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04:先生の思い2
弟子が僕の話を聞いて、少し考え込んでいる。きっとフェイクをどうやって剣術に組み込んでいくのか考えているのだろう。
(この歳でそれだけ考えて剣を振れているのは、素直に凄いと思うよ……)
本人はただ、フェイクって難しいとしか考えていないのだが、先生は少しだけ勘違いをした。
剣の達人、それこそ『剣神』や『剣王』のレベルまでいくと、フェイクを使った妙手を使う必要がない。彼らのレベルまでいくと剣を打ち合うことはほとんどなく、一太刀で決着がつく。
フェイクというのは弱い者が強い者に勝つために生まれた【技】であるが、強者はその【技】を圧倒的な力や、更なる【技】で捻じ伏せてくる。
(君のような才能あるものには、あまり必要のないものかもな……)
自分が教えられることが、段々と少なくなってきていることを実感してきてしまう。