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孫に恋するおじいさん!?

 俺は自転車を漕いでいた。部活の朝練はとっくに始まっている時間だからそりゃあもう必死で漕いでいた。

 いつもなら減速する急カーブ、今日は減速しないでドリフト気味に一気に曲がる。

「うわっ!? 危ない!」

 鈍い音が辺りに響く、おじいさんを轢いてしまった。身体には急激に痛みが走る。

 おじいさんはどうなっただろう、身体が痛くて確認も取れない。

「ひゃっほーい!!」

 突如間抜けな声が聞こえ俺は開かない目を無理やりこじ開けた。

 そこには若い男が自転車に跨がり満面の笑みを浮かべていた、何だかこいつ知ってるな…… 俺だ!!

「なんで俺がいるんだ……」

 自分の声に驚愕した、何だこの声まるでじいさんみたいな…… とっさにカーブミラーを仰ぎ見る。

 やっぱりじいさんになってるじゃんこれ! よく小説とかで見る入れ替わりじゃんこれ! まてよ、冷静になれもう一度ぶつかればだいたい直るのがセオリーだろ。うん絶対そうだ。

 俺は自分を宥めるようにしじいさん(俺の身体)を見る。

「いねーし……」

 じいさんはいなくなっていた、変わりに遠くから駆け寄ってくるおばさんが見える、何やら怒った顔をしている。

「お父さん!! 勝手に外出るなって言ったでしょ!!」

 なるほどこのじいさんの娘か、納得納得。

 こうして俺のじいさんライフが始まるのであった……



1章 孫に恋するおじいさん?


 俺はおばさんに家に連れて行かれた。もちろんこのじいさんの家だ。 

 ベッドに寝かされている。早く俺の身体を取り戻したかったが自転車とぶつかったからか体が痛いので少し横になることにした。

 しばらくするとドアが開いた、黒髪のショートヘアー、目がクリクリした高校生?ぐらいの女の子めちゃめちゃタイプですが入ってきた。

 女の子は俺の横に座ると手を握ってきた。

「おじいちゃんまた勝手に出歩いたんだってね。あたしも心配で心配で…… でも無事帰ってきてよかった」

 なんて健気で可愛いんだ。もっとお近づきになりたいぞ!

「悪かったね、所で名前なんだっけ?」

 我ながらデリカシーの欠片もない問いかけをしてしまったぞ!

「おじいちゃんまた私の名前忘れたの!?もうっ孫の名前くらい忘れないでよ、(さくら)だよ! 桜!」

 桜ちゃんか、可愛い名前だな。そんなことよりこのじいさん孫の名前を何度も忘れるとはけしからん、いやそのおかげで怪しまれずには済んだわけだが

 「冗談冗談、桜の名前を忘れるわけないじゃあないか」

 俺はそうフォローをいれつつ微笑んだ。すると桜はとても驚いてた。

 「おじいちゃん私が分かるの!? まともに喋れてるし! おかあさーん!!!」

 桜は大声をあげた。

 それから分かったことだがこのじいさんは痴呆症だったらしく家族の名前すら分からなくなっていたらしい。俺がまともに返事をすることに大層喜び、おばさん(娘)なんかは泣いて喜んだ。

 果たしてこれでいいのだろうか? などと普通なら苦悩の日々を過ごす所だか俺は違った。桜が可愛いから俺はじいさんとして生きていく!

 

1週間経過


 じいさんライフも慣れてきた。入れ歯なのと腰が曲がってるのはやりづらいが何故か身体能力なんかは前と変わりないようだ。

 あれからすぐにおばさんに病院に検査に行かされたが医者に驚かれた。まるで別人だ!って、別人なんだから当たり前の反応なんだが。

 今日は桜と一緒に公園まで散歩にきている。いや散歩と言うよりはデートだな。間違い。

「おじいちゃん体どう?痛いところない?」

 桜はいつも通り優しい、こんな優しい子がまだ存在していたとは

「あぁ大丈夫だよ、そんなことより桜は彼氏とかいるのかい?」

 じいさん最高! 元の体じゃ聞きづらい質問もじいさんなら聞き放題!

「急にどうしたの? 女子高だしいないよ」

 桜は少し困った顔で答えた。

「そうかそうか、さくらは可愛いから彼氏の一人や二人いるかと思ったよふへっ」

 きもい笑いがでてしまった……

「もうおじいちゃんったら」

 パシッと肩を叩かれる、あぁカップルってこんな感情なのかな。

 ふと桜を見ると険しい顔で遠くを見ている。高校生だろうか?3人、いや真ん中に1人うずくまっているから4人か

 桜はその集団に近づいていく、まさかいじめを止めようと?

「桜っ!」

  俺の呼びかけにも答えず桜は行ってしまった。

「あんたたち! やめなさいよ!」

 3人組みが振り返る。よく見る俺と同じ学校の奴らだ。田辺、橋本、小林、どいつも冴えない陰キャラだがこいつらがいじめなんて、うずくまっている奴を見て納得した。小学生だ

「な、なんだよ?文句なしあんのかよ」

 橋本が震える声で答えた。3人もいるのに狼狽えてる辺りこいつららしい。

「俺たちがカードゲームで遊んでるのをこ、こいつはバカにしたんだ!高校生がカードゲームなんてカッコ悪いって!そ、そんな偏見許せるわけにゃい!ケチをつけるなら女の子だろうがじじいだろうがゆ、許さないぞ!」

 小林もカミカミになりながら桜の肩を突き飛ばした。

「きゃっ」

 揺らいだ桜の肩を抱き留め俺は小林を睨みつける。

「なんだよ!やんのかよじいさん!」

 小林は桜が怯んだのを見た為かさらに調子づいている

「桜、下がってなさい」

 俺は腕をまくりながら不安そうに見つめる桜に親指を立てる。その隙をついて小林が迫ってきていた。

「きああああああ!」

 小林は奇声を上げながら拳を繰り出してきた、だが普段まともに運動すらしていないだろう小林のパンチはへなちょこパンチと呼ぶにふさわしかった。

 俺は小林の拳を右手ではじきそのまま小林の左脇に滑り込みわき腹にじじいパンチを繰り出す。

「うあああああいだいいぃ」

 小林がのたうち回る、田辺、橋本はあからさまに狼狽えている。

 「じいさんにやられるなんて情けないのぉ」

俺は上半身を左右にぶんぶん振り回しながら残り二人に近づく。

「な、なんだこいつ!なんなんだこいつはぁ!」

 逃げようとする田辺の前に滑りこみ上半身を右へ左へ、同時に小林のわき腹に拳を叩き込む、右、左、右、左、右、左

 田辺は声にならない声をあげながら倒れ込む、田辺に夢中になっているうちに橋本には逃げられたようだ。

 唖然とする桜を横目にいじめられていた小学生が口を開く。

「デンプシーロールだ……」

 こうして俺の最強じいさんへの道は始まったのであった。


 

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