまぁ・・・優秀優秀。
おまけに、双子ちゃんに負けないレベルで警戒心が強いから寝てる最中でも敵が近くに来たらすぐに気づくし、大抵の連中はにゃんこたちだけで倒しちゃうし・・双子ちゃんと一緒にお勉強も聞いてるし。
・・・
下手な人間を護衛にするよりも優秀だしかわいいからむさくるしくないし、うるさくないから・・・すごく良いわ・・にゃんこ。
そして、そんなにゃんこたちにいろいろと教わってるらしい双子ちゃん。
狩りの仕方や気配のごまかし方、敵の見抜き方、あらゆる音の消し方などなど・・あらゆる意味で生き抜くことを私とは違う目線・考え方をにゃんこたちが双子ちゃんに教えるからますます人間扱いされる確率が下がり、警戒心等が上がる上がる・・。
そんなことしてるから双子ちゃんが人間扱いされないのよね。
まぁ良いか。
悪いことじゃないし。
楽だし。
かわいいし。
で、野営中。
町で気に入って購入してたステンドグラスのランタンを隣に置いて読書してたら
「にゃっ!」
「ん?・・どしたの。」
さっきまで双子ちゃんと揃って月を眺めてたでしょうに。
大抵にゃんこが私を呼ぶときは何か見つけたか拾った、感知したときが大半
で、私を呼ぶにゃんこを見るとちらっととある方向をじっと見てる。
「あっちになんかあったの?」
「にゃう!」
なんかあったらしい。
で、双子ちゃんがいない・・あぁ・・。
「双子ちゃんが見に行ったのね。」
で、私を呼んだと・・そしたら肯定する旨の返事が来た。
まぁ、私も周囲を軽く警戒してるけど、こういうスキル持ってるし。
【熱源探知】
自身を中心とした熱を探知する。
鍛錬と練度次第で、探知範囲と精度は向上する。
つまり、熱・・無機物じゃなければ全ての生物は必ず体が温かい。
だから、私は感じ取ることが出来るし、どこにどう潜んでいようとも認識できる。
双子ちゃんに危機が迫ってないのはにゃんこたちのリアクションでわかるからとりあえずは安心。
「とりあえず、危険じゃないっぽいし好きにしていいわよ。」
「にゃ!」
うーむ。
やっぱりにゃんこ良いわ。
と思ってたら、双子ちゃんが戻ってきた。
「・・・・・」
とんでもない拾い物をした状態で。
「・・・それどうすんの。」
-飼う-
「・・そっかぁ。・・本人の気持ち次第では諦めなさいよ?」
双子((コクリ))
にゃんこたちが私を呼んだ理由がよく分かったわ・・。
拾い物をしたときは元の場所に返してきなさいという定番のセリフを言うべきなんだろうけど・・どう見ても訳ありっぽい生き物だし・・・しょうがない。
というか、人間をとうとうこの子たちは拾ってきちゃったかぁ・・。
やせ細ってぼろい服を着てるのに加え、あちこちケガしてるし見たことない衣装・・どう見ても訳ありじゃないのよ!!
--???--
痛い・・体が痛い・・。
でも体が痛いと感じるということは、生きている証。
どうにか生き延びることが出来たんだ・・よかった。
あ、初めまして。
寝子ヒナって言います。
学校からの帰り道にのんきに頭の上の雲を眺めながら歩いてたのが悪いのかマンホールのふたがない穴にきれいに落っこちて気付いたらコスプレ会場にいました。
しかも全員ガチ勢です。
いい年して王様や大臣、姫っぽい服装の人から、剣まで準備して鎧も来てる騎士の人なんて銃刀法違反まっしぐら。
なのに全員それが当たり前という感じになってて正直ヤバい場所だと思った。
そんなところのど真ん中に私は落っこちてきたんだけど、その後は正直必死だった。
だって私人見知りなんですよ!
しかも、友人からはお前は考えていることが全部口から出ていく口にかかってるカギが壊れてるからとりあえず物理的に口をふさぐ癖をつけろと真顔で言われたんだよ!
それにですよ?
窓の外には明らかに地球にはいなかったと思われる謎の生物が飛んでる。
・・・・うわぁ。
ファンタジーな世界に来ちゃったよ。
どうすんのさ。
と現実逃避してる間に、ここから逃げないとヤバいと思った。
こういう時の勘は大抵あってるんだよね。
しかも、本名を知られたらもっとやばい気がした。
ここで役立つのはオタク知識!
まずは足元をチェック!
明らかに魔法陣らしき物体。
周囲を見る
魔法使いですという人たちが十数人もいるけど全員倒れて顔が青い。
うん、アウトですね。
どう見ても無理やり人数を集めて召喚した的なやつで私は呼び出されちゃった感じだね。
と、考えてる間に周囲にいたメンツが私に近寄ってきた!
足元の魔法陣らしき物体と、オタク知識で1つの賭けをする。
お金がなかったから頑張ってぶりっ子してオタ友に漫画を貸してもらってた。(ぶりっ子は漫画を借りる条件だった)
「なっ!何を!!」
「せぇい!!」
ブーツの中に隠し持ってた小型ナイフ2本を足元の魔法陣に盛大にあちこちに傷を作りまくる。
今は亡き両親(親ばかだった)の形見である小型ナイフを仕込めるブーツでよかった!
ありがとう!半透明になっちゃったお父さんとお母さん!
そして、適当に懐に隠し持ってた彫刻刀で適当な文字(梵字)を書き込む!(おじいちゃんが教えてくれた)
それを見た周りは慌てて私を捕まえようとするけど、オタクの勘で自分の中に眠る魔力を無理やり魔法陣らしき物体に流し込みながら周囲にも牽制代わりにまき散らす!!!
そして、私はフラッシュバンを自信を中心に発動させながら足元の魔法陣が光る。
魔法陣が私を吸い込みどこかに連れていくのを感じ取りながら、自身の中に眠る残りの魔力を絞り尽くしてこの魔法陣を壊せるように頑張ってイメージして爆破!!
私はとんでもない自分が発動させた衝撃波に魔法陣の中に押し込まれながら意識が真っ暗になった。
ちなみに、私を呼び出した場所だが私は知らないけど、
私がやりたい放題大暴れしたことでその召喚用の魔法陣は跡形もなく消し飛ぶどころか魔法陣に籠ってた魔力も使ってあの建物一帯をすべて消し飛ばし、近くに置いてあった爆薬庫に火がついて爆破と大連鎖が起きてその国は全体が半壊し、かろうじて生きていたメンバーは私のフラッシュバンで失明。
その隙にその騒動を嗅ぎつけた周囲に住んでた魔物がその国を襲い、国は滅んだそうだ。
とはいえ、その国は黒い噂が飛び交うすごくヤバい国だったそうなので周囲の諸国一同は悪が滅んだだけだしまぁ良いかと放置することにしたとのこと。
後、私が適当に傷をつけて適当に書き加えた結果、魔法陣は、
天涯孤独な誰かを異世界から適当に召喚する魔法陣だったものが
発動すると周囲をもろとも爆破して消し飛ばし、魔法陣を発動させた人をランダムに適当な場所に転移させる魔法陣(ただし使用回数1回)に変化してたそうな。(ミラクル!)
そして、目を覚ますと
「・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
にゃんこのドアップ・・。
びっくりした・・。
そして周りを見渡してもにゃんこのドアップ・・あの近い・・。
というか私にゃんこ団子に埋もれてる?
ガチで手足が一本も動かないんだけど。
いや可愛いけど・・そんなに私のこと揃ってジィっと見ても面白くないと思うんだ。
だからよけてくれると嬉しいなぁ・・可愛いけど、モフモフで温かくて心地よいけど。
体が痛く・・・・ない?
おかしいな・・私、病弱でお金がなかったから肉体的な防御力&耐久力は紙だったはずだからあれだけ盛大に吹っ飛んだら全身骨折のはずなのにどこも痛くない。
自分の状況を確認したいのにどこを見渡してもにゃんこ以外何も見えず、動かせないから確認できない。
どうしよう・・可愛いけどどうしよう。
あ・・うん、ありがとう。
気持ちはうれしいけど私を毛づくろいしなくていいから・・。
「あら目を覚ましたのね。」
奇麗な透き通るような女の人の声がする・・・けど、にゃんこしか見えないからどこにいるかわからない。
「はぁ・・にゃんこ共、どけ。面倒見てくれたのは良いけど近いわ。動けないでしょうがその子が。」
そのセリフでにゃんこたちが全員瞬時によけてくれた・・けど、私のそばから離れないらしい。
・・そういえば、私昔からにゃんこに懐かれやすかった気がする。
理由はわからないけど、外でぼんやりしてると気付くと猫に囲まれてるのは割とよくある光景だった。
そのため、オタ友からは猫寄せ天使というよくわからない呼ばれ方されてたけど。
と、そうだお礼言わないと、多分私を助けてくれたのはこの人だからと思って声のする方を見たら。
女神様がいた。
にゃんこを従わせる絶世の美貌の巨乳美女がいるぅ!?
ここは、怪しげな雰囲気の美女が定番なのに!
すごくおっとりしてそうな雰囲気の巨乳美女がいる!




