そう言えば名前で呼んでなかったな
「けけけ、結婚ってなんだよ、それでどうにかなる問題なのか!?」
エミは笑いながら言う。
「なるよー、だってお兄ちゃんが現代の人と結婚するから人類の枝分かれが起きるんだよ。
私と一緒になれば大丈夫!」
「ていうかお前、なんでそんな嬉しそうなんだよ! どう考えても人身御供の貧乏クジ引いてきたとしか思えないんだが?」
「なんで? 結構希望者いたんだよ! 私が健康的にも学力的にも一番優秀だから選ばれたの!」
嘘だろ……ニートと進んで結婚したいなんて言う物好きがいるわけ無いだろう。
こんな非現実的なことがあっていいのか?
「希望者なんていたのか?! なんでお前は希望したんだよ!?」
おかしい、俺が未来人ならニートの家に嫁ぐとか嫌すぎんぞ。
「あっちはね……人が少ないの……大人の人は戦場に駆り出されてね……みんな死んじゃった。
だからね、家族を持っている人ってすごく恵まれてるんだ……私も憧れてたの」
重い……意外な理由だ、そこまでなのか……しかし一つ疑問がある。
「未来でも結婚相手くらいいるだろう? お前結構かわいいじゃんか!」
そう、コイツの見た目は大分かわいい、それともニート続けたせいで規準がおかしくなったとでも言うのか。
「ありがとね、あと名前で読んで、私はエミだよ」
そういや、魔法少女アニメでも「名前をよんで」って言ってたな。
「わかったよエミ、で、なんでこんな悪条件に志願したんだ?」
「さっきも言ったけど家族なんていないのがふつうだったからね、あんまり治安もよくなかったんだ……
平和な時代で家族を持てるなんて条件ならみんな希望するよ!」
泣きそうな内容なのに笑顔で言っていた、まるで宝くじでもあたったよう笑顔だ。
今の世の中でも争いが続いているような地域もある、そこでさえ酷いと言われることが多いのに、人類が崩壊寸前なら想像も出来ない。
「大変……だったんだな……でも、僕を殺しても未来は救われるんじゃないのか? 随分人道主義だな」
「みんな本当に危なくなってから命の価値を重くしたんだ……勝手だよね、一山いくらで集めておいて、
使い切りそうになったらそれが貴重だなんて言うんだから」
未来人もやることは一緒なのか……だから働きたくないんだよ。こんな世の中に貢献したいか?
「そっか……みんなで過去に疎開するなんてことも出来なかったのか?」
「たくさん来ると歴史の矛盾が多くなるからね、それに新人類を生まれなかったことにするなら新しい人たちは来ちゃダメだから、
一人だけのほうが公平なんだよ、また争いになるよりずっといいからね」
「ところで僕はどうすればいいんだ、今更働けってのか? キツイなあ……」
「ううん、お兄ちゃんはいてくれるだけでいいよ。全部私がやったげる」
「いや、流石に血のつながりがないからって妹に面倒……? よく考えたら僕達兄妹なんだろ? 結婚できないんじゃないか?」
「だいじょーぶ! ちゃんと偉い人たちをせんの……、教育? 催眠? してるから」
「全部物騒な方法じゃないか! 妹以外で狂って考えはなかったのかよ?!」
よく人道とか言えたな、オイ。
「だってお兄ちゃんどこへもいかないじゃない? 家族でもないと会えないよ? それともおかーさんのほうが良かった?」
「いや、妹でいい、というか妹がいい……」
「じゃあ何も問題ないね! 私とラブラブいちゃいちゃするだけでいいんだよ? お兄ちゃんに悪いようにはしないからさ、
婚姻届もらってきてよ!」
「もっと手順が……まあいいや、なんかこの非常識にもちょっと慣れてきた。楽は出来ないけど大丈夫なんだな?」
「もっちろん! 可愛い妹を信じなさい!」
こうしてちょっと変わった新婚生活が始まった。




