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「いいよ。やっつけようよ」

「ちょっと待って、リリー達の気配がする!」


 突然ルミルがそう言い始めて走り出す。僕とアリシアもその後ろに着いていくと、何もない壁の前で立ち止まった。


「この先にいるっぽい感じがする。ちょっと壊してみるね」


 そう言ってハンマーを壁に打ち付けると、その先には通路が伸びており、遠くに人影が二つあった。


「リリー、ケイト、こっちこっち!」


 ルミルが呼ぶと、それは確かにリリー先輩で、バタバタと僕達の方へと駆け寄ってきた。


「あなた達、ずっと探してたのよ!? 宝箱の部屋に入ったと思ったらいつの間にか消えてるし……」

「すみません。ですが話はあとです。今はここから脱出しましょう!」


 そうしてリリー先輩達を誘導する。その際に気になっていた事をルミルに聞いてみた。


「僕達よりも先に、最低でも三組の冒険者がここに来ているはずなんです。その人達の気配も分かりませんか?」

「……残念だけど、他には魔物の気配しか感じないかな。確かあたし達よりも一時間早めに行動してたんだよね? だとしたら、もう手遅れかも……」


 そう、僕が宿で寝ている間の一時間で他の冒険者は行動していた。一時間もあれば、さっきみたいに閉じ込められてから壁に取り込まれるには十分な時間だろう。

 ……今は探すよりも、とりあえず外に出た方がいい。そう割り切らなくてはいけないんだ……


「リリー先輩、ここは巨大なゴーレムの腹の中です。すぐにここを出ましょう!」

「えぇ!? わ、分かったわ!」


 そうしてみんなで走り出す。


「って、何コレ!? なんかでっかい穴が開いてるんだけど!? 爆弾でも使ったの!?」


 予想通り、ルミルの開けた穴を見てリリー先輩は良いリアクションを取ってくれた。


「うちのルミルが開けてくれました。どうです? ノーマルも悪くないでしょう?」

「……正直、信じられないわね……。いくらなんでも破壊力が現実離れしすぎじゃない? 地面すら抉れてるし……」


 リリー先輩は言葉通り開いた口が塞がらない状態で、目を白黒させていた。

 そう、ルミルの一撃は地面すらも抉り取っている。まるで、レーザー光線で地面もろとも吹き飛ばしたような感じだ。

 恐らくルミルの『爆壊』は打ち付けた瞬間、ハンマーに纏っている魔力が前方へ放射されるのではないだろうか? そうでなければあれだけの威力にはならない気がする。


「あたしが前を走るよ。なんだか敵の気配が怪しい気がする!」


 何がどう怪しいのか分からないが、今はルミルのいう事を聞いた方がいいかもしれない。

 そうして僕達はルミルを先頭にして外へ出ようとした。その時!


 ――ガギィィィン!!


 突然、岩石が横殴りに飛んできたと思ったら、それをルミルがハンマーで受け止めていた。


「重ったい……なぁ!!」


 ルミルはなんとかそれを弾き飛ばす。トラップかと思いながらも外へ出ると、城はとんでもない変貌していた。

 最初に見た綺麗な外壁はそのままだが、ゴツゴツしいゴーレムの腕が城から生えており、今襲ってきたのがそれなんだと判断できる。恐らく、もはや城として擬態する必要が無くなったので腹から出た瞬間を狙ったのだろう。

 次に城の上部。よくゲームでは兵士が高い位置から見張りを行う囲いには大量のゴーレムが僕達を見下ろしていた。攻めてくる様子はないが、いつでも突撃できるように身構えているように見える。


「城を出る際の不意打ちは危なかったけど、外に出てしまえば安心ね。このまま逃げましょう!」


 リリー先輩がそう言って先導しようとするが、僕は少し考えてしまっていた。


「ゴーレム、守りに入ってますね……」

「え?」

「ルミルさん、さっきの強力な一撃、もう一発打てませんか?」

「……打てるよ。本当にあと一発が限界だけどね」


 するとリリー先輩は必死に僕を止めにはいった。


「待って待って! 今は逃げるのが先決でしょ!? 一旦体制を整えてからのほうが……」

「ですが、今逃げたらすでに囚われているであろう冒険者のみなさんは確実に死にますよ!」

「それはそうだけど……。ルミルって子も消耗しているじゃない! 今突撃したらやられちゃうかもしれないのよ!?」


 ……確かにそうだ。このキングゴーレムを倒すのにはルミルの負担が大きすぎる。ここで仕留めるべきか、逃げるべきか……

 迷う。どうすべきか本当に迷う……


「いいよ。やっつけようよ」


 僕が悩んでいると、なんとルミルはキングゴーレムの方へと一歩踏み出していた。


「ご主人はさ、今ここで倒して中にいる人達を助けたいんでしょ? いいよ。あたしなら問題ないから」

「……ですが、ルミルさんだってギリギリなのに……」

「それにさ、アイツら散々好き放題やった揚げ句、『今は見逃してやる。その代わり向かってくるなら容赦はしない』って態度なのがすごくムカつく!」


 城の上部を見上げると、そこに並んだゴーレムは威嚇するような動きでこちらを見下ろしていた。


「……分かりました。ではルミルさんに討伐を託します。けど無理はしないでください!」

「オッケー! そうこなくっちゃ!!」


 ルミルは勢いよくキングゴーレムに向かって行く。すると城から伸びたゴツゴツとした不揃いの腕がルミルに向かって叩きつけられた!

 しかしルミルはその攻撃を見切り、むしろ腕の上に飛び乗るとそれを伝って登っていく。どうやら上に向かてそこを叩く気らしい。

 けれどそうはさせまいと大量のゴーレムも動き出した。囲いの上で待機していた通常のゴーレムもルミルに向かって突撃を開始したのだ。


「あ~っもう仕方ないわね! ケイト、あの子をサポートしてやって!!」

「了解しましたリリーティア様!」


 魔女風のコスチュームを見に纏っているケイトが杖を構える。すると先端に光が集まりだした。


「ライトニングシュート!!」


 そう発すると同時に杖からいくつもの光が放出する。それはまるで拡散ビーム砲のようで、その一発一発が的確にルミルに突撃していくゴーレムを打ち抜いていた。

 しかも一撃でゴーレムは打ち砕かれ。バラバラになって地面へと落下していく。


「す、凄い! 一度に無数のゴーレムを破壊できるなんて!」

「当然よ。私は未だケイトしか従えていないけど、その代わりにこの辺の魔物なら確実に倒せるレベルにまで育てているもの。ケイト、そのままルミルって子の援護を続けて!」


 ケイトが襲ってくるゴーレムの群れを遠距離攻撃で蹴散らし、ルミルは一気に駆け抜ける。そうして二階のテラスのような場所までたどり着いたルミルは、さらに外壁を蹴りながら三階へと登っていく。

 やはりルミルは上から攻撃を仕掛ける事で、キングゴーレムに大きなダメージを与えようとしているんだ。

 恐らく、狙っているのはキングゴーレムの顔面と思われる中央の建物。


「プオーーーーン! プオーーーーーン!」


 突然サイレンのような音が鳴り響いた。何事かと思っていると、上空にいくつもの鳥が出現する。

 よくお城の上空には真っ白の鳩が飛び交っているようなイメージが僕にはある。そんなイメージを再現するように、今、このキングゴーレムの上空には巨大な鳥が大量に集まりつつあった。


「あれはオオワシ!? 啜り鳥! ヘルバードもいるわ!」


 魔物の名前はよく知らないが、大量の魔物が集まって来てる。いや、城にそびえ立つ高い塔から飛び立っているように見えた。


「あいつらに空から攻撃されたらひとたまりもない。ケイト、あいつらも打ち落として!」

「分かっています。けど……」


 ケイトがレーザーのような攻撃を空に放つが、全ての攻撃が避けられてしまう。さすがに距離があるし、鳥の魔物は縦横無尽だ。


「……そうだ! アリシアさん出番です。ルミルさんの援護に向かってください!」

「けど、私はマスターの護衛をしないと……」

「僕はケイトさんに守られているリリー先輩の、さらに後ろに隠れています。だから今はルミルさんを助けてやってください。そもそも今回はアリシアさんは全く活躍してないじゃないですか。そんなんでいいんですか!?」


 するとアリシアは、やれやれとため息を一つ吐き出した。


「私にとってはマスターの安全が最優先なんだけど、そこまで言うなら本気を見せてあげるわ!」


 そう言ってアリシアは足を広げて前のめりになる。


「スキル『韋駄天!』」


 そして凄まじい速さで城に突撃していく。そのまま外壁を直角に駆け上がり始めた!


「なっ!? なんなのあの子は! 壁を走ってるんだけど!?」


 多分、スピードと勢いに任せて強引に駆け上ってるんだろうなぁ。器用というか、むちゃくちゃというか……

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