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姫が眠りから目を覚ました。どうしますか?

作者: 橘。


勇者は『あかいツノの魔物』をたおした!


2000Gを手に入れた!

しろがねの鎧を手に入れた!

薬草を手に入れた!


   ▼





勇者は洞窟の奥へ進んだ。

ガラスの棺を見つけた!どうしますか?


 調べる  ←

 先に進む





ガラスの棺を調べた。姫は『えいみんのまほう』で眠らされている

どうしますか?


 魔法をつかう

 先に進む

 様子を見る ←





勇者は様子を見た。姫は『えいみんのまほう』で眠らされている

どうしますか?


 魔法をつかう ←

 先に進む

 様子を見る


   ▼


 勇者     

 魔法使い ← 

 僧侶

 盗賊

 戦士

 良いスライム 



覚えたじゅもん

 ほのお

 こおり

 かまいたち

 でんげき 

 むこうか  ←  

 どく

 こんらん

        


魔法使いは『むこうか』のじゅもんを唱えた!


   ▼





姫が眠りから目を覚ました。どうしますか?


 話しかける

 先に進む

 様子を見る ←





姫は何か言いたそうにこちらを見ている。どうしますか?


 話しかける

 先に進む

 様子を見る ←





姫は何か言いたそうにこちらを見ている。どうしますか?


 話しかける ←

 先に進む

 様子を見る



『ありがとうございます。勇者様。わたしはわるい魔物にさらわれてしまったのです。どうかお城までつれていってもらえないでしょうか?』




どうしますか?


 仲間にする ←

 先に進む





パーティーは5人でいっぱいです。これ以上は仲間にできません。

仲間と別れますか?


 はい  ←

 いいえ





誰と別れますか?


 魔法使い

 僧侶   

 盗賊

 戦士

 良いスライム





誰と別れますか?


 魔法使い

 僧侶   ←

 盗賊

 戦士

 良いスライム


   ▼





 * * *


「ちょおっとぉぉ!!!」


 荒野に若い女性の声が響き渡る。彼女の目線の先にあるのは幌付の小さな馬車だ。無情にも自分を置いてどんどん小さくなっていく姿にその女性――僧侶は目に涙を浮かべた。


「なんで! なんで私が置いてかれなきゃならないのよ!!」

「そりゃあ、お姫様をお城まで届ければお礼がたんまり貰えるだろうしねぇ」


 自分の言葉に応える様に飄々とした声が後ろからかかる。けれどもう誰もいないと思っていた僧侶はびくっと体を震わせた。恐る恐る振り返れば、そこにはいつものようにヘラヘラした笑顔を貼り付けた盗賊がいた。


「盗賊……?」

「うん? 何?」

「何じゃないわよ! あんた何やってんの!?」

「やだなぁ。僧侶一人じゃ寂しいと思って俺も残ってあげたんじゃないか」

「はぁ!? 誰もそんな事頼んでないわよ!」

「あれ? いいのかなぁ、そんなこと言って。君だけでモンスターがうじゃうじゃしてる荒野から町まで帰れるの?」

「うっ……」


 確かに他のキャラクターに比べれば攻撃力もHPも低い。MPはそれなりに高いが覚えた魔法は回復や治療を主とする白魔法。パーティーの中では常に後方支援に徹していて、一人でモンスターと対峙したことはほとんどない。しかもこの荒野はそれなりにレベルの高い魔物の生息地だ。僧侶がここまで来る事ができたのは勇者パーティーの中にいたからに他ならない。


「それにしたって、あんた……。もう勇者一行には戻れないかもしれないのよ? いいの?」


 パーティーの人数制限は5人まで。僧侶を放っておけばこれからも名誉ある勇者一行として旅が出来たのだ。しかも共に姫の城まで戻れば、彼にも褒美が与えられた筈なのに。

 けれどそんな彼女の心配を他所に盗賊はへらりと笑った。


「いいんじゃない? だって俺、本業盗賊だよ? そもそもが悪者だもん」

「はぁ……」


 良く分からない理屈に、精神的に疲れていた僧侶はツッコむことを放棄した。





 * * *


「おかしくない? なんでスライム残して私を捨てんのよ!」

「あはははっ。勇者はずっとあのスライムを可愛がってたしねぇ。君、回復魔法使えるから自分は捨てられないって思ってたでしょ?」

「思ってたわよ!!」


 言葉の勢いのままドンッとグラスをカウンターに叩きつける。その中身は安物のワイン。僧侶の顔が真っ赤なのはまず間違いなく酔っ払っているからだろう。そもそも彼女は酒に弱い。今までの旅中、仲間達が酒を飲んで騒いでも、一人寺院の教えを守ってお茶を飲んでいたのに。今の僧侶は色々と限界らしい。

 荒野を抜け、無事着いた街に一軒だけ見つけた酒場。酒に飲まれた僧侶の愚痴を隣で聞きながら、盗賊はビールのお代わりを頼んでいた。


「ねぇ、ちょっと聞いてるの?」

「はいはい。聞いてますよ~」

「もう! 絶対聞いてない!!」


 一人でプリプリ起こっている僧侶。勇者の前ではいつも神の教えを守る僧侶として体裁を保っていた彼女だけれど、今はこのザマだ。けれど盗賊が驚く事はない。何故なら、盗賊はずっと彼女の本性に気付いていたから。

 本当は町娘達と同じように年相応に可愛くて我がままで、自由を求めている事に。

 そして――


「勇者と別れて寂しい?」

「!!?」


 ガタンッと僧侶の椅子が不自然なほど大きな音を立てて揺れる。カウンターにだらしなくもたれていた彼女は青い顔で盗賊を見返していた。そんな彼女に盗賊は尖った言葉を吐く。


「好きだったんでしょ? 勇者の事」


 なのに捨てられた。姫より他の仲間達より、勇者にとって一番要らないのは僧侶だった。


「――……っ!」


 何か言いたそうに、けれど言葉を飲み込んで僧侶は顔を伏せる。震える手のひらの間からかみ締めた唇が見えた。

 盗賊はそっと彼女の頭を抱き寄せた。


「俺は謝らないよ」

「……っさい、ばか」

「うん」

「あんたなんかキライ」

「うん」

「あんたなんか……、一緒にいっちゃえば良かったのに……」


 盗賊の胸の中で僧侶の言葉が弱弱しく消えていく。豪華なウェーブがかかったあの姫の金髪とはまるで違う、真っ直ぐで艶のある僧侶の青紫の髪を盗賊は優しく撫で続けた。勇者と旅を続けていく中で出会ったこの女性の美しい髪は、ずっと盗賊が触れてみたいと思っていたものの一つだ。

 やがて僧侶の涙が止まった事に気がつくと、盗賊は彼女の顔を覗きこむ。鼻先が触れそうなその距離に息を飲む僧侶の顔が見えた。


「キスしていい?」

「~~~~死ねっ!!!」


 バチンッ


 僧侶にしては罰当たりな言葉を吐いて、肩を怒らせながら酒場を出て行く。すっかり涙の消えた彼女を追いかけながら、盗賊は楽しそうに呟いた。


「やっぱり俺は悪者だよ。だって、勇者から君を盗んだんだから」






盗賊は『そうりょ』を手に入れた!


盗賊はレベルが上がった!

ちからが1ポイントあがった!

すばやさが2ポイントあがった!

体力が10ポイントあがった!


     ▼


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