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「いつも物事を簡単にまとめようとするアリシアがこんな細かい解説をするだなんて!!」

「えっと、どっちがガチャ娘か分からないってどういう事ですか?」


 そうマスターが聞いた。それは街の人でさ知る人はいないらしい。けど、どっちがガチャ娘でどっちがマスターなのかは同じ街に住んでいれば分かりそうなものだけど……


「じゃーん! では問題です。私達はどっちがガチャ娘だったりでしょうか~」

「えへへ、当てられますか~?」


 突然クイズが始まった!?

 カルルはノリノリで手を広げてリアクションを起こし、リキュアは恥ずかしそうにカルルに合わせてポーズを取っているように見えた。


「どっちなんでしょうかね。ルミルさん分かります?」

「普通に考えてカルルなんじゃないの? 服のセンスがガチャ娘特有というか、人間の衣装としては奇抜というか……」


 確かに肩出しヘソ出し頭蓋骨ヘルメットは人間の域をはみ出してるわよね……


「よーし、それじゃあヒントだよ。ちょっとそこの魔物と戦ってくる! いくよリキュア!!」

「ま、待ってください。一人で先行しすぎです~」


 二人がバタバタと向こうにいる魔物に駆け寄っていく。

 うん、これは普通にカルルがガチャ娘なんじゃないかな? めっちゃアクティブでリキュアを引きずり回してる感がひどいわ……


「いくぞ~、デュアルアタックだ~!!」

「こんな事してないで早く帰りましょうよ~……」


 ボカスカボカスカ!!

 デュアルアタックなんて言ってるけど、簡単に言うと二人で挟み撃ちにしてタコ殴りにしているだけだった。


「あはは。なんだか面白い人達ですね」


 マスターはもうクイズとか関係なく楽しんで見物してるけど、私は二人の戦いを見て気が付いてしまった。

 ……やっぱりこの二人、かなり強い。ふざけながら魔物をフルボッコにしているように見えるけど、その動きに無駄が全くない。

 一見して魔物が一方的にやられているように思うけど、それはこの二人の連携が凄まじいからだ。魔物が反撃しようと微弱に動くと、それに合わせて封殺するように攻撃して仰け反らせる。

 リキュアがカルルに合わせているのか、カルルがリキュアに合わせているのかは分からない。もしかするとその両方で、互いにカバーし合っているのかもしれない。けれど今の私にはそれを見抜くだけの眼力は持ち合わせていなかった。

 周りが歓声を上げて楽しむ中、私だけは二人の動きに考察を重ね、どっちがガチャ娘なのかというクイズの答えを本気で探していた……


「フィニーッシュ!!」


 二人が魔物を吹き飛ばし、重ねた手のひらから魔力の波動を解き放つ。そうして魔物は爆散してショーは幕を閉じた。

 ヤバい、どっちがガチャ娘なのか本気で分からないわ……


「カルルかっこいい~」

「リキュアすてき~!」


 子供達がそんな二人に駆け寄っていく。その時だった。

 シュッとした影が二つ現れ、子供達に飛び掛かった。

 それは私の目で捉えるに、二匹の蛇の魔物だった。草むらに身を隠し、獲物が近付くまで気配を消していたのかもしれない。現にルミルは魔物の気配を感じ取る事がうまくなりつつあるのに全く気付けていない。

 そして私も、蛇の魔物の素早さに反応が遅れてしまっていた。今から刀を抜き、飛び出して行っても間に合うかどうか分からない! けど、助けに行かなくちゃ!!

 そう思って柄を握り、踏み出す足に力を込めた瞬間だった。


 ――ズシャァ……


 すでに蛇の魔物は跡形もなく消し飛んでいた。残っているのは錫杖を振りぬいた格好のまま静止するカルルと、子供達を庇うように抱きしめながら身を低くしているリキュアだけ。

 マスターもルミルも、今何が起きたのか理解できずに唖然としていた。


「え、今、もしかして魔物に襲われてました? 二人共、見えましたか?」

「うんにゃ、あたしには見えなかった……」

「……」


 そう、それくらい速い動きだった。素早さに特化して動体視力に自信のある私でさえその全貌は僅かに見えたくらいだ。

 蛇の魔物が飛び掛かったと同時にリキュアが子供達と一緒に伏せて、カルルが魔物を吹き飛ばす。これの何が凄いかっていうと、リキュアの判断やら速度やらがもう次元が違うレベルだという事。彼女が子供達の身を伏せていなかったら、カルルのスイングに巻き込まれていただろう。けれどそうならなかった。それは二人が同じレベルの強さで、同じレベルの理解で動けている事を意味している。


「何がガチャ娘を当てるクイズよ。どっちもガチャ娘じゃない……」


 そう小さく呟いていた。


「え、アリシアさん何か言いましたか?」

「ううん。なんでもないわ」


 そうはぐらかしてから、私達は何事も無かったかのように街へと案内されるのだった。

 私達はカルルとリキュアの案内で無事に街へたどり着く事ができた。その街の名前は新緑の街『クサフカヒ』。広がる草原に囲まれた街で、活気と明るさに満ちている街だと言えた。

 これまでの街や村はどこか、魔物に対する警戒や不安がどこかに現れていた気がする。けどここの住人はみんな活き活きとしていた。

 それはきっと、この街を代表する実力者であるカルルとリキュアの存在が大きいからかしら? 信頼という想いでみんなに活力を与えているようにも思えた。

 そんなこの街で、私達はいつものように宿の手配をしたり魔物の討伐クエストを行ったりと時間を費やす。中でも大変だったのは魔物の討伐で、この辺の魔物ともなると、一筋縄ではいかない相手が多かった。


 ――推奨戦力25万。


 その数字が魔物の強さを物語っている。

 25万っていうとアレよ。私とマスターが初めて手こずった魔物で、『悪鬼』と戦った時の数字よね。でもアレは悪鬼単体での推奨戦力であって、ここは魔物に囲まれた時に必要な値を示しているはず。

 私とルミルが力を合わせれば、まだまだ討伐可能な範囲だとマスターは言っていた。

 そして日が落ちた頃、毎回恒例の育成素材のトレードが行われた。

 マスター曰く、ノーマルキャラを普及していくのであれば、あまりノーマル育成素材を集めすぎても良くないとの事。だからこれまでも一つに街につき一回ずつしか行っていないらしい。

 ……正直私はそこまで考えてなかったので覚えていない。けどちゃんとそこまで私達の事を親身になって行動してくれるマスターはホント素敵! マジ推せる!!


「……アリシア、何にやけながらクネクネしてるの? 大丈夫? あたしの分の晩御飯分けてあげよっか?」


 ルミルに気を遣われた!?

 そんな風にルミルとじゃれている間にもトレードは進んでいく。簡単に言うと、ぶっちゃけ私とルミルは特にやる事がなかった……

 そうしてこの街での素材トレードは完了して、SR育成素材一個に対して、ノーマル育成素材は平均15個で交換できた。

 つまり合計75個。手持ちと合わせると80個が手に入った。


「レベル100を超えると、そこから20レベル上げるごとに上限解放の秘薬が必要になります。今は5個あるので、アリシアさんとルミルさんに2個ずつ使いますね」


 そうしてマスターは私達に素材を使ってレベルを上げてくれた!


名前   :アリシア(覚醒)

レアリティ:HNハイノーマル(三段階目)

レベル  :155

体力   :J

攻撃力  :K

防御力  :J

素早さ  :I

精神力  :J

探知   :J


「それとキングゴーレム討伐MVPとしてLV4の魔石を2個貰ったので、二人が装備しているLV4と掛け合わせますね。さらにランク5の武具も手に入ったので、これはアリシアさんに持たせようと思います」


装備   :宝刀・輝夜かぐやランク5)

     :風の鎧(ランク5)

魔石   :素早さ上昇LV5


宝刀・輝夜:刀身が輝き、闇を払う力がある。

風の鎧:風の流れを感じ、読むことができる。


推定戦力 :18万7500 → 30万


「す、凄い! 私、強くなりすぎじゃない!? ……この装備の特殊効果はイマイチ理解できないけど……」


 そんな時、一陣の風が吹き、私の体を通り抜けていく。すると私の脳内に情報が流れ込んできた。


「こ、この風は!? 南から暖かい風が流れ込んでくる風ね。けどこの風、強くなったり突風になったりもするから注意が必要よ。それに今は風が温かいから気温も上がるだろうけど、しばらくして風が抜けると少し冷えるみたいだから薄着にはまだ早いわね!」


 そんな事がなんとなく分かってしまう。これが風の鎧の力!?


「す、凄い! いつも物事を簡単にまとめようとするアリシアがこんな細かい解説をするだなんて!!」


 そうルミルが驚く。いつも簡単にまとめようとしてて悪かったわね!


「まぁ風って気圧の変化で吹くものですからね。そういうのが理解できる鎧なんでしょうか?」

「マスターが感心してくれるのは嬉しいけど、これが戦いでなんの役に立つのぉ~……」


 凄いのかそうでないのか、よく分からない私はガックリと膝を折ってしまうのだった……


「では次にルミルさんの育成ですね。今回はレベル素材だけなので、変わるのはそこだけです」

「オッケ~」


 そう言ってマスターは画面の操作でルミルにアイテムを使った。


名前   :ルミル(覚醒)

レアリティ:HNハイノーマル(三段階目)

レベル  :155

体力   :J

攻撃力  :I

防御力  :J

素早さ  :K

精神力  :K

探知   :I

推定戦力 :23万3000 → 31万3000


「やっぱり私よりも戦力が高いぃ~!!」


 そんな風になんか色々とショックを受けた私は、地面に突っ伏して打ちひしがれてしまうのだった……

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