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07話

 ゴリさんと通話を始めて数時間が経過していた。 最初の内はお互いに集中していたけど次第にお互いの集中力が切れていったので、それ以降はまったりと雑談をしながらゲームをしていた。


『……あ、そういえばさ、クロちゃんさー』

「んー? どしたんすか?」

『クロちゃんってさ、デートとかしたことある?』

「あーあるあるめっちゃありますよ、もう毎日のようにしてます」

『嘘乙』

「嘘じゃないし!」

『へぇ? じゃあクロちゃんは彼女の1人でもようやく作れたって事なんですかねぇ?』

「あ、ゴリさん、注射器余ってたらください」

『無視すんなし! ほら、注射器落としたよー』

「どもども、あざすー」


 いや毎日一緒にゴリさんと通話しながらゲームしてる時点で彼女なんて出来てないし、デートだってしてないのバレバレなんだけどさ。


「でも、いきなりデートとかどうしたんですか? ひょっとしてゴリさん彼氏でも出来たんすか?」

『いやそうじゃないんだけどさ。 アタシって高三かつ受験生じゃん? だから今後は受験が控えてるわけなんだけどさ』

「はい」

『んでさ、毎日勉強しながら思うわけ。 あれ? アタシの残りの高校生活ってもう青春するタイミング無くない? ってさ』

「はい」

『それでさ、じゃあ今までの高校生活アタシは一体何してたんだろう? って思ったわけ』

「はい」

『そしたらさ、アタシの高校生活ってさ……どっかのクソ生意気なキルパク野郎と喧嘩しながらゲームをしてた記憶しかないわけ』

「はい?」

『だからさ、アタシ気になったわけ。 そのクソ生意気な野郎がさ、もしリアルでは彼女持ちでデートしまくりのヤリチン野郎で……実は青春しまくりの人生を送ってたらさぁ……ふふ、どうやってぶち殺してやろうかなぁ……? って考えたわけ』

「物騒な事考えてますやん!」


 人が真面目に話しを聞こうとしたらすぐこれだよ!


『いやぁでも毎日話してて思うけど、やっぱりクロちゃんって女の子にモテる要素無いから安心するわ。 これからもそのままのクロちゃんでいてね』

「ちょくちょく俺ディスるのやめてもらえますか?」


 結局今日も最終的には俺がディスられる方向の話になっていた。 やっぱりこの脳筋ゴリラ許せへん。


「でも意外っすね。 ゴリさんって青春したい願望とかあったんすか?」

『あるに決まってるじゃん! アタシはクロちゃんと違ってモテモテかつ清楚系で可憐な乙女なんだからね? そんなアタシにこそ青春を送る権利があるでしょ』

「嘘乙」

『あ゛?』

「い、いや何でもないっす……でもそれなら何で彼氏とか作らなかったんすか? 今までも“今日告白されちったわー”って俺に何度もマウント取ってきてたじゃないですか」

『あー、うん、まぁそんな時もあったけどさ』

「でしょ? ならゴリさんだって青春するチャンスは沢山あったんでしょ? その人達とは結局お付き合いはしなかったんすか?」

『い、いや、だってさぁ……』


 そういうとゴリさんは少し気まずそうな感じでこう言ってきた。


『……彼氏作って外で遊ぶよりもさぁ、家に引きこもってLPEXしてる方がアタシにとっては至高の時間だったんだもん……』

「……ぷ、ぷははっ! そのゲーマー魂が抜けない限りゴリさんには彼氏作るの無理じゃないっすか? あははっ!」

『ぐ、ぐぬぬっ! ってか笑い過ぎやろオイ!』

「あはは、すいません」


 俺がゴリさんの発言に対して大笑いしていると、ゴリさんは悔しそうにしながら唸り声をあげた。


「い、いやでもさぁ、仕方ないじゃん。 テキトーに彼氏作って外で遊ぶよりもクロちゃんとこうやってしょうもない話しながらゲームしてる方が楽しいに決まってるんだからさー!』

「え、ちょっ、な、なんすかいきなり? 唐突にゴリさんがデレるとか気持ち悪いんですけど?」

『んー? そっちこそ声裏返ったけどどうしたん? ふふふ、もしかしてアタシに惚れたのかい?』

「んー、キルパクしてもガチギレしないようになってくれたら一瞬で惚れます」

『あはは、それは100%無理だ!』


 そう言ってゴリさんは大きな声で笑った。


「まぁ高校卒業してからでも青春は十分送れるんじゃないですかね? それにもうすぐ大学生活が待ってるんですから」

『うーん、それはそうだけどさー。 でもなぁ、制服デートとかは1回位はしてみたかったなぁ。 それだけが高校生活の心残りになりそうかも』

「あー、確かに高校卒業しちゃったら、もう学生服を着る事なんて滅多になさそうですもんね」

『そうなんだよねぇ。 仕方ないから今日もイケメンな後輩彼氏との下校デートを授業中に脳内で妄想してたんだけどさぁ……なんだか虚しくなっちゃってね』

「ぶはっ! 授業中に一体何やってるんですかゴリさん!?」

『え? いやなんかさぁ、勉強しなきゃなって思ってたらだんだんと現実逃避に妄想とかしちゃわない?』

「ま、まぁ確かに、俺も彼女が出来たらなぁっていう妄想は男友達としたりしますけど」

『でしょー? アタシ達女子だってそういう妄想はするもんよ』

「な、なるほど? そんなもんなんすね」

『あっ! じゃあさ、クロちゃんが初めてデートをするとしてさ、“どんな事”したいとか当然妄想したことあるでしょ? どんな事したいかあったら教えてよ!』

「“どんな子と”したいか? ですか?」

『そうそう! クロちゃんは“どんな事”したいのー?』

「う、うーん……」


 俺は腕を組んで少しだけ悩んだけど、すぐに結論が出て俺はこう答えた。


「うーん、やっぱりあれっすかね? なんというか、こう……黒髪の三つ編みおさげでメガネをかけた、図書委員長とか文学少女みたいな感じの女の子がいいっすねー」


『……は?』

「え?」


 俺がそう答えると一瞬の沈黙が流れたのだけど……でもすぐにゴリさんは何かを察したように笑いだした。


『……あっ、あぁ! そう言うことね! ぷ、ぷぷ、ぷはははっ!』

「えっ……!? な、なんすか?」


 俺はゴリさんが笑っている理由がわからずに混乱ながらゴリさんに理由を尋ねた。


『ぶっ! ぷぷ、ぷはははは! いやクロちゃんそれ、違うって! あははは! 急にクロちゃんが自分の性癖を語りだしたのかと思ってビックリしたじゃん!』

「え!?」

『しかも割と古風というか、アニメの見すぎというか、クロちゃんの意外な性癖を覗いてしまった気がするよ』

「え? え? ど、どういうことっすか?」


 俺はまだ自分の間違いに気が付けず、ゴリさんは笑い続けながらそのまま喋り続けてきた。


『あはは! いやあのね、どんな女の子とデートしたいか? じゃなくて、どんなデートがしたいかをアタシは聞きたかったんだよっ! 誰もクロちゃんの性癖なんて聞くわけないじゃんって! あははは!』

「え……あっ!」

『そもそもアタシは制服で下校デートがしたいって言ってるのに、何でクロちゃんは三つ編みメガネの図書委員ちゃんと付き合いたいっていう話をしてるん? ぷははは!』


 そう言われて、俺の間違いにようやく気が付く。


「そ、そういうことか……って、待って俺めっちゃ恥ずかしい事言ってますやんっ!」

『ぷ、ぷははっ! か、可哀そうだから、いつかクロちゃんと会う事があったら……うん、そん時はしょうがないなぁ! 三つ編にメガネをかけた文学少女スタイルで会ってあげるわ、あははっ!』

「よ、余計なお世話っすわ!」


 こうして今日もゴリさんに笑われながら夜が更けていくのであった。

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