ツンデレちゃんを骨抜きにしてしまった・・
--シル--
本来の目的である屋敷に潜んで馬鹿をやらかしてるアホ共の駆除や証拠等の確保に関しては、屋敷の敷地内に入ってからずっと気になってしょうがなかったらしい双子ちゃんがしっかり終わらせた。
ちなみに、双子ちゃんにボロボロにされて捕まってた連中が人によってはしっかり目つぶしされたり、
耳の鼓膜破壊をされたり、喉を潰されてたりしたのは、どうやらそいつらはそれらの部位に関する能力持ちだったため、それらを使わせないようにするための対処だったようだ。
後、腕や足の骨や腱をしっかり切るか潰して対処してたのも逃げられないように。
相手を無力化させる際に狙う場所等を色々と教えてたけど、それをしっかりと実行したようだ。
まぁ、気配等をしっかり消した状態で死角から不意打ちでいきなりそれらの場所破壊をしたようで相手からすると突然やられて、反撃する前にしっかり縛られてたことも踏まえて、いろんな意味で動けなくなったという状態で目を覚ました後も非常に混乱してたのに加え、よくわからないものに襲われたということで常時挙動不審だったとのこと。
で、ツンデレちゃんを筆頭としたクランのメンツがようやく私が虹の公爵令嬢と呼ばれている芸術の国のイーリス公爵家令嬢だと気付いた。
その結果、ツンデレちゃんをちょっと構いすぎたせいで顔を赤くした状態でぐでんぐでんになってしまい、クランのメンツから私の胸は危険だから不用意に埋めるな、埋めるなら双子ちゃんだけにしろと言われてしまった・・まぁ良いけど。
「で・・・ご当主様・・申し訳ありません。この後我らが演奏と我らのマスターが歌を歌う予定なのですが・・その・・」
「あぁ・・・大丈夫だ。落ち着いてからで構わない。」
当主のおっちゃんが苦笑いしてる。
「・・申し訳ありません・・お気遣い感謝します。」
私の胸に埋もれた・・訂正、私が自主的に嬉々として埋めた結果、ぐでんぐでんになって使い物にならないというか、かわいいことになってるツンデレちゃんが歌を歌う予定だったけど、言った通り、ぐでんぐでんになって動けないというか反応しないので一旦ストップになった。
「その・・シル様。伺いたいことがあるのですが・・」
夫人が私に声をかける。
どうやら、しばらく歌や演奏がないのでその間の暇つぶし?で私に何か尋ねることにしたらしい。
「言葉遣いは崩していただいて構いませんよ。それで聞きたいこととは?」
私が身分的には上と言っても、個人的には年功序列を優先したい気分だし。
「では・・ありがたく・・。あなたのお母君とお父君は大変優秀で、夫婦仲も良好とは聞いてるのだけれど、その出会いはどういうものだったか・・とかそういう部分を聞きたくて・・。」
周囲で私らの話を聞いてた連中も興味があるらしく私に視線が集まる。
「あぁ・・・それですか。ちなみに、どういう風に聞いてます?」
「噂程度だけれど、学園で意気投合してそのまま婚約したという程度ですわ。」
ちらっと周りを見ると全員が頷いているので、世間的にそういう認識らしい。
「まぁ、大雑把に言えばその通りですね。」
「そうなの?」
「えぇ。家の血筋は、母が嫁入りしたんです。母は元々根無し草であちこちを放浪する冒険者だったんです。」
お母様本人としては、旅人というか旅芸人の親戚というか、そんなポジションだと認識してたようで、平民とか貴族とかとは、まったくかけ離れた存在だとずっと思ってたらしい。
そのため、のんびりした人だけどおとなしくないんだよね・・あの人。
常にその場にとどまるということを知らない・・。
「そうだったの!?・・そのご実家はどちらの・・。」
「聞いた話だと遠い昔に滅んだどこかの大国の王族だったとか。」
それも、最低でも5~6代以上上のすっごく昔の祖先が幼少期に・・とからしいので、ガチでどこの大陸のどういう名前の国だったかなんてさっぱりわからないらしい。
お父様が一応調べたことはあるんだけど、あまりにもお母様の家系があっちこっちにとにかく短期間でガチで世界中を縦横無尽にウロチョロし続けてたことから無理!となったので気にしないというか忘れることにしたらしい。(最長滞在期間が約30日)
そのため、実はそんなお母様の過去を知りたいというだけの理由で過去にお母様の一族がウロチョロした場所を片っ端から調べる特殊部隊(という名の旅団)がいたりするけど、ガチでその人たちの趣味。(ちなみに進捗は皆無)
「あ・・申し訳なかったわね。」
「いえ。ただ、あまりにも遠い昔に滅んだらしいので、母の認識としては根無し草であちこちを放浪する一族に生まれた1人という認識で王族どころか貴族という認識は皆無のようでした。」
なので、礼儀マナー等は良いのに身分をきれいに無視して行動するから周りがものすごく振り回されてたり。(よく城下町の露店で出没する)
「なるほど・・そこからどういう風にあの国の学園へ?」
「母は腕は立つので上位ランクの冒険者として世界を放浪してたそうですが、ちょうど家の国に立ち寄った時の年齢が入学できる10歳くらいで、本人の性格が、とてものんびりというか、マイペースというか、おっとりとした穏やかな方なんですけど、それでいて好奇心旺盛でいろいろ学んでみたいと思いつつ、なんとなくその場のノリと勢いで入学試験を受けてみたくて試しに受けてみたら、ついうっかり受かったのでもったいないし・・ってことで、そのまま学園に通うことになったようです。」
合格後のことは全く気にせずにとりあえず入学受験がどんなものか知りたかっただけだったらしい。
全員「・・・」
母のあまりにも行き当たりばったりに全員が絶句。
のんびりしてるけど割と自由気ままで考えるより動くタイプなのである我が母は。
「けど、母の家族は母に貴族としての礼儀やマナー、知識などはしっかり教え込んでいたことと、見た目が奇麗な方だったのと、あの国の学園は身分は無視しろという方針だったからうまく溶け込んで学園生活を満喫してたようです。」
そんな一族は相変わらず世界中を放浪してるので現在どこにいるのかは不明。
「な、なるほど・・・。」
「で、先ほども言った通りのんびりしていて、一見弱そうで、チョロそうに見えるので見た目につられて嫁にしようと考える輩は多かったようですが、のんびりおっとりしていてもしっかり反撃して相手にトラウマを植え付けるレベルでやり返す人だったので、いろんなやり方で突撃する人のトラウマを順次作っていく光景が一時期学園の名物になってましたね・・それでいて、告白しないと落ち着かない馬鹿どもが多かったとか何とか。」
見た目もおっとりした見た目も相まって、幻想的に見えたのだとか何とか。
口で言い返す前に手が先に出るタイプなのに・・知らない馬鹿は地獄を見る。
全員「・・・」
「そんな騒ぎの中、偶然おっとりと微笑みながら相手をぼこぼこにしてる母を父が目撃したらしく、一通りの騒ぎが落ち着くまで楽しく見学したところで、色々と気になったらしく、世間話ついでに軽く会話をしてみたところ自身と似通った点が色々と多く、当時は息の合う友人付き合いという感じで勉学や戦闘、魔法を教えあう仲だったようです。」
ちなみに、父と母が楽しく会話をする光景は互いの見た目も相まって大変すばらしい光景だったそうだがその近くにはのんびりと微笑んだお母様がぼこぼこにした連中が転がってる状態だったので周りはツッコミを入れたくても入れられない何とも言えない光景だったとか。
「出会った当初は、息の合う友人という感じだったのね。」
「らしいです。で、休みの日に一緒に遊びに出かけたり、依頼を共に受けたりと仲を深め合いながら、だんだん友人から親友というか、ソウルメイトという感じにランクアップしたようで、最終的に学園の寮生活をしていた母を父の家である屋敷の1部屋を好きに使えと部屋を貸し出し、そのまま一緒に学園へ登校、下校を共にする時間が増えていったようです。」
片方は公爵家の次期当主だというのに平気で国内のあちこちを平民並どころかそれ以上にウロウロするほどのフットワークだったから同級生一同がひっそり護衛代わりについてきてくれてたらしい。
本人たちは普通に強いから護衛なんて邪魔だろとか笑顔で言ってたそうだけど自分の身分を考えろよ!と全員が総ツッコミをして頑張ってついてきてたそう。
だけど、露店の方々に関しては先祖代々お父様の一族は国内を身分を無視してウロチョロしてたから慣れっこだったため、笑ってスルーしてたけど。
「それって・・・」
なんとなく察したようですね。
「えぇ。両親曰く、のちに考えると息の合う友人だったのではなく互いに一目ぼれだったのではないかとのことでした。」
ガチで2人とも気づいてなかったようです。
2人を毎日見てる周りの人たちは最初に出会って楽しく会話をした数日後には恋人同士だと思ってたのだとか。
「そして、仲を深めていくうちにさらに好きになっていったのね。」
「そのようです。当時は周囲は恋人同士どころか夫婦と認識するほどの仲だったようですが本人たちは全く気付いてなかったようです。」
そのくらいツーカーの仲だったのと、そのくらい仲が良かったのよ・・当時から。
「なるほど・・。」
「で、ある日、馬鹿な企みをして母を狙う馬鹿が出まして、傷物になることを狙った屑が出没しまして。」
どうしてもおっとりのんびりした美女であるお母様が欲しかった馬鹿がいたらしい・・お父様の逆鱗に触れることも知らずに。(お父様は仲の良い人を大事にする人から・・)
「!?」
芸術の国の最終兵器の片割れの逆鱗ほど恐ろしいものはないでしょうにね・・。
「そんな情報に偶然気付いた父は、とりあえず企んだ連中を片っ端から根こそぎ始末することにしたらしく。」
相当気に食わなかったのと、当時からお母様のことを大事にしてたから、そいつらを自分の手で始末したかったんでしょうね。
「学生・・だったのよね?」
「です。」
学生がよくわからない連中を単独で始末しようとしてる時点でおかしいのが現実。
「当時からそういう方だったのね・・」
ちなみに、学生時代からそんなことをしてたので一部では悩み事やとんでもないトラブルが発生したときは私のおじい様やおばあさまではなく、なぜかお父様を頼れという認識が強いらしく、そのためだけに我が国にやってくる人がいたんだとか。(趣味と実益を兼ねてたとか)
まぁ、お父様は割としょっちゅう国内をウロチョロしてたから遭遇率が高かったんだろうね。
おまけに、いろんな意味で見聞を広めたいとかで割と片っ端からそういうトラブルに頭を突っ込んでたらしいし。(それで小遣い稼ぎをしてたんだとか・・お金に困ってなかったのに)
「政治的にも物理的にも始末を、母に言わずにちょっと野暮用程度に説明していたところ、母もそのあたりの勘が働く方なのでさっさと父の行動を見つけ、とりあえず参戦して共に始末することにしたようで。」
お母様も敵は自分の手で葬り去りたいという性格の持ち主だし。
「え・・」
まぁ、夫人の言いたいこともわかる。
通常、女性は守られるのが主だと思われてる中で、さらにお嬢様なら余計にそのはずなのに自ら敵を始末しようとツッコむんだから守られるべき人が自分から襲い掛かるの?ってなるわよね・・おまけに学生(つまり未成年)。
私も似たようなものだったからあまり否定できないけど。
「母曰く、どうせ始末するんだから一緒にやれば早かっただろうに。それにこういうことも共に苦労したいとのことでした。」
で、苦労も楽しいことも共に経験したいというのがお母様の本音でもあったみたい。
「・・・かっこいい」
うん・・セリフはかっこいいだろうけど、それつまりは自分も始末したいんだから混ぜて!というお父様だけで独り占めはずるいという意味よ?
後は、お母様も割とそういうトラブルの対処とかで小遣い稼ぎをしてたから趣味と実益を兼ねてたそうな。
それもあってお父様と同じことをしてたから似た者同士って扱いだったんだけど。
「で、父は共に頑張ってくれる異性という存在は母が初めてだったらしく、意気投合したことも踏まえてすごくうれしかったようです。・・ゆえに、母をそういう目的で狙う相手が気に食わなくてしょうがなかったのだとか。」
基本的に1人で対処出来ちゃってたのもあるけど、当時は戦友が出来た喜びという認識だったそうよ。
「べたぼれじゃないの・・。」
「のちに父もそれに気づいたようで、当時は全く気付いてなかったようですよ。」
ガチで、大事な友人という認識だったらしいわよ?
ただ、そんな2人は見た目はすごく最高級なのに逆鱗に触れたらヤバいから絶対に怒らせるなというか逆鱗に触れるな・触れさせるなということで周りが極力2人にそういう連中が来ないように必死になってかばってたらしい。
正しくは、物理的にも政治的にも精神的にも血の雨を見たくなかった(周りが)
なのに本人たちが自主的に首を突っ込むから周りが都度大変だったんだとか。
ちなみにそれに関して裏話があって、そんな2人のトラブルに首を突っ込み、その関連に振り回された周囲はそういった時の対処や後処理に追われてたため、学園卒業後、それぞれが就職した先でそれらのスキルが就職先で喜ばれ、学園側はそんなメンツを世に送り出したことで評価が上がって喜ぶ中、褒められた本人たちは素直に喜べないということがあったそうよ。
「なるほど・・」
「そして、芋ずる式にそういう輩を潰して回っていくうちに、学生でありながらあの国の最終兵器と呼ばれるようになり、学園卒業とともに祖父から宰相の地位を父が授かり、母は騎士団長の地位を先代から授かり、それからも同じように仲良くしていたようですが・・・」
実はそんな学生時代にいろいろ首を突っ込んだり周囲を振り回してた時の関係でそれぞれ独自の情報網を形成したことが現在の情報収集能力の高さに影響してたりするそうよ。
「が?」
「卒業祝いに、ワインを飲んでたようで、その途中でアルコールが割ときつめな奴も飲んでしまい・・その・・そのままラインを超えちゃったようで・・。」
全員「・・・」
色々とは目を外しちゃったのと、無自覚でも互いに異性として大好きだったからタガが外れてしまい・・嬉々として互いに・・うん。
「目を覚ましたらしっかり事後だったのだとか。」
おまけに酔ってる間の記憶も2人とも残ってるタイプだったらしい。
「・・・その・・こういう言い方は悪いのだけれど、お母君は元王族とはいえ、平民のようなものだったのよね?」
「そういう認識になりますね。ファミリーネームはありましたが。」
ファミリーネーム持ちでも国が亡べば元貴族、現平民という扱いなのである。
大抵はよその国で貴族に再度なってたりするけど。
一応協会に希望を出せば、ファミリーネームを一時廃止することはできるわよ。
何故一時的なのかというと、もし何かがあって再度ファミリーネーム持ちであることが許された場合に同じファミリーネームを名乗ることが出来るようにするための措置であることと、
次に他の人がファミリーネーム持ちになった時にそれを使わせないようにするためでもあるらしいわよ。
「平民が公爵家の長男をたぶらかしたとは思われなかったの?」
一応お母様、当時は元王族とはいえ、平民扱いだったからねぇ・・その気持ちはわかる。
「そのあたりは、学園生活中に母の過去もしっかり調べられ、父とかなり仲が良かったことと学園では成績優秀で、後ろめたいことも一切なかったことと、逆に企む輩を父とともに嬉々として始末して回っていることからむしろ嫁に来いという扱いだったようです。
どうやら父が、気に入った異性は母が初で、当時は仲のいい異性が存在したことに周囲は驚きだったそうです。」
お父様も見た目も行動もかっこいい人だったからかなりモテたんだけど異性に一切興味を持つ人じゃなかったからお母様に無自覚とはいえ、夢中になってたのはかなり周りを驚かせたらしい。
なんか、孤高の狼的な扱いになってた模様。
で、お母様はというと敵対されるとヤバいため、猛毒付きの精霊的な扱いになってたそうな。
「そういうことであれば、反対意見もなくそのまま婚約出来るわね。」
「らしいです。で、事後でしばらくしてようやく自分たちは互いに好きあっている仲だと気付いてそのまま婚約せずに結婚したそうです。なので、意気投合してそのまま結婚したというのはある意味正しいんです。」
事後で、記憶もしっかり残ってたこともあり、ようやく自分たちが親友としての好きではなく、異性としての愛の好きだと実感できたらしい。
ちなみに、その後、結婚したことを他の友人たちに話したところ、やっとか・・というか無自覚だったのかこれまで!というツッコミを全員からもらったそうな。
後、一番言われたのはその結婚することになったきっかけである、所謂一線を越えた件については、
え!?まだ超えてなかったの!?と逆に驚かれたのだとか。
でも、この2人ならそのくらいしないとずっと結婚せずに終わっただろというセリフで完結したらしい。
「なるほど・・けど、友人から恋人へ自然と仲を深めていくのはロマンがあるわね。」
まぁ、恋愛物語に使われはするけどリアルでそういうケースに恵まれることって割とないからね。
憧れるのはわかる・・ちなみに、そのこれまでのやり取りなんだけど、実は本になってるのよ。
・・お父様の友人の1人が本人に許可を取って出したらしいわ。
一応結構売れたらしく、定期的にその一部がいらないのに毎回振り込まれてきてすごく豆な奴だとかお父様がぶつくさ言ってるわよ。
「なので、とても仲がいいですよ。未だに夫婦というより仲のいい親友のようなツーカーの仲で、仕事をこなしつつ好き放題に動いてます。」
「そう・・良い話が聞けたわ。」
「で、そろそろツンデレちゃんは復活した?」
私の両親についての会話を途中から聞いてたので、だいぶ回復したと思うけど・・微妙に顔が赤い。
「え、えぇ・・」
目がすごい泳いでいて、すっごい挙動不審である。
はぁ・・・
「あぁ・・なんかごめん。予想以上に耐性がなかったのね。」
予想以上に異性どころか同姓にもそういうスキンシップに耐性がなかったので・・見誤ったわ・・。
「べ・・別に・・」
顔を赤くした状態で視線を一生懸命そらしてる。
そんな姿もかわいいけど、しょうがないわねぇ・・。
「まぁ、お詫びと祝福を兼ねてちょうどいいわね。」
ぽそりと私が呟いたセリフを聞いたずっと膝の上にいたお嬢ちゃんが首をかしげる。
「双子ちゃん!」
双子((?))
食事は気が済んでいたらしい双子ちゃんに声をかける。
後ろにはすごい数の皿の山が見えるけど気のせい。(後で食事代を払う予定)
「制限を解除するわ。これから、盛大にやるわよ!」
この屋敷に入る時にいろいろ言ってたことを全部放棄!
双子((コクリ))
周囲の連中はというと、私のそのセリフに期待する視線を向ける連中(極少数)と、何をやらかす!?と引きつった表情になる連中の2つに分かれた。
「え・・何をするの・・」
「制限って・・あれだけ好き放題に動き回ってたのに制限がかかってたの!?」
「って待って?俺ら、一生懸命あの子ら捕まえようとしたのに簡単にあしらわれてたけどあれ・・手加減されてたの?・・地味にショックなんだけど」
「子供に弄ばれた挙句、手加減されて、大の大人がムキになって大人げないのに加えて惨敗・・」
周りがすごく言いたい放題だけど面白いから気にしない。
で、双子ちゃんは当然そんな周囲を全スルーしつつも、察しが良くてノリも良い子たちなので瞬時に私の考えを察して行動開始。
「ちょっ!?どこに行くのですか!?」
とてとてとどこかに行こうとする双子ちゃんを慌てて捕まえようとした近くにいたメイドさんだが、見てもいないのにひょいっと軽々と避ける双子ちゃん。
「捕まらない!?」
「何やってんのよ・・!?」
それから数名ほど頑張ってたが全員惨敗してた・・面白い。
「双子ちゃんを捕まえたいなら気配を完全に消さないと無駄よ。」
私のセリフを聞いて全員の顔が引きつってる。
「いや・・そもそもの話、屋敷に潜んでるやつの位置を敷地内に入った瞬間から正確に特定した挙句、壁越しに内心すらも見抜くような子たちを掻い潜るって・・絶対無理だろ。」
でしょうね。
気配を消して行動するのが専門職な連中が本気で隠密してたのに全員惨敗だったレベルだし。
それを言うと全員が膝をついた。
何か負けたらしい。
そもそもの話、五感が鋭いのに加えて、視界に頼らずとも、周囲の空気の動きとか物音とか匂いとか魔力とか気配云々以外でも認識してるっぽいのに加えてなんとなくそんな気がするで対処してるっぽいけど。
そして、双子ちゃんがずりずりとどこからともなく楽器を持ってきた。
ギター、ピアノとドラムなど。
他数種類の楽器。
いや、ピアノは近くに置いてあったから知ってたけど、他のはどこにあったの?
「・・よく見つけたなあの子たち。」
当主のおっさんがぽそりと呟いてることからどうやら、どこかに仕舞ってたもののようだ。
そして、何かが飛んできたので危なげなくキャッチ。
「今・・一切見ないでキャッチしたんだけど・・」
「やっぱりシル様ぱねぇ・・」
そう?
なんとなくわかるわよ?そういうの。
で、キャッチしたものを見ると異世界人が言うところのマイクだった。
【拡声】と【拡大】の2つの魔法が込められたもので、音量を増大させ、周囲に声を響かせる簡単な一種の魔道具よ。
後、組み合わせれば録音の魔道具も組み込むことが出来る代物。
そして、周囲にいた何人かが双子ちゃんに捕まり、楽器を任されている。
「え・・なんで俺がドラム弾けるの知ってるの・・」
「私もベース一切握ってた姿をこの子たちに見せたことないのに・・なんで・・。」
面白いから言わないけど、双子ちゃんの場合はほとんど野生の勘である。
ちなみに、あとで判明するんだけど双子ちゃんの身分って捨て子と、迷子だったんだけど、いつの間にか迷い猫に統合され変化してたのは余談。
そして今度は、壁を歩いてそのまま窓を開けて外に出て行く双子ちゃん。
全員「・・・・」
全員がなぜが口をあんぐりと明けた状態でフリーズして、顔が引きつってる。
そんな連中を無視してちょうど窓際に私はいたからちらっと外を覗いてみると双子ちゃんは門をくぐらずに壁を歩いて超えており門番役のメンツは相手が双子ちゃんだったため頭を抱えている。
あ、双子ちゃんが出て行った窓は私の上にある窓よ。
なんでそっちから出て行ったかは知らないわ。
「え・・なんで壁を歩けるの・・。」
「さぁ?気づいたら壁も天井も普通に歩いてたし。」
正しくはそういうスキルを持ってたからだけど、どのみちなんで?という理由の説明にはならないし、スキルに関しては誰にも教えないのが常識だからスルー。
全員「・・・」
で、あんた等もやろうと思えばできるでしょ?と言ったところ。
「いや、出来たとしても駆け上がったり走るくらいですけどかなり少数で相当な手練れだけっすよ?けど、歩くのは無理でしょ・・」
とのこと。
まぁ、私もできないけど。
しばらくしたら上の窓から双子ちゃんが戻ってきた。
当然門はくぐらずに壁を歩いて超えてたわよ。
「お帰り。よくわからないけど用事は済んだの?」
双子((コクリ))
「そっか。じゃあ、お前ら、やるわよ。」
「え・・いきなり!?」
「って言うな何の曲を!?」
「楽譜なしで!?」
え?
「え?楽譜いる?」
いるの?
「いりますよ!?」
「ないと無理っすよ!?」
「えぇ・・双子ちゃんも楽譜なしで普通に出来るのに」
そう呟くと膝から崩れ落ちた。
「幼児に・・負けた・・」
「っていうか、その子たちが・・弾くの?」
普通にノア君がギター、イブちゃんがピアノを弾く準備をしてる。
「そうよ?というか最初からそのつもりだけど。」
「えぇ・・」
「推定5歳児が・・と普通は言いたいけど・・」
「シル様のお子さんだもんなぁ・・」
なんか複雑そうな顔してる。
どうやら、5歳児だから普通は満足に演奏できないと言いたくても私が連れてきてる子たちということもあってその予想を裏切ると思ってるようで言えないようだ。(ある意味正しい)
まぁいいや。
双子ちゃんも準備が出来たので、各自に双子ちゃんが演奏予定の楽譜を順番に配ってるのを見ながら私も軽く準備をし始めようかしらね。




