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お腹死ぬ+

 

「助けて。ごめんなさい神様、調子乗った自分が阿呆です。これ以上欲は出さず謙虚に生きるんで助けてください。悪いと思ってます。本当に悪いと思ってます。二度としないのでお助けください。」


全身から冷や汗と涙と鼻水を垂れ流し、地面に這いつくばって、早口でブツブツと懺悔し救いを求めている状況とは。


ここまで運良くサバイバルを生き延び、村をみつけ、そこで出会った少年と共に隣街までもの売りに出かけている途中のことだった。かつて出会った美味なる黒い果実の群生地を見つけ、欲するままに貪り食った。なんなら今日、それしか食べてない。


──「そんな得体の知れないもの一気に食ったら腹壊すぞ」


どうやらこのあたりの地域は少し移動すれば生態系も軽く変動するらしく、村の周りとは違うので気をつけろと言うヤブランもこの辺りの動植物には詳しくないそうで。しかし、前回食べた時には何もなかったので大丈夫だろうと、少年ヤブランの抑止の声を無視し食べ続けた。


するとどうだろう。


背後で地獄が口を開き、かつてないほどの腹痛、頭痛、目眩、吐き気が怒涛に押し寄せてきた。


思い当たる節がその果実しかないから、今必死で後悔してる。


目の前に新しい国の門が見えるってのに、ニューステージに行けぬまま死ぬかもしれない。

まだ少年なヤブランと自分の体の比率では村まで運ぶのが難しいので、ヤブランが薬と医者を連れてくると言って先に国へ行ったが……。


ああ、まずいぞ、頭がふわふわしてきた。

気をしっかりもたせないと本当に、し

















──隣国付近の森


深緑のローブを身に纏った集団がいた。中でも短髪にメッシュが入り、顔に傷が入った男が声を飛ばす。


「1班は東、2班は西側を通って南から北に向かって捜索。3班は中央から進め。しらみ潰しに探す!途中の村や街では目をこらし、気配を感じろ!一目見てこの人だっっ!なんか覇気を感じるっっ!こいつ変なやつだなっやばいッッ!と感じたら俺の元へ片っ端から連れてこい!考えるな感じろ!いいな!」


『はっ!』と合図とともに隊員達は散る。

しんと静まり返った草原で、男は青々とした空を見上げてひとつため息をつく。


「はあああああ〜」


この男、ハコベ。

捜索隊結成時より、その類まれなる力と今までの功績が評価され隊長を賜った。

上からの無茶ぶりに胃を痛める可哀想な男である。


姿形も分からない人をどうやって探せと。

頼りは占いだけ。

異世界からの召喚者となると、異世界がどんなものなのかは知らないがこちらの世間常識に慣れていないはずと推測する。そこから変なやつを探してこいとは言ったものの……。

あれから1ヶ月。

時が経てば経つほど難しくなると思われる。


「死んだかな、俺」


ハコべはほぼ実現不可能に近い命令に、また一つため息をつく。このまま見つけられなかったら俺の首が飛ぶ。そう物理的に。そう思うと胃がキリキリと悲鳴をあげた。


「隊長」


その時、部下の一人であるヘリオトが戻ってきた。

その両手にはぐったりとした人間が抱えられていた。尋常じゃない汗の量に顔面蒼白。只事じゃない。


「ん」


ハコべは、親指で緊急用医療テントへ連れていけと合図する。

部下は人間思いの優しい子だな。

確かに様子は変だが。変だがそうじゃない。病人、怪我人を連れてこいってワケじゃない。

これは本格的に考えなければならない。


「遺書書いとくか」


そっと目を閉じ、暗闇しか見えぬ未来を見る。

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