37話
『あはは、冗談だよ冗談w それで? 沙紀がどうしたん??』
「全くもう……あ、そうそう! 何か意図はよくわからないんすけど、ゴリさんがおかしくなったら教えてくれって今日佐々木先輩に言われたんすけど」
『え……? あー、そういう事か』
「ん? ど、どういう事っすか??」
ゴリさんは一人で納得したような感じだったので、俺はどういう事か尋ねてみた。
『あぁ、うん。 えっとね、今日のお昼休みに沙紀とお昼ご飯を食べてたんだけどさ。 その時にちょっと口を滑らしちゃって、日曜日に友達と二人きりで遊びに行ってきたって言っちゃったんだよね』
「……う、うん? って、え? いや別におかしい事は何も言ってなくないっすか?」
友達と遊びに行くなんて普通の事な気がするんだけど、それがどうして佐々木先輩のあの発言に繋がるんだろう?
『あぁいやごめん、ちょっと言葉足らずだったね。 えっと、友達は友達でもさ……その、男友達と遊んできたって言っちゃったんだよねぇ』
「へぇ……って、えっ!?」
それは誰だってビックリするわ。 だってあれだけ沢山の男子から告白をされても絶対に断っている七種先輩が突然男子と二人きりで遊んできただなんてさ、そりゃ先輩に一体何が起きたのか気になると思うよ。 いや、でもさ……
「……いや、確かにそんな事を言われたらビックリするとは思うんですけど……でもそれって佐々木先輩がそんなに気を回す程の事でも無いっすよね?」
いや確かにそれを七種先輩の口から聞いたらビックリすると思うけど、でもそんなに気を回す程の事でも無いよね?
だって七種先輩は高校三年だし今までに男子と遊びに行ったりした事は普通にあるだろうしさ。 それにあんな美人な先輩なんだから今までに彼氏が居たとしても何ら不思議でもないからなぁ。 いや先輩の過去の恋人遍歴なんて全く知らないんだけどさ……
(でもそう考えてみると……俺って七種先輩の事あまり知らないんだなぁ……)
俺はネット上のゴリさんとの付き合いは3年近くあるけど、リアルの先輩との付き合いは1年くらいしかない。 それに去年は先輩とそこまでガッツリと話した事も無かった。 だから先輩の交友関係はそこまで深く知らないんだよな。 佐々木先輩とは1年生の頃からの友達だって事もついさっき知ったわけだしさ。
『んー?? おいおいクロちゃんよー。 アタシがそんなに軽い女に見えるのかい?』
「……え?」
俺はそんな事を思いながらちょっとブルーな気持ちになっていると、ゴリさんは不満げな声を上げてきた。
『いつもアタシはさ、自分の事を品行方正かつ真面目で清楚な超美人JKだって言ってきたじゃん?? ねぇ、それについてはどう思うよ?』
「え? ま、まぁ……ゴリさんから品行方正味を感じた事はこの三年間で一度も無いっすけど、七種先輩からは常日頃から感じてますよ」
『おい待てコラ。 ちょっと言い方はムカつくけど、まぁそれは置いとくわ。 まぁつまりさ、これは沙紀とか仲の良い友達なら皆知ってるんだけど……アタシが男の子と二人きりで遊びに行くなんて今まで一度も無かった事なんだからね』
「へぇ? ……って、えぇぇぇっ!?」
『うわ、ビックリした!』
あまりにも衝撃的すぎる事実をゴリさんから伝えられたので、俺は驚愕のあまり今日一番の大きな声を上げてしまった。 そしてそんな俺の大きいリアクションのせいでゴリさんにも驚かせてしまった。
「え……じゃ、じゃあ、それってつまりなんすけど……前回のアキバのオフ会が男と二人で遊ぶのって初めてだったんすか……??」
『うん、そうだよー。 散々とクロちゃんを煽ってたクセにアタシも男の子と二人きりで遊んだのは前回のが初めてだったっていうね、あははw』
「へ、へぇ、そ、そうなんすか? な、なるほどねー」
(え、え……え!? そ、そうなの!?)
俺は平然とした態度を装いつつも内心ではかなり動揺していた。 あ、あれ、そういえば先週のお昼休みにもそんな事を先輩に尋ねてみたような……? えぇっと、確かあの時は……
―― 先輩って、そ、その……異性と二人きりで遊んだりする事ってあるんですか?
―― んー? ふふ、乙女にそういう事を聞いちゃ駄目だよー?
そうそう、確かあの時はそんな感じで笑いながらはぐらかされたっけか。 あの時は答えを教えてもらえなかったからヤキモキとした気分を味わったんだけど……でも今の言葉を聞いて俺は心の中で安堵した。 そっかそっか、先輩って今まで男友達と外で遊んだことは無いんだ……って、あれ? いや、という事はさ……?
(……え!? じゃ、じゃあ七種先輩は今まで付き合った彼氏は一人も居ない……ってコト!?)
『……ふふ、安心したかい?』
「え!? な、何の事っすか??」
『んー? いや別にー? ……ふふ、まぁどうせクロちゃん、心の中で物凄く邪な事とか考えてたんでしょ??』
「え!? い、いや、そ、そんな事無いっすよ!!」
『あはは、どうだかなぁ??ww』
俺が黙っていると唐突にゴリさんがそうツッコミを入れてきたので、俺は焦りながらそれを否定した。




