おじいちゃんみたいな教育実習生
「今日から3週間お世話になります。大学4年生の岡本広人です。担当の教科は英語です。」
理系クラスの高校3年生。
41人中女子が7人。それが私のクラス。
ある日分厚いメガネをかけた教育実習生が来た。
これだけ女子が少ないと休み時間は女子で固まる。
「実習生ぱっとしないね。シャツを茶色のズボンにinっておじいちゃんじゃん。」
「イケメンが良かったな。テンション下がる。」
「担任が英語だからって理系クラス担当なんて可哀想だね。」
「おじいちゃんみたいなのに英語担当ってウケるね。そこ国語とか社会じゃないんだね」
みんなでクスクス笑う。
「じゃあおじいちゃんって呼ぶ?」
「おじいちゃんだとそのまんまじゃん。爺やとかにする?」
「いやー、ひねりが足りないでしょ」
「じゃあシルバーは?うちらが話してるの聞こえても分かんないでしょ?」
「いいね!」
その日から教育実習生は女子の間でシルバーと呼ばれることになった。
シルバーの授業はとにかくつまらなかった。ボソボソ話すから何を言っているか分からなかったし…。
「じゃあこの問題分かる人挙手して下さい。」
「…。」
今時分かってても挙手する生徒なんていない。なのにシルバーは何度も挙手を求める。
「分からないですか…。では説明します。」
簡単な問題をあたふたと説明する姿を見ているととても眠くなった。
ホームルームがあっても誰もシルバーの話など聞いていなくていつも騒がしかった。
そんな状態が続いて1週間、朝の井戸端会議で事件が起きる。
「ジャンケンして負けた人がシルバーに話しかけるってどう?」
「えー。話すことないしやだな…。目つけられたら残りの1週間地獄じゃん。」
私は乗り気じゃなかった。
「いーじゃん、やろうよ!ほらほら最初はグー!」
私の反対もむなしくいきなりジャンケンが始まる。
「ジャンケンホイッ!」