「敵の気配を察知するコツとかないの?」
名前 :アリシア(覚醒)
レアリティ:N+(二段階目)
レベル :76
体力 :T
攻撃力 :U
防御力 :T
素早さ :S
精神力 :T
探知 :T
名前 :ルミル
レアリティ:N+(二段階目)
レベル :79
体力 :T
攻撃力 :S
防御力 :T
素早さ :T
精神力 :T
探知 :S
「次は精神力を調べたいんですが……」
いや、前から思ってたけどこの精神力って何に影響のあるステータスなんだ……?
「精神力ってアレよね。あたし達の体内の魔力の値……的なやつ?」
「状態異常にも関係してるっぽいけど、基本的には魔力を飛ばす遠距離攻撃型に必要な項目であって私達には関係ないんじゃない?」
二人とも、説明ご苦労! マジで知らなかったから助かったよ。
そう言えば、悪鬼と戦った時に遠距離攻撃してるガチャ娘がいたっけか。
「ああいうのって魔法じゃないんですか? 前にアリシアさんがこの世界には魔法はないって言ってましたけど」
僕の質問に答えてくれたのはルミルだった。
「魔法って概念は知らないけど、ああいうのは自分の体内の魔力を飛ばしているだけだからね。その精神力ってのが高いほどうまく扱えるんじゃないの?」
そういう項目なのか。けど、二人のステータスを見比べても普通っぽい値になってるのはどうなんだ? 近接戦闘型ってこういう魔力の値が低いイメージなんだけど……
「ふむ。お二人は魔力を扱えないんですか?」
そう聞くと二人は顔を見合わせて考え込んでしまった。
そしてアリシアはこう答える。
「私達は今までマスターに使ってもらった事がないし、そういうので自慢するSRとはなるべく話さないようにしてたからね。よく分からないわ」
そうなのか。他のガチャ娘が攻撃スキルで爆発させたりするのを見た事があるけど、そういうのも本人が持つ魔力なんじゃないんだろうか?
まぁ今のところは気にしなくてもいいかな。今回気になっているのは次の項目だし。
「では次のテストに移りましょう。これも全然役立ってないんですが、『探知』です。これって言葉通り、魔物なんかの存在を感じ取ったりする項目ですよね?」
うん、そのはず。と自信なさげにルミルが答えた。
「表記上ではルミルさんの方がアリシアさんよりも一段階上って事になってますけど、魔物を見つけやすかったりするんですか? ちょっと二人でやってみてくださいよ」
そう言うと二人は同時にキョロキョロし始めた。
え、探知って目視で行うものなのか? なんかこう、目を閉じて気配とかで感じ取るものだとばかり思ってたんだけど……
「う~ん、さっき村の防衛線で殲滅したから近くにはいないみたいね」
「あたしも、魔物は見つけられないなぁ」
二人してそんな事を言っているけど、僕の正面。二人からは背後にコソコソとしている魔物が見えるんですが……?
「二人の後ろに逃げ回ってる魔物がいますけど?」
二人がクルリと振り返ると、魔物は怯えて逃げていく。それを見て二人は頭を抱えてしまった。
「うあ~~! 駄主人に探知で負けたぁ~!!」
「マ、マスター。もう一度チャンスをちょうだい! 次こそうまく見つけて見せるわ!」
二人が必死に喚いているけど、これはどういう事なんだ? レベルを上げた際に攻撃力なんかと一緒に探知も上がっているはずなのに、全くと言っていいほど効果が見えない。これは……
もしかしたら、このステータスは僕がゲームで見るような表じゃないのかもしれない!
「二人とも聞いてください。このステータスってもしかしたら現在の能力値ではなく、限界値なんじゃないでしょうか?」
「……どういう事かしら?」
ハテナマークを浮かべている二人に、あくまでも僕なりの解釈を述べてみた。
「このステータスの文字表記がずっと変だと思ってたんですよ。具体的な数字じゃないこれって、レベルを上げて表示が上がったとしても能力値は上がってないんじゃないですか? いや多少は上がっているのかもしれませんけど、基本的には人間と同じで自分で意識して磨かないと上昇しないんじゃないかって。アリシアさんは最初からスピード特化としてそれを戦闘に活かすようにしていました。ルミルさんもパワータイプとして今回の戦いで経験を積みました。けれど精神力や探知は意識して磨こうとしていないから未だに成長がない。つまりこの表記って『伸びしろ』的な意味なんじゃないでしょうか」
おお~! と感嘆の声が上がる。いや、本当に僕の推測でしかないんだけどね。
とりあえず、こういう疑惑が出たので村の冒険者にも聞いてみよう!
そうしてガチャ娘の育成について色々と話をしてみたところ、ハッキリ言って誰もそこまで深く考えた事がないとの事だった……
もうこうなったら自分で確かめるしかない!!
「では今からセカドンの街へ行くことにします!」
「ええ!? 今日はこの村に泊まるんじゃなかったの!?」
そんな風に驚くアリシアをなだめながら、僕はこれからのプランを話した。
「セカドンには緊急クエストの報酬を受け取りに行くだけです。またすぐにこの村へ戻ってきますよ。そしてその道中、二人には魔物の気配を察知する訓練を行ってもらいます。往復する間、できる限り魔物の探知を意識してください。そうしてこの村に戻ったら一泊して、明日の朝には次の街へ向かいますよ」
こうして僕たちは一度セカドンへと向かった。
道中は僕の指示した通り、二人は魔物の察知に専念している。
「ムムムム……そこかぁー!!」
突然アリシアが草むらに飛び掛かる! しかし風で揺れただけのようで、悔しそうに戻ってきた。
「魔物ぉ~、魔物ぉ~~!」
ルミルは両手を前にかざして、何かを受信しようとゆっくりと歩いている。
正直、はたから見れば怪しい集団でしかない。挙動が怪しすぎるから……
これ他の冒険者に見られたら恥ずかしいよなぁ。けど二人の能力開拓のために仕方ない事だし……
そんな訓練を行いながらセカドンに到着するも、二人の成果は全然ダメだった。とりあえずはギルドで緊急クエストの報酬を回収しよう。
セカドンにいる冒険者には良く思われていないだろうから、僕達ははコッソリとギルドへ入って報酬を受け取った。
上限解放の秘薬 ×2
進化の宝玉 ×2
LV3魔石×2
ランク3装備セット
3万イン
これが今回の報酬だった。うむ、やっぱりお金が一番嬉しいかもしれない……
結局はお金が無ければ宿を取る事もできないのだから!
「あの、今回僕達は緊急クエストを請け負っていないんですが、どうして報酬が出たのでしょうか?」
そうギルドのお姉さんに聞くと、他の冒険者に聞かれないように小声で教えてくれた。
「今回ジン様の緊急クエスト参加はこちらで勝手に行いました。どう考えてもジン様の行動が最も評価されるべきだと判断したため、このような処置となった訳ですが、あくまでもここのギルドでの判断であるために毎回こうなるとは思わないでください」
分かりました、と僕は頷く。
ギルドのお姉さんはさらに愚痴をこぼすように教えてくれた。自分達は召喚士様のガチャ娘であり、その命令で人間を助ける事は無い。仮にこの街が魔物に襲われても助けはしないだろう、と。
しかしそれでも、ガチャ娘としてではなく個人としての考えで助けた方が良い判断した場合は吝かではないとの事。今回はそれだったらしい。
つまりここのギルドでは個人的に僕に報酬を払うべきだと判断して、勝手にそれを実行したのだ。
「あの、ありがとうございます。本当に助かりました」
「いえいえ。ジン様の事は各ギルドを通じて噂になっているんですよ。面白い冒険者が現れたと。今後も期待していますので」
お姉さんはニコニコしながらそう答えてくれた。
なんだか恥ずかしいような、プレッシャーを感じるような、そんな気分で僕達はスミッコ村への帰路へとつくことになった。
それにしても、やっぱり召喚士様はどこか非常になり切れないように思える。本気で人間を見捨てるような指示じゃない気がするんだよなぁ。
「ねぇねぇマスター。敵の気配を察知するコツとかないの? 全然分からないのだけど……」
ついに帰り道でアリシアが僕に泣きついて来た。
けれどそう言われても、僕だって気配の読み方なんて知る訳がない……
「なんでもいいからアドバイスをちょうだい。このままだとマジで何の成果も出ないよ」
ルミルも完全にお手上げ状態らしい。
「う~ん、マンガで読んだだけの知識でいいなら話しますよ。あくまでも創作物での話ですが、敵の気配を察知する方法自体はいくつかありますね」
おお~、と二人は興味津々で詰め寄ってくる。
「一つは空気の変動を感じる事です。二人とも、手を前に出してください」
言われた通り、二人が手を前にかざす。僕はその二人の差し出された手の前を横切った。
「今、手のひらに風を感じませんでしたか? 物体が動くと空気が動きます。それは風となって肌で感じることが出来るんです。これを自然の風か、人為的なものかで周囲の動きを知ることが出来ます」
おお~、と驚く声が上がる。
もちろん、こんなのはマンガの中の話なので実際に把握できるのかは分からない。……と言うか、普通は無理なんだけど……
「他には音や気配を感じ取る方法ですかね。微かな物音や息遣い、敵の視線や殺気を感じ取って相手の位置を把握する方法です」
「う~ん、それだと耳が良くないとダメよね? そもそも視線や殺気って感じ取れるものなの?」
アリシアが難しそうな顔で質問してくる。
正直そんな事は僕だって分からん! けれど、こう、なんかそれっぽく言わないと格好がつかない!
「普通だったら感じ取れませんよ。けど意識の奥深く、潜在的な所では把握している事があるそうなんです。例えば物陰からこちらを覗き見ている者がいるとします。当然そいつらは隠れているのでこちらからは気付けません。ですがその物陰から覗く眼光は確かにあって、それは無意識ですが僕達の脳へと伝わっているんです。そんな『ごく小さな違和感』をしっかりとキャッチできる繊細さがあれば、敵の察知に繋がるのではないでしょうか」
おおお~~!! と、またしても感嘆の声が上がる。今日はこれで何回目だろうか? 二人は目を輝かせながら聞いてくれていた。
……いやまぁ、ホントそれっぽく理屈を付けただけなんだけどね……
「わ、私もう一度やってみるわ!」
「あ、あたしも!!」
二人は再びやる気を出して魔物を探し始めた。そうしてゆっくりと歩みを進めながらスミッコ村へと帰っていく。
少しずつでもいい。こうして少しずつでも二人の成長を促して、しっかりと強敵と戦えるだけの能力を育てていく事が僕の務めなんだ。
「ぐぬぬぬぬ……」
「む~~~ん……」
ゾンビのようにフラフラと徘徊する二人を見つめながら、僕はテキトーに言ってしまった発言を正当化するための言い訳を心の中で呟くのだった……




