週一マーガリン
夏休みである。
「おい、どうなってやがる?」
「何がだ?」
この世界の時間ではそーなっているのかもしれない。
「俺さ、お前とかバスケ部の仲間としか会ってない気がするんだよ。夏休み中。まだ夏休みがあるけどさ」
「……俺も思っていたぞ」
夏の合宿の地。海にやってきたはいいが、基礎体力作りに遠水や砂浜ランニング、筋トレなど……暑い上にむさ苦しいトレーニングばっかりだった。
クタクタな体を癒したのはキーンと冷えた飲み物と旨すぎる海鮮料理。しかし、それらは一瞬であった。彼等からすれば。
「女を抱きてぇーなって、この10日間思った」
「コンビニのエロ本に手を伸ばしてるな。あとで見せろよ」
「本物がいいんだよ!あと、見たいなら割り勘だ!」
相場竜彦と舟虎太郎のアホコンビ。
バスケ部の地獄合宿が終わり、2人で帰る道。コンビニに寄り、エロ本を2冊。それも別々の雑誌を買って、交互に読み合って帰る。一般人の目など気にしていない、飢えた野獣そのものの行動だった。
「舟ー!お前、良い女を俺に紹介してくれねぇ?」
「お前に紹介するくらいなら、俺が付き合うに決まってるだろ?」
本に映るモデル達に癒されるのもまた、一瞬だったことを知る。こうリアル感が足りていないではないか。モデルをやってる可愛い子ちゃんが自分の近くにいるわけでもあるめぇ。こんな格好、ポージングをしてくれるわけもねぇ。
「彼女、作ろうぜ。幼馴染とか同級生とか、先輩、後輩でさ」
「合コンでもするか。LINEで取り合えるぞ」
「おおー!いいねぇ!それがいい!やれよ、舟!この夏、みんなで彼女を作るんだ!」
「そうだな。夏休みだし、早速やろうか」
◇ ◇
3日後。舟と相場が主催する合コンが開催しようとしていた。とあるお店を貸しきって、8対8の真剣な合コンである。
「なんだよお前等、随分カッコイイ服を着てきやがって」
一番、左の席。相場竜彦!
「彼女を作るんだ。本気でなくてどうする?」
左から2番目。舟虎太郎!
「ま、まぁ。可愛い子と出会ってみるのはいいよな。小さい子いるかな?」
左から3番目。坂倉充蛇!
「ふふ、みんな。本当にやる気だね」
中央。四葉聖雅!
それ以降、奥。誰もいない。誘ったが来なかった。みんな塾なり、帰省なりで来れないだそうだ。
「ふ、ふん!まぁいいだろう。へへへ、4人でたっぷり遊ぼうぜ」
「相場…………」
「もうすぐ、来るんだろ?なぁ?な?」
「舟……」
男子側からの向かい側。未来の彼女になるだろう女性達は
一番、左の席。誰もいない!
左から2番目。誰もいない!
左から3番目。誰もいない!
左から4番目。誰もいない!
左から5番目。誰もいない!
左から6番目。誰もいない!
左から7番目。誰もいない!
左から8番目。誰もいない!
「野郎共の寂しい集まり会になってんじゃねぇか!!」
「ちくしょーー!食うぞ!やけ食いだーー!酒も飲んでやるーー!(未成年だけど)」
舟と相場。暴飲暴食に走り出す。せっかくの夏休み、結局話したのは男達ばかりであった。
「やれやれだな。四葉。だろうとは思って来た口だろ?」
「僕達は親友なんだ。可哀想な男友達を慰めるのも、男の役目だよ。今日中に一線を越えてもいいけど」
暴走気味な2人に対し、冷静かつ話しを聞いてあげる2人。
男しか出会わないとはいえ、これもまた楽しいのが交流というものだろう。
◇ ◇
「みんなで静かに勉強会も良いわね」
「ええ、たまにはこうして親交を深めるのもね」
一方で女子達の皆様。時代にそぐわず、図書館の一室を借りての受験勉強兼、宿題抹殺中。規則正しい生活を送るための習慣を培っていたそうだ。
「やぁ、迎ちゃん。勉強中?」
「昨日はごめんね。舟と相場を相手にしてて」
「坂倉くんに四葉くん!」
「また来たんだ」
坂倉と四葉は女子達がどこにいるかくらいは知っていた。相場と舟を呼ばなかったのは
「馬鹿2人を呼ぶと、騒がしくなるもんな」
図書館ではお静かに……




