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「ガチャチケットよマスター!」

「ジン様、緊急クエストMVPおめでとうございます。報酬をお受け取りください」


 モリモーリへと帰還した僕は、さっそくギルドで報酬を受け取る。貰えた物は次のアイテムだった。


 上限解放の秘薬×2

 進化の宝玉×2

 LV3魔石×2

 ランク4武具セット

 5万イン

 ガチャチケット×1


 この豪華さには度肝を抜かされたが、一番嬉しかったものはもちろん――


「お金が貰えましたよひゃっほーい!!」

「ガチャチケットよマスター!」


 僕とアリシアの歓喜する向け先はバラバラのようだった……


「え? ガチャチケット嬉しくないの? 仲間が増えるのよ?」

「いやまぁ、嬉しくない訳じゃ無いんですが、今のところはアリシアさんが一人いればそれでいいかなって」


 僕がそう言ってしまったばっかりに、彼女は口元を両手で抑えながら打ち震えてしまった。


「マ、マスター……私の事をそんなに求めてくれているなんて……」

「あ、いや、別に変な意味じゃあ無いですよ? ただお金は本当に死活問題だったんです。今日は朝に宿を出てから無一文でしたからね?」


 必死に魔物を売ってお金にしようとしても、この周辺の魔物は大型なので解体屋まで運ぶのが難しかったんだよね。それでも今日一日頑張って稼いだ金額が500インだったのだ……


「とにかく宿代も稼げた訳ですし、部屋を取る前に一人仲間を増やしましょうか」

「そうよね……考えてみたらこれでもうマスターと二人きりの旅は終わっちゃうのよね……ブツブツ……」


 何やら頭を抱えてブツブツと呟いているアリシアを他所に、僕はさっそくガチャチケを使ってみた。

 最初の頃と同様に、目の前にはテレビのような映像が広がった。そこには左右に分かれたオッサンが激しく太鼓を鳴らしている。


「ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ!」


 あ~、あったなぁこんな演出も。未だに何が熱いのか全然分からんけど……

 太鼓を叩くオッサンの汗が迸り、激しさは増していく。


「ソイヤ、アツイ、ソイヤ、アツイ!」


 あれ!? 今『熱い』って言った!? これってもしかして高レア演出なんじゃ!?

 そうして画面の中央から人影が飛び出してくる。そんな出てきた女の子は僕たちよりも背の低い可愛らしい子だった。

 金髪をポニーテールにして、浴衣……と言うよりは、和装の民族衣装のような恰好だ。丈は短く、ミニ浴衣と言っても過言ではない気もする。


「初めまして。あたしはルミル。よろしくね」


 彼女はそう、淡泊であっさりとした挨拶をしてくれた。


「よろしくお願いします。えっと……キミのレアリティは……?」

「……ノーマル……」


 それを聞いた僕は眩暈を覚えて額に手を当ててしまっていた。


「はぁ~、ガセ演出かぁ……」


 基本的にガチャの演出は確定なのが多い。例えば虹色に光ったり、セリフが熱かったら最高レア確定といった具合だ。

 しかしごく稀に、熱そうな演出を見せておきながら実は最高レアが出ないというガセ演出を取り入れているゲームもあったりする。大抵そういうゲームは、パチンコパチスロでもないのにそんな思わせぶりな演出は望んでいないとプレイヤーから叩かれる事が多い。

 僕もそんな認識があるので、別にノーマルが嫌な訳じゃないのについつい頭を抱えてしまっていた。


「チッ!」


 そんな僕の態度が気に入らなかったのか、突然ルミルが舌打ちをした。

 ……そう、舌打ちをしたのだ。第一印象としては体が小さいロリっ子で、いかにも妹キャラの要素を含んでいそうな愛らしい顔をしたこの子が、あろうことか舌打ちをしたのだ。しかも相当不機嫌そうな表情で!


「人を呼び出しておいてノーマルと分かるや否やため息? ホント嫌になる……」


 そしてめっちゃ悪態をついている……


「あ、いや、その、別にキミがダメな訳じゃなくて、演出がですね……」

「そういうのいいから! どうせ使う気ないんでしょ。だったら早く売却すれば?」


 売却というのガチャで使わないレアリティが出た時、そのキャラを売却することが出来るシステムだ。売却するとポイントが貯まり、一定数が貯まるとまたガチャが引けるようになるらしい。


「いやいや、売却をするつもりは――」

「言っとくけどね、アンタみたいな失礼な奴はこっちから願い下げだから! アホみたいにSR狙って出ないまま死ね!!」


 口わるっ! え、噓でしょ。可愛い顔してめっちゃ口悪いし! 親指を地面に向けて地獄に落ちろアピールまでしてるし!

 とてつもないインパクトでその場のムードが最悪になりつつある時だった。


「あ、あのね、マスターはノーマルでも使ってくれるわよ」


 そうアリシアが間に入ってくれた。


「……あなたは?」

「私はアリシアよ。私もノーマルなんだけど、ちゃんと育成されて戦いに参加しているわ。マスターはノーマルだからって売却なんてしないから安心してちょうだい」


 そう言い聞かせると、ルミルは目を大きく見開いて驚いていた。


「え、マジで!? でもさっきため息吐かれたんだけど?」


 さすがに信じられないのか、こちらをジト目で見つめてくる。ここはなんとしても誤解をとかなくては!


「さっきはすみません。けれど決してあなたを見てガッカリした訳じゃありません。あくまでもガチャ演出にモヤっとしていたんです。僕はルミルさんを歓迎しますよ!」


 ルミルは僕とアリシアを交互に見ながら困惑している。とにかく信頼してくれるまでは会話を繋げよう!


「ルミルさんは戦闘では何が得意なんですか?」

「……えっと、料理……かな?」


 ……うん? 戦闘で料理? それは敵を捌くぞって意味なのかな?


「じゃあ、得意な武器はなんですか?」

「……包丁かな?」


 それ武器じゃない。調理道具や! どんだけ料理できるアピールすんねん!

 ってツッコミたいけど、まだそこまで馴れ馴れしく接する関係でもないからツッコめない……。いや、もしかしたらツッコミ待ちなのか? 僕は何を試されているんだ?


「あの、ルミルさんのステータス開きますね」


 とりあえずそう断ってから画面を表示させた。


名前   :ルミル

レアリティ:N(一段階目)

レベル  :1

体力   :Z

攻撃力  :Y

防御力  :Z

素早さ  :Z

精神力  :Z

探知   :Y

スキル1 :サーチLV1

推定戦力 :950


 ふむふむ。サーチは相手の戦力を見通すことが出来るスキルなのか。それに敵を発見しやすい探知も初期から高いな。パッと見、サポート重視のキャラに思えるけど、攻撃力も初期から高いぞ? どういう育成をすればいいんだ?


「力が強いのかな……? はっ! 料理において鍋を振り回すだけの力は重要! つまり戦闘は苦手だけど料理を中心とする家事全般は得意だからそれで許してという巧みな自己紹介!? 察しが悪くてすみません!」

「そこまで深い意味で言ったんじゃないから! 何この人自己解釈するタイプかな!?」


 凄い! この子もうツッコんできた! まぁ初っ端から死ねとか言ってくるツワモノだからツッコミくらい平気で入れられるのだろう。下手したら後頭部をスパーンってどつかれるかもしれない……


「とりあえず場が和んだところで宿屋に向かいましょうか。今日のクエストは終わりですので」

「和んだの!?」


 とにもかくにも、僕たちは宿屋へと向かって歩き出した。


「あの……アリシアは育成してもらってるって言ったよね? 今レベルはいくつなの?」

「私は76よ。マスターは育成素材を手に入れるのがうまいから、ルミルもすぐに同じくらいになるわ」


 ルミルは同じノーマルであるアリシアに気を許しているように見える。ここはアリシアを通してまずは慣れてもらうのがいいのかもしれない。


「……あたしは……まだコイツの事を信じた訳じゃないから!」


 やはり僕に対しては警戒心マックスだ。僕も気を許してもらえるように頑張らなくては!

 そうこうしながらも、僕たちは宿屋へ到着して一泊するための部屋を取る。


「一泊一部屋をお願いします。三人で使いますので」

「ちょっと待てーい!!」


 なんとルミルが、僕の崇高なる使命である宿の受付に割って入ってきた。


「一部屋って何!? 同じ部屋で寝るの!?」

「え? そうですけど? それが何か?」

「何でそんな駄菓子屋一緒に入ろーみたいなノリで決めてるの!? 普通ありえないから!」


 しまったー!? 確かにそうだ! ここ最近は疲れ果てて布団に入るとすぐに寝てしまうから感覚が鈍くなっていたけど、普通に考えたら男女が同じ部屋なのはヤンチャ行為だったー!!


「大丈夫よルミル。マスターとガチャ娘が同じ部屋で寝泊まりするのはそこまで変な事じゃないわ。私だって今までそうしてきたんだもの」

「常識的だと思ってたアリシアがまさかの危機感皆無であたしの困惑は加速する一方だよ!」


 宿屋の受付でこんなに揉めたら店員に迷惑だろう。なんとか納得してもらわないと……


「聞いてくださいルミルさん。実は僕たち、お金がないんです! 二部屋借りる余裕がないほどに!!」

「世知辛すぎて初日から不安しかないんだけど……」


 それでもなんとか了承をもらい、僕たちはやっと部屋へと移動をした。


「言っとくけど、寝ている間に変な事したら噛みつくからね。というか殺すから!」


 これ多分本気だ。割とマジで殺意向けられてるやつだ……

 そうこうしながら僕たちは宿で疲れを癒す。食事を取ってから温泉へ入り、部屋に戻ると布団が並べて敷かれていた。


「おお~、お布団も気持ちよさそうね。私は端の廊下側を希望したいんだけどダメかしら?」


 うん? 真ん中とか、奥の窓側とかを好むのかと思ったら廊下側でいいのか? よく分からないけど、僕は別に構わない。


「いいですよ。では廊下側はアリシアさんで」

「ちょっと待って! そしたらあたしはどうなるの!? コイツと隣になっら絶対襲われるじゃない!!」


 いや襲わないから……


「こうなったらあたしは真ん中のアリシア寄りに陣取るしかない。アンタは窓側の隅の隅よ!」


 川の字に敷かれていたはずの布団なのに、いつの間にかその形は崩れて僕だけ端に追いやられている。まぁいいけどね……


「それでは僕はもう寝ますよ。ルミルさんは分からないでしょうけど、今日は強敵との激戦でもうヘトヘトなんです」


 そうして僕は布団へと潜りこんだ。おのずと今日はもう寝ようという雰囲気になり、二人もすぐに布団へと入ったようだ。

 今回の宿は奮発したから明日の朝はゆっくりできる。そんな事を考えながら、僕の意識は眠りへと落ちていくのだった。


 ――現在の所持品

 SR育成素材×3

 R育成素材×7

 N育成素材×3

 上限解放の秘薬×3

 Nスキル上げの書×2

 進化の宝玉×2

 LV3魔石×2

 ランク4武具セット

 お金 5万0500 宿代-5000

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