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王子の力

今日もはじまり、はじまり


 「見たか、これが私のゴーレムだ!!」


 勝利を確信したアイリスの新型が勇神をジャイアントスイングの要領でぐるぐる回す。

 ギャラリーにいた王家の面々は、手に汗を握ってその成り行きを見つめていた。


 「アレックスちゃん!!お姉ちゃん相手だからって遠慮しなくていいのよ~!!」


 「王子!!振りほどいてこうっ! こうですよ!!」


 「アレックス!!早く脱出しろ!!それでも男か!!」


 オフィーリアと並んでモニカが拳を振り回して応援する。

 小柄なガブリエラは顔の横で風を切る二人の両手をかわしながら、さらに大きな声を出していた。


 「こりゃあ決まったかな、親父どのはどう見る?」


 「私は審判だからね、決着がつくときまで判断はできないよ。 心情的にはアレックスの成長を期待しているが、アイリスも私の娘だからねぇ」


 「朝から君とゆっくり過ごせるなんて、夢のようだよマリオン……」


 「いやん、アルフレッド様……」


 アントニオがジョンと勝負の行方を見守る横で、アルフレッド夫妻が手を繋いで別空間を作っていた。


 「どうして誰も私の応援をしないんだ!! こんのおおおお!!」


 周囲の声が耳に入ったのか、アイリスのゴーレムが魔法光を噴き上げ、勇神を回す速度を上げる。

 コマのように残像を残して、両腕が地面から離れ、勇神の体の角度は遠心力で持ち上がり水平に近くなってしまった!!


 『アレックス、おぬしが動かねばどうにもならぬぞ!! おぬし自身の力を儂に見せてみよ!!』





 (ボクの、力……?)


 自分の力とは何なのか、アレックスは自分に問いかける。

 勇神に合身出来る事、これは進んで選んだ道ではあるが、巨大な力は勇神のものであって自分のものではない。

 騎士団を動かし、王都の治安を守ること、これも先人たちが作り上げたシステムであって、アレックス自身が騎士団を掌握しているわけではない。

 あくまで勇神の活動に協力してもらっているだけで、本来はアレックスの立場はもっと孤独なものだ。

 王家の一員であること、これは持っての他だ。

 力があるのは王国を維持している王家であって、自身には何の権力もない。


 (ボクは、何にも持ってないんだ……)


 猛スピードで流れてゆく景色の中で、アレックスは自分の内に確たるものがないことに気付いて悲しくなって、ぼんやりと力を抜いてしまった。





 『こら!!アレックス!!諦めるでない!!』


 「はっはっはっは!! お姉ちゃんに勝てないのは世の弟の真理だ!!さあ、飛んでいけぇぇぇえ!!」


 大きく勢いのついた勇神をほおり投げるアイリスのゴーレム!!

 手を離された勇神は、ブーメランのように回転して宙を舞う!!

 遠心力でついた勢いは軽々と、練兵場のはずれの遥か上空まで勇神を飛ばしてしまった。


 「王子ー!!」

 

 モニカの悲鳴にも似た叫び声が上がる。

 このまま地表に激突すれば、いかな勇神とて無事には済むまい。

 アレックスが操縦する今の状態では、空中で体制を立て直すことなど至難の業。


 『アレックス!!儂に変われ!!』


 見かねた勇神が体の操縦を切り替えようとしたとき、アレックスの声が響いた。

 

 「うおおおおおおお!!」


 モニカの悲鳴を聞いて我を取り戻したアレックスが、雄たけびを上げて別人のように空中で身をよじり、勇神の手足をばたつかせてバランスを取ろうと足掻く。


 「ブレイブ・スキューアァ!!」


 地表に向かって両手を伸ばした勇神から、二本の光が出現する。

 細く、長く、まっすぐに地面に刺さったそれは、アレックスが発動した必殺の魔法であった。

 ブレイブ・パイクでは間に合わず、ブレイブ・ネイルでは長さが足りないと一瞬の判断した彼は、昨日の訓練の最後に失敗した出来損ないの杭に着想を得て、支柱のように形を伸ばして自らの魔法を固定したのだった。


 それは空間に固定された魔法の串! あらゆるものを打ち払い、刺しとどめる光の細剣!!

 

 ガン! と地面にぶつかって止まる二本の串の間にぶら下がり、鉄棒から飛び降りるように体を振ると、空中から練兵場の中に着地する勇神。

 シュルシュルと手の中で長さを縮めて二本の短剣となった串を構えると、新型ゴーレムに向き直って切っ先を突き付けた。

 先ほどまでとは打って変わって堂々と、勇神の機械の目を通して鋭い視線を向ける。

 アイリスのゴーレムに相対して硬質な勇神の顔が、今は確かにアレックスの表情を浮かべて口を開いた。


 「アイリス姉様!!こんな茶番はここまでです!!」


今日はここまで

お読みいただきありがとうございました。

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