「ついにあたし達もSRと同じレアリティになったんだね!」
――冒険開始五日目の朝
「皆さん、お世話になりました!」
僕達はスミッコ村に発生した大量の魔物を討伐した後、村人に歓迎されて一晩泊めてもらっていた。
なんと朝ごはんをごちそうしてもらい、さらには昼食のお弁当まで持たせてくれたのだ。こんなにありがたい事なんてないだろう!
「気を付けてな! アンタの活躍を祈っているよ」
「俺たちもノーマルキャラを育てて立派に育成してみせるぜ!」
そう見送られて、僕達はさらに北へと目指す。魔物は北に向かうほど強くなるらしい。今の僕達ならばもう少し北上してもいいだろう。この先にも村があるらしいので、まずはそこへ向かう事にした。
所持品
SR育成素材×0
R育成素材 ×11
N育成素材 ×0
上限解放の秘薬×5
スキル上げの書×2
進化の宝玉 ×4
LV3魔石 ×2
ランク3装備セット
お金 7万5500
「昨日の緊急クエスト報酬で装備セットを貰ったけど、これどうしようか……」
確かアリシアが今使っている小太刀がランク2の武器だったから、これに変えれば少しは強くなるかな?
僕がそう考えた時だった。
「マスターが使って!!」
「駄主人が使って!!」
二人の声が見事にハモった。
「マスターって未だに防具も身に着けてないじゃない。これはマスターが装備して!」
「武器もナイフが一本だけでしょ? よくこれまで丸腰で旅なんてできたよね!」
いや~、アリシアが強いし、お金にも余裕がなかったからなぁ……
「男は黙って突き進むだけよ!」
「いいから早く武器を選んで!」
ルミルに急かされて「はい……」とだけ返事をする。彼女達はもはや冗談では誤魔化せないほど真顔だった。
「え~っと、武器の種類は何がいいんでしょうか?」
「今までに出会った冒険者はみんな『槍』を使っていたよね。基本的に戦闘はガチャ娘がやるし、できる限りリーチの長い武器がいいんじゃない?」
ふむ、ルミルの言う通りかもしれない。あくまでも僕が武器を使う時は万が一って状況だし、槍でいいか。
僕が種類を槍で選択すると、アイテム蘭に武具が追加された。
【パルチザンを手に入れた】
【鉄の鎧を手に入れた】
それらを装備で決定すると、鎧は自動的に装着された。
槍はシンプルに、長い柄の先端に鋭い刃が付いた代物だ。以前に聞いた通り、武器も防具も重さをほとんど感じなかった。
ゴツイ見た目が気になるので、装備の表示をオフにして旅人の衣装のままにしておく。
次は魔石を配ろうかな。今、二人はそれぞれLV3の魔石を装備している。これに同じレベルの魔石を合わせるとレベルが上がるらしい。
アリシアは素早さの魔石、ルミルには攻撃力の魔石をコマンド内で掛け合わせてみる。するとそれぞれのレベルが4に上がった!
これで多少でも戦力があがるはず。次は進化だな。
進化の宝玉が4つになったから、二人のレアリティを同時に上げよう!
「二人とも、アイテムを使って進化させますよ!」
そうしてコマンドを選択する。が……
【5000イン必要になります。進化しますか?】
そう出てきた。
そうだ。進化させるのにはお金がかかるんだった。二段階目は安かったから気にならんかったが、三段階目は結構高いな。しかも二人分だから1万か……
まぁ仕方ないので決定ボタンを押した。
所持金 7万5500 → 6万5500
「ついにあたし達もSRと同じレアリティになったんだね!」
「一応表記的にはSRだけど、使う素材は変わらずにノーマルなんでしょ? 前にマスターはややこしくなるからレアリティの呼び方を変えてたけど、今回はどうするの?」
そう、アリシアの言う通り今回も変えようと思っていた。レアリティでN、N+と来たら次のランクは……
「HNです。ノーマルの上異種という意味の!」
それを聞いた二人は息を呑んでいた。
「ハイノーマル……それが今の私達のレアリティなのね」
「ご主人、あたし達のステータス見せてよ」
ルミルに言われて、二人のステータスを開いてから指で弾いて滑らせた。
名前 :アリシア(覚醒)
レアリティ:HN(三段階目)
レベル :76
体力 :T
攻撃力 :U
防御力 :T
素早さ :S
精神力 :T
探知 :T
スキル1 :韋駄天LV10
スキル2 :状態異常付与LV1 new
必殺技 :無限刃
装備 :小太刀(ランク2)
:皮の鎧(ランク2)
魔石 :素早さ上昇LV4
推定戦力 :15万9500
名前 :ルミル
レアリティ:HN(三段階目)
レベル :79
体力 :T
攻撃力 :S
防御力 :T
素早さ :T
精神力 :T
探知 :S
スキル1 :サーチLV1
スキル2 :不可視化LV1 new
装備 :落雷のハンマー(ランク4)
:玄武の鎧(ランク4)
魔石 :攻撃力上昇LV4
推定戦力 :9万5950
「あれ? スキルが追加されてるわ!」
僕も二人の後ろから画面を覗き込むと、確かにスキルが一つ追加されている。これはレアリティ三段階目になった特権なのかな?
そういえばSRと練習試合をした時に、相手はスキルを二つ使っていたっけか。
とにかく、スキルの説明を表示してみた。
状態異常付与:敵を攻撃した際に、ランダムで状態異常を一つ付与する。
不可視化:使うと一定時間の間、周りから姿が見えなくなる。一度攻撃をするか、触れられるかすると解除される。
おお!? これは凄いな。使える戦術の幅が大きく広がったぞ!
さっそく試してみたいけど、今は……
「アリシアさんに一つお願いがあるんです……」
「何かしら?」
「今日はまだデイリークエストを請け負っていません。次の村までどれくらいかかるかも分かりません。なので、スミッコ村に向かった時のように僕達を抱えて走ってくれませんか?」
そう。僕のプランとしてはお昼くらいには次の村へ到着して、そこから討伐クエストを請け負うのが好ましい。けれどその村までどれくらいかかるのかがよく分からなかった。
「オッケー。私に任せてちょうだい!」
快く引き受けてくれたので、全員分の武器をアイテム蘭に戻して少しでも運びやすいようにする。そうして僕とルミルはアリシアの両脇に抱えられることになった。
「言っときますけど腕輪のアイテム欄に戻せるのは魔力で構成されたガチャ娘関連の物だけですからね! 貰ったお弁当は手持ちですから揺れると崩れちゃいますからね!」
「分かってるって。それじゃ~行くわよ~♪」
多分分かってない! 多分走るのにウキウキしてて勢いに任せそう!
そうして走り出したアリシアは案の定、跳ぶわ揺れるわの大惨事であった事を僕は忘れない……
ただ、やはりそのスピードは驚異的なもので、現代で言う自動車のような速さで移動していく。何度も休憩をはさんだり、貰ったお弁当を食べたりしながら道なりに進むと、ついに一つの村が見えてきた!
周りはいつの間にかゴツゴツとした岩石地帯のような場所になっていて、植物なんかはほとんど見られない。あるとすれば、硬い地面から力強く生えている雑草くらいなもので、そんな荒野の真ん中にある村だった。
「到着~! なんとか日が落ちる前に着けたわね」
お弁当の中身がシェイクされてでも急いだ甲斐があったというものだ。今の時間ならまだまだ今日のクエストをこなす余裕はあるだろうから。
僕達はとりあえず村に入って一息着くことにした。
「ようこそ。ここはロック村。荒れた荒野に湧いてできた泉を中心にできた村だよ!」
村人がゲームのようなセリフでお出迎えしてくれる。なるほど、湧き水を使って生活をしているらしく、村には水路が引いてあった。
そのおかげか村の中には植物が生えていて、まるでオアシスに作った村という印象だった。
「あの、僕達は冒険者なんですが、この村にギルドはありますか?」
「ああ、この先にあるよ」
よし、ギルドがあるって話は聞いていたけど、ちゃんと情報通りで良かった。さっそく討伐クエストを請け負ってデイリーを消化しよう!
僕達はギルドに入ってクエストを確認してみた。
【村周辺の魔物の討伐×5、推奨戦力13万】
これを五回請け負う事にした。報酬は同じで各経験値素材だ。まだまだレベルも上げなくちゃいけないからね。
五体の討伐を五回行うので、計25体の討伐になるけど、こっちはルミルが加わって二人がかりで戦闘に臨める。しかも今までは魔物一体でいるところを狙っていたけど、今は複数で群れているところでも気を付けさえすれば狩れるはずだ。効率は各段にいいはず!
「よぉし、それじゃあ二人の新しいスキルを試しながら、今日のデイリー討伐を開始しましょう!」
そうして僕たちは今日の討伐に向かうのだった。




