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ウミ

コポッ……コポドプッ…ボッ


グラグラと煮えたぎった溶岩に囲われた絶溶岩の孤島。

その上に四人が佇んでいた。

ハナノスケが走れというや否や、溶岩が目を覚ましたかのようにあちらこちらから溢れ出てきた。

咄嗟に小高い丘に登ったはいいが、完全に包囲された。

ロエが光の結界らしきもので守ってくれてはいるがそれも時間の問題。ロエの魔力が切れてしまうのが先か、体内の水分が蒸発してしまうのが先か。

と言いながらも、溶岩がドプドプ鳴きながら足元に迫ってきている。今結界を解いたらくるぶしまで溶けてしまう。


「ハナノスケって溶岩泳げたりしない?」

「流石に泳げないかな」

「だよなー」


流石のハナノスケでも溶岩は無理だった。

陸までおよそ地平線の彼方。

四人固まった状態で行こうとしてもどこまで歩けばいいのかわからないこと。完全に溶岩の中を歩くこと。この時点で蒸し焼きになって終わる。

──完全な度を超えたサウナに閉じ込められた。

終わった。


その時スッと温度が下がった。

暑くなく、逆に涼しい。ついに脳みそ逝かれたかと思ったが、ロエさんの仕業だった。


「このままでは焼け死にますから、冷却しました。もう少し、みなさん私に近づいてください」


手をくみ息絶え絶えにいうロエさんの横顔は苦しそうだった。

言われるままに近づくと結界の大きさが縮まった。

同時に魔法を発動させ持続する難しさは想像を絶した。


「大丈夫?」


ハナノスケが心配そうな声色でいうが、ロエさんは笑った。


「ええ。ご心配痛み入ります。この七年間何もせずに神殿にいたわけではありません、あなたの、横に立つために、今日まで生きてきたのですから」


辛さなんてない、なんでもないという風に微笑んだ。

その額から汗がツゥと流れ落ちる。

こちらからはハナノスケの顔は見えなかったがその手は強く握られていた。が、ふっと力が抜けて、ロエの垂れ落ちそうな汗を拭う。


「はわ、は、ハナノスケ!?」


ロエは顔を紅潮させてあわあわと情けない声が出る。

ハナノスケは軽く笑った。


「行動は早い方がいい。陸を目指して歩こう」


あっちにしよう。と、ハナノスケが指を刺す。

それを見てヤブランも賛同する。


「ああ、それがいいと思う」


決断が下った。

どっちにしたって死ぬ、最後まで足掻こうというのだ。二人が決めたのならロエさんのためにも早く動かないと。

ついにマグマの中を歩き出した。


決して怖い心境は口には出さなかった。

行きたくない。動きたくない。死にたくない。

何度、止まってうずくまりそうな足を押しつぶしたか。


代わり映えのない視界。

ただただ体力や気力だけが削られていく。陸地へ辿り着くことだけを願ってひたすらに歩む。

ロエさんはハナノスケにおぶられている。体力の消耗が激しいからと、余計な情報に脳の容量を割くのを防ぐためだった。


ロエの魔力量では厳しくなるまで歩いた。

今はこの場にいるみんなの魔力を分けながら歩いている。これが尽きたら本当に終わる。

絶望に囲まれて、まだまだ歩き続ける。











──そのころ。


わずかに地面が揺れたと思えば、歩いた先に見た光景に足を止める。

目の前に広がるのは溶岩の海。マグマ溜まりに近いどころか一面真っ赤だった。


「こりゃ参ったな」


この光景を見て隊長は顎をさする。

時期が悪かった。この溶岩地帯は数十年に一度の頻度で溶岩が溢れだす。それが冷え固まって新しい陸地ができるという繰り返し。今はマグマが出てきたばかりなのだろう。

占いの目的地まですこしさきなのだが、ここから先は進めそうになかった。


「まさか溶岩遊泳でもしてるんですかね」

「はは、まさか」


ハシドイは冗談のつもりで言ったのだろうが、御三方の目をくぐり抜け、捜索隊をも振り切っているお方だ。十分にあり得る。そうじゃなきゃ見つからないはずがないだろう。

命令は絶対。

ヘリオトは嫌な予感を感じた。


「隊長」


ヘリオトが無表情でハコベを見ている。

言いたいことはわかる。

しかしな、異世界とは未知数。冗談でない可能性もあるんだ。

ムリです。と目で訴えるヘリオトにハコベは目を瞑った。


「さ、お前ら死ぬ気で行くぞー」


「はあ!?」とハシドイが泣いたが、命令は絶対。

それは誰もがわかっているから隊員たちは泣く泣く足をすすめる。

どこからか啜り泣く声も聞こえる中、地面が揺れた。


「まだ湧いてくるのか……」


地底からまだマグマが湧いて出てきてる。

隊長は立ち止まりくるっと体を回した。


「よし、落ち着くまでここいらで休憩だ」


隊長の言葉に誰もが喜んだ。




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