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彼女は愉快に楽しく生きている【ダンジョン経営シリーズ】

 「ん~、今日はどうしようかな」

 ダンジョンマスターの部屋の中で、一人の少女がベッドから起き上がって、体を伸ばす。『黒き死の森』と呼ばれるS級クラスの危険度を誇るダンジョンのダンジョンマスター、それが彼女である。美しい黒い髪に、黒い目。大和撫子を思わせる見た目だけは清楚な少女である。

 名を花本愛という。地球から異世界にやってきて、ダンジョンマスターをやっている。ダンジョンマスターとして、日々、人を殺戮したりをやっちゃっている倫理観がちょっとアレな少女である。そんな少女が何をしようかなとにこにこしていたら眷属のエルフの少女が声をかける。

 「愛様はいつも楽しそうですね」

 「うん、楽しいよ。レルナ、今日は何しようか?」

 「愛様がやりたいようにやればいいですよ」

 「じゃあ、モンスタータウンにいこうかな」

 愛はそういうと、レルナを引き連れて愛が作ったモンスタータウンに向かうことになった。

 『黒き死の森』のモンスタータウン、その存在を知っているものはそうはいない。そもそも『黒き死の森』はS級クラスの危険度の内情は誰も知らない。そもそもダンジョンを攻略しようとして入ってきた人々はすぐに死んでしまうし、まさか、そんなダンジョンの下にモンスタータウンがあるなんて思いもしないのである。

 「皆、元気にしてる?」

 「マスター!!」

 「マスター、元気だよ」

 愛がモンスタータウンを訪れると、モンスターたちが愛のことを迎え入れてくれる。モンスタータウンはその名の通り、モンスターたちの住まう街である。愛のおさめている『黒き死の森』は攻略不可能とされているダンジョンで、モンスターの数は正直有り余っている。モンスターを家族と思っている愛が、モンスターが死ぬことを基本的に許さないのもあって、寿命で以外なくなるものは少ないというのが現状である。

 『黒き死の森』のモンスターたちは、シフト制で働いている。そして、仕事以外ではこのモンスタータウンで暮らしている。

 普通のダンジョンだと、こんなにモンスターを大事にすることはまずない。ダンジョンマスターは、無理やりこの世界に連れてこられた存在が主であり、モンスターに愛着を持たないものが多い。元人間であり、無理やりダンジョンマスターをやらされているのである。だからこそ、モンスターは自分が生き残るための存在でしかないし、愛みたいにモンスターに話しかけることはまずない。でも愛はモンスターに話しかけまくって、自我が芽生えたりなんてしないのである。

 モンスターたちはそれぞれ家庭を持って、好きに生きている。飲食店もあるし、農場などもあるし、生活感にとても溢れている世界だ。

 愛が向かったのは、カフェである。

 このカフェは、ゴブリンの一家が経営しているものである。愛はダンジョンマスターであるから、食事をとらなくてもいいが、食事をとるのが大好きなので、こうしてモンスタータウンで美味しいものを色々食べたりしている。モンスタータウンの住人は愛が、よく食べにくるのもあって張り切って食事を作っていたりもする。

「美味しいね」

「美味しいですね」

 愛はレルナとそういいながら食事をする。愛が食べているのは、チョコケーキである。周りの客たちは、愛のことをちらちら見ていたりもする。

 そんな彼らに愛は手を振ったり時折する。そしてそれに嬉しそうにするモンスターに愛は可愛いなぁとその顔を緩める。

 人を拷問死させたりとか普通にするくせに愛は、モンスターのことは本当に可愛がっている。

 ケーキを食べたあとは、愛が知識を出して生み出された魔力を使って生み出されたゲーセンに向かった。愛が情熱を燃やして生み出した。愛、ダンジョンマスターになって百年以上たっている現在、とてもモンスタータウンを発展させることに力を入れていたりする。

 そのため、地下に広がるモンスタータウンは、多分この世界のどの街よりも発展しているのである。

 「愛様、次はどうしますか?」

 ゲーセンのあとにレルナに問いかけられる。

 「んー、そうね。農場にでもいこうかな」

 そんな感じで愛はのんびりぶらぶらしていった。

 農場では作物を育てるのを一緒に手伝ったりしている。愛は街の中を適度に徘徊している。そうやって過ごしているのが愛はとても好きだった。


 その日はそんなことをして愛の一日は終わった。




 「明日からは人間の街にいって遊ぼうかなー」

 「私もご同行しましょうか?」

 「そうね、一緒に行こうか」

 そして明日からは人間の街へ行くことを決めているのか、愛はにこにこしている。

 愛のそのにこにことした表情からは、愛が人間を絶望に陥らせている本人とは全く思わないだろう。だけど彼女はこの国のダンジョンマスターなのである。




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