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38話

『それで話を戻すんだけどさ……もしかしたらクロちゃんに迷惑かかるかもしれないと思ったからさ、とりあえず沙紀には“誰”と遊んでたのかははぐらかしといたのよ』


 そう言ってようやくゴリさんは真面目なトーンで喋り出してくれた。 通話上での会話は基本的にいつも冗談しか言い合わないので、こんな真面目なトーンで通話するのは久々な気がする。


「うん? 俺に迷惑がかかるってどういう事っすか?」

『んー、それはまぁ……クロちゃん今のアタシの状況知ってるでしょ?」

「え? ……あっ、あぁ、そういう事っすか」


―― いや実はね……ここ最近、告白が続いてるんだ。


 そういえば先輩はここ最近、男子生徒から頻繁に呼び出されては告白を受け続けていると言っていた。 そしてあまりにも呼び出しの頻度が多すぎてしんどいなとため息交じりに言っていたのも覚えている。


「うん。 それでさ、もしこんな状況のアタシがクロちゃんと二人きりで遊んでたなんてバレちゃったらさ……クロちゃんの所に野次馬みたいなのが集まっちゃうかもしれないなぁって思ってね」

「あ、あぁ……それは確かにかなりあり得そうっすね。 もし俺が逆の立場だったら相手の男がどんな奴か絶対に一目見に行きますもん」

『あはは、もろに野次馬じゃんw』


 いや七種先輩と二人きりで遊びに行った男がいるなんて知っちゃったら、気にならない男子生徒なんて0人だよ。 ってかそう考えると、俺が先輩と二人きりで遊んだっていう事がバレてしまったら……いや後が怖すぎるんだけど。


『まぁ沙紀は口が堅い子だから別に言ってもいいかなーって思ったんだけどさぁ……でも、そもそも沙紀とクロちゃんって繋がりはないだろうし、あまりプライベートな話はしない方がいいだろうと思って止めといたってわけ』

「あぁ、なるほど。 それで佐々木先輩ははぐらかされたのが気になって、生徒会メンバーなら何か知ってるんじゃないかと思って俺を尋ねてみたって所ですかね」

『うん、まぁ多分そんな感じだろうね』


 それなら佐々木先輩が俺に尋ねてきたのはただの偶然だったって事か。 ピンポイントで俺を狙い撃ちしてきた訳じゃないようなのでとりあえず俺は一安心した。


『だからしばらくの間は沙紀からの質問とかクロちゃんにちらほら飛んでくるかもしれないけど……まぁ、そこは頑張って!」

「あ、はい! それくらいなら全然大丈夫っすよ!』

『あともしかしたら“玲奈”からの猛攻も飛んでくるかもしれないけど……まぁそれも何とか頑張って!!』

「はい! はぁっ!? な、な、何でそこで北上先輩の名前がっ!?」


 北上玲奈とは去年まで生徒会長を務めていた三年生の女子だ。 生徒会長の役職は既に引退したけど、現在も庶務(という名の賑やかし要員)として生徒会に在籍している。


 北上先輩がどんな人かと言うと……まぁ割と優しくてとても頼りになる先輩だった。 生徒会長としてどんな事でも率先してすぐに実行するという、ある種リーダーの鑑的存在な人なんだけど……まぁ如何せん破天荒な先輩だったんだ。 しかも当然のように周り人達を巻き込んで実行しようとしてくるため中々に質が悪い。


 ちなみに去年の文化祭でミスコンを突発的に開催させたのも、当時生徒会長だった北上先輩が突発的に思いついたものだった。 北上先輩はその事については「大成功だったね!」と常に笑いながら言ってるけど七種先輩は「大失敗だよ……」と常に嘆いている。


 まぁそんな性格が全然違う七種先輩と北上先輩なんだけど、意外にもウマが合うようで二人の仲はめっちゃ良いという不思議な関係性だった。


 そしてそんな北上先輩には俺も去年は散々と振り回された訳なんだけど……まぁその話はまた追々という事で。


『いやまぁ、沙紀はアタシが男の子と二人で遊んでたっていう話を他の誰かにペラペラと喋るような子じゃない事は知ってるから大丈夫だとは思うんだけどさ……でも、何か不測の事態が起きてその事がバレたとするじゃない?』

「は、はい」

『それでさ、そん時に誰が一番野次馬根性を出してくるかなーって思ったんだけどさぁ……アタシの知る限りの中で野次馬根性出してくる子はダントツで玲奈なんだわ』

「あー……まぁ……俺の知る限りの中でも確実に北上先輩がダントツっすわ」


 そんな面白そうなイベントがあったと知ったらあの先輩なら喜んでちょっかいをかけてくるに違いない。 しかも北上先輩は俺にも七種先輩にも気軽に話せちゃうポジションにいるのだから余計に恐ろしい……


『という事でクロちゃんに相談なんだけどさ……とりあえず今後もしばらくの間はリアルではオフ会とかネットの話はしないようにしとかない? もちろん今みたいにネットで通話してる時はそんなの気にしないで良いからさ』

「あぁ、なるほど、つまり学校では今まで通り生徒会の先輩後輩として接していこうっていう提案っすよね? はい、わかりました、その方針でいきましょう!」


 確かにそうした方がお互いに何か不測の事態を起こしてしまう可能性を減らせると思ったので、俺は先輩の提案に同意する事にした。 まぁでも、そもそもだけどリアルの七種先輩と面と向かって流暢に会話が出来る自信なんて一切無いからそんな提案をしなくても大丈夫だろうけどね(注:ヘタレてる訳ではありません)


『うん、ありがとう。 それじゃあこれからも学校ではいつも通りでよろしくね』

「はい、了解っす。 ……あっ、あとそれに付随する話があるんですけど、ちょっと俺からも相談良いっすか?」

『ん、何々?』


 今の会話中に俺は少し前にあたぎさんとオフ会の話をした時の事を思い出した。 その事についても先輩と話をしておこうと思った。


「俺とゴリさんがリアルでも繋がりがあるって事は、俺達の共通のネット友達にも言わない方が良いっすよね? この事を意識しすぎちゃうと、ネット上なのについうっかりとゴリさんの本名を呼んじゃいそうで怖いですし……」


 ネットフレンドの中にリアルの知り合いが居ると、ついうっかりと本名や個人情報を言っちゃったりするかもしれないよな。 そして実際にそんな事をやらかしてしまったら本当に申し訳ないので、予めその事についてゴリさんに相談してみた。


『……あっ! だからさっきからアタシと二人きりで通話してるのに頑なに“ゴリ”呼びしてるん?? ぷはは! 何だそれ、クロちゃん可愛いかよwww』

「いや俺はゴリさんのリアルがどんなに聖人君子(仮)みたいな人だったとしても中身はどうしようもない脳筋クソゴリラだという事を絶対に忘れたくないからそう呼んでるだけっすけど?」

『おいこら酷すぎるだろっ!!』

「あははっ」


 そう言うとゴリさんは軽くキレてきたので俺は笑いながら冗談だと言っといた。


『はぁ、まったく……まぁでもそうだねぇ、あたぎさんくらい仲が相当良い人なら別に言っても良いとは思うけど……あぁでもクロちゃんすぐ調子乗って口を滑らすだろうからやっぱりしばらくの間は誰にも言わない方がいいかもねぇ? くすくすw』

「いや俺がすぐに調子乗るってのは否定しないっすけど、ゴリさんも相当っすからね?」

『え? アタシ調子乗った事なんて一度もないんだけど??』

「え?(困惑)」

『あ゛?(威圧)』


 ……とまぁそんな感じでこれからもしばらくの間は、皆と一緒にいる時は今まで通りリアルでは先輩後輩の関係、ネットでは悪友の関係として接していこうという事でまとまった。

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