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超振動

今日もはじまり、はじまり


 「だぁっはっはっはっは!!遅っせぇんだよ骨董品野郎!!待ちくたびれたぜぇ!!」


 剣を束ねて造った檻に勇神を捕らえて、地面の中から立ち上がったのは機械の異形!!

 足の長いムカデ、いわゆるゲジのような胴体に人型の上半身が生えた、見るものの不安を煽る造形。

 水銀を固めたような表面にはパターンに沿った魔法光が走り、勇神よりもつるりとした人型の部分は骨が浮いたような痩せ型に、眼も鼻も無いのっぺらぼう。


 『ゴーレムじゃとォ!?』


 驚愕の声を上げる勇神を捕らえた剣の正体は、数多ある足のうちの幾本かを背中側に立ち上げて折り曲げたものであった。

 一本一本が凶悪な曲線と鋭利さを備えたそれはガシャガシャと身の毛もよだつ蠢きで、ゴーレムの全身が地中から這い出すまで不協和音を立てる。


 「やっと来たな王子様よゥ!それに勇神!! いい格好だなおい、いつもは手前らがやる不意打ちを、自分で喰らってみた気分はどうだ?」


 ゴーレムから響く声は王都を騒がせた強盗の片割れ、薄毛魔法使いワッジのものであった。


 『貴様は……!湖の戦いで取り逃がしたと思っておれば、よもやこのような所で! ええい!!』


 「さっさと離せ!卑怯だぞ強盗め! それにもう1人はどこだ!」


 剣改め足に挟まれ背中に捕らわれた勇神とアレックスは、懸命に脱出を試みるが、勇神が背中に乗るほどの大きさである銀の多脚ゴーレムはびくともしない。


 「だあっはっはっはっはぁ!日陰者の俺たちに卑怯は褒め言葉だぜ王子様!! それになぁ、聖者の顔も三度までって言うだろう。そろそろこっちがやり返す番が来ても良いと思うんでなぁ!!」


 ワッジの高笑いに呼応するように、勇神を囲む足が力を増して狭まる。

 多脚ゴーレムの放つ魔法光が純度を上げてうなり、ぶわんぶわんとした空気の壁が辺りを叩いた。

 圧し潰されまいと踏ん張る勇神の関節が激しく魔法光を吐き出して抵抗するも、今日はどうしたものかいつもの勇神とは異なり苦し気に顔を歪める有様である。


 「うわっ、わわわわ!?パワーが出ない!?」

 

 『これは、超振動か!衝撃転換装甲に過負荷をかけて消耗させる気じゃな! ぐわああああ!』


 勇神の装甲は破壊不能の代名詞である衝撃転換装甲。熱や物理エネルギーを光に変換して消耗発散することでダメージを軽減する魔法の鎧。

 ゴーレムの骨格としてその巨体を維持し、格闘戦を可能にする強度を与えるオーバーテクノロジーの産物。


 しかし多脚ゴーレムの攻撃は発散のクールタイムを許さない断続的な締め付け。

 さらに巨体が地面に潜伏する為に用いた超振動を応用し、絶え間なく破壊のエネルギーを送り続けられては、さしもの勇神もダメージの軽減に精一杯で反撃に回す力が足りない!


 「ぐっ、うああぁぁぁ、勇神様……」


 「いつまで耐えられるか見物だぜ王子様!どうした?呼べるもんなら馬車を呼んでも構わないんだぞぉ、だっはっはっはっは!」


 『小癪な下郎めが……!だがこの攻撃では貴様のゴーレムも無事では済むまい!アレックス、ここは耐えるのじゃ』

 

 「だっはっはっはっは!余計な心配だぜジジイ!! 姐御の話じゃこいつは流体金属を使ってあるらしくてなぁ!てめぇみたいな骨董品と違って金属疲労なんかとは無縁なんだってよ」


 『何ィ!?』


 防戦一方の勇神が驚愕し、苦し気に耐えるだけの顔に鋭い険しさが走る。

 流体金属を用いたゴーレムなど、技術的独走状態にある王国には存在しない。王国発祥のゴーレムを模倣発展させている諸外国にも、そのようなゴーレムが存在する筈がない。

 ならば勇神を圧倒する力を備え、異端の超技術を搭載したこのゴーレムは何処から生まれたか!!


 「何を驚いてやがる。手前ぇより強いゴーレムがいるのがそんなに気に喰わねぇってのか?」


 『き、貴様…!そのゴーレムの持つ意味、危険性がわからんのか!貴様らは、アザレア博士はそこまで堕ちたか!!ううおおおおお!!』


 怒りに震える勇神が渾身の力で拘束を脱しようともがいた。

 衝撃転換装甲に回していた力を腕力に替え、関節から火花と煙を吐き出して無理やりに、幾重にも締め付ける拘束から左腕を抜き出すと多脚ゴーレムの胴体に拳を当てて叫ぶ!

  

 『アレックス!魔法で打ち抜け!』


 「ぐんううぅぅ……はい! ブレイブ・パイク!」


 ギュオオオウ!!


 拳の先に発生した光の杭が多脚ゴーレムの装甲を融解して伸長し、その脇腹を貫通して地面まで伸びた!

 勇神に発生した余剰熱が脚の拘束を緩め、銀の異形が体をそらして苦痛にもがく。


 「うぐっ……破れかぶれかよ!見苦しいぜぇ!!ぎゃあああああああ!」


 『「おおおおおお!せいやあああああ!」』 


 引き抜いた光の杭を振り回して多脚ゴーレムの背中の檻から脱した勇神は、転げ落ちるようにして大地に降り立つと片膝をついて胸を押さえた。


 『ぐはぁっ……無事か、アレックス?』


 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、はい……でも全身が痛いです」


 衝撃転換装甲によるダメージ軽減を一時停止させ、素体の強度頼りに脱出に成功したものの、白磁の装甲は痛々しく傷つき全身から黒煙を上げている。

 

 『合身が不完全で幸いした。もし完全に同化しておれば、お主の心が耐えられぬ痛みであったわ』

 

 「はぁ、はぁ、はぁ、あ、あいつは……どうなって……」


 光の杭を杖代わりに立ち上がる勇神の前に、ぐしゃりと潰れたように横たわる多脚ゴーレム。

 焼け焦げた背中とねじれた脚を力なく広げて、街道跡に銀の全身を晒す異形はまだ黄色の魔法光を発している。


 『まだ動くか。アレックス、訳は後で話すゆえ馬車を呼んでくれい。儂はこの存在をこの世から一片残らず消し去らねばならぬ』


 「はい……! っぐ、はあ、召喚!ブレイブキャリッジ!!」 


 光の杭を魔法陣に変え、天空より光のレールと装甲馬車を呼び出す勇神。

 満身創痍の勇神が最後の力で跳躍し、変形を開始した四頭の機械馬と馬車の中へと飛び込んでゆく。


 『「ロイヤル・フォーメーション!!」』


 両翼に分かれた機械馬が胴体から巨大な腕を下ろし、横に「く」の字に折れ曲がって大きくせり出した肩鎧とブースターへと変形して胴体と接続する。

 下腿を形成する機械馬は頚を縮めて鼻を爪先として逆立ち、四本の脚はそれぞれ膝下の榴弾砲と踵のスパイクに、胴からは折り畳みナイフのように大腿部を出現させてこちらも胴体と接続。

 車体は車輪を分離して縦に立ち上がり、四肢を得て人型を形成すると観音開きに胸部の装甲を展開して勇神を迎え入れ、射出された兜がその頭部を覆う。

 両腕に車輪が重なった盾を装備し、後頭部まで伸びた黄金の二本角が輝くと、勇神の顔を鬼神のマスクが覆って閉じた。

 全身の装甲が締まり関節からサーチライトのように魔法光を吹き出して、両手の拳を打ち合わせ、超巨大戦闘ゴーレムが降臨する!!


 『「大  勇  神  参  上ぉぉぉおおおおおおお!!」』


 ブッピガアァァァン!!


 王家直轄領を飛び出して、かつての伝説をなぞるように、北の大地に降り立つ巨神。

 漆黒の鎧を纏った動く城塞、魔獣と悪しきゴーレムを滅する為に生まれた超戦闘形態大勇神が今、内より黒煙と火花を噴きながら吠える。


 『アレックス、儂が撃つ!一斉射撃じゃ!!』

 「はい!」


 全身の火砲を展開し、勇神は残された最後の気力で銀のゴーレムに照準を付ける。


 『「発射ァ!!」』

 

 両肩のブレイブ・キャノンが、ブースター側面のミサイルが、腕のレーザーと下腿の榴弾砲が同時に火を噴き、多脚ゴーレムの一切合切を消滅させるべく荒れ狂った!


 キュドドドドドドドドドドドドドドドドドオオオオオオオオオ!!


 火球が地を撫ぜ爆風と火柱が次々と、多脚ゴーレムの居た地点を焼き払う。

 自身が上げる黒煙と弾着で巻き上がる土煙に視界を遮られ、過剰ともいえる火力を吐き出し切った大勇神は、熱気にゆがむ空気に思わず致命的な言葉を口にした。


 『「やったか……?」』

 

今日はここまで

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