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113 マリア様のその後

「あれからクスバート嬢は正気に戻っていない」


 もしかして私のせい?頸動脈圧迫して落としたのが悪かった?


「譫言のような意味の分からない言葉を呟くばかりで、意思の疎通が難しい。医師によれば、精神的衝撃と魔力暴走とが相まって肉体的にも衰弱しているとのことだ。安静にさせ様子を見るしかない状況だ。魔導士に行き過ぎた魔力暴走の果ては廃人だと言われたが、今の彼女もそれに近い」


 ああ、じゃ、落として正解か。あのまま魔力暴走を放置していたらヤバいのは目に見えていたけれど、具体的にどうなるのかまでは知らなかった。

 命は救えたかもしれないが、このまま正気に戻らないならいっそあの時に見過ごした方が本人にとっては楽だったかもしれない。結果論だけど。


「クスバート伯はこの状況で混乱している。公にはなっていないが隣国の王女だからね、彼女は。クスバート伯の姉君が王弟殿下の第三妃となっている縁で押し付けられたらしいが……まさかあの状況の彼女を国元に返すわけにもいかないだろうし、かといって養女のままにしておいたら自分にも責の追及がある。どちらを向いても詰んでいる」


 それを公言していいのだろうか。私は王子さまの背後の二人をチラリと見たが、二人とも彫像のようにピクリとも動かない。王子さまは分かって言ってるんだろうから、私が心配することもないか。

 しかし、マリア様はクスバート伯家からも厄介もの扱いか。正気に戻っても居場所がないかもしれない。それ以前にどんな罰が下るかも分からない。


「自業自得です」


 ばっさりとスピネルが切り捨てるように言う。


「――毒杯でも与えればいいのではないですか?」


 スピネルが前回を匂わせるように毒杯というワードを出し、王子さまが俯いた。


「このまま治療する必要も無いでしょう。治るかどうかも分からない上、治ったとて居場所はない。公爵家の令嬢であるシシィに刃を向けて傷を負わせた。私の個人的感情は横に置いたとしても軽くはない処罰が下るでしょう」


「いや、ファルナーゼ嬢の怪我に関しては私に責任がある。私が彼女の言う通りにしていれば私を庇って怪我をする事など……な、無かった……ん、だが……」


 アウトー!王子さま、私、それスピネルに言ってない。なぜわざわざ自分にヘイトが向くような発言をする。スピネルの目線のせいで体が強張った王子さまは口も回らなくなっている。

 私の怪我をマリア様のせいにしたわけじゃない。経緯について口をつぐんでいただけだ。だというのに、スピネルの怒りが私の方にも向かってきているのが、そちらを見なくても伝わってくる。

 もうっ、王子さまが余計な事を言うから私まであとで怒られるヤツじゃないか。


「あのね、スピネル。殿下は私を庇おうとしてくださったの。自分が盾になるから逃げろって。でもね、王子さまより私の方が場慣れしているし経験値も高いし強いから、私がいう事聞かずに割り込んだんだ。確かに怪我をしたのは拙かったけど、ちゃんと勝算あってのことだし、無事だったからそんなに怒んないで」


「怒る。怪我をしたことは勿論、シシィが殿下を庇ったことも私に隠していたことも」

「ごめんっ」


 後で怒られるじゃないや。今この場で怒られてる。王子さまの前なんだけどなー。


「すまない、スピネル、ファルナーゼ嬢。セレンハート嬢にも諭された」

「え、レナですか?」

「ああ、私が邪魔をしなければファルナーゼ嬢は傷一つなくクスバート嬢を取り押さえることが出来たのだから、私が取った行動は愚挙以外の何物でもないと」


 レナ、きっつー。相手は王子さまだよ、不敬だよ。いや、それだけ私が心配をかけたって事なんだろう。次に会った時にはレナにも説教される可能性大だ。


「そもそも貴族は王家の臣であり、盾であり剣であると。王族がわが身を危険にさらしておいて、臣たるものが自分だけ逃げることなど出来るはずもない。前回のシシィ・ファルナーゼに負い目があるのは私個人の問題で、今のファルナーゼ嬢に押し付けるのは我儘だと言われたよ」


 自嘲気味に言う王子さまを見て、それだけ身に染みているのなら自分から言うことはないとばかりにスピネルは口をつぐんだ。ただ、おそらく私はお目こぼしに預かれない事と思う。


「駄目だな、私は。何度も間違う。親身になってくれていたセレンハート嬢にも見放されたようだ」

「間違わない人間などいないかと」


 それに、レナはヘタレ好きのダメ男好き。調教……もとい教育することに喜びを感じるタイプなので、見限られたわけではないと思う。


 だからくっついちゃえよー。推しは遠くから見るに限ると言っていたレナだって、王家から婚約の打診を受ければノーとは言わないだろうしさ。王子さまにはあの位しっかりした女性が合うと思うぞー。


「マリア様の小刀はどうなりました?あれはどこから手に入れたものだったんです?」


 マリア様が持っていた、蛇のように変化した魔法剣。魔法を纏わせても壊れない優れ物なのかマリア様の魔力の制御の問題か。あの魔力暴走を見るに、小刀が業物だったのだと思うのだが。


「ああ、ファルナーゼ嬢は魔法剣に興味を持っていたね。あれはダンジョンのドロップ品で、クスバート家の代々の持ち物だったのだが、勝手に持ち出していたそうだ」


 なるほど。ダンジョン産か。幾らするんだろう。手に入れられるかな?


 マリア様の処分決定はまだ先である事、私は状況が改善するまで学園に通う事は難しい事などを話して王子さまは帰って行った。


 そして二人きりになったあと、秘密を持たない事を確約するまでスピネルにしっかり叱られたのだった。





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