5 風紀委員
ホームルームで手を挙げて僕は風紀委員になった。
というのもこれほど暇な役職もないだろうということからだった。二年目の学校生活に向けて僕はここでの景色をずいぶんと見てきたから、賢く行動するつもりでいた。われながらそれなりに頭のいい学校に入れたし、変な人間もいない。なかなかいいスタートを切れたんじゃないか? 苦労した自分が報われた感じだなあ、と入学時は思っていたな。シャツの第一ボタンさえ開けるような人間もいないのだから僕の出番はないに等しいし、時々ある大きな掃除に加担するだけでささやかな内申をちょうだいできるのであれば、やらない手はないだろう?
まあ、つまり僕は「そういう楽で便利な立ち位置」をなるべくゲットしようとしていたんだ。ちょっと違うけれど勉強しか能のない友達を作っておいてその頭脳のおこぼれにあずかるのも、大した苦労は要らないだろう? わざとクラスのマドンナに告白して、玉砕して、綺麗に立ち直った振りをして皆の同情を引いたりだとか、ね。
ちょっと待った。僕は別に開き直りしているつもりはないんだ。本当だって。
で、だ。最近ふとあの時あんな行動していなかったら僕もまた四角四面の真面目くさった人たちの一人にしかならなかったんじゃないかなって思ったわけだ。そのことに気がついたら無意識に手をまっすぐ伸ばしていた、なんて言い訳になるだろうか? けっしてイイところを見せたいわけじゃないはずだ。
多分。