勇神登場
今日もはじまり、はじまり
「勇神!!召喚!!」
瞬間、街中から爆発的な閃光が迸った。 逃げ惑っていた者達も足を止め、振り返って仰ぎ見る。 商家の間に挟まって動きを止めるゴーレムの、ちょうど正面の位置に立ち上がる光の柱。化け蟹の高さよりまだ高く、まばゆくそびえる魔法のかがやき。
その正体は幾重にも重なった魔法陣!! 赤が、青が、黄色の光が折り重なり、緩やかにうごめく門となって、王子と化け蟹の間に盾の如く割り込んだのだ。
「だぁああぁぁ!?」
「何でヤンスかこりゃあぁぁぁ!?」
突然の閃光に視界を奪われ、獲物を見失った二人組を次に襲ったのは、天地がひっくり返る程の衝撃であった。
ドオォォォォン!!!
背後に突き飛ばされ、魔法光を血のように吹き上げて元いた通りに叩きつけられるゴーレム。周囲の建物を揺らし石畳を巻き上げて、路面にめり込まんばかりの尻餅をつく。蟹の尻が何処にあるのかはおいといて、六本足をばらばらの方向へ投げ出し、へたり込む形でダウンしてしまった。
「あいたたた……」
「アニキィ……大丈夫でやんすかぁ……」
一瞬か、それ以上か、気を失っていた二人が目を覚まして見たものは、門から伸びる足だった。 王子を捉えようとした瞬間に割り込んだ光の盾に押しとどめられ、そこから出現した足に勢いよく蹴り飛ばされたのだ。
つるりとした陶器のような質感の、甲冑を着た騎士のような、それでいて足首に向かうほど緩やかに広がり行く曲線。地面に着いた足は残りの体を引っ張り出すように力を込めて膝を曲げると、門をくぐり立ち上がるようにその全身を現した。
頭頂までおよそ2階建ての高さほど 人の5倍の巨人がいるならばこのようなものか
かつて王国の危機を幾度となく退けた荒ぶる英雄の像、建国王の魂を宿したと言われる至宝にして歴史書。
全てのゴーレム開発の母体となったオリジン。意思を持った機械の神と呼ばれるただ一機の伝説!!
がっしりとした手足に逆三角形のボディ 胸には交差する剣を背後に獅子と鷲をあしらった王家の紋章
滑らかな曲線で構成された白磁の装甲の間からは青白い魔法光を放ち、力強く優美にも感じられる甲冑のようないでたち
鶏冠のついた兜のような頭部は揺らめく炎を燃やし、冷たく敵を射すくめる瞳には確かな怒りを込めて
今、30年の空白を一息に埋める裂帛の雄叫びをあげる
『勇神っ!!ここに見参!!』
硬質の肌が生き物のように表情を変え、機械の顔が怒りに歪む。スケールアップした人間そのものの形から発せられたエネルギーの波動は、周囲を吹き飛ばす暴風となって召喚魔法陣を粉々に打ち砕き、辺りに光の花吹雪を散らす。
「でえぇぇぇ!?でヤンス!!」
「はあぁぁぁっ!?やべぇ!!アレはやべぇぞおおぉ!!」
視界が奪われパニックになる覆面男達。だが兄貴分の両手は素早かった。頭部キャノピーのガラス風防を閉めると、コンソールを忙しく操作して破損箇所のチェックと再起動を試みる。
ズシン ズシン ズシン
「ア、アニキ!いそ、いそ、急がないとでヤンス!!」
「分かってんだよそんなこたぁ!!お前ぇも見たか!?かか、顔があったぞ!!」
ズシン ズシン ズシン
「喋ってたでヤンス!!ももももしかして、ほ、本物の……」
「馬鹿抜かせぃ!!あんなもん嘘っぱちだ!!だ……」
ズシン ズシン ズシン
「ははっ早く逃げるでヤンス!!」
「今やってるだろ!!あああっと よし!これで!!」
ズシン ズシン ズゥン……
「「ひいぃぃぃぃっ!!」」
キャノピーに大きな影が差す。
巨大な瞳が、鼻が、口が自分たちを探して覗き込んでいると、目で見えていても頭がそれを認めない。
それは先ほど少年に相対した時と全く逆の、自身が弱い側に回ってしまった恐怖の感覚。
ギンギンと機械の眼を輝かせ、まるで呼吸するように肩を動かしながら、ゆっくりとキャノピーに手を伸ばす巨神。
鷲づかみにされたガラスの風防にみしみしと罅がはいり、装甲を突き破った指先が目の前まで迫る。
『貴様らかぁ!!ウチのアレックスを泣かしたのは!! あ”ぁ”ん!?』
「「ごめんなさああぁぁぁい!!」」
この世の終わりかと思うような大音声に、強盗達はとりあえず謝った。
今日はここまで 次回「過保護」お楽しみに
お読みいただきありがとうございました




