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1話

 ここは喫茶「Mare(マル)」。

 一人の母と、十一人の姉妹たちが営む小さな喫茶店。

 そんな小さな喫茶店の日常を覗いて見よう。


「ラハブ、また喧嘩したようだな」


 長女のムシュマッヘが店内奥の窓際の席で、六女ラハブを問い詰めている。そんな長女の隣には困り顔で長女と六女を交互に見る、次女ウシュムガルの姿があった。


「吹っ掛けてきたのはあっちが先だもん」

 ラハブは頬を膨らませて抗議する。


「はぁあ。それは先方からも聞いている。向こうがクサリクの悪口を言ったからと」

「そうだよ! アイツらが僕の可愛い妹を「怪物だ」とか「怪獣だ」なんて言うから!」

 長女の言葉にラハブは身を乗り出して、そうだそうだ、と。


「そうだ。もちろんお前がボコボコにして再起不能になって女児に対して深いトラウマを植え付けられた少年たちが、そのようなことをぬかしていたのはワタシも知っている。しかしだ、お前の口は何の為についているんだ?」


 呆れたとも、宥めているとも取れる声色で長女は六女に問いかけた。その問いに六女はすぐには応えなかった。

 レジカウンター内から三人の様子を窺っていたティアマト(十一児の母)は、六女がどのように答えるのか聞き耳を立てていた。

 母と長女と次女が、六女の答えを待つ。

 そして、六女が口を開く。


「そんなの決まってるよ。おいしいものを食べる為!――――――ッ()ァアア!」


 間違いない、と疑いもせずに答えた六女の脳天に、怒りと諦めで頬を染めた長女のゲンコツが振り下ろされた。

 六女は頭を押さえて悶えているし、長女は大きな溜息を吐いて肩を落としているし、その隣で次女は何もしていないのに今にも泣きそうだ。

 レジで会計を済ませた母は笑いそうになりながらも堪えて、次の客の注文を取りに行った。




 こんな日常が続く場所。

 変哲もない幸せが続く場所。

 それが、ココ。喫茶「Mare」。


 明日も皆様のご来店をお待ちしております。

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