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コンビニ~勇者スタイル~

作者: taro

それはある日のことだった。僕が散歩をしていると一枚の張り紙が村の掲示板に張られていた―――始まりの村にコンビニがオープンします。オープン限定くじもあるよ―――それからの僕は寝ても覚めてもコンビニのことを考えていた。兎に角楽しみだったのだ。

オープン当日。帝国歴2000年に発行された2000ルナ札を握りしめて僕は愛馬のドリームマシン号に跨った。朝五時、白い息を吐きながらコンビニの駐馬場に到着。心なしか愛馬の吐息も荒い。僕の心情が伝わったのだろうか。何せお目当ては1000ルナ分商品を買うと引けるくじの一等であるあのエクスカリバーなのだから。正直緊張している。当たるかわからないくじに挑戦しなくてはならない。それだけではない。この2000ルナ札は帝国歴2016年の今まで財布に入れて温めてきた僕の怨念、もとい金運のこもった秘蔵の2000ルナ札なのだ。僕は今日に全てをかけているんだ。

ドリームマシン号を降り、最愛の愛馬のホホにそっと手を当ててなでてやった。しかし驚いたことにブルルルと唸って手をどかそうとするのだ。いつだって優しかったドリームマシン号がこんなことをするのは初めてだ。しかしその瞳を見たら直ぐに分かった。行って来いと言っている。当ててこいと言っている。もう語ることは無かった。振り返らずにコンビニに向かう。コンビニの自動ドアが開く間際、ドリームマシン号が高く吠えた。その叫びは朝ごはんを求めている声だった。

「いらっっしゃああああせーえええーえええー」×3なんて元気のいい挨拶だ。さすがに店員全員言わないでもいいかな。正直その元気は鬱陶しい。そして眩しい。天井には魔法照明が何個も取り付けられている。節約のために暗い我が家とは大違いだ。

「たっだいま~揚げたてポテトと骨付き肉クンが~できたてっとあーなってまーす」×1「なってマース」×2僕が入店した途端それをいうとはどういう意味だこら、そんなに食いそうか。まだ六時にもなってないんだぞ。朝からそんな食欲があるのは家のアホ馬ぐらいだよまったく。

とりあえず無視して店内を見回してみる。入って左手がレジで右に行けば本が並んでいるのね。そしてぐるーっと壁伝いに商品が並んでて参列店の真ん中にレジに誘導するように棚があると。ふーん、とりあえず本を見てみよう。

兎に角安っぽい作りの魔道書が並んでいた。なんてこった。この紙はあんまり安っぽすぎないか。ページを触れば指が黒くなるしカバーもないぞ。無駄に分厚いのにやけに軽いのはなんでなんだ。というか実際安い。安っぽいんじゃなくて安いんだ。でも内容はなかなかいい。面白い所だけを上手く抜き出してる。これならまあいいだろう。500ルナね。納得の価格だ。とりあえず一冊買おうかな。

僕が魔道書を手に取り店を進むと店内の角の所で声をかけられた。「あら、久しぶりねー」きた、知り合いにエンカウントだ。僕の装備は2000ルナ札と厚さの割に軽い魔道書ぐらいで、しかも魔道書は厳密に言えばまだ僕のものじゃない。このエンカウントは絶望的じゃないか。

「あっ、お久しぶりでーす」とりあえずこう言っとけば大丈夫だ。

「ちょっとさぁ、このm「あっ、すみませーんちょと今日急いでて。また今度ー」」僕は逃げ出した。「そんなこと言わずに―」しかし回り込まれてしまった。どうやらイベント戦みたいだ。

僕は5分のロスをした。しかし面白いことを聞けた。この店は昔酒屋だったらしい。なんでもコンビニは酒屋の人が良くやるんだってさ。本当に無駄な豆知識だったよ。

残り1500ルナ分の買い物を探さなければならない。だが特に欲しいものはなかった。

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