死ぬまでにしたいこと お題:希望の惑星 制限時間:15分
地球は滅びる。
それがわかったのは数十年前。
生き延びるためには、新たな惑星を見つけなければならなかった。
そこで研究チームは一縷の望みをかけて巨大な宇宙船を建造し、そこに乗せられるだけの人を乗せる計画を立てた。
とはいえ、どこに行けばいいのかもわからない。
最も近い地球型惑星は、太陽系から490光年先にある。
現代の最新技術と資材をすべてつぎこんだとしても、到着までには数千年は優にかかるだろう。
人類の歴史を、最初からやり直すのにほぼ等しい年数を、宇宙船の中ですごさなければならない。
しかしやらなければならなかった。
世界中のあらゆる科学者、研究者、製造業者が集まり、月を巨大な宇宙船に改造することとなった。
建造規模に対して、期限は絶望的にまで短い。
それでも、人類はこの問題にかかんに挑んだ。
人々は月の宇宙船を、夢をかけて「希望の惑星号」と呼んだ--。
というのは建前で、実際は壮絶なことが行われていた。
一番もめたのは、「誰が宇宙船に乗るのか」ということだった。
全人口100億人に対して、乗りこめるのは1億人。
選ばれる可能性は100分の1といえば聞こえはいいが、公平に選定されるわけがない。
貧しい国ほど選ばれる可能性は低かった。そして不運にも、そういう国ほど武器が豊富にあった。
世界大戦は避けられなかった。
貧しい国対裕福な国の戦いは、むしろ裕福な国のほうこそ望んでいた。合法的に当選率を上げる手段にできるからだ。
停戦という概念が消え去った世界では、文字通り国は絶滅するしかなかった。
貧しい国があらかた滅びると、今度は裕福な国同士が争いはじめた。
こうして、当初見込まれていた期限は大幅に繰り上げられ、地球は滅びた。
人類は有史以前からやりなおすことになった。
希望の惑星は、非人類のものとなった。