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奪われた大勇神

今日もはじまり、はじまり


 『「やったか……?」』


 最大火力を放出し終わった大勇神が全身から煙と火花を上げて着弾地点を確認した。

 銀のゴーレムがいた場所はもはや街道とは呼べない程に焼けて荒れ果て、溶岩のように波打つ地面に僅かな銀の破片が散らばる。


 「破片が、ある」


 合身を維持するのも精一杯なのか、朦朧とした意識のアレックスがうわごとのように見たままを口に出した。

 対して張り詰めたままの勇神は鬼神のマスクの奥で探知能力を働かせる。

 

 (破片が少ない。いや、消滅させきれたのか?滅した下郎の魂を喰えれば何か判るかもと思ったが、儂の中におらぬと言う事は……) 


 『アレックス!!まだだ!!』

 

 「その通りだぜぇ!!」


 ドバアアアアアアア!!


 勇神の叫びと同時に着弾地点の地面を吹き飛ばし、銀のゴーレムが飛び出す!!

 その姿は足の数本を消失しているものの、胴体に開いたはずの穴は流体金属によって塞がれ、黄色に放つ魔法光も勢いを保ったままだ。


 「迷わずタマぁ取りに来るとは驚かせやがって、だが同じ手に二度もかかるとはな!!」

 

 『侮るなよ下郎!!』


 勢いをつけて組み付いて来る多脚ゴーレムを受け止めて大勇神が剛拳を繰り出す。

 だがその動きは精彩を欠いて、威力の乗らない腕を突き出すだけのものに終わった。


 ガイン!! バキィ! ガガァン!! 


 二撃、三撃と拳を躱され、その度にカウンターを貰う大勇神。

 漆黒の装甲に損傷を受ける程ではないが、大きく後退を余儀なくされる守護神はもう消耗しきっていた。

 虫の胴体から伸びた人型の部分で大勇神の拳を捕まえた多脚ゴーレムは、その腕をねじり上げると器用に背中まで回し、大勇神の背後に回り込む。

 

 「鎧は丈夫だが、中のアンタと王子サマは限界みてぇだな」


 銀の上半身から勝ち誇るワッジの声が弾んで響く。


 『ぐ、おのれ…!』


 「ぜぇ、ぜえ、ぜえ……まだ、僕は、うぐぐ」


 「強がるんじゃねえよ。俺も魔法使いだからわかる、さっきの杭をもう一度やれないのがその証拠だ。おらァ!!」


 装甲の隙間から黒煙を上げる大勇神を軽々と持ち上げて、多脚ゴーレムは巨神を放り投げた。

 既存のゴーレムの倍の背丈はある大勇神が中を舞い、頭から地面に叩きつけられる。


 恐るべきは異形の腕力、そして損傷しても戦闘可能な安定性とワッジの操縦センス!!

 

 ガシャアアアン!!

 

 『ぐぅわ!』

 「きゃん!」


 地面にうつ伏せにになった大勇神に、ガザガサとのしかかる多脚ゴーレム。


 「姐御の話だと、確か背中のこの辺りだったな……お、これか!」


 『!?!?!? まさか!貴様ァ!!』


 肩から背後に伸びたブースターを押しのけ、銀のゴーレムの胴体が大勇神の背中に密着する。


 「そのまさかだ。貰うぜ、この鎧」


 ガシュン!!という接続音が響き、大勇神の動きが止まる。

 

 『「う、ぐ、おわあああぁぁぁぁぁああ!!」』


 銀のゴーレムに馬乗りにされて、苦悶の声を上げる大勇神の体に異変が起こる!

 青白く吹き出していた魔法光が消失し、黒煙を上げていた装甲が不規則に開閉する。

 全身が痙攣するように手足をばたつかせ、銀のゴーレムを振り落とそうとするが足の多さで勝る相手はびくともしない。


 ブウウウウウウン!!


 大勇神の関節から漏れる魔法光が復活したかに見えたが、それは一時のこと。

 青白く再起動した魔法光は背中に近い方から禍々しい黄色に染め上げられ、背中に銀の異形を取り付けたまま、大地に手を着いて巨神が立ち上がった。


 バガッ! ドシャアア!!

 

 立ち上がった大勇神の胴体から勇神が吐き出され、虫の胴体から分離したヒトガタが鎧の内部に滑り込む。

 中途半端に閉まった装甲から銀の体をはみ出し、サイズの合わなかった兜を斜めに頭に乗せて、両の拳を打ち合わせて高笑いを響かせる。


 「だぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっっはひっ、げっほげっほ!! やってやったぜ!! 見たかザッカー!姉御ォ!「大勇神」から「勇神」を抜いて、えーっと……「大」だけじゃねえかコノヤロウ!!」

 

 ノリ突っ込みの合間に弱々しく足下で手を伸ばす勇神を蹴り飛ばし、体の動きを確かめるように手を開閉する「大」。


 『うぐぐぐ、ぐはッ』


 「そんな…それはボクと勇神様の……ぎゃッ!!」


 もはや立ち上がる気力もなく地面を転がる勇神。

 合身したアレックスの気力が限界を迎えたのか、装甲を縁取る赤いラインが消失し、発する魔法光も消え入りそうな程に弱まる。


 「さあて、と」


 背中から虫をぶら下げたままそれを見下ろしていた「大」は、悪そうに頸を傾けると、全身の火器を開放して狙いをつけた。


 「今度はテメエが喰らって見やがれ! 一斉射撃だァ!!」

今日はここまで

お読みいただきありがとうございました。

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