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水龍撃退?

今日はじまり、はじまり


 『ブレイブ・キャノン!!』


 ギョン!! ゴヴァアアア!!


 大勇神の両肩にある馬頭から放たれた火球は水中である事を物ともせず、鞭のごとくしなり襲い来る水龍の胴体と尾にまっすぐ命中し、ドラゴンの体を3つに切断して大爆発を起こした。


 ゴオオオオオオオオオオオ!!


 グルァァァアアアァァァ!!

 

 「まだ動いてる!!」

 『再生する暇はやらんぞ!!』


 暴れもがく水龍の上半身を捕まえたまま千切れた胴体と尻尾に追撃のミサイルと榴弾砲を撃ち込んで消滅させ、手の中にある龍の顎に膝蹴りを喰らわせる大勇神。

 爆発と衝撃転換装甲の光が同時に輝き、うねる水の動きが両者をねじ切る勢いで荒れ狂う!!


 『「うおおおおおおりゃああ!!」』


 続けて二度三度と水龍の頭部を殴りつけ、頸を脇に抱えると全力で締め上げ角をへし折り、湖底に首投げの要領で叩きつけた!!


 『「どうだ!!」』


 ぐったりと底に沈む水龍の輪郭を知覚しながら、とどめのキャノンの発射体制に入る巨神。

 龍の血と泥でもやける視界も今は勇神の妨げにはならず、いよいよこの戦いにも終止符が打たれる時が来たのだ!!


 グウウウウウ


 ──── マダダ! マダ私ハ……! ────


 わずかに動く水かきを動かして、大勇神のつま先に爪を立てる水龍。

 その執念は痛々しくもあり、またどこまでもおぞましく哀れな異形の仕草。


 「どうしてそこまで……」


 『村を守るという一念か、これは破壊するだけでは収まらぬやもしれぬ……む?』 


 キャノンの砲口に発生しかけた火球を引っ込め、大勇神はその鬼神の如き顔を遠く光る水面へと意識を向ける。

 湖底からはわずかに揺らめき差し込む陽光が見て取れるのみであったが、巨神はその外にある魂の大きなうねりを知覚して一つ大きく頷いた。


 ──── 何故ダ?!再生ガ始マラナイ? ────


 『その答えを見せてやろう。生贄となった境遇は同情に値するが、人は闇を越えて先へ進むものである。それに、いつまでもこのような水底に居ってはお主の為にならぬ』


 崩れかけた体を必死に動かそうとする水龍に歩み寄り、大勇神は傷ついたその上半身をゆっくりと抱え上げた。


 「勇神様?」


 ──── 何ヲ……? ────


 背中と足底から長く火を噴いて、暗闇から光差す天井のような水面に向かう大勇神。

 胸元にはドラゴンの残骸を抱え、まっすぐに上を向いて進む様は死者を導く天使のごとく、湖面を爆発させて人造湖の遥か上空まで舞い上がった!!


 ドオオオオオオオオオオオ!!!


 「「「「おお!勇神様だ!!」」」」

 「ホントに出て来た……」

 「ドラゴンはどうなったの?」

 「手に掴んでなかったか」

 「おー」

 「あらあら、お人形落とすわよ」

 「もうあんな高さまで……」

 

 「あぁ……王子、勇神様、お帰りなさいませ。よくご無事で……!」


 モニカに率いられた群衆が見守る中を上昇し、雲を突き抜けていった大勇神は空中で停止し、ドラゴンの顔を優しく下へ向けた。

 

 「わぁ……」


 ──── オ オ ォ ────


 遠く足元にきらめく人造湖を望み、その周辺に発達した観光都市とパノラマに広がる山脈の先に青々と作られた穀倉地帯。

 大河の流れゆく先に沿って都市と都市の間には街道が葉脈のように整備され、小さく行き交う馬車と人々を見る事が出来る。

 

 『見えるか亡霊よ、この堰は生け贄に頼らずとも、毎年あのように畑を肥やし下流の護りとなっておる。お主が望んだ通りではなかろうが、お主が守りたかったものは形を変えて今も生きておるよ』


 ──── なんて綺麗……、でも村は、村のみんなは…… ────


 『安心いたせ、お主が守った村のものは近くの集落の人間と共に湖の側に街を作ったそうじゃ。足下におる者達がそうじゃろう。かつての習慣を迷信と断じて切り捨てる訳では無いが、今の人間は神秘を読み解き、龍すら乗り越える力を得つつある。ああ、我が子らよ、いずれは儂も過去の遺物として忘れられる時が来るやもしれぬな……』


 ぼろぼろになって崩れゆくドラゴンを愛おしげに抱きしめて、大勇神は最大高度からゆっくりと下降を始める。

 龍の頭から景色を眺めていた少女の亡霊は朝の光に透けて、黒いオーラは視認出来なくなるほど薄くなった。

 青い髪が風になびき、白い顔に涙が溢れ、その姿はうっすらと輝いて砂が崩れるように光の粒となって空に舞う。


 ──── ああ……良かった…… ────


 『さあ、その肉体はもうここに置いてゆけ。お主ならばその先へ、迷う事無く逝けるであろう』


 「勇神様……亡霊さん……うえぇぇ」


 『アレックス、おぬしが泣いてどうするか。この者が逝けるよう、最後の手助けをしてやらなくては』


 「でも、でも!」 


 ──── ありがとう……貴方はやっぱり優しいのね 最後に会えて嬉しかったわ…… ──── 


 『良いか、アレックス』


 「ううっ……ぐすっ はい!」


 落下しながら両腕のシールドタービンが回転し、わずかに残った水龍を胸元に抱きしめた大勇神が雷撃を起動する。


 『「コズミック……ボルト!!」』


 



 ぱちり 





 稲妻が爆ぜたあと、守護神と同化した少年の掌に残ったのは炭となって燃え尽きた水龍の、風にさらわれてゆく姿だった。


今日はここまで

お読みいただきありがとうございました

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