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ガラス職人の息子と第三王女様は相変わらず仲が良い【ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります】

 「ナディア、おはよう」

 「ヴァン、おはよう」

 『火炎の魔法師』ディグ・マラナラの弟子であるヴァンは、隙あらばナディアの元へ行こうとする。そして第三王女であるナディア・カインズも時間があればヴァンに会いにこようとする。それは互いのことが大好きでたまらず、常に互いのことしか考えていないからといえるのだが、この二人は驚くことにまだ心を通わせてはいないのである。

 この場にいるのはヴァンとナディアだけではない。この場にはヴァンの師であるディグ・マラナラと、ヴァンの同期とも言えるクアン・ルージーとギルガラン・トルトもこの場にはいる。意図しているわけではなく、たまたま遭遇したのである。

 そしてヴァンと挨拶を交わしたナディアが、「貴方たちも一緒にどうかしら?」などといったために、クアンとギルガランもともにお茶の席につくことになった。ナディアは、ヴァンのことを知りたいと心から思っていて、クアンとギルガランはヴァンの同期ということで仲良くしたいと思っていたのだ。ヴァンとしてみれば、そんなナディアの気持ちはわかっていないので、少しだけ不機嫌そうにしていた。そんなヴァンの様子に、ナディアの内心がなんとなく理解出来るクアンとギルガランは何とも言えない目で見ている。

 「ルージー様とトルト様は———」

 「……ナディア」

 「あら、どうしたの?」

 ナディアが、クアンとギルガランに話しかければ、ヴァンが止める。

 ヴァンに対して、ナディアが不思議そうな目を向ける。

 (……相変わらずなんというか、さっさとくっつけよと思うな、こいつら。今の現状は俺から見てみれば面白いと言えることだけれどもな)

 そして黙ってその様子を見ているディグは愉快そうにその様子を見ている。クアンとギルガランも巻き込まれてしまったことに達観した表情を浮かべている。

 「ナディア……クアンとギルガランに興味あるの?」

 「ヴァンのお友達だもの、興味あるわ」

 「俺の、同期だから?」

 「ええ。そうよ。ヴァンが仲良くしている人とは、私も仲良くしたいのだもの」

 「そっか……」

 ヴァン、ナディアの言葉を聞いて、不機嫌そうな表情を一瞬で解消させる。なんとも単純である。期限をよくしたヴァンは、次にナディアがクアンとギルガランに話しかけた時には不機嫌そうな顔にはならなかった。ナディアが自分のことを思って、クアンとギルガランに話しかけていると思うと許せるらしかった。

 「ヴァンと仲良くしてくれてありがとう」

 「仲良く……は特にしておりませんが」

 「ふふ、ヴァンが名前を覚えているだけでも仲良しだと思うわ。ヴァンはルージー様とトルト様のこと、ちゃんと認識しているもの」

 ナディアはそういってにこやかに笑った。

 ヴァンとの付き合いをしていく中で、ナディアはヴァンのことを理解していっている。ヴァンが他人にあまり関心を持たないことも分かっている。そして、クアンとギルガランのことを、ちゃんと同じ王宮魔法師の弟子として認識しているのも分かっている。

 「そうですか」

 クアンとギルガランはそう答えながらも、分かり合っている感が漂っているヴァンとナディアに遠い目である。

 「本当お前らは仲がいいな」

 無言であったディグもそういいながら笑っている。

 内心では、分かり合っているならさっさとくっつけばいいのにという気持ちで溢れているが。

 「うん。俺とナディア、仲良し」

 「ええ。私とヴァンは仲良しですわ」

 照れもせずに二人は良い笑顔で言い切った。

 それに対して、ディグ、クアン、ギルガランは無言である。

 (俺、この空間に必要じゃないだろ)

 などと考えるのは当然であろう。

 ヴァンとナディアは、二人の世界にすぐに入っていく。

 その空間にいるのはなんとも気まずかったりする。だというのに、ヴァンとナディアはそれに全く気付かない。二人でほのぼのと会話を交わしている。

 しばらくナディアと会話を交わしていたヴァンは、無言のディグとクアンとギルガランの方を向いて、

 「あれ、何でそんな目してるんだ?」

 と不思議そうな顔をしていたが、三人からしてみれば何で俺ここにいるんだろうとでもいうような心境である。まぁ、ディグに関しては二人を面白がって見ているので、そこまで大変な場ではないかもしれないが、少なからずクアンとギルガランからしてみれば大変な場である。気まずいし、勝手にそのまま席を離れたら不敬であるし、どうしたらいいか分からない空間であったのだ。

 「俺、用事あるので行きますね」

 「俺も、同様ですので」

 そんなわけで二人は、ヴァンがこちらに話しかけたタイミングを持って、その場を何とか後にするのであった。

 その後、二人は「あの二人の空間居づらい」という会話をするのであった。そしてディグが面白がってその場に入れることに対して、「ある意味すごい」という結論に至っていたのだった。




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