第七十三話
「…ここは」
レミシアに殺された後に居た草原に俺は再び立っていた。ただしあの時と違うのは空が青空ではなくどんよりと曇っていた。
「…目が覚めたか」
「お前は…魔王…!」
目の前に居たのは白く長い髪に黒目で金色の瞳、200年前勇者が倒したはずの魔王だった
「…色々聞きたいことがあるだろう、そろそろお前も知っておくべきだ」
教えてくれるのか?魔王が何故俺の中にいるのか、さっきの黒いオーラの事も
「ああ…ありすぎて困ってるよ。とりあえず聞きたいのは、なんで200年前に死んだはずの魔王が俺の中に居るんだよ」
「…そうだな、理由は単純さ。それは私は…」
お前だからだよ
一瞬理解が出来なかった、いきなり魔王は何を言ってるんだ?
「は…?俺が魔王だと?何言って…」
「お前は忘れているようだが…お前は2回転生してるのだよ」
2回?そんな訳ない、俺は前世でトラックに轢かれてすぐにリュート・レギオスとして転生したはずだ
「信じられないか?お前の最初の転生は魔王として産まれたんだ、つまり私だ」
「…嘘だ…なら200年前の戦争は…俺が起こしたのか…?」
「正確には違うが…まぁ半分は私のせいだな」
俺が人界を攻め、大勢を殺した?
「…なんだよそれ、そんなの…!いきなり言われたって分かんねぇよ!俺は勇者なんじゃないのかよ!」
前に呼んだ勇者の本には魔王の、魔族の残虐さが書かれていた。それを全部俺が…やったって言うのか
「…確かに今のお前は勇者として生まれた、だがお前と私は償わなければならない…己がした過ちを」
「知らねぇよ!なんだよ過ちって!嘘をつくな!お前は俺じゃない!」
「…なら記憶を見せよう、思い出すといい…私の記憶を。そしてお前の前世を」
「ぐっ…あ…」
頭が痛い、知らない誰かの記憶が無理やり押し込まれる。違う、俺じゃない…俺は魔王なんかじゃない
…
…
「なぁ〜暇だ〜、魔界って何故こんなに暇なのか?」
「しょうがないですよ、魔界は娯楽も少ないですし」
「うーん…レア、何かモノマネやってくれ」
「私がそんな芸当出来るとでも?」
「…頭が魔石並にカチカチなレアには無理か」
「…自分で言っておいてアレですがムカついたのでバーン様のお菓子全部没収です」
「そんな?!唯一の癒しまで取るのか?!」
「貴方何歳ですか、お菓子如きであれこれ言う歳じゃないでしょう」
「…まだ26だもん」
「…きも」
「おい今主君に向かってキモって言ったな!」
「言ってません、はぁ…こんなのが魔族の長なんて大丈夫なんでしょうか…」
「俺だってやる時はやるんだからな!多分!」
「はぁ…」
これは…魔王の記憶…バーン・ドラクスの記憶であり
本当の前世の俺だ…
「…俺は…魔王だった…魔界で生まれ、父と母は生まれた時に亡くし。レア・イテムと他の魔族達に育てられたんだ…」
「思い出してきたか?」
「…本当に前世は魔王だったんだな、俺はなんて事をしてしまったんだ…」
「後悔は後だ、問題はアイツだ…アイツの洗脳さえなければ…!私は…」
「洗脳…?」
「…なんだまだ完璧には思い出していないのか?ならその時の記憶を見せてやる。私の罪を、お前の罰を」
…
…
「なぁなぁ!見てよレア!これクレープって言うんだけどさ!今度人界に広めて1儲けしようと思うだけどどうよ!」
「貴方は馬鹿なのですか?」
「誰が馬鹿じゃい!不敬罪で牢屋にぶち込んでやろうか!」
「バーン様はチキンですからそんな事出来ないでしょう」
「くっ…図星なのが辛い」
「で?クレープ?でしたっけ、それをどうやって人界に広めるんですか」
「そりゃ…うーんと…どうすれば?」
「はぁ…いいですか、人界と魔界は存在している次元が違います。それこそ神でなければ次元を繋ぐなんて事出来ません」
「えー…ちぇっ、せっかく好物のクレープ作れたってのに…俺だけで楽しむしかないのか」
「別にいいじゃないですか、ご自分だけで楽しんだら」
「俺だけでこの幸せを独り占めなんてなんか悪い気がしてな、やっぱり幸せは共有しないと」
「…お優しいのですね、バーン様は」
「えっ?そう?」
「…調子に乗らなかったらの話ですけど」
「酷い?!俺調子に乗ってないからね?!」
「はぁ…だいたい魔族の長らしく口調をもっと威厳のある喋り方にしたらどうです?」
「ぐっ…わ、わかってるよ、でも慣れないしさ?」
「いい加減慣れてください、そもそも貴方は長としての自覚が…」
「俺ちょっと急用思い出した!」
「あ!ちょっと!逃げた…全く、小さい頃から全然変わらないのですから…」
…
…
「これが罪?」
「いや…違う記憶見せちゃった…」
いや何となく思い出したけど…あの後追いつかれて死ぬほど説教されたっけ
「こ、今度こそあの時の記憶を見せよう」
「はぁ…こういう所も俺っぽいなぁ…」
いらんところで自覚しちゃったよ、それで…次が魔王が言うアイツに洗脳された時の記憶、一体どんな記憶なんだ…
俺は流れてくる記憶に身を任せた




