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神話の戦い

今日もはじまり、はじまり


 街道と大河の間の河畔で光の柱を打ち立てたドラゴンは、軽く息を振り払うと大勇神に向かって鼻先を近づけた。

 ふんふんと装甲を嗅ぎまわり、身構えたままの巨神の関節から漏れる魔法光を鑑定しているようなしぐさを見せる。

 巨大な頭に生えた角がぶつかり、衝撃転換装甲がちかちかと光を上げる度にアレックス身のすくむような思いに駆られた。

 伝説に残るドラゴンの破壊の力、その一端を目の当たりにしたいま、大勇神と合身していても首筋に刃物を突きつけられているような恐怖が拭えなかったのだ。

 回転を続ける盾が稲妻を放ち、瞬きをしない機械の目がドラゴンの動きを追う。


 一秒が一日にも感じられる緊張の時間は、ドラゴンの頭が大勇神の胸から離れた所で終わった。 


 ぐるるるうるるう!!


 大きな目を更に見開いて、ドラゴンが頚を上げる。


 「まさかエクスか貴様、暫く見ないうちにまた体を変えたのか」


 牙の生えた大口から長い舌を覗かせて、碧のドラゴンから発せられたのはまさかの人語であった。

 武装を展開したまま固まっていた大勇神が、さらに緊張を漲らせる。


 『いや、人違いじゃ』


 「嘘をつけ、妾が貴様の魂の匂いを忘れると思ったかこそ泥めが。100年前に見た時より少々大きくなったようだが、相変わらず抜けた奴よの」


 『ちっ、誤魔化せんか……、これは鎧じゃよ。それより人界に降りて来るとは何事じゃ翠星王よ、約定を忘れるほど耄碌した訳でもあるまいに』


 「貴様は見たものも理解できん程アホウになったようだの。妾は歪みを追って来ただけじゃ。貴様の不愉快な顔を見ると知っていたなら天空から一帯を焼き尽くしておったものを!」


 長い尻尾を河原にバンバンと打ち付け、大勇神を睨むドラゴン。

 逞しい前足でぬかるんだ地面に爪を立て、牙を剥きだして今にも飛びかからんばかりに殺気を放つ。

 おぞましい気に当てられて、アレックスは消え入りそうな気分になりながら、ドラゴンと大勇神の会話を追った。


 『それをやったなら今度こそ儂はお主を滅ぼすぞ……!! しかし、アクアリザードたちは歪みでおかしくなっておったのか』


 「っは! 気付いておらなんだか間抜けめ、人の魂しか感知出来ぬ貴様には荷が勝ちすぎておるという事じゃな。守護者を気取るものが聞いて呆れるわ!!」


 『儂が守るものはこの王国じゃ。何事も自分基準で周りが見えなくなるのは歳を取った証拠じゃぞ龍王!!』 


 「生意気な!!」

 

 大きな口から魔法光のブレスを吐き出して、大勇神を焼き尽くそうとするドラゴン。

 

 『一斉射撃!!』


 対して大勇神は、全身の火器を発動して迎え撃つ!!

 

 両肩の馬頭が変形したブレイブキャノンが火を噴き、両腕からはイクシードレーザーと雷鞭がドラゴンを打つ。

 膝下で起き上がった機械馬の脚から榴弾砲が、ブースターのサイドからは魔法光の尾を引いた追尾弾が弾幕を張ってブレスを相殺した!!

 人智を超えた力の激突に大気が振動し、両者の立つ大地が割れる。



 カッ!!

 ドドドドドドド!! 



 天を焦がす火柱を上げて、地獄の業火もかくやと思わせる、一切の生命を拒絶する焦熱が荒れ狂う!!

 余波で大河を煮え立たせ街道をえぐり取った爆風は、互いに必殺の攻撃を至近で撃ち合ったドラゴンと大勇神も巻き込んで吹き飛ばした!!

 

 ゴアアアアア!!

 

 『ぐおおおわあ!!』

 

 爆発を間において間合いを取ったつもりの大勇神に、炎の中を突っ切って飛んできた翠星王の体当たりが襲う!!

 慣性の法則を無視した短距離超加速は衝撃波で爆炎を散らして、大勇神のボディに炸裂した。

 衝撃転換装甲がひしゃげる寸前までたわみ、血袋が破裂したかのような魔法光が節々から吹き出す!!


 『ぐぬぬ……!』


 何とか膝を着かずに耐えた大勇神は、かぎ爪をもって迫る前足と、牙を光らせて食らいつかんとする頚を捕まえて間一髪、ドラゴンの突進を押さえて止めた。

 機械馬の変形した二基のブースターが光の翼のような噴射光を上げ、のし掛かる翠星王の重圧を支えて吠える。


 『コズミックボルトォ!!』 

 

 巨神が反撃を試みて、両腕のシールドタービンをフル回転させ最大威力の雷撃を叩き込む!!

 しかし大蜥蜴の群れを壊滅せしめた稲妻も、ドラゴンの甲殻を這い回り火花と煙を上げはするものの、巨竜の圧力を跳ね返すには至らない。


 「こそばゆいわ!!」


 背中から回り込んできた碧の尻尾が大勇神の脚を払うように打ちつける。

 

 『うぐおおお!!』

 「ああああ!!」


 バチンバチンと装甲を襲う、鞭のようにしなる尻尾の連撃にかつて無いピンチを迎えた大勇神!!

 一発一発が地を引き裂き、真空を作り出す威力で振るわれる尻尾は、翠の甲殻を纏った死神の鎌にも似て、大勇神の耐久力を削り取りにかかる!!

 

 「ぐるるるる、今度こそ妾に跪かせてくれるわ!!」


 横に裂けた口を邪悪な笑いに歪めて、翠星王が爪をわきわきと動かして迫る。

 僅かでも力が緩めば装甲を噛み砕き、中の勇神を引きずり出して破壊するつもりであるようだ。

 大勇神に合身していたアレックスはもはやこれまでと覚悟を決め、人生に悔いのないよう最後の言葉を発した。


 「今までありがとうモニカ、そして勇神様。 あ、エクスって誰なんでしょうか……」

 

今日はここまで

お読みいただきありがとうございました。

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