第百三十六話
巨大な広間で剣と剣がぶつかり合う
「…おらぁっ!!」
「…」
重くて動きが鈍いはずの大剣をカナリーのスピード並の速度で攻撃してくるなんて物理法則どうなってんだよ…!
「変形:弓!閃光魔法:超貫通矢」
バックステップで距離を取り、遠距離攻撃へと切り替える
「…鎧ごと撃ち抜いてやる」
圧縮魔弾よりも鋭い刃が放たれる
「…」
だが鎧の剣士は大剣でその矢を受け止めた
「嘘だろ…その大剣頑丈すぎるだろ…!」
剣士が一瞬で距離を詰める
「…!変形:槍」
リーチの長い槍で応戦するが、全て弾かれる
「…強すぎないか…アンタ…」
流石にここまで力の差があるとは思わなかった、この剣士は下手をすれば邪神…魔王クラスだぞ
「…絶望の運命に抗いしモノよ…もう終わりか」
「くっ…なんだその絶望の運命って…」
こうなったら本気出すしかないな!
「変形:双剣…反魔球:纏い・魔力瞬進・死神纏い・多重聖剣・多重漆黒剣」
「…っ…その姿は…」
双剣に反魔球を纏わせ、死神纏いで実体を無くし、魔力瞬進で身体能力を強化。そして多重聖剣と多重漆黒剣で手数を増やす…今俺が出来る本気のスタイルだ
「ふぅ…これ数分しか持たないから…すぐに決着をつけるぞ」
「…こい」
「はぁ…!」
聖剣と漆黒剣が剣士を襲う
「…!」
聖剣と漆黒剣を相手にしながらも俺を狙うか…だけど
「…こっちだ!」
大剣が俺に当たる瞬間…影変転で聖剣と入れ替わり剣を振るう
「…ぐ…」
すぐに大剣を俺の方向に切りつけるが…すり抜ける
「…残念、俺は無敵だ」
剣が鎧とぶつかり、鎧の一部分が砕け散る
「…まだまだ!」
また影変転で移動し攻撃していく
「…!…?」
「どうだ?俺の戦い方…影変転で入れ替わるのか…はたまたそのまますり抜けるのか…分からないよな?」
俺は高速で剣士の周りを自分と聖剣、漆黒剣を入れ替えながら切り刻んでいく
「…ぐ…!」
「…もう殆ど鎧は残ってないな、剣士」
既に鎧はボロボロ、剣士も大剣の動きが鈍くなってキレが無くなってる
「…見事だ…絶望の運命に抗いしモノよ」
「それ毎回言ってて疲れない?」
長いよ名前、ちょっと噛みそうだし
「…ここまでやるとは…試練は合格だ」
剣士は大剣を地面に突き刺すと、跪く
「…なぁ…その絶望の運命に抗いしモノってなんなんだ?」
「…それは言えない…しかし、これから先…お前は絶望に飲み込まれるだろう」
「…絶望に?」
「…それでも尚、立ち向かう勇気があるならば…きっと…運命は…」
剣士の姿がボヤけ、そして消えた
「…立ち向かう勇気…」
よく分からん!でも諦めなければいいんだよな…!
「それは俺の得意分野だ、なんせ自称前向きな性格だし?」
『…絶望…』
ステさんは何か気になるの?
『いえ…何でもないです…』
変なステさん…、さて大剣引っこ抜いて帰りますか
「うんしょっと…うわ…抜いたらすげぇ軽い」
どんな素材で出来てるんだ?この大剣
「そりゃあんな動き出来るよな」
俺は傷を治しつつ遺跡を後にした
「…リュート!」
外に出ると皆が待っていてくれていた
「やぁ、ルシュ」
「…無事終わったんだね!」
「うん、ちょっとハプニングはあったけど何とかね」
(良かったです…本当に…)
「ご主人が無事でよかった」
「にゃ…!」
「…それが…仲間に授けられる大剣か…」
「うん」
大剣をルシュに渡そうと背中に担いでいた大剣を取る
「…こういうのはやっぱちゃんとしねぇとな」
ルシュは跪き、両手をこちらに向ける
「…別にいいと思うけど…まぁ…ルシュがそう言うなら…コホン、ルシュ・エルシュラ…この大剣をお前に渡そう。我が仲間となってくれるか?」
「…ありがとうございます勇者リュート、私が貴方の剣となり。行く手を阻む物全てをこの大剣で切り開きましょう…!」
「…頼んだ、ルシュ」
「…ああ、任せろ。リュート」
大剣はルシュの手に渡った
「…俺は…勇者リュートの仲間だ」
「…わ〜歴史的瞬間を見てる気分だよ…!」
(多分その通りですよ、この日はきっと歴史に残る出来事になるでしょう)
「さ、戻ろうぜ」
「うん…行こうか」
「ご主人、帰りにエルフまんじゅうを買ってもいいだろうか?」
「お前さっきも食ってただろ…」
「まだ腹3分目だ」
「どんな胃袋だよ…」
「はは…食べ過ぎないようにね?」
「分かった」
「にゃ!」
「クロスケも食べたいのか?いいよ、沢山買おうね」
(クロスケさんの事となると激甘なんですから…)
俺達はエルフの里へと戻って行った…
『…絶望…嫌な予感がします…』
…
…
勇者の試練から2日後、とうとう俺達はエルフの里を経つことになった
「…もう行ってしまうのだな、勇者達よ」
「はい、お世話になりました」
「気にするな…前にも言ったがそなたらは恩人、また寄ることがあればいつでも歓迎しよう」
「ありがとうございます!」
長に伝えた後は、俺はカレンとフーリエさんにも別れの挨拶をしに行った
「…坊っちゃま…行ってしまわれるのですね…」
「うん、カレンはこれからどうするの?」
「私は…しばらくはここに残ろうと思います」
「そっか、この旅が終わればまた会いにくるよ」
「はい…お待ちしてますね」
「…」
「ほら、姉さんも」
「わ、分かってる…なぁ…勇者、て、手を握ってはくれないだろうか」
「手、ですか?」
言われた通りフーリエさんの手を握る
「…やっぱり…はぁ…認めるしかないのか…」
「フーリエさん?」
「なんでもない、すまないな変な事を頼んで」
「いえ、別にいいですけど…」
「…それより勇者には未来の妻団なるものがあると聞いたが?」
「…うっ…それは」
「勇者よ…」
突然フーリエさんに肩をがっしりと掴まれる
「その…未来の妻団に入ったら平等に愛してくれるんだよな…!な!」
体を揺さぶられる
「は、はいも、もちろんです!」
「…そうか…ならもう聞くことは無い、残りの試練も頑張れよ」
「は、はい…」
な、何だったんだ一体…
「で、ではこれで」
「…行ってらっしゃいませ…坊っちゃま」
「…達者でな」
こうして俺達はエルフの里を出て、次の目的地へと向かった
「…姉さんどうだった?」
「…手を握ってもやっぱり震えることは無かった」
「そう…異性と…エルフの男性ですら触れたら震えてダメだったのに…」
「…まさか私をあんな目に合わせた人族に惚れるとは…」
「…坊っちゃまはそんな事はしない、どんな事が起きようと必ず救ってくれる…それが坊っちゃまよ」
「…ああ、よく知ってるよ」
「…はっ!勇者殿は!あの術をもう1回…!くっ…!勇者どのぉぉお!!」
「…隊長もどうにかしなければな…」
「…そうね」
「フーリエ様、カレン様!さ、里に人族が!」
「…なに?」
「この里に人族なんて…」
「そ、それがカレン様の知り合いと言ってまして…」
「私の?」
「それと…」
…
…
「…きっとリュートの事だからエルフの里でも女性を惚れさせてるに違いない…!」
私が責任もっていい人を選んであげるからね…!
「…お前は…」
「え…あなた様は…サラお嬢様?!」
「…未来の妻団の拡大の為に来たよ…!」
リュートの知らない所では未来の妻団の勢力が増え続けていた…
…
…
「…なんか寒気が…」
「大丈夫かリュート…」
「大丈夫、それより次の目的地は精霊の森から北東だね」
「うん!美味しい食べ物あるといいね!」
「…なんかカナリーがレミシアみたいに見えてきた」
「レミシアって?」
「なんでもない…それじゃあ行こうか…!次の勇者の試練がある場所…ドワーフの街へ!」
リュート達の旅は続く…




