前編 過去時 第一話 出会い
●●年●●月●●日
暇なので日記みたいなものをつけてみる。
そして、余談だというか注意事項に等しいが僕の特技は『三日坊主』だ。
多分、余り余って滞納しきったパワーで二日で日記は終わるんじゃないかと思われるが……
細かいことは気にしない。それワカチ(…自重します)
それでは、年月日は書き終わったので、文章を綴っていきたいと思う。
哲学的な文章になるが、ご了承願いたい。一応、後で誰かに見られる前提で話を進めています。
変わらない日常。普通な人生。
全ての行動において、『普通に』という言葉が頭に付く。
そんな人間は、そんな人達は、社会の中に五万といるだろう。僕もそのうちの一人に数えられるはずだ。
だからこそ、その分社会人になる際の失敗のパターンは増えていき、終には『普通に』失敗する、落ちこぼれる、引きこもる、中退する、退学する、溢れる、……そして、自殺する。そんなカテゴリーが出来つつある。この世には自殺サイトというものもあるらしい。実際、そうやって死んでいく人間は少なからずいたりするし。
正直、……バカみたいだ、とは思う。
閑話休題…
話が少しそれてしまった。
まぁ、要するに社会は厳しくなった。
だからこそ『普通に』成功する人間が減り、『普通に』失敗する人間が増えた。
これからももっと厳しくなるだろう。
職に就くのが厳しくなるだろう。
税を払うのも厳しくなるだろう。
経済もおかしくなっていくのかもしれない。
この世界は『失敗』して、『失敗』して、『失敗』して……『失敗』していくのかもしれない。俗に言う、失敗スパイラルという奴だ。
え?言わないの?………すまん、
……ならば、失敗は『普通』に起こりうる現象に変わるのだろうか。
『普通に』『失敗』が続く。そんな人生は『普通に』あるはずだ。
例)僕の人生とか、僕の人生とか……
僕の尊敬してやまない偉人No.1『原子という考えを提唱なされた……が、物質はすべからく神が創るものだと世間に反対され続けた』ドルトン先生の人生とか。
……いや、ドルトン先生の『失敗』じゃねぇか……
周りが理解しなかっただけか……
まぁ、どちらにしろ波乱万丈し過ぎな人生だ。
……また、同じような学者。ガリレオやケプラーとかは結局のところ『失敗』に終わっているわけだ。
ガリレオは地動説を唱え、地球は回っていると言ったが、信用されなかった。さらに、一生家から出ることと地動説を唱えることを許されず、
そのまま老いて死んだ。
それは、何故か?ローマ法皇がそれを禁じたからだ。……許さなかったからだ。神はそんなことはしないと言い張ったからだ。
権力を持つものが、『失敗』を確定させた。
地球が自転を行っていることが認められたのは何十年も後のことだ。彼が決して満足な人生を送ることはなかった。たがら、これも多分『失敗』なのだ。
僕は思う。田舎から上京して、大学落ちて、浪人になって、仕送り止められて、バイトで食い繋いで、もうこんな人生になんの希望が残っているのだろう?
『失敗』は、確定したも同然じゃないのか?
『成功』は、この世の何処かで笑っている権力者の手に渡ったも同然じゃないのか?
……僕は、僕は……?
どうすればいいのだろうか……?
「……面倒だ、な。」
………zzz
カチカチカチカチ……とキーボードを軽やかに叩く。ここ最近は家に籠りっぱなしで、ブラインドタッチの練習をしていたから、やっと上手く出来るようになってきた。
思い付きでパソコンのメモ機能を使って日記を書きはじめてはいるのだが、開始10分でもう既に、「……面倒ですなぁ。」という訳である。
なんだよ、『10分坊主』て……飽きっぽすぎるよ……
主犯者が言うのもなんだが、流石にドン引いたわ。
最後にzを三つほど重ねて、保存する。
これで後々三年後とかにたまたま開いたりして、懐かしい気分にさせる。少しでもこれで未来の僕の暇な時間は潰れるであろう。
何てこったい……
自分に優しい。僕はそういう人間だ。
「まぁ、冗談はさておいて、どうしよう、暇だ。」
古くさいアパートの一室でうーん、と伸びをする。
自然と顔は上に向けられる。
蛍光灯が眩しいッ!!
……普通だろ。
自分で自分にツッコミ入れといてなんだが、結構恥ずかしいなこれ。二度とやりたくないレベル。
「それにしても、暇だ。」
こういうときは散歩に出ることを………、今決めた。
……まぁ、これも多分十分足らずで戻ってくるんだろうけどさ。
自分に対して信用を欠かさない、僕はそういう人間でもある。悲しいことにね。
外に出る。外出したのはいつぶりだったろうか。と、そんな小さな疑問が頭に浮かんだ。
しかし、歩いていたら思い出すだろうとぼんやり思いながら歩を進めていく。
月明かりによって光に侵食されたアスファルトを踏んで僕はスタスタ夜道を歩く。少しおぼろな満月だった。
……数分後、途中通った公園に、時計を発見する。既に深夜を越えていた。何故か、少しも眠気がない。
不眠症になりつつあるのかもしれんなぁ。なにそれ、こわい。
病気は怖い。僕はお化けより怖いと思っている。
よくテレビ特番とかでやってる『恐ろしい病気』とかを題材にしたやつってあるじゃん?………あれ、怖いよね?
なんか、どこぞの有名大学医学部出身の医者だとか、いろんな難しい手術をこなしてきた医者だとかは知らないけどな。ああいう人達が自慢気に「こういうことが貴方の身に起こってたら、貴方はこういう病気にかかっているかもしれません!」みたいなことを言うのは本当にやめてほしい。
この前その手の番組を見たとき、その一例に僕が当てはまってて「ああ、どうしよう」とか思いながらも、胃腸にあらゆる効果を促すらしい変な運動に付き合わされるんだ。
まぁ、10分で止めたんだけどさ。面倒だから。
さて、このように相手に対して「こうかもしれない」「確かに、自分はこんなことしてたなぁ……」と思いこませる。
それをプラシーボ効果という(のだったと思う)。占いでよく使われるので有名である。
意外と長話になったが、ここで僕が出した結論は『プラシーボ効果ダメ、ゼッタイ』である。
………ふぅ、
「疲れたな……」
と言いつつ、ベンチに座る。今のところ時期は夏であり、ベンチのひんやりとした冷たさと夜風が相まって気持ちがよい。
……普通に寝そうだ。
そんな言葉が頭に過ったせいか、僕は家に帰るためベンチから立ち上がる。
こんなとこで寝て風邪をひいても困るしね。
「…………あ、レ?」
……否、立ち上がれなかった。
何故か?それは簡単だ。今、僕の体はベンチを挟んで背後にいる誰かの手によってベンチに押し付けられているからだ。
肩に触れている感触から、その誰かさんの掌は小さかった。
しかし、力が凄く強い。プロレスラーか、コイツ!!って思うくらいには力が強い。
僕の枯渇した想像力では僕の後ろには手は小さいけれど筋肉質のオッサンが立っていることになっている。うそ、やばい、泣きたい。
……沈黙が続く。
肩に重い感触が乗ってから既に数十秒たったんだが、まだなんも反応なしなんですけどッ?!
それより、やっぱり僕がなにか悪いことでもしたのだろうか……?
夜中に散歩したのがそんなに悪い罪なのか?
本気で土下座したら許してくれるのだろうか?
そんな考えばかりが頭の中を反芻する。まぁ、そんなつまらない理由で僕をベンチに押し付けているわけではあるまい。
有り体に言えば僕は困惑していた。
「?!」
突然、コツンと後頭部に柔らかい衝撃が生まれる。
ゴツンではなくて心底嬉しかったが、それはそれでまたもや疑問が発生する。
一体コイツは誰なんだ?という事だ。
こんな、ことをして、何になるんだ?
意味は?……必要ではないのか?
直後、ズザァと何かが倒れ込むような音がした。
肩にかかる力が抜けたことから考えると、恐らく後ろの誰かさんが倒れたのだろう。
後ろを、振り向く。無意識にそうしてしまっていた。
理性的には一刻も早く一目散にこの場から離れたい気分だったのだが、やはり本能には勝てなかったようで、僕の首は自然と後ろを向いた。
その誰かさんとは言うと、この公園の土の上で汚れることも気にせず、寝転がっていた。
手は……小さい。しかし、筋肉質のオッサンなどという嫌なものではない。むしろ、良い。
普通に美少女だった(確定)。特徴を挙げるとすれば、髪が白いこと。病人が着るような服を着ていること。容姿は人が十人いたら十人とも振り返るくらい。年は……ちょい年下くらいかな?……という感じ。
おいおい……、誰だよ筋肉質のオッサンとか言った奴は!?
……うん?ボクジャナイヨ?
その後、僕は今、自身のアパートの近くにある某ハンバーガーショップに来ている。
朝食を食べているのである。ポテトLとコーラ美味いね、バーガーさん無しでも朝食としてやってけるよ。だから、バーガーさん無しでも寂しくないよ?ホントだよ?
「……面倒だな。ん?何が?ボケるのが、面倒になってきたんだよ。」
とまぁ先程のまでの出来事を省みれば、いやはや、何だか大変なことに巻き込まれた感が否めないのが、
実に、全く、本当に、
面倒で仕方がない。