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「お~い、救援に来たぜ~! 魔物はどこだぁ~!!」

「動かないから、死んだみたいだな」


 一人の冒険者が、ゴーレムから目を離さずにそう言った。


「こいつ、食料にはならないしどうしたらいいかな?」

「壊れた石垣の破片でいいだろ?」


 次第にみんなは勝利を確信し、雑談を始める。そんな中で僕はゴーレムを未だに眺めていた。

 両腕が壊れ、頭も半分に欠けているそいつは動かない。けれどなぜか違和感を感じる気がする……


「このゴーレム、あらためて見ると大きいですよね? こんな大きさでしたっけ?」

「マスターは離れていたから遠近感があるんじゃないかしら?」


 アリシアにそう言われるとそんな気がする。

 だけどそれを否定するようにルミルは声を上げた。


「いや、確かに大きくなってる! コイツなんか変だよ!!」


 そう言った瞬間、ゴーレムの腕が瞬時に再生した! 

 グンと体を持ち上げると、四つん這いの状態で動き出す。いつの間にか欠けた頭も再生していた。


「まだ生きてます!!」


 僕がそう叫んだ時にはもう、ゴーレムは蛙のように跳び上がっていた。その先には雑談をしている冒険者がいる!


「主様あぶない!!」


 自分の主人を守ろうとガチャ娘がその冒険者を付き飛ばす。そこへゴーレムのボディプレスが降下してきた!

 ズシンと大地が揺れ、庇ったガチャ娘はその巨体の下敷きになってしまった。


「うわあああ!? 俺のジェニファーがぁ!!」


 困惑する冒険者たち。

 もしかして密かに再生していたのだろうか? そう思ってゴーレムが倒れていた場所を見ると、そこにはクレーターのような窪みが出来ていた。

 そうか。地面から土を吸収する際に、倒れていた自分の体で隠していたんだ。体が大きく見えたのは多分、腕を再生する前に一旦自分の体に蓄えていたからだろう。少しずつ再生すると生きている事がバレるから、自分の体に蓄えて、一気に動けるようになるまで急速に再生を促した。


「くそぉ! ジェニファーを返せ!」


 すぐに再戦が始まり、残ったガチャ娘がゴーレムを動かそうとしていた。

 ゴーレムが起き上がると、うつ伏せでボロボロになっているガチャ娘が見えた。


「げほっ。ハァ……ハァ……」


 まだ生きている! 早く助けないと!!

 他のみんなが戦っているけど、やっぱり防御力が高すぎてルミル以外じゃダメージが与えられていない……


「ルミルさん、もう一度さっきの作戦を!」

「……けど、アイツ今メチャクチャ動き回ってて狙いが……」


 確かに、高い所からの振り下ろしの一撃は相手が止まっていてくれないと……。一人負傷しているから残りのガチャ娘は二人。動きを止めるには心もとない。

 僕がそう、どうしたものかと考えている時だった。


「アリシア、もうこうなったら、あたしごと使って!」


 ルミルがそんなよく分からない事を言った。

 当然アリシアも首をかしげている。


「この武器が高い所ほど強いのなら、勢いを攻撃力に変えてるんじゃないの? だったらあたしを抱えてそのまま走って!!」

「なるほど。簡単に言うと、高い所から飛び降りた時と同じくらいの勢いで走ればいいのね! 任せてちょうだい!」


 そうしてアリシアはルミルを抱える。腰に腕を回し持ち上げて、ちょうどこの村に走ってきた時と似たような格好だ。


「それじゃあ行くわよ!」


 アリシアが勢いよく走り出す。ルミルは二人三脚をするように、アリシアの肩に左腕を回して体勢を固定させていた。武器のハンマーは右手でしっかりと持っている。

 アリシアは助走をつけるためにゴーレムの周りを大きく回り始める。楕円を描いてグングンと加速し、勢いが出たタイミングでゴーレムに向かって直進した!


「二人とも離れて! 突撃するわ!」


 ガチャ娘たちが逃げるように散っていく。そこへルミルを抱えたアリシアが突っ込んでいった。


「行くわよルミル! 魔物の横を全力で通過するわね!」

「了解! これがあたしたちの合体技だ!!」


 ルミルがハンマーを振り上げる。そして、凄まじいスピードで走るアリシアの勢いに負けないようにスイングをした。

 片手で、けれど腰を回すように反動をつけ、右腕をしならせ振り切るように!


「うおおおおお! ぶっ壊れろぉ~~!!」


 ハンマーを叩きつけた瞬間とんでもない音が鳴り響く。まるで電車がゴーレムに激突したかのような爆音だ。

 それだけの衝撃を轟かせ、ゴーレムの胴体は完全に粉砕してバラバラになっていた。

 残っているのは頭と、両腕と、両足だけ。それらが無造作に地面へと転がり、もうほとんど原型をとどめないほど無残な形へと成り果てていた。


「やったか!?」


 なんかルミルがバトルマンガの定番のようなセリフを吐いている……


「それ、やってない時に言うセリフじゃないの?」

「そんな決まり知らないし……。やってないって知ってて言うセリフなの?」


 アリシアとルミルがふざけ合う。

 さすがに今回はやっただろう。二人の軽口のそれが、もう勝利の決め台詞に聞こえるのだから。


「今度こそ終わりました。僕たちの勝ちです!!」


 そう声を上げる! そう勝鬨かちどきを上げる。

 そんな僕に呼応するように、その場でみんなが歓喜した!


「勝った!? 村を守ったんだ!」

「もうダメだと思ってたけど、諦めなくて良かったぁ!!」


 それぞれが力を出し切ったように、疲労と勝利の余韻を混ぜたような表情をしていた。


「俺のジェニファーが動けねぇ。誰か手を貸してくれ!」

「分かった。今行く!」


 そしてゴーレムに押しつぶされたガチャ娘を、みんなで村へと運びこんだ。


「その子、大丈夫ですか?」

「ああ、HPはまだ残っているからな。休ませれば回復するさ」


 どうやら無事のようだ。他の冒険者は村の中に魔物が潜んでいないかを確認したり、村人にとりあえずは撃退したことを報告に行ったりとせわしなかった。


「なぁアンタ達、ありがとうな」


 突然、ガチャ娘を看病していた冒険者からお礼を言われた。


「アンタ達のおかげで村を守る事が出来た。大量の魔物を押し返せたのも、ゴーレムに勝ったのもアンタ達のおかげだよ。本当にありがとう!」


 唐突にそんな事を言われたもんだから、僕としては面食らってしまった。


「ところでずっと気になっていたんだけど、この村の救援に来たって事は一人じゃないんだろ? ほかの救援はどうしたんだ? まさか別の場所で戦っていたとか?」

「あ~……それはその~……」


 なんとなく、僕の口から『緊急クエストを請け負ってから来る予定です』とは言いにくかった。

 そんな時――


「お~い、救援に来たぜ~! 魔物はどこだぁ~!!」

「うへぇ~、死体の山だな。これはまだかなりの数が残っているんじゃないか?」


 なんと今頃、そんな事を言いながらセカドンの街にいた冒険者が到着した。

 いや、いくらなんでも遅すぎでしょ……


「もう終わりましたよ。強いていうなら倒した魔物の後かたずけくらいですよ」


 僕はうんざりしながらもそうお出迎えをした。


「はぁ~!? 終わったって、そしたら緊急クエストはどうなるんだよ!?」

「いや、知りませんって。でも村が無事だったんでいいじゃないですか」


 さすがに『良いわけないだろ~!』とは口に出せないみたいだけど、どう見ても悔しそうな顔をしていた。

 他の数名の冒険者達も、話が違うとざわついている。


「お、おい。クエスト一覧を見てみろよ。すでに解決済みに変わってる!」

「そ、そんな! せっかくの緊急クエストなのに!?」


 みんなが困惑している中、僕の腕輪からも通知音が鳴った。

 それを確認してみると、クエスト完了という表記が出てきた。しかも――


「あら? マスターがこの緊急クエストのMVPになったの!? おめでとう、やったじゃない!」


 後ろから覗き込んでいたアリシアがそう馬鹿正直に声に出していた。

 ……もしかしたらこの子は空気が読めないのかもしれない……


「はぁ~~? クエストを請け負ってないアンタがなんでMVPになってんだよ!?」


 それを聞いた他の冒険者たちはさらに気が狂ったように問い詰めてきた!


「は? どういう事? なんでコイツが?」

「ず、ずるいぞ!! 密かに請け負っていたのか!?」


「い、いえ、請け負ってませんよ。僕にも何がなんだか……」


 そう言ってもセカドン勢は納得がいっていない様子で騒ぎ始める。

 そんな時だった。


「別にいいじゃないか。この方が真っ先に村へ向かってくれたのは事実だろうが!」


 そう答えたのは、セカドンに救援要請をしに走ってきた村人だった。


「この方以外は緊急クエストを受注してからじゃないと動けないとか言って、それで来るのが遅くなったんだ! だけどこの方は真っ先に村へ向かってくれた! 俺はちゃんと確認したぞ!」


 そう大声で周りに伝えるように言ってくれた。

 『それは本当か?』と歩み寄ってきたのはガチャ娘の看病をしていたこの村の冒険者だ。


「だとしたらMVPも納得だよ。彼が来てくれなかったら村は魔物によって壊滅してた! ゴーレムというやっかいな魔物も現れたんだが、それを倒せたのも彼のおかげなんだ。彼が来てから死亡した村人は一人もいない。むしろ彼以外がMVPだったらそれこそ間違っている!!」


 さすがにこれには気まずいのか、セカドン勢は黙って俯く者ばかりだ。


「ふ、ふん! まぁ解決したって事でいいんだろ! もう帰るぞ!」


 セカドン勢はブツブツ言いながら引き返していく。そんな彼らを村人は睨むようにして見送るのだった。

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