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「私の胸の感触を確かめてコーフンしてるでしょ~」

「なんなんだよ……。結局、最初から最後までこいつが活躍しただけじゃないか!!」


 みんなが勝利に浮かれる中で、エラッソがそう言った。


「これじゃあMVPは確実にコイツだろ……」

「MVP? そんな判定もあるんですか?」


 僕がモブールにそう聞くと、彼は惜しげもなく教えてくれた。


「ああ。緊急クエストは難易度が高い代わりに報酬が大きい。さらに活躍した一人にはMVPとしてさらに報酬が豪華になるぞ。今回は間違いなくキミだろうね」


 僕が腕輪からクエスト一覧を開いてみると、緊急クエストはクリア済みになっていた。そして言われた通り、僕がMVPになっている。


「なんでだよ……。お前、そのノーマルの戦力は7万って言ったよな? どう見たってそれ以上だろ!! ステータス見せろよ!」


 エラッソが僕に詰め寄ってくる。でもそれは、怒っているというよりも悔しくて納得がいかないという表情に思えた。


「いや、ちゃんと7万ですって。ほら……」


 ネチネチ言われるのも嫌だから、さっさと見せて納得してもらおう……


名前   :アリシア(覚醒)

レアリティ:N+(二段階目)

レベル  :76

体力   :T

攻撃力  :U

防御力  :T

素早さ  :S

精神力  :T

探知   :T

スキル1 :韋駄天LV10

装備   :小太刀(ランク2)

     :皮の鎧(ランク2)

推定戦力 :13万5500


「……」

「……」


 僕とエラッソが無言になる。


「では皆さん、そろそろ街に帰りましょうか」

「いやちょっと待て! どこが7万なんだよ! 言ってたより倍くらいあるじゃねぇか!」


 あれぇ~? おっかしいなぁ~……

 僕が最後に見た時は確か7万にギリギリ届いていない感じだったのに……


「なになに? 私の戦力上がったの? いくつになったの?」


 未だ立てないアリシアが興味津々で聞いてくる。


「あ、ほら、名前の隣に覚醒って追加されてますよ。きっとこれじゃないですか? エラッソさんのガチャ娘はどうなんです?」

「無ぇよそんな表記! 一体どうなってんだよ!?」


 いやそれは僕の方が聞きたいんだけど……


「ねぇねぇ、私の戦力どうなってるの!?」

「その覚醒ってなんだよ! どうしたらそんなに戦力上がんだよ!」

「ねぇマスター。私の戦力は~?」


 あ~もう同時に話しかけられると対応に困るよ。ソシャゲ大好きネット難民はスペック高くないのだ!


「皆さん、今日はお疲れ様です! この勝利は皆さんの協力無しではありえませんでした」


 僕はとにかくこの場を収めようと締めに入る。……少々強引だけど。


「色々と戦力について聞きたい方もいるかもしれませんが、僕自身もそれは分かりません。ですがそれは、まだまだガチャ娘には可能性が秘められていて、僕たちマスターには考察の余地があるという事です」


 そして僕はエラッソに目を向ける。


「そして皆さんはSRに執着しているように思えますが、こうして戦力を上げたいと気持ちがあるのならノーマルキャラも使うべきじゃないでしょうか。きっと皆さんもN育成素材が余っているはずですよね? ノーマルは自分を使ってくれるマスターを待ち望んでいます。その想いはきっとSR以上でしょう。うちのアリシアがここまで強くなれたのは、そういう部分が作用している可能性もあると思うんです!」


 みんなが僕の声を黙って聞いてくれている間に、悪鬼に刺さったままの小太刀を抜き取る。そうしてからペタンと座り込んでいるアリシアに肩を貸して立たせてあげた。


「僕はもうモリモーリを去るつもりです。そんな僕から言えるのは、この街で最強になりたいなのなら見栄や体裁にこだわらず、ちゃんとガチャ娘と向き合える人だと思います。強要するつもりはありませんが、皆さんも今一度低レアの育成を考えてみてください」


 そう言い残して僕たちはその場を後にする。とりあえずは低レアの布教ができたので、今回のクエストは大成功なんじゃないかな。さっきのセリフも決まったし、これぞマンガとかで見る異世界転生って感じだよな。ふっ……

 そんな風に気取っていると、アリシアが空気も読まずに話しかけてきた。


「マスター、これ歩きにくいわ。おんぶしてよ」


 おおおおおおんぶだとぉ!? あの合法的に足を抱えたり、体を密着する事ができるおんぶを僕がやっていいのかぁ!? そもそもお姫様抱っこも出来ないような非力な僕におんぶが務まるのかぁ!? いや、務まるか務まらないかじゃない。これはぜひ体験して……いや、男を見せないと!!


「そうですね。今日のアリシアさんは頑張りましたもんね。足が癒えるまで僕がおぶりましょう」


 平然を装っているが僕の心臓はバクバクだ! 実際におぶるとこっちが恥ずかしくて、微熱でも出たんじゃないかと思うくらい体が熱くなる。


「えへへ~、マスターにおんぶしてもらっちゃった~♪」


 アリシアはご機嫌だけど、ここまで女の子に触れる機会が無かった僕としては目が回りそうだ。

 あ、そうだ! さっきのステータス画面を開いて彼女の戦力が上がった理由を考えてみよう! そうすれば街までアッという間さ!


「アリシアさん、さっき言ってたステータス画面ですよ。見ますか?」

「見る見る! 私どれくらい強くなったの~?」


 僕の背中ではしゃいでいる彼女に画面を滑らせる。これであとは戦力の事だけを考えよう!


「おぉ~。なんか強くなってる~♪」


 やっぱり急激に戦力が上がったのは、突如追加された『覚醒』によるものじゃないだろうか。けどこれに関してはソシャゲ的には珍しい機能だよなぁ。むしろ初めて見たから条件がまるでわからない。


「ん~、見るの飽きちゃった。……マスター、おんぶしてるからって変なこと考えないでよ?」

「考えませんよ。おとなしくしててくださいね」


 次に思いつくのは『必殺技』という概念があるのかどうかだ。悪鬼と戦った時の彼女の技は凄かった。アレの習得によって戦力が高まったという可能性はないだろうか? いや、十分にあるはずだ。


「……私スカートなんだからねっ! 太ももをワサワサしちゃダメよ?」

「しませんよ。う~ん戦力の条件は~……」


 仮に覚醒で戦力が5万増えて、必殺技で1万増えたとしてもまだ足りない。最後に僕が見た戦力よりも6万以上も増えてるんだよなぁ。あと考えられるソシャゲ要素は……信頼度かな? でもそんな項目は無いし……


「……ムギュ、ムギュ。あ~、マスターってば私の胸の感触を確かめてコーフンしてるでしょ~。エッチなんだ~♪」

「そ~ですねぇ~……。もしかしたら上昇値は割合制かも? ブツブツ……」


 現在の戦力の40%上昇とかだと、計算が面倒だなぁ。やっぱりもう上がった分はそういうものだと割り切って深く考えなくてもいいのかも? でもそれだと他に仲間を加えた時の育成にも関わるし……


「……」


 ――ポカポカポカポカ!!

 突然おぶってるアリシアが僕の頭を木魚のようにポカポカしてきた。


「え、何!? なんで僕叩かれてるんです!?」

「マスターはちゃんと私とおしゃべりする事! 無視するの禁止~!!」


 かまってちゃんか! まぁいいけどさ。


「ではアリシアさんにも聞きたいんですが、突然戦力が増えた事に心当たりとかありますか?」

「特にないわ。強いて言うなら、スキルを使った時の動きはかなりうまく言ったな~って思ったくらいね」


 ふむふむ。やっぱりあの動きを習得したのは本人の中でも大きいか。だとすると……


「それならあの必殺技に名前を付けたらどうでしょう。そうしたほうが僕も戦闘を把握しやすいですから」

「そう? じゃあね~……ハチャメチャ斬り! こう、ハチャメチャに攻撃するから!」


 えぇ~……。そのネーミングはどうなのぉ~……

 僕が困惑しながらステータスを確認してみると――


スキル1 :韋駄天LV10

必殺技  :ハチャメチャ斬り new

装備   :小太刀(ランク2)

     :皮の鎧(ランク2)

推定戦力 :13万5500


 そう表示されていた……


「……え!?」

「あっ、見てみてマスター! ステータス画面に反映されたわよ。面白~い♪」


 うわ本当に追加されてる!?

 いや、レアリティを上げた時のN+も僕が言った通りに表記されてるなぁとは思ってたけど、これ本当に自分でカスタムできるの!?


「いや、でもその技名は変えません? 僕が、『今ですアリシアさん。ハチャメチャ斬り!』とか指示するんですか!? もうちょっと雰囲気出しましょうよ!」

「そう言われても、技の名前なんてよくわからないわ。マスターが決めてもいいのよ?」


 う~ん。今まで散々ゲームに明け暮れた僕が名付けるとしたら……


「そうですねぇ。無限に続く斬撃の嵐、『無限刃むげんじん』とかどうです?」

「お~!、いいじゃない。それに決定よ!」


スキル1 :韋駄天LV10

必殺技  :無限に続く斬撃の嵐、無限刃 new

装備   :小太刀(ランク2)

     :皮の鎧(ランク2)

推定戦力 :13万5500


 ステータスが更新された。

 ……されたけどさぁ……


「厨二病じゃないんですから前台詞はいらないんですよ! 無限刃だけでお願いします!」


 そこまで言ってようやく修正された。意外な機能の発見だけど融通が利かないなぁ……


「ステータスと漫才できるなんてマスターも暇しないわね~」


 いらない。そんな退屈しのぎはいらない……

 ともあれ、必殺技の習得で戦力が上昇したってのが濃厚かもしれない。そんな戦力の話と、MVPの報酬は何かという会話で盛り上がりながら街へと戻るのだった。

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