第百三十二話
人族とエルフの戦争から数日が経った
「もぐもぐ…やっぱりノエラ先輩の料理は美味しいな〜」
俺達は宿で朝食を食べていた
「これ食ったらエルフの里に行くんだろ?」
「うん、大体俺達の目的は勇者の試練を受けることだからね…」
「…まさかあんな事になるなんてね〜…」
(無事、解決出来て良かったです)
「そうだね…でも…まだ差別自体が無くなった訳じゃない…エルフの中にも納得がいってない人たちもいると思うし」
「…難しいな…」
「うん…だけど俺達ならやれるさ、なんたって勇者とその仲間なんだから」
「…おうよ!どんとこいだ!」
「私エルフまんじゅう食べたいな〜」
(諦めてなかったんですね…)
「私はご主人について行こう」
「にゃふ〜」
「よし、行こうぜ」
「おっけ、あ、ごめんちょっと用事」
「またかよ〜、全くおアツいことで」
「ヒューヒュー」
「流石ご主人だ」
「にゃ!」
(こうやってリュートさんの奥さんは増えていくのですね)
「そんなんじゃないよ!ほら後で追いつくから行った行った」
俺を冷やかしながら宿を出ていくルシュ達
「…はぁ…」
『そんなんじゃないと言いながらも少しは期待してるんじゃないですか?』
うるさいぞ、ノエラ先輩とは好きとかそういうのでは…
「…あ、今日の料理どうだった?自信作だったの!」
「…あるかもしれない」
俺ってちょっと慰められると惚れちゃう病気でもかかってんのかな、ちょっと顔がニヤけるのが分かる
「…美味しかったですよ、ノエラ先輩」
…
…
「…すんなり里に入られることに違和感があるな」
「今まで矢と槍が飛んできたからね…」
(辛い思い出です…)
「…来たか」
「あ、あの時俺の腕を魔法で刺した人だ」
「うぐ…それは…その…済まなかった」
「冗談です、いいですよ、気にしてないです」
「…本当に…お前の様な人族も居るのだな」
「あはは…」
「…長がお待ちだ、いくぞ」
「はい」
俺達はエルフの里を歩きながら長の元へ向かう
「…なんかすげー見られてね?」
「うん…絶対に見られてるね」
(少し恥ずかしいです)
「すまない、人族が里へ入るなどここ100年近く無かったからな…」
「なるほど…」
珍しい物を見るような目線を浴びながら目的地へ着く
「よく来たな勇者達よ」
結局、長は2人のお父さんが長へと戻る形になった
「此度は本当に済まないことをした、申し訳ない…」
「いえいえ、そうなった理由は痛い程分かりますので…顔を上げてください…」
「そうか…そう言ってくれるとありがたい。それで…確か勇者の試練を受ける為にここに来たと聞いたが」
「はい、200年前の先代勇者が受けた試練を俺も受けたくて来ました」
「…ふむ、私達エルフは長寿だが200年は流石に生きられないからな…他の者にその試練とやらがある場所を探させよう」
「ありがとうございます!」
やっと…最初の試練が受けられる…
『随分長い道のりでしたね…』
ホントだよ…それもこれも…エルフを攫ったやつのせいだな…!
「見つかるまでの間はここでゆっくりとして行くといい、そなたらなら大歓迎だからな」
「…エルフまんじゅう食べられる?!」
「カナリーはまんじゅうに拘りすぎだろ…」
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えさせてもらいますね」
エルフの里、1回観光したかったんだよな〜!なんたってあのエルフだぞ!エルフ!男なら誰もが憧れるエルフ!
『勇者なのですから勇者らしく振る舞うんですよ?』
わ、わかってるよ…
「…それと娘たちにも会ってやってくれ」
「はい…分かりました!」
勇者の試練の場所が分かるまで俺達はエルフの里で過ごすこととなった
…
…
「…これが…エルフまんじゅう…!」
「はいよ〜毎度あり〜」
「もぐもぐ…ふぁぁ…」
(カナリーさんが天に昇っている?!)
「もぐもぐ…確かにこれは美味いな…」
(ガルスケさんは既に5個目?!)
「何やってんだアイツら…」
「ねぇねぇ貴方人族なの?」
「わ〜噂によれば勇者様なんですって〜」
「サインください〜」
「あ、あの…ええと」
『リュート様は何処へ行っても人気者ですね』
いや…なぜ女性しか寄ってこないんですかね、俺本当に女たらしの成分でも出てる?
『1つ思い当たる節はありますが…まぁ気にするほどでも無いでしょう』
教えてよ…
「おいおいあれ勇者だってよ」
「ほぉ〜顔が整っておいでで…羨ましいな〜」
とうとう男にまで囲まれつつあるんだが
「た、助けて〜…」
「…勇者って大変だな」
ルシュは静かに距離を置くのであった
…
…
「坊っちゃま、今回は本当に…ありがとうございました」
何とか人混みを脱出したあと、俺はカレンとフーリエさんに会いに行った
「いいよ、俺別に何もしてないし」
今回はほんとに何もしてないし
『そうですかね?』
「そんな事ないぞ、勇者」
「フーリエさん…」
「お前のおかげで妹と、そして父と再び仲直り出来たんだ。そう謙遜するな」
「はは…仲直り出来てよかったです」
「ああ…だが正直…まだ人族は憎い…」
「…はい」
「でもお前の様な者達も居るという事を私は信じるよ…」
フーリエが微笑む、初めてフーリエさんの笑顔を見たな…
「ありがとうございます…フーリエさん」
「いいさ、それに礼を言うのは私の方だしな…お前には酷いことをしてしまった謝罪もしなければ」
「いいんですよ、気にしてないです」
「全く、お人好しだなお前は」
「ええ、坊っちゃまは凄くお人好しです」
「カレンまで…」
「くふふ…ははは…はぁ…こんなに晴れやかな気持ちはいつぶりだろうか」
「そうね、また2人で遊びにでも行きたいね」
「ああ、昔のように…な」
仲がいい姉妹だな、俺お邪魔かな?
「でも今度は坊っちゃまも加えて…ね」
「ふむ、それもいいな」
「いえいえ、流石に姉妹水入らずを邪魔するなんて」
「…大切な家族…何ですよね?坊っちゃま」
「うっ…」
覚えてたか…
「カレンの家族なら私の弟でもあるな」
「…それは…いや色々おかしい気が…」
謎の理論で一瞬納得しかけたよ
「それとも…私の様な傷だらけの女は…嫌か?」
少し寂しそうにフーリエさんは言った
『不安にさせてどうするんですか』
くっ…そんなつもりじゃ無かったんだけど…こうなったらロディ先生式慰め術を使うしかない!
『学びませんねぇ…リュート様も…』
俺はそっとフーリエさんの手を握った
「そんな訳ないです、フーリエさんは綺麗ですよ?そんな傷ごときでは貴女の美しさは消えません」
「…?!?!」
「人族の俺に言われるのは…嫌だと思いますが…とても素敵ですよフーリエさん」
「…わ、わ…分かった!もういい!」
手を振りほどかれバッと背を向けられる
「…あ、すみません…」
やりすぎただろうか…
「…わ、私はこれから用事があるからカレンと過ごすといい、じゃ、じゃあな」
顔を合わせてくれずに去っていった…
「やってしまった…」
「はぁ…坊っちゃまが女たらしに…」
『アウトです、責任取らなければならないですね?』
「…俺…本当に女たらしになってしまったのか…?」
…
…
「わ、私は何を真っ赤になってるんだ?」
フーリエは柱の影で自分の顔を抑えていた
「相手はじ、人族だぞ?あの憎んでいた人族なのに…」
それなのに綺麗と言われただけで…
「…うう…こんなの…初めてだ…」
しばらく後、心ここに在らずのフーリエが目撃されるのはまた別のお話…?




