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過保護

今日もはじまり、はじまり


 王都ダグムンシティの警備を預かる騎士団の副長、オットー・ロウが通報を受けたのは遅めの昼食に取りかからんとするその時であった。

 新型ゴーレムの受領で団長のレイモンドが不在の今日、詰め所で代理の書類仕事に最後のサインを書き上げて一息ついたのも束の間。

 ガラスを破って執務室に飛び込んで来た栗色の髪の美少女から、アレックス第三王子の印章の入ったメモ書きを渡された彼は、囓りかけのサンドイッチを丁寧に包み直すと、部下を招集するため駆けだした。



 20分後


『貴様らかぁ!!ウチのアレックスを泣かしたのは!! あ”ぁ”ん!?』

 

「「ごめんなさああぁぁぁい!!」」


 勇神にメンチを切られた強盗達は、顔中からいろんな汁を流して絶叫していた。

 彼我の体格で言えば化け蟹の方が二回りも大きい、しかしながら、急所とも言えるコクピットを握り潰されそうな最中には何の強みにもならない。

港で働く運搬用ゴーレムの中でも一際巨大なこの蟹を、ただの一蹴りで行動不能にしてしまった勇神が相手なのだ!!


「おおお王子さまとはつゆ知らず!!これはあの、そう何か不幸な行き違いがあったんですうぅぅぅ!!お助けぇぇ!!」


「アニキの言うとおりでヤンス!!分かってれば何もこんな事しなかった……いや、自分はホントはこんな事したくなかったんでヤンス!!全てアニキが!!」


「あっテメエこの!!自分だけ助かるつもりか汚えぞ!!」


 コンソールから手を離し、互いの覆面を引っ張り合って喧嘩を始める強盗コンビ。そこには先ほどまでの仁義の絆は微塵も無かった。


『やかましいわ!!王子でなかったらアレックスが怪我してもいいみたいな言い方が気にくわん!!それにあの子なら先ず堂々と名前を明かす筈!!この嘘つき共めが!!』


 さらに怒りをヒートアップさせた勇神が大喝する。


『その魔法光は我が身より産まれしゴーレムの子の証!!人命こそ奪えぬが、その巨大な力を欲しいままに振るい、王都を騒がせた汝等の罪軽からず!!覚悟せい!!』


 ドッガァァァァ


 地面に倒れ、頭部を鷲づかみにされた化け蟹ゴーレムは、再度勇神に蹴り飛ばされて地面を転がった。今度は大通りに沿って、樽のような形状が徒となりゴロゴロと、勢いよく回転する。


「ぎゃああぁぁぁぁ!!!!」

「アニキィィィィィ!!」


 蹴り飛ばされて勇神の手から離れたコクピットの中で、二人の男が絡まってもんどり打つ。


 バッチイイィィィィィ!!


 町の大通りの交差点、広い車道の中心に芝生が敷かれ、石で造られた彫像が建てられた公園で、転がり着いた化け蟹を受け止めたのは虹色の壁。

 騎士団のゴーレムが構える衝撃転換装甲で造られた大盾だった。

 化け蟹と衝突すると大きく瞬き、閃光を発して揺れるそれは、勇神を解析して造られた技術の一つ、熱や衝撃を光に変換して消耗発散させる魔法の装甲。

 ゴーレムの構成材として用いられ、巨体を支え格闘戦を可能にする堅牢なオーバーテクノロジーの産物。

 見れば交差点の四方に盾を構えた騎士型のゴーレムが配置され、蟹を追い込んで包囲している。


「時間通りでございましたなアレックス王子!!配置が間に合って何よりです!!」


 のしのしと殺気だった勇神が迫る包囲網の外で、配置した騎士団を指揮をするオットーの手には、モニカから受け取ったメモがあった。


「大型建機を広場まで誘導するので、騎士団で包囲網を準備して。ですな!!このオットーしかとやり遂げましたぞ!!」


 かっかと白い歯を見せながら勇神と、その足下を走り来るアレックスを迎える。


「ありがとうございましたオットーさん それに騎士団の皆さんも 突然のお願いだったのに……」


 ぱたぱたと走りこんできた笑顔の王子に膝を着いて一礼すると、オットーは立ち上がって大きく顔を上げると勇神を仰ぎ見る。


「いやぁ構いませんぞ王子、王都の治安維持も立派な我らの務め! 勇神様もご壮健そうで何よりです!!!」


『ウィルとベラの子オットーか、大きゅうなったなぁ 親父にうり二つじゃ 小さい頃は……ああ、いや、今回は大義であった!!』


 少しかがみ込むようにして、一瞬優しい表情をした勇神は鋭い眼光を取り戻す。

 出る筈のない鼻息荒く、唇をへの字にして、広場の中心で何とか立ち上がろうともがく化け蟹をにらみつけた。


「さて、後はいかがしましょうか王子? 騎士団でも制圧は可能ですが、どうも勇神様はまだ暴れ足りぬご様子ですな というか、なぜそんなにお怒りなのです?」


「それは ボクが無茶をして危ない目に遭ったからで、野次馬からアイツを遠ざけるために仕方なかったんですけど…… ごめんなさい勇神様……」


 しゅんと俯いて顔を曇らせるアレックス。


『死なぬと分かっていても、ゴーレムの前にアレックスが生身で飛び出した時など儂はまた止まるかと思ったぞ……あ、違う違う そうだ!!悪いのはあの強盗共よ!!お主を責めておるのではないから泣くでない!!』


 慌てた様子で震える巨神に、うんうんと頷いたのはオットーであった。


「心中お察しいたしますぞ勇神様!!私にも二人の愛娘がおります!!最近ではパパ臭いとか何とか言って避けてきますが、幼い頃はまるで天使の如き可愛らしさで!!もしあの子らが危険な目に遭ったとしたら、私はっ!!」


『わかってくれるかオットーよ!!ならばこの場は儂らに譲れ!!あの下郎共に目にもの見せてくれん!!』

 

「ははぁっ!!どうか御存分に!!我ら騎士団しかと見分つかまつりましょう!!」


『よし、アレックスよ。合身じゃ!!』


 勇神はその場でぶるりと武者震いををすると、アレックスを手のひらに乗せて立ち上がった。

 胸の紋章が輝き、手の平を蹴ったアレックスが飛び込むと、光が水面の様に揺らめいて勇神に吸い込まれる。神人一体の秘術 合身だ。


 硬質の陶器が如き装甲に赤い光のラインが走る。

 装飾の縁をなぞるように、血の筋が全身に行き渡るように、無機質の体に命が重なる。

 白一色だった甲冑は赤に縁取られて、燃え立つような闘志を体現する。

 重厚だった先ほどとはうって変わった滑らかな動きで広場へ進み出ると、正面に両の拳を構え、いくさ場に誕生の雄叫びをあげた。


『「王都を騒がす悪党め!!この勇神と!アレックス第三王子が相手だ!!」』


今日はここまで。次回「必殺技」

お読みいただきありがとうございました

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