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「その答えを私達に委ねているんだわ!!」

「なんだこの魔力!? これ二人分!? え、なんで……どうなってる!?」


 カルルが困惑している。

 私としては魔力を練り合わせるのが非常に難しいために時間を稼ぎたい。このままだと『とにかく潰した方が手っ取り早い』と解釈したカルルが突撃してくる可能性が高いため、ここはあえてこちらからネタばらしをする事にした。


「今日は月食っていう、星と星が重なる日なのよね? 街の方はかなり話題になってたわ」

「……」


 カルルは何も答えない。ただジッと、私の声に耳を傾けていた。


「そしてあなた達が儀式を行う日でもある。リキュアが教えてくれたわよ。こういう星を星が重なる日は私達生物も混ざりやすくなるってね!」

「そうか!? だから二人の魔力が混ざり合って!!」


 そう、リアちゃんを救うため、一つの体に二つの魂を押し込んだ。なら私達だって、この日限りでお互いの魔力を混ぜ合わせる事ができるはず!!

 こればっかりは練習する時間もないからぶっつけ本番! いつもの、『こうすればなんとなく行けそうな気がする』という感覚に頼るしかない!

 ルミルの体をギュッと抱きしめる。ルミルがピクリと反応するけど拒否はせずに受け入れてくれていた。

 そうやって物理的にも近付いて、お互いの魔力をより近づけ触れ合わせる。

 混ぜて、練って、組み上げて、一つにしていく。

 二つの毛糸を編み込んでいくようなイメージだろうか? ルミルの魔力に私の魔力を絡ませていく感じ。


「あたしの爆壊と――」

「私の風迷路を掛け合わせる!!」


 私達の魔力が一体となって膨れ上がる。これなら全身が痛くても関係ない。動き回る必要がないから。


「くっ……」


 カルルが迷った。恐らくは突撃するか、横へ跳んで逃げるか、はたまたもっと距離を開けるべきか。

 だがその一瞬の隙を見逃さず、私は編み上げた魔力を一気に放出させた!

 バチンという弾けるような、何かを突き破ったような音が鳴り、私達の魔力は音速を超えたような速さでカルルに直撃をする。


「ぐうぅ……なんだこの威力は!」


 カルルは錫杖を両手で掴み、前に突き出して私達の魔力を押しとどめるように防御していた。

 地面に足をめり込ませ、直撃の際に数メートル後退したけれど今は完全に抑え込んでいる。


「と、止めた!?」

「まだまだぁ!! あたしの残りの魔力、全ブッパする!!」


 ルミルが体内の魔力を注ぎ込むのが分かった。

 爆壊という爆発的な威力を生み出す魔力に、私の風迷路という操作性と瞬発力を兼ね揃えた魔力を掛け合わせる。その二つは互いを活かし合いカルルに襲い掛かった。

 それでも――


「なめるなよ……」


 カルルは動かない。どれだけ魔力を注いでも微動だにしなかった。


「守りたい人がいて、私にはそいつを治す事はできなくても、病気に負けない体にしてやれないか、ずっとずっと考えて来たんだ! そんな私の防御スキルを……なめんなああああ!!」


 一歩踏み込む。カルルが私達の魔力を浴びながらも一歩前進した。

 強い眼差しをこちらに向けて、前に突き出した手が赤く腫れても、それでも怯む事なくまた一歩踏み込んできた。


「噓でしょ……これでも効かないの!?」

「はぁ……はぁ……くぅ……」


 私の腕の中でルミルが苦しそうにしている。呼吸が荒く、肩が大きく上下していた。


「ルミル、大丈夫!?」

「ヤバい……魔力、尽きそ……」


 そうだ。ルミルは一度、震魂と爆壊を使っている。アレらは威力が凄い分消費も大きいから、もう魔力は残り半分も無い状態なんだわ。

 なのにカルルはまだまだ余力が残っているように見える。これは本格的にマズいかも……


「はぁ……はぁ……」


 もはやルミルは全体重を私に預けている状態だった。そうまでして必死に魔力を絞り出そうとしているルミルをこれ以上放ってはおけなかった……


「もういいわルミル。諦めましょう。これ以上はルミルが死んじゃう!!」

「……はぁ……はぁ……いや、このままいこう!」


 それでもルミルは諦めていないようだった。視線だけはカルルを見据え、予想もしなかった事を言い始めた。


「これだけじゃ足りない。だから、魔石を解放しよう!」

「……え!?」


 魔石……確かに昨日、私はルミルに話した。魔石にはステータスアップだけじゃなく、他の使い方があるのだと。


「あたしが装備してある魔石を解放してみるから、それも全部アイツにぶつける! 諦めるのはそれからでもいいでしょ!」


 そうしてルミルは一度大きく息を吸って、体に力を入れるように強張らせる。ほんの少しの間、その状態が続いた次の瞬間――

 ボワワワワワ!!

 ルミルの体から溢れんばかりの魔力が噴き上がった!!


「なんだ? ちっこい方から莫大な魔力が……まさか魔石を!?」


 カルルが驚愕している。それもそのはず。さっきの魔力を大きく上回るほどの量が私達を取り巻いているのだから。

 これが……魔石を解放した時に得られる魔力の総量!


「なら、私も解放するわ。一気に畳みかけましょ!」


 ルミルを参考にして、私も自分の魔石に意識を集中させる。なるほど。確かに魔石がくすぶっているのが分かる気がした。

 今はルミルと混ざり合っているせいか、共鳴と言える何かで魔石の存在自体がはっきりと浮かび上がっている。私はそれを撫でるように触れてみた。

 もちろん直接触れるわけじゃない。自分の中の魔石を、魔力を使ってそっと撫でる。触れて、撫でで、包んで、握った!

 なんというべきか、タマゴの殻をからむくような? くっついて開かない本のページを優しく剥がすような? そんな感覚で魔石を徐々に解き放つ。

 すると解放された魔石から勢いよく魔力が噴き出した! それは間欠泉のように魔石から噴き出して、そのまま私の体から溢れ出る。そんな魔力を私は操作しようと必死だった。

 繋ぎとめて、ルミルの魔力と一緒に固定して、かつカルルに向けて攻撃の流れも絶やさない。もはやカルルと戦っているのか、この状況と戦っているのか分からないくらいには必死だった。


「くぅぅ……邪魔すんなよ……」


 そんな時、攻撃を受けているカルルがそう呟いた。


「リアを助けたいんだ。ただそれだけを願ってここまで来たんだ。だから……邪魔すんなよおぉ!!」


 それは悲痛な叫びだった。

 私達の魔力は魔石解放で威力がさらに跳ね上がり、カルルはそんな二人分の魔力を浴び続けている。今となっては激流に流されないようにただ堪えるほど、私達の攻撃は膨大な威力となっていた。


「邪魔をしたい訳じゃないわ!」


 だから私はカルルに答える。

 今言える精一杯の気持ちを伝えるために声を上げる。


「リキュアはきっと迷ってる。そしてその答えを私達に(ゆだ)ねているんだわ!!」


 そう、今思えばこれら全部がリキュアの筋書きだったんだ。

 追いかけっこの時、勝った私になんでも教えてあげると言ったけれど、その直前までお互いのガチャ娘としての性能を競い合っていた。だからあんな状況なら、私が質問する内容は『どっちがガチャ娘かを当てるクイズ』の真相になるのは必然だと思う。

 そうして私に現状を伝えつつ、家に呼ぶ事で違和感や疑問を植え付けていった。

 あとはもう一度探しに来た私達とカルルをぶつければ、必然的に戦いへと発展する!


「私達が勝ったら儀式を止める。カルルが勝ったら儀式を続ける。そんな状況をリキュアは作り上げたのよ!」

「なっ!?」


 リキュアは追いかけっこで私のステータスを多少なりとも把握している。さらに私とレベルが同等の仲間がいる事も知っている。だから私達とカルルが戦えばある程度は形になると考えた。


「でも逆に言えば、私達が勝つ事で儀式を中断させたいという気持ちが少なからずあるって事よ!! その理由は分からないけど、だからこそ私はリキュアに会ってそれを確かめたい! リアちゃんもリキュアも、全部まとめてみんなが納得のいく結果を作りたい! それが私の戦う理由だから!!」

「うぅ……ああぁ……」


 もはやカルルは勢いに押されていた。

 私達が織り交ぜた魔力に押され、ただただ必死に、気力だけで流れに抗っている状態だ。もはや決着が付いたと言っても過言ではない状況だった。

 ……しかし。


「アリシア、これヤバいかも!」


 ルミルが私の腕の中で、そんな事を言い始めた。

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