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異世界はチーターだらけで俺は脇役。  作者: 時の勇者
第一章:不幸でも異世界転生がしたい!
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第6話:紹介は心の準備をしておいてから

  目の前の少女、リリィがラノベ的にはありきたりな、しかし現実的にはどうかと思う様なことを言ってきた。


「あ〜、つまりなんだ?俺が入ると、もれなく、もう1人入る権利を与えてやろう、って事だな?」


「ええ、そういう事よ」


「……俺って、試験に受からないって思われているのではないですかね……」


「……ええ、そうね」


  さいですか。

  言葉に表すと滅茶苦茶心が折れるような事だな。要約すると、少女を受からせる訳にはいかないから、無理難題を押し付けて適当に諦めてくれるようにしたいって魂胆だな。俺って無理難題なのかしらん?


  そうやって俺が少し凹んでいると、リリィが少し怒ったような顔をしてこちらを見やる。


「だからこそ、私がいるのよ!いい?私がいれば、何事も問題なく、この試験に合格出来るわ!」


「リリィ、君は今、自分が何言ってるのか分かっているのか?わたし戦闘出来ないけど、私がいれば受かる?理論が成立していないぞ」


「り、りろん………?えっと、何を言ってるのか分からないわ」


  はぁ、と少しため息をつく。子供の立場ってあんまり分からないんだよな。何が理解出来て、何が理解出来ないのかが分からない。……まあ、俺もそうだけどね?

  しかし、リリィは素直に意味を理解しようして、分からないことがあれば即座に聞く。とてもいい娘だ。冒険者としてはいいのかどうか分からないけれど。


「えっとだな。試験というのは、戦闘して戦い方を見極めて合格するんだよな?」


  そう言うと、ああなるほど、と話しを理解したのか、手のひらに拳をぽんっとおく。頭の上に電球がぴかっと光った気がした。その仕草、全然見かけないから都市伝説だと思ってたよ。


「そういう意味ね。でも、実は試験は戦闘者(アタッカー)の中でも派生があるの」


「え、そうなの?」


  というか、戦闘者(アタッカー)って何?冒険者って、冒険者じゃないのん?


「ええ、戦闘以外にも、付与者(エンチャンター)治癒者(ヒーラー)魔術使い(マジシャン)と、他にも沢山あるのよ!」


  素直に驚く。大体の冒険者や警備隊って戦闘が多いから、てっきり試験は戦闘のみだと思ってた。しかし、話を聞くと、職業によっては採取やキャンプによるサバイバル系の試験もあるらしいのだ。というか、魔法関連しか言ってないあたり、本気で合格狙いに行ってたんだろうな。自分のなりたい職業をもう調べてるなんて、なんて出来た娘なんだ。

  この子の話を聞いて、他の職業もいいと感じた。というか、テールは一言も言ってなかった気がする。本当に何故なんだ?冒険者になって欲しくなかったのだろうか。過保護にも程があると思うが。


「そうか、そんなにも沢山の種類があるんだったら、ほかの職種に手を出した方が早い可能性もあるってことだな」


「そうよ。という訳で、あなたには早く受かってもらわないといけないから、1番向いてそうな職業を探してもらうわよ!」


「おう、任せとけ」


  という理由で、街の観光を途中でやめて、ギルドのところに行くことにした。



  ……この街にはベンチというものはないのだろうか。足が痛い。


 ――――――――――――――――――――――――


「えぇーっと、まだ貴方様は試験を受けることが出来ない決まりなんですけど……。どうされましたか?」


 とりあえず、この前会ったギルドの……。えっと、誰だっけ?

 まあ誰でもいいか。聞けるときにでも聞こう。リリィ曰く、ギルドの人に聞けば職業検定的なものを診断できると聞いたのだ。


「あの、すみません。ここで自分に合った職業を調べることができると聞いたのですが」


  そう言うと、ギルドの受付嬢はなるほどと言った顔で頷き、こちらです、と案内された。

  きっと、戦闘者(アタッカー)に向いてないと思われたのだろう。別の部門を狙いに来たのだと悟ったに違いない。

  どんな風にして検定とやらを行うのかが気になるので、診断の仕方を少し見学させてもらおうとする。しかし、


「あの、申し訳ございませんが、この魔法陣は秘密事項でして」


  と断られてしまった。………魔法陣、だとっ!そんな言葉、気軽に使うんじゃねえよ!気になっちゃうでしょうが!(←元中二病患者)

  まあ、秘密にするのは当然だろう。第一、自分で調べられるのなら、わざわざここまで来て聞いてくる人達はいないだろう。

  聞いたところで、そこに行く人は半分もいないのではないだろうか。所謂、入試テストを受ける前に先生から、君の偏差値的にここが良いね、と言われるようなものだ。

  その学校に行って楽しいかと問われれば、まあ8割がたは楽しくないと答えるのは、少し考えれば分かることだ。……あれで後悔した人とか意外と多いから、気を付けよう。

  そして、そんな答えを知っているからこそ、結果を聞いて慎重に判断しなければならないだろう。


「それでは、魔法陣の中心に立ってください」


  と受付嬢は言った。魔法陣は見せてもらえるのかよ。さっきは見せてくれなかったのに。

  そんな不満を持ちながら、幾何学模様のした魔法陣の中心に立つ。半径1mもある、ちょっと大型の魔法陣だ。……大型かどうかは知らないけど。起動しているのだろうか、魔法陣がゆっくりと回っている。

  リリィも邪魔をしないようにどこかへ行こうとしたが、結局何処に行こうか分からなかったのだろう。受付嬢の隣へと移動する。

  受付嬢が何かを唱えると、魔法陣は少しだけ白く光を放った。

  それを見て受付嬢は何かを聞いているかのように耳を傾けている。

  聴き終わったのだろうか。何故かこめかみを抑えながらこちらに向き直る。

  今まで話に一切関わってこなかったリリィはというと、俺の傍までとてとてと小走りしてくる。おい、距離的に5mも無いだろうが。屋内では走るのはいけないと思うぞ。

  受付嬢が口を開いた。


「解析の結果、……………でした。」


  ん?何だって?全く聞こえなかった。鈍感系難聴主人公にはなりたくないし、実際耳はいい方の俺だが、何故だろう。聞き取れなかったな。


「あの、聞こえなかったのでもう一度お願いします」


  と、俺は催促した。

  何故か受付嬢は言いにくそうに言葉にしようか迷っている。……迷ってる姿が可愛らしかったのはきっと美人さんだからだろう。


「えっとですね。人生には知らぬが仏という言葉がございまして何事も知るべきという訳では無いのですねそもそもここで向き不向きを調べたからと言っても別に向いていると言うだけで関係がないので大丈夫ですよ?」


  などと急に早口で受付嬢は言ってきた。句読点が入ってなかったから、聞き取りにくかったな。何故か同情する目をしている訳だし、リリィに至っては頭にはてなマークがあるのだろうか、首を傾げている。リスニング能力って大事だと思います。


「いや、だから解析の結果をだな」


支援者(サポーター)です。」


  ……ん?何だって?(2度目)

  思わず首を傾げる。言葉でこそそう聞こえるが、字的に本当はいい職種なのだろう。

  隣のリリィなんかは口をポカーンと開けているが、驚きの余り開けているに違いない。

 ―――脳がそんな甘い考えを起こすなんてのは、今までの経験上やらかした時か、運が悪かった時くらいだから、不思議と緊張はした。


「それってどういう職種なんだ?」


  そう聞いてみる。相手は口篭っていたので、隣のリリィに聞いてみる事にした。


「そうね。まず、戦闘はしないのと、冒険者が倒した魔物の毛皮とかその他のドロップアイテムをかき集めたりする仕事よ」


  ―――ただの雑用じゃないか。そう思った。

  他にも、特定の草の採取(殆ど仕事は別の職業の方に行く)や、休憩所の設備(テントを立てたりする等といったこと)をしたりするのだそう。

  本当に、ただの雑用じゃないか。しかもそれ、いらない子扱い受けそうな気がする。


「大丈夫ですよ、ちょっと頑張ればこのような職種につかないですから」


  と受付嬢は言った。つまり、異世界からすると俺はいらない子らしいのだ。

  因みにリリィに聞くと、支援者(サポーター)は、大変な仕事はしたくないけど緩やかにやりたい人向けの職業で、普通なら検査では出ないと言う。

  つまり、俺はどの職業についてもダメダメな最弱職にしか付けないひ弱雑魚人間だったというわけだ。

  通りで受付嬢が言いにくそうにしてたわけだ。冒険者に、あなたは戦闘能力皆無、と言ってるようなものだしな。


「あ、そうなんですね!ありがとうございます」


  しかし俺は絶望したりなんかしない。その結果は当然だと思えたからだ。

  異世界に来ていきなり俺TUEEEEだなんて、そんなのは理想であって、妄想でもあって、現実では起こりえないことなのだ。

  そもそも、生き残る為のサバイバル訓練等は1度たりともしたことないし、まして戦闘なんてのは学校の授業の一環として体育でしたり、塾の習い事くらいのものでしかしないものだろう。しかも、塾に行っていない俺は、最低限の能力しか磨いてこなかったと言える。

  それに、教育と言っても戦闘訓練を学んでいた訳ではなく、かと言って、周りが訓練をしていたかと言っても、平和そのものの世界で生きてきたわけだからこそ、そのような訓練をする環境でもなかったわけである。

  そんな奴がいきなり努力もせずに俺TUEEEE等といった事が起こり得るわけがない。この結果は当然と言えるはずだ。

  仮にもし、この場で何かしらの結果により俺TUEEEEみたいな職業を診断されたとしたら、俺はこの世界のレベルの低さを疑わざるを得なくなってしまうだろう。

  まあ、戦術くらいは暇な時に某有名な辞書サイトで調べまくったりしてたから、知識だけはあるにはあるんだけどな。(←元中二病患者)

  隣に立つリリィはとても驚いたようだった。結果を聞いてがっかりしたのではと心配してくれていたのだろうか。まだ会って間もないのに、大した娘だよ。

  その結果を聞いて、俺はギルドをあとにした。その結果をテールに一応報告しようと考えたのだ。

  ついでに言えば、何故職種についてもっと教えなかったのだとも言及する為でもある。


 ――――――――――――――――――――――――


「ち、違うんだよ!これには深い、深ぁ~い訳がだね?」


 というのが第一声だった。テールさん、そこまでビビらなくてもいいのではないだろうか?

 まぁ、ドアを開けた瞬間に俺が少しばかり怒っていたら、何かあったに違いないとは思ってくれるたのだろう。

  今いる場所は、リビングだ。椅子があって良かった。脚がちょっと疲れていたので楽である。

  俺とテールは対面して座っている状況だ。

  リリィはガブリエルと別の場所に行ってもらっている。というか、ガブリエルの場合は、「あ、郵便局の方ですかぁ」などと言っているあたり、防犯要員としては最低だと思った。


「もし君がもう一度死んでしまったら、いろいろと困るんだよ!生き返らせるには色々と面倒くさい契約書を書かされまくって、その中に"生き返らせた場合、10年は確実に生き長らえさせる"という契約があってだね!?」


  どうやら少々面倒くさい事になっていたようだ。まあ、生き返らせて、更には異世界に転生したからだろうな。………ここだけ現実っぽくないんだよなぁ。

  しかし、夢溢れる設定かもと思っていた訳だが、生き返らせるには色々と契約書を書かなければならなかったらしい。いやまあ、いつ書いたんだよと言えば、神なんだから時間くらい超越しそうだし、気にしても仕方が無いのだろう。


  その後何分か、いや、何十分か話されて心が折れてしまい、もういいから次からはちゃんと説明してほしいとお願いをすると、分かったと言ってくれた。

  何だか最近、テールが半人前の神様だった理由がよく分かった気がする。報告・連絡・相談って大事だと思います。


「まあ、そんな事はどうでもいいんだよ。」


  おっと、早速どうでもいい発言が来ましたか。


「ところでその子は、誰なんだい?」


  という返事が返ってきた。誰とはリリィさんの事だろうか。いつの間にか部屋に入って来て、テールを見ていたようだ。今は俺の右隣の席に座ろうとしている。それと同時にテールの左隣にガブリエルがちょこんと座った。テールは当然ながら、ガブリエルとも自己紹介していないようだ。

  という訳で、早速自己紹介をしてもらうことにしよう。……さっき出会ったばかりなので、あまり知らないからこちらも聞くとしようか。


「初めまして、リリィ=ハンデルスフェンです!えっと、好きなものは魔法で、特技は魔法です!趣味は、魔法?う〜ん、魔法だけです!」


  つまり魔法しか興味無いのか。どんだけ魔法好きなんだよ。さっき、結婚相手は冒険者と言っていたあたり、夢溢れる物好きだと解釈しておこうか。


「私のギルドへの登録条件が、その人のギルドの登録することなので、知り合いになりました」


  とも言った。それを聞いたテールは「なんだ、ロリコンじゃなかったのか。良かった」と呟いていた。殴ってもいい?(←罰当たり)

  そう言ってリリィは椅子に座った。それを聞き終えたテールは、今度はこちらからと座ったまま自己紹介をする。


「そうですか。では、私の名前は、テール=アイと言います。気軽にテールとお呼びくださいね。好きなものは、読書。特技は皿洗い。趣味は、料理ですね。あ、そうそう、一応そこにいるマサキくんの保護者でもあるので、何かあったら教えて欲しいな」


  色々とツッコミどころがある気がするし、最後の何かあったらなんて、信用されてなさそうだ。トラブル続きだから仕方ないか。

  続いて、天使のガブリエルさんの番だ。立ち上がって、ニコリと笑顔をしながら、畏まって自己紹介をする。


「え、えと、初めまして、そのぉ、わたしはガブリエルと言います。えーっと、この家のメイドを務めております!えと、それから、趣味は……趣味は、う〜ん?」


  どうやら長くなりそうだ。無理をしなくてもいいので、そんなタジタジしないでほしい。なんとか自己紹介をしていくが、趣味は料理、特技は掃除と、女子力が高いことだけは分かった。


「えっと、しっかり者なので、何かあったら、相談に乗りますので、よろしくお願いします!」


  と、ガブリエルは最後を締めくくった。……しっかり者なのかどうかは簡単に判断出来るだろう。答えはノーだ。

  みんなの自己紹介が終わったところで、ガブリエルとリリィがこちらを見る。どうしたのだろう。顔になにかついているのだろうか?

  テールが何かを察したのか、代わりに答えてくれた。


「もしかして、自己紹介してないんじゃないかな?」


  えっ?と思い、記憶を確かめる。……ギルドで名乗ったきりだった気がした(というか、そうに違いない)。

  それではと、ごほんと1回咳をして喉の調子を整えてから、自己紹介をする。


「あ〜、自己紹介をしていなかったなすまない。俺の名前は八神雅紀だ。好きなものはゲーム……じゃなくて、えーとな」


  あ、やばい。ここじゃ常識(?)の趣味、特技はゲームと言う言い逃れが出来ない。どうしようか。


「好きなことは、普通に生きること!趣味特技なんてありません!」


「「「えぇー……。」」」


  なんだか冷たい目で見られた気がした。……分かってる。そんな答えが許されるわけが無い。知ってる、それは自己紹介とは言わないってことも。

  だがしかし、元の世界ではゲームとかあったからこそそう言っていたのに、そんなものがない世界で何を趣味と呼ぼうか。

  無いものは無いので、仕方なく正直に話すことにした。因みに戦略ゲーと心理戦を主とするゲームなら得意だ。


「強いて言うなら、食べる事とか、寝る事とか、生きてるって感じられるから好きだな」


  という言葉を最後に、自己紹介を締めくくった。マジでお願いします。そんな目で見ないで頂きたい。

  俺の自己紹介がニート発言と誤解される中、話はギルドのことについて戻る。


「どうしても戦闘者(アタッカー)になりたいのかい?」


  と、テールは話しを切り出す。それに対しての答えは、


「出来れば、それが良いのですがね」


  と言っておく。リリィは話が気になるのか、その場にいる。ガブリエルはその場で姿勢を正して会話を聞いていた。


「なら、特訓をすれば、試験を合格出来るかとしれないけど、厳しいんじゃないかな?」


  と、テールは言ってきた。厳しいってことは、頑張れば試験に受かるということなのだろうか。ならば特訓した方がいいと思う。自己防衛の為にもなるしな。


「いえ、特訓をして戦闘者(アタッカー)になりたいです」


  と、正直に答える。何故戦闘者(アタッカー)が良いのか、そんなことを聞かれるかとも思ったが、聞かれなかった。

  代わりに、提案を言ってくる。


「そうか、じゃあ戦闘者(アタッカー)のプロがいるから、その人から学ぶといい」


  戦闘者(アタッカー)にプロがいるのか!その人に学べるなら、特訓は厳しいだろうが、受かる可能性は高いかも知れない。


「ありがとうございます!それで、その人はいつ会えますか?」


  出来れば早く会って、早くギルドに受かりたい。そう思い、返事を催促する。すると、テールは自信満々に左手をガブリエルに差し出した。いや、あれは紹介しているようにも見えるな。


「この子が、プロフェッショナルのガブリエルだよ」


「え、そうなのですか!?」


  ……因みに、今のはガブリエルから漏れ出た言葉と言っておく。

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