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「今現在のアリシアさんの推定戦力はこれだけです」

「ところで、アリシアさんはガチャ娘の育成方法を知っていますか?」


 僕がそう聞くと、彼女は我に返ったように考え始めた。


「えっと……ごめんなさい。分からないわ。今まで一度も使ってもらった事が無いから……」

「なるほど。ならこれから長く冒険を続ける事を考慮して、アリシアさんのチュートリアルを始めましょう」

「マスターも始めたばかりなのに私がチュートリアルを受ける側なの!?」


 彼女はなんと言うか、ムードメーカーに適した子だと思う。先ほどは思い詰めていた雰囲気だったが、基本的には明るく、しゃべる時はハキハキとしている。驚いた時なんかもちゃんとツッコミを入れてくれるくらいにはノリもいい。

 うむ。やはりエースを任せるにはうってつけだと思う。

 そんな事を考えながら、僕たちはギルドのクエストを張り付けている壁までやってきた。


「基本的にガチャ娘の育成はギルドのクエストを行いながら進めます。ここに張り出されているクエストをクリアすると報酬が貰え、そのアイテムを使用すると強化できるという流れですね」

「ふ、ふむふむ。なるほどね~」


 アリシアがクエストを眺めながら何度も頷く。


「ここで問題なのが、『ギルドのクエストは一日五回まで』という決まりがある事です。それが僕たち冒険者のデイリー。いわゆる日課となりますよ。その五回を日々積み重ねて少しずつ強くしていくのがセオリーですね」

「ふ、ふむふむ。なるほどね~……」


 なんかもうアリシアがbotみたくなっている……


「それではアリシアさんに問題です。一日五回しか報酬を受け取れないクエストですか。今日僕はどのクエストを選択するのが良いと思いますか?」

「ええ~、ど、どれかしら。う~ん……」


 アリシアは再度クエストの報酬とにらめっこをして唸りだす。

 クエストには色々なものがあり、報酬もバラバラだ。


 1.スライム、ゴブリン、ヘルハウンドのいずれか十匹の討伐。

 推奨戦力1500

 報酬

 SR経験値素材×1

 R経験値素材×1

 N経験値素材×1


 2.指定野草の採取。

 推奨戦力1000

 報酬

 SRスキル上げの書×1

 Rスキル上げの書×1

 Nスキル上げの書×1


 3.行商人の護衛

 推奨戦力1万5千

 報酬、レベル上限解放の秘薬


 4.大型魔物、暴れマンモスの討伐

 推奨戦力1万

 報酬、属性選択可能な魔石LV1×1


 などがある。


「ヒントは、最も効率よく強化するためにどれを選ぶかという事ですよ」

「効率……? やっぱり、基本となるレベルは上げたいわよね。スキルレベルも上げるために一回は請け負うとして……あっ! ランク1の装備セットもあるわ。装備は必須よね!」

「ぶっぶ~~~、アリシアさんハズレです!」

「ええ~~!? 違うの~!?」


 ちょっとしたクイズなのに、アリシアはすごく残念そうな反応をしてくれるところが可愛いと思った。僕が今、爽やかお兄さんキャラを演じているからこそ普通に話しているが、素の自分なら緊張で体が固まってしまうレベルに彼女は可愛い。

 コロコロと変わる豊かな表情。可愛らしくもあり綺麗な声。僕と身長が近いせいか、グイグイ距離を縮めようとする性格。……まぁ、身長は成人男性と比べて僕の背が低いせいかもしれないけど。

 いやいや大丈夫! 今の僕は爽やかお兄さん! 女性に動じない大人の男性!! アニメでいうあの作品のあのキャラクター!!


「おっほん! 正解は、経験値素材を貰うため、五回全てを討伐クエストにするでした~」

「そうなの? 装備とかも大事かなって思うんだけど……」


 もうすでにプランを立てている僕は、受付に行き討伐クエストの依頼を話し合う。


「さらに重要なのがここ! クエストを一つクリアするとギルドポイントが10P貯まります。つまり一日で50P貯まっていく訳ですが、このギルドポイントとアイテムが交換できるシステムがあるんですよ」

「へぇ~、どんなものと交換できるの?」


 そう。これが超重要で僕ら冒険者のモチベーションにも繋がる要素の一つ!


「なんと、500Pでガチャチケットと交換できるのです!」

「おお~! 簡単に言うと、十日に一回はガチャが引けるのね!」


 そういう事! これは絶対に逃してはならない。なぜなら、普通にお金を払ってガチャを引くことも出来るんだけど、一回引くのに五万イン必要になるからだ。

 これ絶対廃課金の人とかいるだろうなぁ……


「あっ、マスター見て! ギルドポイントの交換で、50Pと進化の宝玉が交換できるわよ。アレを使えば私は一段階進化できるわ!」


 ふむ。見つけてしまったか。しかし残念だがそれにギルドポイントを使う気は一切ない。


「ダメです。ギルドポイントは必ずガチャチケの交換に使いますよ」

「そ、そうなんだ。ごめんね、わがまま言って……」


 シュンとするアリシアを見ると胸が痛む。なんとか納得してもらいたいところだ。


「分かってください。ガチャチケに課金するだけのお金がない以上、仲間を増やす手段はこれしかないんです」

「……うん。ちなみに、マスターは今どれくらいお金持ってるの?」

「ゼロです」

「……は?」

「ですから、ゼロです。無一文ですけど何か?」

「えええ~~~!? それじゃあ今日の宿代とかどうするの!? ごはんは!? まさかサバイバル!?」

「落ち着いてください。一応考えてありますから。それよりも今一番重要な事は、これから始める討伐クエストです。僕の予想ではこの初クエストが一番やっかいなんですよ」


 なんで? とアリシアが不思議そうにしている。


「だってそうでしょう? アリシアさんはレベル1で、なんの装備もないから素手で戦う事になるんですよ? さらに討伐クエストの推奨戦力は1500に対して、今現在のアリシアさんの推定戦力はこれだけです」


 そう言って、腕輪から彼女のステータス画面を開いて見せた。


名前   :アリシア

レアリティ:N(一段階目)

レベル  :1

体力   :Z

攻撃力  :Z

防御力  :Z

素早さ  :Y

精神力  :Z

探知   :Z

スキル1 :韋駄天LV1

推定戦力 :940


「ほら、ほとんどのステータスが最底辺ですからね?」

「うわっ、私の戦力低すぎ!! これクリアできるの!?」

「まぁ、魔物十匹倒すための推奨戦力だろうし、一匹ずつ確実に狙っていけば多分大丈夫ですよ。さぁ獲物を狩りにいきましょう!」


 そうして僕たちはギルドを出て、街の外を目指す。この初陣で戦い方なんかを確認しておかなくてはいけない。


「ところでアリシアさん、この世界には魔法とかあるんですか?」

「魔法? そんなのないわよ」


 当たり前でしょ? みたいな感じでそう言われた。


「え、なら回復魔法で傷を瞬時に治すとかできないんですか?」

「そんなの絵本の中だけじゃない。できないわよ」

「なら、ポーションとかの回復薬で傷を消したりとかは?」

「ないって。というかポーションって何!?」

「それじゃあどうやって怪我を治すんですかぁ~!!」

「傷薬塗って安静にする以外ないでしょうが~!」


 なぜか怒涛の切り返しで怒られた気分になる……


「そんな……なら怪我できないじゃん……」

「さっきから何なの? マスターって常識が無いの? もしかして異世界から召喚でもされてきたの!?」


 おっと、僕の身元がバレてしまう。

 そういえば僕が異世界から転生してきたってバラしていいんだろうか? 女神様は秘密にしろとは言ってなかったけど。


「けどまぁ、魔法ではないけど私たちガチャ娘はスキルが使えるわね。もしかしたらそのスキルで回復系の能力を持った子がいるかもしれないわ」


 スキルか。確かアリシアの持っているスキルは『韋駄天』と言い、自身の素早さが上がる効果だ。


「それと、そんな私たちガチャ娘を生み出した『召喚士様』の能力は魔法と呼べるわね。まぁあまり深く考えた事はないけど」


 召喚士? ガチャ娘を生み出した? なんか興味深い話だなぁ。けど話していたら街の外へ出たので、ここからは戦闘に集中しなくてはいけない。召喚士の話はまた今度にしよう。


「一応僕も手伝いますが、基本的にアリシアさんがアタッカーをしてください。僕は魔物の気を引き付ける役をやりますので」

「わかったわ。けどマスターは無理しちゃダメよ?」


 そう作戦を立てながら、僕たちは魔物を探すのだった。

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