第百三十話
「それで…?俺達に用ってなんだよ」
拗ねたようにこちらを見るルシュ
「…ふん、私まだ怒ってるからね!」
こちらも拗ねているカナリー
(私も今回ばかりは怒ってます)
頬を膨らませるユーナ
「こればかりはご主人が悪いな」
「にゃ!」
「本当に申し訳ございません…」
「けっ、どうせまた1人で全部背負うんだろ」
「…いや…もう反省したよ、今度からは…ルシュ達を…頼る…いっぱい迷惑かけちゃうけど…」
「…気にするなよ…仲間なんだから迷惑かけられて上等だ」
「そうだよ…私達は仲間なんだよ?」
(もっと頼ってください)
「…うん…分かった」
「…はぁ…まぁ…それがリュートの強さなんだけどな?次1人で突っ走ったら絶好だからな」
「私もね!」
(同じく)
「良かったなご主人」
「ありがとう皆…!」
「よし!じゃ改めてエルフ達をどうするか考えようぜ!」
「おー!」
(頑張りましょう!)
「…俺が休んでた間はどうしてたの?」
「…ああ、あの後俺達ももう1回里に行ったんだ」
「そうなのか…」
「でも結果は散々、まともに話すら聞いてくれねぇ」
「だから私達なりに考えた結果…」
「人族の美味しい食べ物をエルフに食べてもらおうと思ったんだ!」
「うんうん!」
「美味しいものを知ればエルフ達も仲良くしてくれるはずと思ってさ!」
「うんうん!」
ルシュとカナリーはドヤ顔でそう言った
「…」
(私は…止めたんですけどね…)
「でもそれもダメだったんだよな…」
「なんでだろね〜…」
「俺…なんか自分1人で突っ走った理由が分かった気がする」
(り、リュートさん…)
「…はぁ…俺に提案がある」
「お、なんだなんだリーダー!」
「流石リーダー!もう解決策を編み出してたんだね」
「でも…これも…俺がやらなきゃダメな奴なんだけど…」
俺は思いついた案を皆に話す
「…それお前の負担がデカすぎるぜ…」
「そうだよ、結局1人で背負ってるじゃん」
「ですよね…」
(まぁまぁ、こうやって話してくれてるだけ進歩ですよ)
「まぁ、そりゃそうだけど」
「…でもねぇ…流石に危険すぎない?」
(確かに…)
「…リュートがわざと人質になるなんてな…」
「その間、ルシュ達は城に行って国王陛下に何とか戦争を待ってもらうよう説得して貰いたいんだ」
「うーん…しかしなぁ…」
「…私も一緒に捕まろう」
「ガルスケが?」
「…何としてでもご主人を守ると誓う」
「んー…それでも2人とも危険だよ…」
(…私は…お2人を信じましょう)
「ユーナ…」
(確かに…リュートさんとガルスケさんが危険に晒されるのは嫌ですが…私達だけで何とか出来なかったのも事実です)
「…そうだな…」
「うん…」
(今回は…リュートさんとガルスケさんを信じませんか?)
「…分かったよ…でも無茶だけはぜっったいするなよ!」
「無茶したら私が許さないからね!」
「…うん、ありがとう」
「で、人質になってそれからはどうすんだよ」
「…多分…もう少しで説得出来そうなんだ」
「そうなのか?…じゃ、それならやりますか…!」
「おー!」
(おー!)
「ご主人は私が守るからな」
「にゃ!」
「うん!」
「…良かった…皆仲直りしたのね…」
ノエラは調理場で1人微笑んでいた
…
…
「ほら!捕まえるなら捕まえろよ!やーいやーい!」
「…また突然来たと思ったら…頭がおかしいのか?」
「…俺たち2人が人質になる代わりに戦争をやめてください!」
「はん、それが目的か…ふっ…いいだろう、おい、勇者とその獣人族を捕まえろ」
「…コソコソ」
「上手くいったみたいだな…」
「私達も城に戻ろっか」
(特別に馬車を貸してもらいましたし、早く向かいましょう)
「よし…行くぞ」
果たして勇者達の作戦は成功するのだろうか…
…
…
「坊っちゃま!」
「あ、カレン!無事だったんだな!」
「おら、さっさと歩け」
「ご主人に気安く触るなよ」
「くっ、口答えするな!ほら行け!」
「坊っちゃま…捕まってしまったのですね…」
「まぁね、それより怪我はない?ずっと…捕まってたの?」
「ええ…1年前…里に戻った後…直ぐに人族差別派と人族友好派で内乱が起きまして…そのせいで…エルフの長であり友好派の私の父は…捕まってしまって…」
涙を浮かべる
「…まだ…囚われてるの?」
「はい…地下の牢獄に…」
「…なら助けないとな」
「坊っちゃま…すみません…あの時助けてなど…言ってしまったせいで…」
「いいよ、どちらにしろこれは避けては通れない事だったんだ…救う人が増えるだけだ」
「うう…坊っちゃま…」
「それにしても…今の長はカレンのお姉さんなんだね…」
「ええ…それも…私が悪いのです…」
「どうしてさ…」
「姉が人族に酷い目に合わされたのは…私の…せいなんです」
「…なんだって…」
「私とフーリエは…昔は凄く仲が良かったんです。私はいつもフーリエの後を着いていき、フーリエも私を大切に思ってくれてました…」
カレンの表情が暗くなる
「しかし…ある時…聖霊の森へエルフを攫いに来た人族がいたんです」
「…そんな」
「私とフーリエは運悪く出くわしてしまって…私は…姉であるフーリエを…置いて…逃げて…しまった…」
「カレン…」
カレンの手は震えていた
「…最低なんです…私は…私は幸せになってなんかいけなかった…」
「…」
俺は…カレンになんて言えば…
「しばらくして…違う人族の人達がフーリエを連れて戻ってきました…その人は奴隷の様に扱われていた姉を救ってくれて…里までつれて来てくれたんです」
「フーリエさんは…」
「…フーリエは心が壊れてました…体中傷だらけで…泥だらけになってて…」
「…っ…」
あの傷跡か…
「私は…声を…かけられなかった…謝ることも…目を合わせることも…出来なかった…!」
カレンは泣き続ける
「だから私は逃げてしまった!姉を見捨てて…!里からも逃げて…逃げて…!最後には…坊っちゃまにまで…助けを求めるなど…最低なんです…!」
カレンがこちらを見る
「あの時…助けを求めましたが…いいんです…私なんかを助けなくて…今…この状況が私の…罰なんです」
「カレン…でも…」
「…すみません…坊っちゃま…私は幸せにならず…姉に憎まれたまま…過ごす事を…選びます」
『リュート様…このまま放っておいていいんですか…?』
ステさん…いいわけないさ
『それなら…』
だけどカレンはもう…覚悟してるんだ…今の状況を受け入れることを
『…』
「でも…」
でも…それでも…俺にとってカレンは大切な家族なんだよ
『リュート様…!』
そんな覚悟、俺が認めない
「…悪いけど、カレンがなんと言おうと助けるよ」
「坊っちゃま…?」
「俺、カレンがそんな事があったなんて何も知らなかった。知ろうともしなかった」
「…私なんかを…」
「…俺にとってはカレンは家族なんだ、生まれた時からそばにいてくれた大切な…大切な家族だ」
「…!」
「カレンの罪を…一緒に背負ってあげるよ」
仲間が俺にそう言ってくれたように
「だから、俺を頼って?」
「う…あ…」
カレンから涙が溢れる
「坊っちゃま…!ああ…うぅ…あぁ…」
そっとカレンを抱きしめる
「…過去から逃げたのなら…今…一緒に進もう…俺が…そばに居るから」
「…はい…坊っちゃま…!」
人族とエルフの戦争が起きるまで残り1日




