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「チルカはチルカって言います。よろしくお願いします~……」

               * * *


「そろそろ行くわよ。着いてきなさいケイト」

「招致しました。リリーティア様」


 私はガチャ娘のケイトを連れて宿を出る。今日のクエストをこなすためだ。

 今のご時世で冒険者に男も女も関係ない。人々を救うため、魔物の脅威を減らすため、私は自分の誇りと正義を貫くために冒険者になって故郷を出た!

 今はまだ育成が完全ではないからロック村という場所に滞在しているけれど、いつかは最前線に立って最強の称号を得るのが私の夢だ。

 そして今日、その夢に向かって大きな一歩を踏み出すチャンスを掴もうとしている。

 私とケイトは今日一日のクエストを日が暮れる前に終わらせて、その後すぐにギルドへ向かった。


「ギルドポイントをガチャチケットに交換するわ!」


 そう、ちゃんと毎日クエストをこなしていれば、十日に一回ガチャが引ける。今日こそはSRを引き当てて戦力を増強させる!


「はい。こちらがガチャチケットです。良い引きを」

「ありがとう」


 私はチケットを受け取ってから一度宿へ戻った。そして借りていた部屋でガチャ娘召喚のために心を落ち着かせた。

 これまで、初回引き直しガチャ以外でSRが出た事がない私だけど、今回はキングゴーレムとか言う前代未聞の魔物を相手にドタバタしていたからきっとツキが回ってくるはず!


「さぁ、チケットを使うわよ!」

「頑張ってください。リリーティア様!」


 私がチケットを使用すると、ドンコドンコと太鼓の演出と共に人影が現れる。その人影は本来なら私の目の前に降り立つのだけれど、バランスを崩してつんのめっていた。

 ちょうど、変なタイミングで召喚されたせいで踏み出す一歩に高低差を感じたような感覚なのかもしれない。人影はそのまま私の前で派手に転んでしまっていた……


「ふにゃあ!? ……し、失礼しました。チルカはチルカって言います。よろしくお願いします~……」


 這いつくばった体勢から顔だけを上げながらそう言った。

 ……一体どんな登場よ。こんなマヌケな挨拶は見た事が無い……

 そんなチルカと名乗ったガチャ娘だけど、その姿は中々珍しいものだった。

 まず頭にはネコミミが生えていて、腰からは長い尻尾が伸びている。髪も毛並みも黒いその子は、さながら猫娘と言った風貌だ。髪は頬に被さるような長さなので、人間としての耳は見えていない。

 ネコミミフード付きの布の服を着用しているけど、丈が腰の辺りまででヘソ出しルック。下は膝上くらいのハーフパンツだった。


「あなたは……ノーマルね」


 SRスーパーレアならエフェクトで周りから虹色オーラ、Rレアならキラキラが出ているけど、この子はそんなのは一切なかった。


「あ、はい。ノーマルです。にゃはは……」


 チルカと名乗った子は起き上がりながら誤魔化し笑いを浮かべている。正直、またSRが引けなかったという気持ちで私はげんなりしていた。

 しかも起き上がったこの子をよく見るとかなり体格がちっちゃい! ジンが連れていたルミルって子と同じくらい小さいんじゃないかしら? こんな子がちゃんと戦えるようになるのか不安は絶えない。まぁ、あのルミルって子はかなりの攻撃力を秘めていて驚かされたけど……


「えっと……やっぱり売却ですかね? にゃはは~……」


 私の不服そうな態度を感じ取ったのか、目の前の猫娘は空元気のような笑いで取り繕っていた。

 そう、本来なら売却するべきレアリティ。その判断に迷いなんてないのだけれど、今回はそうもいかない。前日ジンにノーマルを使ってほしいとお願いをされたからだ。私は条件付きでそのお願いを聞くことにしたのだから……


「いくつか質問をするわ。あなた達ノーマルはSRからバカにされていると聞いたのだけど、それって本当なのかしら?」

「ふぇ!? えっと、まぁそうですね。よく邪険にされたりしますかね。にゃはは……」


 また笑って誤魔化そうとする。そもそも本当に邪険にされているというのなら、そんな風に笑う事なんてできないんじゃないかしら……


「なら、どうしてあなたは笑っているの? そんなヘラヘラできるって事は特に深刻な問題じゃないのかしら?」

「……はい。そうだと思います。だって、本当に大変なのは人間様のほうじゃないですか」


 そう言ったチルカはもう笑っていなかった。その目は辛そうに私を見つめている。


「この世界で人間様は魔物と決死の覚悟で戦っているんですよね? だから少しでも強い仲間を求めて低レアは売却をする。それって当然の事だと思うんです。だって強くなくちゃ大事な人を守れない。大切な場所も奪われる。人間様がそんな重大な未来を背負って戦っているのに比べたら、チルカ達のいざこざなんて些細な問題ですよ! チルカ達ガチャ娘はいつでも人間様の味方です。売却するならそれを受け入れ、使ってくれるのなら全力でお助けをする。その判断を決して否定はしませんから!」


 この時私は衝撃を受けていた。素直にこの子の考え方に感動を覚えていた。

 この子は自分の事よりも、冒険者や、全人類の事を考えたうえでそういう振る舞いをしていたんだ。それなのに私はそんな事とは全然知らなくて、ただただ自分の目線だけでPTを組もうとSRだけを追い求めていた。それがなんと矮小わいしょうな事か……


「なら、私があなたを仲間に加えると言ったらどうかしら? SRに負けない強さを得るための努力を怠らず、命すら惜しまず強敵に立ち向かう覚悟があるかしら!!」


 それを聞いたチルカは、怯えるどころか目を爛々とさせていた。


「はい! 全力でお守りします!!」


 ああ、きっと私に必要な仲間というのはこういうこころざしを持った者だったんだ。

 レアリティなんて関係ない。仲間の気持ちや想いを汲み取り、目的に向かって共に全力で立ち向かえる。そんな仲間こそが私にはふさわしい。


「気に入ったわ。チルカ、あなたを正式に仲間として迎え入れるから、私のためにその力を振るいなさい!」

「は、はい! 頑張ります!!」


 こうして、チルカが私のパーティーに加わる事になり、私は余らせていたノーマルの育成素材を彼女に使う事を決めた。

 残念ながらレベルの上限解放の秘薬は全てケイトに使用しているため、チルカのレベルは100で止まった。それでも初日からこの性能を使えるのだから十分かもしれない。


「いいチルカ。私があなたの主人となるリリーティアよ。これからよろしくね」

「はい。よろしくお願い致します! りりーりあ様……あれ? りりーてぃあしゃま!」


 うまく発音できずにワタワタしている……ネコミミが項垂れててちょっと可愛いかも……


「リリーでいいわ。みんなそう呼ぶし」

「ありがとうございます。リリー様! えへへ♪」


 今度は嬉しそうに笑い、尻尾もグイングイン回っている。

 ま、まずいわ。なんだか本当にネコを拾ったみたいで頭を撫でたくなってしまう。けど私は主人として威厳を保たないといけないし、最初から甘やかすわけにはいかない。チルカには少しでも早く成長をして、ケイトのように強いなってもらわなくっちゃ!


「コホン! じゃあこれから日が暮れるまでチルカの訓練を行うわ。相手を務めるのはあなたの先輩となるケイトよ」

「は、はい! あの……よろしくお願い……します。ケイト様……」


 あら? なぜかチルカが怯えて震えている?

 そして反射的にか、私にぴったりと寄り添って服を掴んで離さなくなってしまった。そんな仕草が可愛くて、私の胸はキュンと締め付けられてしまった!

 ダメダメ! ちょっと可愛いからって甘やかしてはダメよ! 安心させるためにギュッと抱きしめてあげたいけど、そんな事をして甘え癖がついても困るしここは我慢よ!!


「どうやら私がSRだから警戒しているようですね。けどチルカ、私はあなたを邪険にするつもりはありませんよ」


 ケイトがそう諭すように言うと、チルカの震えは幾分か治まった。

 そっか。チルカはSRに虐げられてきたから、体が勝手に反応しているんだわ。


「そうよ。ケイトは私に忠実なガチャ娘だから、あなたをイジメたりしないわ。けど訓練では厳しく鍛えてもらうつもりだけどね。ケイト、この子の訓練は任せたわよ」

「了解しました。リリーティア様!」


 これからこの子がどれだけ動けるのかを確認するけど、差し当たって、まずはこの子の自己評価を参考にしましょう。


「それじゃあチルカ、これから訓練を開始するのだけれど、あなたはどんな武器が得意なの?」

「えっと、わかりません」


 そうか、きっとこれまで自分を使ってくれる主人がいなかったから、武器を使った事すらないのね。でもそれだと……


「それじゃあ、あなたはどんな戦い方が得意なの?」

「わかりません」

「自分の長所は何かしら?」

「わかりません……」


 記憶喪失!? もはや記憶が無いレベルに自分を理解してないじゃないの!! これって本当に戦闘できるのかしら!?


「えっと、とりあえずケイト、色々と確認しながら相手をしてあげて……?」

「りょ、了解しました……」


 とりあえず実際に動いてみるのが手っ取り早いと判断して、私はケイトに丸投げをするのだった……

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