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「お願い、私を使って!!」

「ぜぇぜぇ……街に到着ぅ!」


 柵で囲まれた街へと到着した僕は息を整える。すると周りにいる人たちは僕を不思議そうに見つめていた。


「キミ、旅の人? もしかして一人でここまで来たの?」


 と、通りすがりのおじさんが僕に話しかけてきた。


「あ、はい! 途中で魔物に襲われて危ないところでしたけどね。ハハハ……」


 嘘は言ってない。なにせ一回目は死んじゃったし……


「それは大変だったな。ようこそ、平和の街『ハジメノ』へ! 旅を続けるならちゃんとガチャむすをお供にした方がいい。ほら、あそこにある建物、冒険者ギルドでガチャが引けるから」


 僕はおじさんにお礼を言ってからギルドを目指すことにした。

 やはりこの世界はガチャが存在するらしい。ガチャ娘って言うくらいだから女の子しか排出されないのかな? しかしそうなるとコミュ障の僕には荷が重いぞ……

 一応僕だって25歳の大人だ。続かなかったけれど仕事をした経験もある。だからそれなりには言葉遣いやそれなりの対応くらいは分かっているつもり……なんだけど、女の子の扱いはなぁ~……

 とはいえ、悩んでいても仕方がない。もう生まれ変わったつもりで臨むしかないのだから。……まぁ実際生まれ変わっているんだけど。

 そう言えば僕の容姿はどうなっているのだろうか?

 街の中にある窓ガラスの前に立ってみる。なるほど。僕の姿や身長は生前と何も変わっていない。

 そこまで高くない身長に、大人としての威厳が感じられない童顔。それが僕のルックスだ。

 あの女神様が面倒くさいから同じ外見を作ったと言っていたけど、正にその通りのようだった。

 しかし違いがあるとすれば僕の着ている服装だ。なんだかこの街の人たちと同じような布の服を帯で縛るような、そんなファッションになっていた。そして腰の帯には道具袋のようなものが括り付けられていて、そこにはこの世界でのお金のような紙幣が入っていた。

 通貨はよくわからないけど、数字を全部足すと五万円もあった。

 それにしても未だに分からないのがこの世界のことだ。女神様はこの世界は悪い方へと向かっていると言っていたが、見る限りおかしなところは何もない。さっき話しかけてくれたおじさんもいい人そうだったし、どこら辺が悪いのだろうか?

 強いておかしなところを挙げるとするなら、行き交う通行人のほとんどは男女というセットで行動している。初めは『カップルばっかりかよ目が潰れそうだ!』とか思ったけど、女性の方はしっかりと武器を携えているのだから、あれがこの世界のガチャ娘なのかもしれない。

 ……なんかよく見ると虹色のオーラが噴き出しててゴージャスな子ばっかりだし……

 とにかく僕は教えてもらったギルドへ向かう。この世界のガチャを体験しなくては何も始まらないらしいからね。

 ゲームで言う洋式の街並みを進んでいくと、これまたゲームのギルドとイメージがそっくりな建物があった。カウボーイが集まりそうな建物だ。

 そして中へ入ると、これまたゲーム通りの雰囲気に胸が躍った。壁に張り出されているクエストの募集。話し込んでいる冒険者の面々。そしてこれまた美人な受付のお姉さん!

 コホン! と咳払いを一つして喉を整え、僕は受付に話しかけた。


「すみません。ガチャを引きたいのですが、初めてなので教えてもらっていいですか?」

「了解しました。ガチャとは、強力なガチャ娘を呼び出し、あなたの仲間として冒険を手助けする存在となります。初めてだと初回の手数料が五万インかかるのですが、手持ちは大丈夫でしょうか?」


 五万! 今五万インって言ったか!? どうやらここの通貨はインらしいけど、そんなことよりもガチャ引くのに五万は高くないか!?


「え、え~っと、ギリギリ持ってますね……。これで一回引けるんですか?」

「そうです。初回は好きなガチャ娘が出るまで何度でも引き直せる無料ガチャになっておりますよ」


 五万で一回か~。しかも無料ガチャとか言ってるけど金払ってるからな! けどまぁ、引き直しができるのは嬉しいサービスだな。

 この手持ちの五万も、この時のために女神様が用意してくれたものだろうし、仕方なく支払うか。


「分かりました。ではお願いします」

「ありがとうございます。確かに五万イン受け取りました。では初めに、こちらの腕輪をお受け取りください。この腕輪にはあなたの情報がインプットされており、これからガチャ娘関連で手に入る装備や道具が全て収納できるようになっています。ギルドのクエストを利用して、あなただけのガチャ娘を育成してあげてくださいね」


 なるほど。五万は高いと思ったけど、ガチャを引けるのと同時に必要なアイテムやギルドの利用権限みたいなのもあるって訳か。


「それではこちらが初回無料の引き直し自由のガチャチケットです」

「あ、どうも。……ちなみに、これってレア度の排出率とかどうなってるのかわかります?」

「ガチャ娘にはNノーマルRレアSRスーパーレアの三種類がいて、ガチャから排出される最高レアはSRになります」


 つまり、ここではSRが出るまで何度でも引き直せるって訳か。


「……なら、どんな子が出るかの排出表みたいなのはありますか?」

「あるにはありますが……SRだけでも人数は一千万人にもなりますよ?」


 何ぃ!? キャラが一千万人いるのか!? という事はつまり、このガチャシステムにはキャラ被りの重ねシステムはないって事になるな。そんだけ多いなら被る事はまずないだろうから。


「随分と人数が多いですね」

「はい。ガチャ娘は一人の主人に仕えましたら他の主人のガチャからは引き抜かれる事はありません。完全にその主人だけのものになります。故に、利用する冒険者の数だけガチャ娘も多くなるんです」


 なるほど。なら完全に重ねシステムは無くなって、出た子をしっかりと育成することに集中できるわけか。

 ……そうなると、他にも色々と気になることがあるな……


「あの、そのガチャ娘の育成マニュアルみたいなのはありますか?」

「はい。先ほどお渡しした腕輪の中にマニュアルがありますので、取り出してお使いください。腕輪の使い方は――」


 ほほ~。腕輪の中は四次元ポケットのようになってて、ここにアイテムを出し入れできるんだな。これはなんと言うか、未来的な機械のようでもあり、魔法のような代物でもある。すごいな!

 僕が腕輪に集中すると、ホログラム的なコマンドが飛び出してきた。アイテムという項目を選び、マニュアルを押すと、教科書のような厚さの本が出現した!


「すみません。これを少し読んだからガチャを引きたいと思います」

「構いませんよ。それにしてもガチャを引く前にここまでしっかりと把握しようとする方は初めて見ました。勤勉なのですね」


 気が付くと、受付だけではなく周りの冒険者も僕に注目しているようだった。初心者でガチャを引こうとしていたはずが、急に引くのを止めたとなれば嫌でも注目されるのかもしれない。

 なんだかちょっと気まずいけど、僕は適当な椅子に座って教科書のようなマニュアルを開く。中身は大きな文字と挿絵で分かりやすく解説しているページが多く、とても見やすい内容だった。

 とりあえず一通り目を通した僕はマニュアルを閉じる。そして壁に張り出されているクエスト一覧も眺めてみた。なるほど、これは中々育成するにあたって勘違いや失敗をおこしやすいシステムだ。

 そして、僕にとってはある意味で苦手なシステムなのかもしれない。

 ともあれ、一通りの育成システムは把握したのでそろそろ本当にガチャ娘を召喚するとしよう。

 僕は腕輪にしまっておいたガチャチケットを取り出し、使用すると強く念じた。この腕輪関連のアイテムだとか項目は、自分の指で操作してもいいし念じただけでも同じように動かせるらしい。

 そうして使用したガチャチケットは輝きだし、なんだかテレビ画面のような映像を映し出した。


「ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ!」


 太鼓を叩くオッサンたちが声を張り上げながらリズムを取っている。

 ……いや何? これガチャ演出?


「ソイヤ、セイヤ、ソイヤ、セイヤ!」


 太鼓を叩く激しさが増し、オッサンたちからは汗がほとばしる! すると中央が輝きだし、人影が現れた!

 ……ていうか熱いのか全然わからん! 初見じゃ何が高レア確定なのか分からんし、なんかもうオッサンのインパクトが強すぎてそれしか頭に残らないんだが!?

 パァ~っと光に包まれて、僕の目の前には一人の女の子が飛び出してきた。

 赤い髪のセミロングで、セーラー服をきたJKのような子だ。

 その子は閉じていた目を開けて僕を見ると――


「お願い、私を使って!!」


 そう言って、僕の両肩をわしづかみにするのだった……

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