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「わぁ~宝箱よマスター! 開けてみよ~!」

「……なんか、冒険者どころか魔物すら現れませんね」


 一夜にして現れたお城を調査するという緊急クエストを請け負い、何もかもが謎すぎて警戒している僕達が入り口を見張る事すでに十分。何も起こらずに気持ちに余裕が出てきていた。


「どうしますかリリー先輩! 中に入ってみますか?」

「ちょっと!? いきなりこんな時だけ先輩とか呼ばないでよ!」


 彼女はまだ緊張しているのか、決めかねている様子だった。

 それにしてもリリー先輩って呼び方いいな。歳は僕の方が上だけど、実際冒険者としては彼女が先輩なので親しみを込めてこれからもそう呼ぼうかな?


「クエスト内容はこのお城の調査って事ですけど、そもそも僕はこれ、人間が作った物なんじゃないかって思ってるんですよ」

「へぇ。と言うと?」

「魔物がこんな物を作った前例はないんですよね? だとしたら人間がなんらかの理由で作ったって事じゃないですか。正確に言えば、冒険者に仕えるガチャ娘がその能力で作った代物なんじゃないかって思うんです」


 リリー先輩はなるほど、と考え込んでいた。


「つまり、この城の主にあって話を聞けばクエスト完了だと思うんですよね。従って中に入っても問題ないんじゃないですか?」

「可能性としてありそうね……」


 彼女も少しだけ納得してくれたので、僕達は全員で中へ入る事にした。

 門を通り、なんだかやたら長い通路を進んで城内に潜入する。中央ホールのような場所に出るとそこは迷路のようになっていた。

 階段が上へ行ったり下へ行ったりと交差して、あちこちに扉が立てられている。まじめに通路を通っていたら迷いそうだが、アリシアに抱えてジャンプでもしてもらえばショートカットとか出来そうな構造だ。

 なので、なんとなく迷ってもどうにかなりそうな、そんな印象を覚えていた。


「とりあえずテキトウに進んでみましょうか」


 魔物の姿も見えないので、僕は目に入った扉を開けてみた。そこは長い廊下になっていて、一直線に伸びている。

 この細い廊下だけを見れば、石造りのダンジョンのような錯覚さえ覚える。けれどどこからか光が入り込んでいて、そこまで暗くはなかったりした。


「そ、それじゃあ進もうじゃないの!」

「リリーティア様、私から離れないでください!」


 リリー先輩がより一層緊張していて、そのガチャ娘のケイトが前を歩くようにしていた。

 これぞ正に潜入調査。どこか冒険心をくすぐるような、そんなワクワクが僕にはあった。


「マスター、怖かったら私に抱き着いてもいいからね♪」

「ご主人、あたしのハンマー大きすぎて邪魔だよ。腕輪の中に閉まっておくから、必要な時に取り出せるようにして」


 うちのガチャ娘はどこかのほほんとしていた……

 そしてしばらく先に進むと、通路の途中で扉付きの部屋を発見した。なんだかこの扉も石で出来ているようで色合いも似ている。

 僕達はその扉を開けて内部を確認してみる事にした。


「おじゃましま~す……」


 なぜか古典的な泥棒のようにコッソリと扉を開けると、そこは大部屋とは言えないまでも、なかなか大きな部屋になっていた。

 そしてその部屋の一番奥には、なんと宝箱が置かれている。


「わぁ~宝箱よマスター! 開けてみよ~!」


 アリシアがはしゃぎながら部屋に入っていく。


「ちょちょちょ! もう少し警戒してくださいよ!!」


 確かに僕だって宝箱を見ればワクワクもするさ。けど頭の中まで浮かれっぱなしという訳にはいかない。

 いや普通にゲームならいいさ。いくらでも開けて中身を頂戴してやるさ。けどこれ現実だからね? 現実で目の前に宝箱があったらさ、さすがにちょっと色々考えてしまうわけですよ。

 例えばほら、所得税とかさ、所有権とかさ。って、税金なんて定めているような余裕がある環境じゃないんだろうけど……


「リリー先輩、僕、宝箱に出会ったのは初めてなんですが、これって貰ってもいいんですか?」

「いや、私だってこんなの経験ないわよ!」


 どうやらこの世界の住人でも、目の前で宝箱を発見するという体験は初めてらしい。

 なので、どうしたものかと思っていると――


「せっかくだし開けてみましょ♪」


 アリシアがそう言ってズカズカと部屋の中へと入り込んだ。

 ついでにアリシアの後を追うようにルミルも一緒に着いていく。


「えええ~~、いやダメでしょ!? さすがに勝手にパクったら問題でしょ!?」

「そうかしら? じゃあ開けるだけ! 中身は取らないから、何が入っているのか見るだけにするわ」


 いや、それもどうかと思うんだけど……


「ちょっと待ってください。罠が仕掛けられているかもしれないんですよ!? 開けたら爆発するかもしれません!」

「え~……。じゃあ開けたら私のスピードですぐに退避するわね」


 もはや何を言っても開ける気らしい。全くうちの子はヤンチャだなぁ……


「あなたんとこのガチャ娘大丈夫なの!? ちゃんとしつけてる!? とりあえず私達は外で見張りをする事にするわ。こんなだだっ広い部屋に宝箱が一つ。全員が部屋に入って罠にハマるのも避けたいしね」


 ごもっとも。さすが先輩、冷静で助かります……

 こうして僕とルミルは宝箱から十メートルほど離れて、リリー先輩は部屋の外で見張りをするという形となった。


「よぉ~し、じゃあ開けるわね。とりゃ~!!」


 ハイテンションなのが丸わかりの掛け声と共に、宝箱は一気に開け放たれる。そしてアリシアはすぐに僕達のいる所へと移動した。

 ……宝箱は何も起こらない。特に罠が発動する様子は無かった。


「大丈夫そうね。では私が責任をもって確認してくるわ!」


 アリシアはソロリソロリと宝箱へ近付いていき、その中身を覗き込んだ。


「わぁ~、見て見てマスター。綺麗な石が沢山入っているわよ」


 そう言われてから僕も中身を覗いてみる。すると確かにアリシアの言う通りの綺麗な石が沢山入っていた。

 これは宝石だろうか? それにしては輝きが鈍いような気がする。

 なんというか、宝石というよりは河原に落ちてそうな綺麗な石を沢山集めたと言った印象だ。

 とはいえ、僕もこの世界の宝石なんて分からない。そもそも原石だとしたらくすんでいるのが普通なんじゃないか?

 マジでよく分からない……。だからここはリリー先輩に聞いてみようかと思う。そんな時だった。


「あっ!?」


 ルミルが唐突に声を上げて出入口に走り出した。


「どうしたんですかルミルさん」

「何これ……。部屋の外にいたリリー達の気配が消えたと思ったら扉が消えてる!」


 そう言われてから僕も気付いた。この部屋に出入りしたはずの、開けっ放しにしていた扉が消えていた。だだっ広い部屋を見渡しても他に扉は見当たらなく、閉じ込められたという状態だ。

 信じられなかった。扉から目を離して一分も経っていないと思う。僅か三十秒ほどで出入口が消えてしまっていた。


「ど、どうするのマスター……」


 さすがのアリシアも戸惑いを隠せない様子だった。

 そんな中で、僕の代わりにルミルが平然とした口調でこう言った。


「別に問題ないでしょ。扉で出入りしていた程度の壁なんて、あたしならぶっ壊せる。二人とも離れてて!」


 腕輪の道具欄にしまっていた落雷のハンマーを手元にフッと出現させると、ルミルはガッシリと構える。


「リリー! ケイト! 壁をぶっ壊すから離れててよ!!」


 そう言ってから、ハンマーを壁に叩きつけた!

 ガラガラガラガラ……っと壁には大きな穴が空き、僕達はすぐにそれをくぐって通路に飛び出した!


「あ、あれ? 誰もいないわね……」


 アリシアの言う通り、その通路には前にも後ろにもリリー先輩達の姿は無かった。


「ルミルさん、二人の気配は!?」

「……ダメね。扉が消えた時と同じで、気配が全く感じられないよ」


 ルミルの探知は徐々に精度を増し、それなりに頼りになると思う。もちろんまだまだ発展途上ではあるものの、今現在のルミルが探知できないという事は近くにはいないのかもしれない……


「とりあえず二人を探しましょう。消えたのだって何かカラクリがあるはずです!」


 とにかく今は、足を使って二人の行方を追う事が先決だろう。

 そう思った時だった。

 ――ズシン、ズシン、ズシン。

 大きな足音が聞こえてきて、通路の先からなんとゴーレムがこっちに向かってきていた。


「ゴ、ゴーレム!? ここまで魔物と一度も出くわかなかったのに!?」


 しかしこっちにはルミルがいる。ルミルは昨日、大量のゴーレムをたった一人で壊滅させたという実績を持っているのだから!


「出番ですよルミルさん、お願いします!」

「わ、分かった!」


 ルミルは僕達の一歩前に出て、ぐいんとハンマーを振りかぶるのだった。

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